銀輪蓮廻魂≼⓪≽境東夢方界   作:カイバーマン。

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#11 会宴

博麗神社では度々宴会という者が開かれる。

宴会といっても数十人集まって夜通し騒ぐとかいう訳ではなく、八雲夫婦が博麗霊夢の所に来て労いがてらにご馳走を与える、いわゆる定期的な餌付けだ。

そこに霊夢の古き知り合いである霧雨魔理沙が来るようになったので宴会と称して他に暇そうな連中を呼ぶ様になったのだ。

ちなみに呼んでも滅多に来ないが森近霖之助が来る事もある。

 

「デカァァァァァ!! コレが前に言ってたアンタが釣って来た巨大魚!? マジでデカいわね!」

「ああ、そうだコレは俺が釣り上げてしまった……」

 

神社の庭に置かれた巨大なオブジェに見えてもおかしくない程の巨大魚。

それを見て早速霊夢が口をあんぐりと開けて驚いてる中、釣った本人である八雲銀時と、とある事情を知っていた霧雨魔理沙は沈んだ表情で

 

「雪美だ……」

「兄貴達はお前の分まで懸命に生きてるだろうさ……」

「なんでアンタ等そんなにテンション低いの?」

 

数日前から氷漬けにされている魚を見つめながら何か呟いている二人を不審そうに眺めながら霊夢が首を傾げた後、二人に向かって話しかける。

 

「それよりアンタ等もっと食べ物持って来たでしょうね」

「んだよ、雪美だけじゃ足らねぇっていうのかよ」

「お前は雪美を食ってなお更に暴食の限りを尽くす気なのか?」

「なんで睨んで来るのよアンタ等……ていうか魚に名前付けてたの? どんだけ愛情持ってたのよ」

 

食べ物催促しただけで急に怖い顔で睨み付けて来る二人に霊夢が若干戸惑っていると、銀時はムスッとした表情で

 

「持って来いって言ったってそんなの最低限のモンしか持って来てねぇよ、酒なら一杯あるけど」

「私もつまみになるキノコしか持って来てないぞ」

「酒とつまみもいいけど、それじゃあ腹膨れないのよねぇ」

 

どうせこの巨大魚も全員で群がればあっという間に平らげてしまうであろう。

もうちょっと食べるモノが欲しいと霊夢は「う~ん」と腕を組んで悩んでいると。

銀時と魔理沙が同時に「あ」と何かを思い出す。

 

「そういえばお前と料理対決するの忘れてたわ」

「私も今思い出したところだ、そうだな丁度いい。ここでやっておくのも手だな」

「料理対決? アンタ等なんか最近妙に仲良くなって来たわね、周りでギャーギャー喚きながら喧嘩されるよりはマシだけど」

 

二人でそんな約束事をしていたのかと霊夢はあまり関心なさそうに眺めていると、二人は山の方へ歩き出す。

 

「じゃあ俺はセミの抜け殻取って来る」

「私はゴキか、香霖からホイホイ借りてくれば良かったな~」

「ってちょっと待て!!」

 

なにか料理に使う物とは思えないモノをハンティングしに行こうとする銀時と魔理沙を霊夢は慌てて呼び止める。

 

「なんでそんなゲテモノ取って来るのよ! もしかしてアレ!? 霖之助さんの店でアンタ達がやってた勝負事の続きみたいなモンなの!?」

「そうだよ、俺達の戦いはまだ始まったばかりだ」

「ちなみに審査員は霊夢だからな、腹いっぱい食わせてやるから感謝しろよ」

「んなモン食わされたら感謝どころか憎悪しか湧かないわよ!!」

 

また余計な事を巻き込むつもりだったのかと霊夢は怒鳴り声を上げながら二人の方へ駆け寄ってジト目で睨む。

 

「もういいからアンタ達はジッとしてて、どうせ紫も来るんだろうし藍も来るんでしょ。食べ物関連はあっちに任せるから。アンタ達はもう何も余計な事はしないで頂戴」

「ワガママな奴だなホント」

「全く、自分勝手で嫌になるわ」

「アンタ達本当に仲良くなったわね」

 

二人で顔を合わせてヒソヒソと会話している光景を眺めながら霊夢が呟いていると神社の庭に入って来る二つの人影が

 

