もしも、皆大好きエミリアたんが魔物よりだったら。
曲を聴きながらどうぞ。
エミリアたんってEMT。って思ってたら電波を受信。妄想して書いちゃいました。一応前作の続きみたいなものです。
今作、終の所で切って頂いても構いません。
この作品は妄想で出来ております。
もしも、リゼロのエミリアたんがすこーし魔物よりだったら。
『―――私はスバルを信じたい』
嘘を言う私。
「リア・・・。何もあそこまでスバルを冷たくあしらう必要は無かったんじゃないかい?たった十数年しか生きていない人間らしい、かわいらしい文句だったじゃないか。感情的になるなんて君らしくもない」
『信じたいのに・・・。信じさせてくれなかったのは、スバルの方じゃないッ!!』
『もう、いいよ。――ナツキ・スバル』
「彼に対して怒るなんてリアにしては、」
「パック。何を言っているの?」
「リア・・・?」
「私はスバルに対して怒りなんて感じないよ。…何故だか分からない?」
『期待、してたの。ひょっとしたらスバルは私を。スバルだけは、私を特別扱いしないんじゃないかって』
全部ウソ。
『たとえ世界中の全ての人間を引っ張り出してきたとしても。君だけは、他の人間と同じ目で見ることなんてできっこない』
・・・そう、それでいい。ハーフエルフの私に対しては、その認識でいいんだよスバル。
「何故なら私は、」
今までも。そしてこれからも、
「最初から誰一人、信用しちゃいないからよ」
あなたも私と同じでしょう? ナツキ・スバル。
◇
―――お前はあの魔女と同じ半魔!
―――銀髪のハーフエルフ!!
―――死に晒せ!!!
暴言、暴力、暴行。
私が一体何をしたっていうの?
私達は、同じ人じゃないの?
―――てめえら半魔は、生まれてきた事が罪だ!!!!
・・・人は、平等ではない。
生まれつき足の速い者、美しい者、親が貧しい者、病弱な身体を持つ者。生まれも育ちも才能も人は皆、違っている。
そう、人は、差別される為にある。
でも、平等な事が二つだけある。
公平な事が二つだけある。
「それは、生まれる事と死ぬ事。誰しも始まりと終わりは等しく訪れるモノ。違う?パック」
「どうだろう?世の中には、生まれる前に死ぬ事だってあるようだし」
「なるほど」
つまり、世の中はもっと公平であるべきという事だ。
唯一無二。
平等、公平な真実はこの世にたった一つだけあればいい。
そう、
私達ハーフエルフだけじゃない。
生まれてきた事が罪なのは、死に晒すのは、
「お前達もだ」
だから唯一無二を、私がお前達に与えてやる。
そして同じく私も消えよう。
・・・・永遠にッ!!!!!!!!
◇
―――これがハーフエルフ、エミリアの心象。
王選に立候補したのだって、公平を謳い文句にしているのだって、自分の手で唯一無二を全ての者に与える為。
独り善がりだろう。思考の放棄だろう。誇大妄想だろう。
しかしこういう風にならなければ、彼女は生きられなかった。
『凍てつく森に生きる氷炎の魔女』
それがこの世界の彼女の通り名。 森に近づく者は誰であれ氷らせる。燃やし尽くす。
魔女。
彼女は傲慢か? 怠惰か? 強欲か? その他か?
そんな事は、彼女にとってどうでもいい事。
公平公正平等。
彼女にとってそれは、一つだけ。
…誰かが、ほんの少し優しければ彼女はこんな風にならずに暮らせただろう。
でも、そうはならなかった。 ならなかったんだよ。
だから、この話はここでお終いだった。
―――アナタに会うまでは。
◇
ナツキ・スバル。
初めて彼と会った時を、エミリアは思い出していた。
『開けるな! 殺されるぞ!!』
―――そんな事、まだしないわよ。
『パック! 防げ!!』
―――何から何を? 敵から私を・・・?
『命の恩人、レスキュー俺。そしてそれに助けられたヒロインお前。そんなら相応の礼があってもいいんじゃないか? ないか!?』
―――彼は何を要求するのだろう?死だろうか。
『君の名前を、教えて欲しい』
――――。
『俺とデートしようぜ、エミリアたん』
――――この人は。
『一緒に二人でお出かけして、同じもの見て、同じもの食べて、同じことして、同じ思い出を共有するってこと』
『・・・そんな事で、いいの?』
『そんな事が、いいのさ』
―――ああ、この人は。
この人は私とは違う公平を、唯一無二を持っている人なのだ。
・・・それが一体何なのか、私には分からないけれど。
私は、それを知りたいと思う。
スバルを知りたい。スバルに唯一無二を与えたくない。
こんな気持ちは初めてで、私はどうすればいいのだろう?
