問題児たちが異世界から来るようですよ? ~大地の寵愛者~ 作:無名宴
甲高い叫び声とともに現れたのは鷲の翼と獅子の下半身を持つ獣と鳥の王グリフォン。
白夜叉はグリフォンを手招きしながら四人に向き直る。
「さて、肝心の試練じゃがの。おんしらとこのグリフォンで“力”“知恵”“勇気”のいずれかを較べ合い、背に跨って湖畔を舞うことができればクリア、ということにしようか」
四人の手元にギアスロールが具現する。
「“鷲獅子の手綱”まさに名前の通りだね。で、誰が……」
「私がやる」
読み終えた皐月が尋ねようとすると耀がピシッと勢いよく手を上げる。
その瞳はグリフォンに注がれており、まるで探していた宝物を見つけた子供のようにキラキラ輝いていた。
「Ok、先手は譲ってやる、失敗するなよ」
「気をつけてね春日部さん」
「うん、頑張る」
頷きグリフォンに駆け寄ろうとした耀を皐月が止める。
「取り合えずこのマントとペンダントで風圧と冷気は少しくらい軽減されるから纏っといて」
そう言い『耐風のマント』と『雫のペンダント』を渡す。
「真正面からぶつかりたいんでしょ? ならこれくらいの備えは必要だよ」
「! どうして……」
「似たようなことやってたからね。それじゃ、頑張って」
ひらひらと手を振りながら皐月は薄い笑みを浮かべる。
耀は渡されたペンダントとマントを身に纏うと、グリフォンの元へと向かった。
「おんし少しいいか?」
「ん?」
耀を背にグリフォンが舞い、全員の視線が集中する中、白夜叉は皐月の近くに来た。
「己が負けを認めることであ奴らが妥協しやすくしたのじゃろ?」
「みんな変に強い力を持ってるからね。だからこその経験不足。とくに失うものが無いなら時に負けを認めるのも重要なんだけどね」
「ある意味プライドがかかっておったがの」
「そういうのは倒せる力をつけてから言いましょう。弱いうちは這いつくばっても生き延びないと話にならないよ」
クククと笑う白夜叉。
「にしても、おんしはあ奴らと違い全く驚いてなかったが」
「経験済みだしね。圧倒的戦力差がある相手と対峙するのも、厳密には違うけどこういった空間もね」
「ほぅ」
眼を細め感情の起伏によりその心情を読もうとしたが彼は全く表情を変えない。
「…… どうやらまことのようじゃな」
「とはいっても本当のグリフォンを見るのは初めてだけど」
「そうか? にしては驚いている様子はないが」
「もっと凄いの見たことあるし。頭が鶏のグリフォンね」
「に、鶏じゃと……」
突然の発言に思わず肩がずり落ちる白夜叉。それを楽しそうに見ながら皐月は続ける。
「その名も鶏グリフォン」
「ぶほっ! そのまんますぎじゃろうが!」
思い切り吹き出し、笑いだす白夜叉。
「皐月さん! 耀さんが頑張っているんですよ! 少しは心配するとか」
白夜叉と話していることに気付いた黒ウサギが皐月に詰め寄る。
「彼女なら問題ないと思ってるから。それに……」
強い瞳で黒ウサギを見る。
「この程度のことで躓いていたら魔王を倒して旗と誇りを取り戻すなんて不可能。命を粗末にするだけだよ」
「…………」
魔王の恐ろしさを知っているだけに何も言えずに黙りこむ黒ウサギ。
「とはいえ心配するしないは個の自由。彼女なら大丈夫だと思ってるって考えてもらえば十分かな」
そんなことを言っているとふと視線を感じ、見ると十六夜がかなり獰猛そうな瞳で皐月を見ていた。
「うわぁいざやんに眼をつけられた…… これは黒ウサギを縄で縛って『ご自由にどうぞ』しなければ」
「何言ってるんですかこのお馬鹿様!」
「そうじゃ! 黒ウサギを縄で縛るのはこの私じゃ!」
「おっと、それは俺の役目だ譲れねぇぜ」
「あら、私を忘れてもらっては困るわ」
皐月のボケに黒ウサギが突っ込み、白夜叉、十六夜と続きいつの間にかいた飛鳥まで話に交じったためさらに収集がつかなくなる。
「(お嬢が頑張ってるのにこいつらは……)」
三毛猫が毛を逆立てながら威嚇してくるを苦笑しながら見る。
「ま、それは置いといて。そろそろ終わるみたい」
そんなこんなと馬鹿をやっているうちにグリフォンがすさまじい速度のまま湖畔の中心まで戻ってくる。
「四肢に風をからませて、大気を踏みしめるように……」
宙に浮かぶグリフォンから大気を跳ねるように降りてくる耀に十六夜はやっぱりな、と軽薄な笑みを浮かべた。
「お前のギフトって、ほかの生き物の特性を得るギフトだったんだな」
「違う。これは友達となった証」
「(お嬢! 怪我はないか!?)」
「うん。ちょっと指がジンジンするくらい……」
駆け寄る三毛猫をなでながら皐月へと向かう。
「これ返さないと」
「いや、せっかくだしあげるよ。どうせ返してもらっても袋の肥やしになるだけだし。だったら使う人に渡したほうがその道具のためだよ」
「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
「いやいや見事。このゲームはおんしの勝利だ」
軽く拍手をし、バサッと扇子を広げる。
「ところで、そのギフトは先天的なものか?」
「違う、この木彫りの御蔭」
「木彫り?」
皐月に渡された雫のペンダントと一緒にあった木彫り細工を白夜叉に見せる。
「…… これは……」
「うわぁ…… 天才どころの話じゃないなこれ作った人。どれだけの才と努力があれば作れるんだか」
横から覗き込んでいた皐月も驚嘆の声を上げる。
「よもや独自の系統樹を完成させ、さらにギフトにしてしまうとは! これはまさに“生命の目録”と称しても過言ない名品だ!」
「正直是非ともこれを作った人に会ってみたい」
「全くだ」
「し、白夜叉様、今日は鑑定をお願いしに来たのですが……」
話が別方向に行きそうだったため黒ウサギがあわてて軌道修正を図る。
「わかっておる。コミュニティ復興の前祝いだ。ちょいと贅沢な代物だがかまわぬ」
白夜叉がパンパンと柏手を打つと、四人の眼前に光り輝くカードが現れる。
久遠飛鳥・ギフトネーム“威光”
春日部耀・ギフトネーム“生命の目録(ゲノム・ツリー)”“ノーフォーマー”
逆廻十六夜・ギフトネーム“正体不明(コード・アンノウン)”
それぞれ自らの名が書かれているカードを手に取る。
黒ウサギがそのカード…… ギフトカードの説明をしている間皐月は自分のカードを眺めていた
(こっちの二つはともかくこれはやばいよな~ どうしよ)
ギフトが複数あるのはいい。複数あるのは耀だって同じだ。ただ、ある『一つ』だけが問題になっている。
(『ギフト』に『ギフト』を収納するってのは可能かね…… ま、やってみるかな)
皐月がいろいろとやっている間に十六夜のカードを見た白夜叉が唸る。
「全知である“ラプラスの紙片”がエラーを起こすとは……」
「鑑定はできなかったってことだろ? 俺的にはこのほうがありがたいさ」
考え込む白夜叉に十六夜はヤハハと笑い、皐月を見る。
「なあ、あんたはどんなギフトだったんだ?」
「ん? これ」
そう言って皐月が見せたギフトカードにはこう書かれていた。
如月皐月・ギフトネーム“ルーンファクトリー”“特技の本棚(アビリティ・ブック)”