「あ! 銀ちゃんいたアル!」

「ハッハッハ! あたいがやって来たよ感謝するんだね!」

「何よ今度は、妖怪と妖精って……アンタの知り合い?」

「雪美釣り上げる時に助っ人してもらった奴等だよ」

「ふーん」

 

やってきたのは夜兎族の神楽と妖精のチルノ。銀時と一緒に巨大魚を釣り上げ、更に冷凍保存までさせてくれた功績者だ。

しばらく見ない内に随分と仲良くなったのか二人揃って宴会にやってきたらしい。

初対面であった霊夢は近づいてくる彼女達を怪しむような視線を飛ばす。

 

「アンタ等ウチの神社内で勝手な真似するんじゃないわよ、もし変な事でもしたら即退治するからね」

「お前が銀ちゃんが言ってた薄命の味噌アルか」

「どんな味噌よ、博麗の巫女よ、巫女」

 

思いきり言い間違いをする神楽にすぐ訂正して霊夢は言い直す。

 

「それと悪いけどここの宴会に来るっていうなら食べ物はちゃんと持って来たでしょうね、妖怪だろうが妖精だろうがウチのルールにはちゃんと従って……」

「へー夜兎族に妖精か。変わった組み合わせだな」

「あ! あたいアンタの事見た事あるよ! たまに箒に乗って凄いスピードで空を飛び回ってたでしょ!!」

「箒に乗って飛ぶアルか!? すげー!」

「私は魔法使いだから当たり前だぜ」

「聞きなさいよ人の話!」

 

自分をほったらかしにして魔理沙と喋ってる神楽とチルノ。ナメた態度を取られて霊夢がイライラしていると彼女の下に銀時が歩み寄ってなだめに入る

 

「気にすんなよ、幻想郷でまともに人の話聞く奴なんて滅多にいないんだから」

「アンタが言うな」

「お前も言うな」

 

基本的に幻想郷の人間というのは何故か基本人の話を聞かない輩が多い。その為喧嘩やトラブルももはや日常茶飯事、無論、銀時と霊夢も同じ類のタイプである。

 

「人が増えても食べ物が増えなきゃ宴会の意味無いじゃないの。どうしてくれんのよ勝手に変な奴等連れ込んで」

「何言ってんだ人が増えて盛り上がるから宴会の意味があるんだろ。それともお前は一人ぼっちで豪勢な食事を食い続ける方が幸せって言うのか?」

「当たり前じゃない、なにわかりきった事聞いてんのよ」

「ごめん聞いた俺がバカだった」

 

正論を説いたつもりなのだが、人付き合いに対して全く積極的ではない霊夢に言っても無駄だという事を忘れていた銀時。

せめて魔理沙だけでなくもうちょっと他人とくだけた関係になってもらいたいものだと、後頭部を掻きながら銀時がため息を突いているとタッタッタと誰かがこちらに駆けて来た。

 

「あ、良かった銀さん来てたんですね。誰もいないと思ってたら庭の方だったんですね」

「なんだ新八、やっぱお前も来たのか」

「はい」

「誰よこのメガネ」

「人里で仲良くなった人間の新八って奴だ」

 

やってきたのは霊夢とそんな年も変わらないであろう眼鏡を掛けた少年。

誰?と小首を傾げる霊夢に銀時が後ろから教えてあげる。

 

「安心しろ、コイツは比較的まともに人の話聞くタイプだ」

「へーまだ絶滅してなかったのねそういう人」

「いやそんな人人里いけばたくさん会えますって……ってうわ! もしかして博麗の巫女!?」

「そうだけど何よ」

 

感心するように頷く霊夢に新八は返事をしようとする途中で彼女の恰好に気付く。

すると彼はすぐに彼女から距離を取る為後ずさり

 

「銀さん大丈夫なんですかそんなに近づいて! 食べられちゃいますよ!」

「誰が食べるか! 私は人間よ!」

「大丈夫だ新八、今のコイツは確かに腹は減っているがまだ人を襲う状態じゃねぇ。少しずつゆっくりと近づいていけ、だが視線だけは絶対に合わせるな」

「はい!」

「ちょっと人聞きの悪い事言わないでよ!」

 

警戒する様に、なおかつ銀時の忠告通り目を逸らさずに恐る恐る距離を寄せてくる新八に霊夢は叫ぶ。

 