だから、それが分かるまで、
―――貴方を信じてみても、いいのでしょうか。
『お前は俺に、返しきれないだけの借りがあるはずだァア――――!!!』
◇
メイザース領・領主邸内、エミリアの部屋。
「エミリア様!!!」
「どうしたの?ラム」
「敵襲です・・・!魔女教と思われる一団が我がメイザース領に侵攻。村が襲われています。そして目標は、この屋敷と思われます」
「・・・そう」
「これより、ラムは不在の主にかわり不逞の輩共を迎撃。 いえ、『出撃』して参ります。
あの有象無象共に、誰の領内に汚い足で踏み入ったか教育して差し上げましょう。
・・・しかし、万一この屋敷に賊が侵入した場合、失礼ながらその際はエミリア様直々に誅戮をお願い致したく」
「構わないわ。暴れなさい」
「・・・エミリア様」
臣下の礼をとる、赤鬼。
この館に魔女教徒の侵入を許す。それはつまり、己の人生の終わりを、死を意味している。
それでも赤鬼は、ラムは不敵な笑顔を絶やさない。
―――この場所は、我が主ロズワール様とエミリア様がおられる場所。最愛の妹と、最近できた後輩の使用人見習いが暮らす場所。
断じて不逞の輩なぞが踏みにじって良い場所ではない。
この命にかえても、死守してみせる。
「貴女に仕える事ができて、幸せでした」
「貴女のような鬼が臣下であった事、私は忘れはしないわ」
―――感謝の極み。
◇
「アナタは何と怠惰である事か!!!」
魔女教徒、侵入。
「あのような子鬼一匹二匹に勤勉そのものである我々をどうにか出来ると思っていたのデスか?アナタも勤勉に戦うべきだったのではないのデスか?
ああ!ああ!!あああああ!!! アナタはなんとなんとなんとなんどなんとととととととと!!!!!!!」
狂人と、目が合う。
「怠惰デスね?」
見えない力で首が捻じ切れる私。
「試練は果たされました」
謳い上げる狂人。
「いずれワタシの身は、尊き魔女の身許へ辿り着いて傘下へ加わる!ワタシの信仰を、愛を! 捧げてきた時間を! 尊き魔女へと!!!!」
右半身が氷の私。
左半身が炎の私。
「・・・は?」
捻じ切られたはずの首が、顔が、目が、真っ直ぐに狂人を射抜く。
「いきなり首を捻じ切られたのはこれが初めてね、魔女教徒」
―――そしてさようなら。
―――平等を、公平公正を、お前に。
「ッッ『怠惰』なる権能ぉお!!!見えざる手。デス!!!」
半魔の身体をすり抜ける『手』。
「ありえ、ない」
『手』が全部奴の身体を突き抜けてしまうぞ!?
いやいやいやいあいあいあいや。
否!
首を捻じ切ったのに生きていたのは己が怠惰であったからだ。『手』が通じないのは己が怠惰であるからだ。
怠惰怠惰怠惰!!!!
己は勤勉で勤勉で勤勉で勤勉で、なければならない!!!!
なのに。
「ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないのデス! ただの!半魔が!半魔風情が!このような……このような力を持つなどありえないのデス!このような力は……」
―――まるで。
「そういえば、自己紹介をまだしていなかったわね。魔女教徒」
優雅に一礼する、氷炎。
「私は、エミリア。この国の王となる者。この世の絶対を、唯一無二を皆に与える者。 またの名を、」
―――曰く、その身体は氷で出来ていた。
曰く、その身体は炎で出来ていた。
曰く、その身体を傷つける事は叶わず。
曰く、その身体は自然の摂理そのものであり。
曰く、人々は皆平伏し、魔ですら頭を垂れたという。
その姿に。その氷炎に。
曰く、万物の王。自然の主。氷炎の将。
ここルグニカ王国が龍と契約する以前。龍と剣聖が嫉妬の魔女を封じる以前から、この国には一つの伝説が語られていた。
口に出す事すら憚られるその名を、
――「フレイザード」――
と言った。
◇
私が生まれた意味とは何なのだろう。
その真実に辿り着こうとした時、私の身体は炎と氷に変化した。
氷炎を纏っているのではない。氷炎が身体を覆っているわけでもない。
氷炎そのものに、私はなっていた。
『それは、』
現れる、火を司る大精霊。
『君こそが、僕の主だ。氷炎の将。自然の主よ』
平伏する、パック。
―――唯一無二を与える。それこそが、私が生まれた意味なのだ。
手始めに、住んでいる大森林を全部全部氷付けにした。
その方が静かだから。
次に、ガヤガヤと喚いて氷の森に近づいてくる者を、手品を見せて近付けなくさせた。
「ア…」
「ル…」
「ゴー…」
「ア…!」
両の手の指は計十本。その内の五本の指先に炎を。
精霊を従える私が、精霊より弱いとでも?