「そりゃ確かにちょっと前に参拝に来たお客さんを空腹のあまり襲い掛かった事もあったけど! そん時は紫にこっぴどく叱られたから気を付けているわよ!」

「多分そん時に襲われたの僕です……」

「え、そうだっけ?」

 

虚ろな目で自分の方を指差す新八だが襲った霊夢の方はピンと来ていない様子。

 

「あん時はひたすら食べ物が欲しいという思いだけで動いてたから意識ほとんど無かったのよ、悪かったわね」

「空腹で意識が飛ぶってアンタ一体どこまで過酷な生活を強いられてんの!?」

「基本虫食ってるわ」

「平然ととんでもないモン食ってるの暴露したよこの娘!!」

 

真顔で虫食ってますと言うような女の子など初めて見た新八はやはり彼女はおかしいと再確認した。

 

「銀さん僕怖いです、よく見たら妖怪っぽい女の子や洒落にならないイタズラをする事で有名な妖精までいますし……まともな人いないんですかここ」

「んなもん幻想郷にいる訳ねぇだろ」

「……外の世界に住もうかな」

「んなもんウチのカミさんが許さねぇから諦めろ」

 

助けを求める新八を銀時は手で払うどころか完膚なきまでに叩き潰す。とどのつまり、彼は幻想郷で一生暮らし、今後もずっとまともでない者達と付き合っていかねばならぬという事だ。

 

「なんだろうな、この先の人生に全く希望を見いだせない実感がこの年になって湧いて来たよ……」

「アンタの希望とかそんなのでどうでもいいのよ、それよりなんか食材とか持ってこなかったのアンタ?」

「え? ああ、そういえば姉上からみんなに食べて貰えって無理矢理渡された物が……」

「重箱!」

 

落ち込む新八に早速食材を催促し始める霊夢、すると彼はなぜか申し訳なさそうに手に持っていた重箱を彼女の方に見せる。

 

「これで良かったら食べてもいいけど……あの、姉上の料理ってちょっと独創的だから食べたくなかったら別に……」

「食べるわよ!」

 

重箱であるからきっと豪華なモノがあるのだろうと霊夢は嬉々とした表情で新八が手に持った箱から蓋を取るとそこには

 

真っ黒い塊というべきかただの消し炭というべきか

名状しがたい物質が中にはあった。

 

「……なんか見てるだけで不安になる食べ物ね、どこの魔界の食べ物?」

「卵焼きなんだコレ、一応……」

「私の知る卵焼きは少なくともこんな禍々しい物体では無かった筈なんだけど」

 

あの霊夢でさえ食べる事に戸惑いを覚えるレベル、新八もこんなもの持って来てすみませんと言った表情だ。しかし霊夢はしばらく考え込んだ後すっと手に取る。

 

「まあ頂くわ、卵焼きって事は原料は卵でしょ。なら食える筈だわ!」

「ちょ! そんな簡単に姉上の料理食べようとしちゃダメだって!」

「私はコオロギだって食える女よ、こんなモン余裕よ」

 

止めに入ろうとする新八の制止を振り切って霊夢はなんのためいらもなくその卵焼き(?)をヒョイっと口にほおり込む。

 

「ぐッ!」

 

口に入れた瞬間彼女の舌に突然焼き爛れる様な痛みが走り出す。吐き出さなければ死ぬ、そんな警告が頭によぎるが、脳がそれを伝えて吐かせる前に。

霊夢の表情はみるみる青くなって

 

「がはッ!」

「霊夢ゥゥゥゥゥ!!!」

 

そのまま白目を剥いて後ろ向きにバタリと倒れて気絶してしまった。

最後に聞こえたのは倒れた自分に必死に叫ぶ銀時の声であった……

 

 

 

 

 

 

しばらくして霊夢はようやく目を開けると、目の前にあったのはこちらを覗き込む八雲藍の姿であった。

 

「大丈夫か」

「……」

 

後頭部に柔らかい感触があるなと思いながら霊夢はむくりと起き上がる。

どうやら倒れた自分を藍が膝枕してくれていた様だ。

ここは博麗神社の庭前の廊下、目の前にはもう誰もおらず、あるのはいつもの静かな夜。

 

「私確か、あれ思い出せない……なにかとてつもない事が身に起きた事は覚えてるんだけど……」

「もう平気か」

「まだ頭クラクラするけど、もう大丈夫よ……」

 

何故か頭が揺れるし耳鳴りもするが、霊夢はその場に座り込んで庭を眺める。

 

「私が意識失ってどんぐらい経ったの」

「まあ数刻程だな……」

「そういえばあの巨大魚の姿は何処にも見当たらな……もしかして全部食べたの!?」

「ああ、妖精が氷漬けにした魚を一旦解凍させ、私が捌いてそれを宴会に参加した連中が全部食べた、銀時とお前の友人の魔法使いは何故か寂しそうな顔をしながら一口も食べようとしなかったが」

 

余りにも残酷な仕打ち、ずっと朝から期待に胸を躍らせていたあの巨大魚を全て他の宴会参加者に食われたと聞いて絶句の表情を浮かべる霊夢。

しかしそんな彼女の横に藍がそっと大量に刺身の乗った大皿を渡す。

 

「かろうじてこれだけは残しておいた。お前の分だ」

「え!? 良かった残してくれたのね……アイツ等が全部食ったと聞いた瞬間、全員血祭りにしてこっから生きて帰さないとか考えてたわ……」

 

自分の分がちゃんと確保されていた事に霊夢は心底ホッと安心していると、背後にある部屋の襖を開けて銀時が現れた。

 

「あれ? お前やっと起きたの? 魚全部食っちまったぞアイツ等」

「どこぞの誰かと違って藍が私の分確保しておいて貰ってたわ、言っとくけどあげないわよ」

「あげると言われても食わねぇよ、てか食えねぇ……」

「魚嫌いだったっけアンタ?」

 

さっきからずっと魚に関しての事になると覇気が無くなる銀時。

しかし特に気にせずに霊夢は皿に乗った刺身を食べ始める。

 

「まあなんでもいいわ、食わなければ別に隣いても構わないわよ」

「どんだけ食い意地張ってんだよ、どっこいしょ」

 

そう言われたので銀時はスッと彼女の隣に座るとジーッと彼女の顔を見る。

 

「……何よ」

「いや」

 

 

 

 

 

「もう顔は虹色じゃねぇんだなと思って」

「ぶッ!」

 

仏頂面で呟いた銀時の一言に霊夢は思わず食べていた刺身を吐きだしそうにった。

 

「ゲホゲホッ! ど、どういう事よそれ!」

「いやお前が新八のねぇちゃんの作った卵焼き食った時は焦ったよマジで。まさかお前があんな事になるなんて」

「何それ!? ちょっと藍私に一体何が!」

「こっち向くな、また火でも噴かれたら困る」

「火噴いたの私!?」

 

顔が虹色になってたとか火を噴いてたとか、一体あの卵焼きを食べて自分の身に何が起きたのかと混乱していると。

てっきりもう帰っていたかと思っていた神楽と魔理沙が霊夢達の下へ駆けつけて来た。

 

「銀ちゃん魔法の森で例の儀式をやってきたネ! これで化け物巫女は鎮まったアルか!?」

「ああもう鎮まったらしい、これで元通りだ。ご苦労だったなお前達」

「まだ油断出来ないアル、二度目の時もこの巫女は上手く私達を欺いて騙し討ちしかけてきたし」

「儀式!? 二度目!? 騙し討ち!?」

 

駆けつけてはくるものの油断するなと霊夢を睨み付けながら拳を構え出す神楽。

そして魔理沙の方はドッと疲れたかのようにため息を突きながら

 

「ったくお前のせいで骨が折れたぞ霊夢、まさか魔法使いになってあそこまで高度な技術を要求される術を覚えなきゃいけないハメになるなんて……」

「何よ! 私が倒れている間に一体何を会得したっていうのよ魔理沙!」

「ちょっとこっちに顔向けるな、また毒の息でも吹かれたらさすがに対処できない」

「毒の息って何よ! 火じゃないの!?」

「あー第三形態の時は火だったかもな」

「第三形態!? 私そんなラスボスみたいな機能付いてないわよ!?」

 

魔理沙もまた警戒する様に後ずさりを始めるので霊夢がいよいよ訳が分からなくなっていると、今度は新八とチルノが

 

「銀さん持って来ました! 人間の里にあった貸本屋から無理言って借りて来ましたよ! ただこれ人間が読んだら発狂して死ぬらしいので銀さんや藍さんみたいな人外じゃないと読めません!」