「五指爆炎弾」
この洒落た手品を、フィンガーフレアボムズと名付けよう。
―――私の名はフレイザード。全ての記憶、全ての存在、全ての次元を消し。
嗚呼、与えなくては。
唯一無二を。
この世の絶対を。
公平を。
公正を。
平等を。
遍く世界に。
この私が。
―――そして私も。
◇
白が支配する氷の世界。
それがここ、メイザース領当主邸内だった。
「この姿のリアに太刀打ち出来るのは、今の剣聖だけじゃないかな?」
剣聖ラインハルト・ヴァン・アストレア。
デタラメの塊、騎士の中の騎士、公式チート。
確かに彼ならば氷炎の将に一太刀浴びせられるだろう。戦えるだろう。勝てるだろう。
そして負けるだろう。
「小細工が通じない相手、圧倒的な存在。それがもし二人いたら、どちらが勝つと思う?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「質問に答えて欲しいなあ。まあ、無理か。口がきけないし、」
魔女教大罪司教『怠惰』担当、ペテルギウス・ロマネコンティ。
上半身が氷と化し、下半身が燃え盛る炎と化していた彼は、
「もうこの世にいないしね」
既に跡形も無かった。
―――ゴーア系とヒューマ系の魔法。炎と氷。メラとヒャド。ファイアとアイス。
これらは熱量という分野において同じ系統の魔法。熱量をプラスに働かせるかマイナスに働かせるかで分かれるだけ。
では、これら二つの魔法を同時に同規模に展開し、合体させて敵にぶつければ、何が起こるだろうか?
答えは。
「 極大消滅呪文 」
時間が止まっている存在すら跡には何も残らない、一つの極大魔法が生まれる。
「何も残らないのね」
己が放った魔法の威力を、実感する私。
このデタラメを放ち続ければ、この国は、この世界は、文字通り消えて無くなるだろう。
この私が唯一無二を与えるんじゃない。私自身が、唯一無二になる。
つまりそれは、
「・・・リア?」
己の願いが叶うという事だ。
「パック」
アルゴーア、アルヒューマ。
「やっと願いが叶ったよ、わたし」
二つ合わせて、己に向けて。
「 メドローア 」
・・・やっとやーっと、唯一無二を自身に与えられる。ここから消え去れる。
これが誰にも必要とされていない誰も信用していない私エミリアの、本当の心。
『俺とデートしようぜ、エミリアたん』
綺麗な思い出だけを供にして、そしてわたしも消えよう。
えいえんに。
「――もう、遅すぎたよ」
白だけが支配する世界で、温度を失った呟きが死にゆくナツキ・スバルに響いた。
例えばこんなエミリアたん
終
◇
『これが、アナタが怠惰であった結果デス』
『・・・・・・』
『アナタは傲慢にも一時の気分に身をゆだね、彼女を傷付けた。その結果がこれデス。嘆かわしい。くだらない。なんと女々しいことか。男の王道とは程遠い』
『・・・・・』
『氷と炎そのもの?自然の主?氷炎将軍?何デスかそれは?何なのデス?この世間知らずなだけの彼女がまるで化け物デスよ』
『・・・・』
『しかし、彼女はアナタに会えた』
『・・・』
『アナタと出会い、交流した。その真実は変わりません』
『・・』
『アナタ、何度も死に戻りをしているそうデスが』
『――』
『こうは考えなかったのデスか?死に戻ったのは、それが真実ではなかったからだと』
『―』
『真実から出た誠の行動は、決して滅びはしません。生き残るのは、この世の「真実」だけなのデス』
『ぉお』
『あの子に、アナタの「真実」を聞かせてあげなさい』
『ぉおお』
『ワタシに出来るのはこれくらいデス。では、アナタと彼女に幸多からん事を』
『ぉおおおおおお!!!』
彼女を想う、彼女を救う、彼の奇跡のリスタート。
『その時、不思議な事が起こった。 なんて、陳腐過ぎますかね』
所謂、キングストーンフラッシュ!!