「よし貸してみろ、確かに常人なら気が狂う程の禍々しい魔力を感じるな、だがこれでコイツの邪悪な魂を一気に浄化できる、もうバッチリだ」

「何よそれ! 何なのよその本! 何がバッチリなのよ! なんで私に向かって聞いた事の無い言語でブツブツ呟きだしてんのよ!」

 

汗だくで新八が持ってきたのは黒づくめの革表紙で奇妙な言葉が並べられた謎の書物。

それを手に取って急いで開くと銀時がこちらに向かって延々と霊夢が聞いた事の無い言語で呟き始める。

その間にもチルノが霊夢に向かって両手に持った大きな袋を取り出し

 

「あたいは霧の湖からありったけのカエルを獲って来たよ!」

「はぁカエル!? なんでそんなの持ってきたのよ!」

「ん? いやみんなが色々やってるからあたいも何かやっておこうと思って」

「てことはなんの意味もないんかい! いいわよそれ全部貰っておくから! 後で食う!」

 

袋の中でゲコゲコ合唱を始めているカエル達、霊夢に対しては特に意味は無い。ただチルノがノリで持ってきただけらしい。

霊夢がそれをぶんどって明日の昼飯にでもしようと考えいてた時、続いて現れたのは

 

「ようやく事が済んだ様だね、これで明日からも安心して自分の店を続けられるよ」

「ええ霖之助さん!? どうしてここに!? 今日の宴会に出席して無かったわよね!?」

「全く人騒がせな巫女ね、異変を解決する巫女が異変その物になってどうすんのよ」

「アリス!? アンタまでなんでいんのよ!」

 

いきなり出てきたのは森近霖之助とアリス・マーガトロイド。

今夜の宴会には足を運んでいなかった筈の二人まで自分が寝ていた間に駆けつけていたらしい。

ますます頭がパニックになっている霊夢を尻目に霖之助は眼鏡をクイッと上げながら

 

「いやはや新八君があの時機転を利かせてなかっらどうなっていた事やら、遅れてしまったが礼を言わせてもらうよ、ありがとう」

「何言ってんですか霖之助さん、あそこであんな発想を思いついたあなたの方が凄いですよ。礼を言いたいのは僕の方です」

「フ、それなら礼代わりに今度僕の店で買い物にでも来てもらおうかな」

「いいですよ、ただし高いもの売りつけようとしないで下さいね」

「おっと企み事がバレてしまったかな」

「ちょっとなんでそこ仲良くなってるの!? 私が寝てる間に友情イベントまであったっていうの!?」

 

お互いに自分の眼鏡をクイクイッと上げながら健闘を称えている霖之助と新八。どうやら何かのキッカケで霊夢の知らぬ間に二人の間で友好度が急上昇していたらしい。

 

そしてアリスの方もまた銀時に向かって

 

「礼なんか言わないわよ、ドサクサに変な所触った事だって絶対に許さないんだから……だから貸し借りナシでチャラにしてあげるわ」

「ozennsginnnkotokinere……え、なんだって?」

「知らないわよ……バカ」

 

顔を赤らめながら小声で銀時に話しかけるアリスだが、書物を読み上げる事に集中していた銀時はよく聞き取れなかった様子、それに対しアリスは更に頬を赤く染めながらプイっと顔を背けてしまった。

二人の間に変な雰囲気が発生する。

 

「ちょっとぉぉぉぉぉぉ!! まさかこっちではフラグイベントがあったの!? 難聴主人公とツンデレヒロインみたいなテンプレ会話までしてるし!!」

 

そんな甘ったるい光景を見せられて霊夢は「紫に言いつけるわよ!」と銀時の頭をゴンと拳で殴っていたその時。

 

「何はともあれこれで全部解決って訳ね」

「って紫いたの!?」

 

先程銀時が現れた後ろの部屋から今度は八雲紫が出てきた。

 

「さっきから後ろの部屋にずっといたわよー。藍、宴の準備はまだかしら」

「は、すぐに行いますのでお待ちを」

「ああそれと、博麗の巫女」

「な、何よ」

 

どうやら後ろの部屋で何かが始まるのを待っていららしい。

藍に命令して速やかに彼女を動かすと、紫は霊夢を見下ろしながら

 

笑みを浮かべながらも目は笑っていない表情で

 

「次私にあんな口叩いたら別の巫女探すから」

「な、なんか物凄く怒ってない!? 私一体アンタに何言ったの!?」

「それじゃあ異変解決の祝いを始めましょうか」

「だからさっきからなんなのよ! どうして誰も私の身に起きた事はっきり答えてくれないのよ!!」

 

紫の態度がどことなく冷たく素っ気ない事にますます不安になる霊夢。だが皆は彼女を無視して続々と神社の中へと上がって行く。

 

「はぁ、霊夢のおかげでクッタクタだぜ、私もう二度とあんな目に遭うのごめんだからな」

「さすがに私も目からビーム撃ってきた時は焦ったアルな」

「あたいは焦ってないからね! 頭に角が生えて来た時はちょっとビックリしたけど!」

「やれやれ店の商品をほとんど霊夢に食べられてしまって、今日は本当に散々な日だ」

「全くよ、私も家を引っくり返されそうになって今日は散々……まあそれなりに悪くない事もあったけど……」

 

魔理沙、神楽、チルノ、霖之助、アリスと続々部屋へと入っていく中で、新八は呆然としている霊夢の下へ近づくと

 

「全ては姉上の料理を食わせてしまった僕の責任だ……君は何も悪くない、気にしなくていいよ。アレはただの悪い夢だと思って忘れてくれて構わないから……」

「いや忘れるもなにも本当に覚えてないのよ! てかもしかして私あの変なの食ったせいで何か体に異常が……!」

「しばらく銀さんが持ってる本に書かれた呪文で縛りつければ、元通りになれるってさ」

「ちょっと待って! アンタのお姉さん一体何者なのよホント! ねぇ!」

 

何か可哀想なモノを見る目をしながら優しげな口調で話しかけてきた新八に霊夢が説明してくれと言い寄るも、彼はそれを避ける様にスルーしてみんなの下へと言ってしまう。

そこに残されたのは自分の身に何が起こったのか不安で仕方ない霊夢と、ずっと呪文みたいな言葉を呟いている銀時。

すると銀時はやっと呟くのを止めて本をパタッと両手で閉じる。

 

「よし、これでお前の邪気は浄化された筈だ、これからは数日お前の所来て唱えてやっから。それまで神社で大人しくしてるんだぞ」

「ねぇ、私に一体何があったの……」

「心配すんな、もう全部終わった事だ」

 

残された銀時にすがる様に答えを求める霊夢だが、そんな彼女に彼は皆と同じく受け流して

 

「安心しろ、お前の事は赤ん坊の頃からずっと見てきたんだ、これからもキッチリ護ってやるよ。侍は一度決めたモンは絶対に守る生き物なんだぜ」

「……」

 

フッと笑いながら霊夢の肩を軽く叩いた後、銀時は黒い本を脇に挟んで立ち上がると皆の下へと行く。

 

「よーしじゃあ宴始めるかー。とりあえず酒持ってこい酒」

 

一人だけポツンと取り残された霊夢は

 

ゆっくりと銀時達のいる部屋へ振り返って

 

 

 

 

「良い事言って誤魔化そうとすんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!!一体何があったのよ私ぃぃぃぃぃぃ!!!」

「どわぁぁぁぁぁ! 霊夢がまたキレたァァァァァァ!!!」

「落ち着くアル! 落ち着いてまた頭の角を狙えば良いヨロシ!」

「まだ生えてないから第二形態だ! あたいに任せろ!」

 

みんなでわいわい酒やら何やら飲みながら騒いでる中で

霊夢が叫びながら殴り込みに入ると一層騒がしくなる

 

 

博麗神社の宴会

 

今日はまた一段と騒がしい夜になりそうだ。

 

 

 




これにて第一章ひと段落です。
キャラ紹介と世界設定の説明を交えたチュートリアル的な感じで幕を閉じますが、今後もこんな感じでグダグダに色んな連中とくっちゃべる展開が続くと思われます。

それと感想欄にて「どうしてわざわざタイトルバラバラにしてんの?」と尋ねられました。

確かに作品名も話のタイトルも全て順序バラバラになっておりますね。
コレは要するに二つの作品が混ざり合い歪になってしまい狂ってしまった世界観として意図的にそうなっております。
この作品、とあるホラー映画の主題歌をイメージした所があるので根はちょっとヤバいんですよ。

第一章は魔法の森や霧の湖で色んな連中と交流を交えた銀時

次章からはそうですね、妖怪の山にでも行くと思われます。

それでは


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