―――我が身の怠惰をお許し下さい。
例えばこんなエミリアたんとスバルくん
『 愛をこめて花束を 』
「・・・バルス?」
村人の避難と有象無象共の撃滅の為に出撃していたラムの眼前に現れたのは、後輩の使用人見習いのようだった。
「何をしているのバルス。早く逃げなさい。今はバルスの相手をしている暇は無いのよ」
襲い掛かる、魔女教徒。
「大丈夫だ」
倒れる魔女教徒。
「・・・え?」
あれだけ大勢いた敵が、
「エミリアは屋敷か?」
「え、ええ。そうだけど・・・、貴方誰?」
「この辺りの敵は全部片付けたから、ラムは村の人達を見ててくれ。屋敷には俺が行く」
「だから貴方、誰? バルスじゃ・・・ないわよね?」
「俺はロズワール邸の下男。そして、貴女の後輩」
それだけ言うと、男は屋敷に向かって走っていった。速すぎて、黒くなる男。
日の光を一身に浴びて、まるで、
「太陽みたい」
◇
「 メドローア 」
「さ゛せ゛ね゛え゛!!!」
氷炎の将に体当たり。魔法の発動を何とか食い止める。
「・・・邪魔を」
「悪いが、自殺なんてそんな事はさせない」
「あなた、誰? 知り合いに似た声で、変な格好して顔を隠して。顔を見せなさい」
「とってみればいいだろうよ。出来るもんなら」
「…あなた、面白いわね」
―――五本の指先に炎、もう五本の指先に氷を展開合体。
「私の願いの成就の前に、あなたに与えてあげましょう」
この世の唯一無二を。
「俺の願いの成就の為に、あなたに贈ろう」
この世の唯一無二を。
「 極大消滅呪文 」
「 好きだよ、エミリア 」
◇
―――お前はあの魔女と同じ半魔!
―――銀髪のハーフエルフ!!
―――死に晒せ!!!
暴言、暴力、暴行。
私が一体何をしたっていうの?
―――てめえら半魔は、生まれてきた事が罪だ!!!!
―――俺とデートしようぜ、エミリアたん。
―――二人で一緒にお出かけして、同じもの見て、同じもの食べて、同じことして、同じ思い出を共有するってこと。
―――そんな事が、いいのさ。
「好きだよ、エミリア」
消え去る極大呪文。
「エミリアが好きだから、俺は君の力になりたいんだ」
消え去る氷炎。
「ひどく遠回りしちまったけど、エミリアが誰になんと言われて、自分で自分をどう思っていようと、俺は君が好きだよ。大好きだ。超好きだ。ずっと隣にいたい。ずっと手を繋いでいたい」
男の『唯一無二』を贈られ、
「俺は君をそうやって、俺の『特別扱い』したいんだ」
「そんな、事で、い、いいの・・・?」
そこにいるのは、
「そんな事が、いいのさ」
泣いている、ただの世間知らずな天使だった。
――『フレイザード』――
伝説によればそれは、空の技というもので倒されたという。
邪悪のみを断つ、光の剣で。
エピローグ
『まあ、アナタにしては上出来デスね』
『…ありがとよ』
『しかし良かったのデスか?この世界のナツキ・スバルはレムという青鬼にゾッコンなのでは?感謝という一念に没頭した彼は、エミリアにちゃんと贈ってくれますか?愛を』
『・・・大丈夫だろ』
『沈黙が先ほどより長かったデスよ?』
『あ、ほら!白鯨を倒して皆屋敷に着いたみたいだぜ!しかしアホみたいな方法で白鯨倒したな俺!!』
『…アナタも大概だと思いますデスよ』
『あ』
『あ』
『・・・両手に花で羨ましい事デス』
『両手が千切れそうだぞオイ』
『・・・君は光の戦士だー。胸には花、心に愛ー』
『誰かが君をー愛してるーってか?やかましいわ!!!』
―――巡りめぐる世界を超え、いつも貴女の所へと。
この心はいつも、貴女の所に舞い戻る。