Aはい、別々で寝てます。いつからかはわかりませんが自然とこういった形になったみたいです。
夫婦ならそういうケースはよくある事です。
でもたまに同じ部屋で寝る事があるみたいですよ。
なんでかって?
夫婦ならそういうケースはよくある事です。
「ええ!? あの攘夷志士桂小太郎の組織を、銀さんと奥さんが一夜にして退治したんですか!?」
「まあ勝手に自滅しただけなんだけどなアイツ等」
「凄いじゃないですか! 伊達に千年生きてないんですねアンタ!」
「まあ、ただのバカだったからねアイツ等」
ここは人里、八雲銀時は行きつけの団子屋で団子をほおばりながら、隣にいる志村新八に前回で起こった話をしている真っ最中であった。
そして新八と反対方向で銀時の横に座っているのは、たまたま山から下りて来て銀時達と出くわした神楽である。
彼女もまた銀時以上に団子を食べ尽くし、既に皿がみるみる上乗せされて団子屋のオブジェと化していた。
「ゲプ、銀ちゃんも中々やるアルな、いずれ私と最強の座を賭けて戦う日もそう遠くねぇゾ」
「奢って貰ってるクセにどんだけ上から目線なんだよお前は。つーか食い過ぎだろお前、暴食妖怪として退治してやろうかコラ?」
「フッフッフ、この程度ではまだ腹三分にも満たないネ。さぁて次はどこの店に連れてってくれるアルか?」
「連れてかねぇよ、オメェが腹膨れる前にこっちの財布が萎み切るわ」
大きくなったお腹をさすりながらムフフと不敵に笑って見せる神楽に銀時はしかめっ面を浮かべた後、新八の方に向き直る。
「まあこれで当分の間は攘夷志士騒動なんてモンは起きねぇってこった。連中は確かにバカだったが妖怪と人間のバランスが崩れる要因となったかもしれねぇしな、妖怪なら霊夢に任せるけど、ああいう元人間が無闇に暴れられると俺や紫が困るんだよ」
「妖怪に食われた人間が恨みを持って亡霊化するなんてあるもんなんですね……」
「亡霊スタンド程度なら可愛いモンさ、恨みを持ちすぎると悪霊スタンドに成り果てる事もあり得るからな」
人の恨みというのはこれまた厄介なモノであり、それ等を完全に浄化しきるには仏や神でさえ難しいと聞く。
悪霊など特にマズイ、既に死んだ存在であるので殺す事は出来ず、成仏させようにも根本的なモンから排除しないと決してこの世から消える事は出来ないのだから。
「そうなっちまったら俺でさえ完全に仕留める事は容易じゃねぇ」
「あれ? てことはその桂小太郎って悪霊も?」
「一応冥界の主の所に送って行ったが……どうせすぐひょっこり戻って来るだろうなアイツの事だし」
桂小太郎もまた銀時達では消滅できず、仕方なく霊を集め輪廻へと導く為に、冥界の主のいる白玉楼へと彼も一緒に連れて行った。
ちなみにその時冥界の主である西行寺幽々子はやけに機嫌が良かったらしい。
「冥界の主って何アルか? そんな奴とも銀ちゃん知り合いだったアルか?」
「冥界の主つっても基本はのほほんとしたお嬢様って感じだけどな、ちなみにその悪霊に恋する乙女だ。オメー等もいっぺん死んでみれば会えるんじゃねぇか?」
「いや遠慮しておきます、僕まだ若いんで……亡霊といい冥界といい、本当幻想郷って不可思議な存在が多いですよね」
「だからこそ幻想郷なんだよ、そういう現世で忘れられた存在が集まる場所なんだからここは。ま、俺は大抵のモンなら全部わかるからなんでも答えてやるよ」
神楽と新八に得意げに説明しながら団子をまた一口頬張る銀時だが、ふと人通りを歩いている何者かを見つけ目を細める。
幻想郷に長く住んでいる彼でさえも何者かわからない程の存在がそこにいた。
それは一見アヒルのような黄色いクチバシをしているのだがきっとアヒルではないと断言できる。
一点の汚れも無い真っ白な見た目、見てるだけで吸い込まれそうな不思議な目をしたその生物はただこっちをジーッと見つめて来ていた。
「……何アレ?」
「え、何かあったんですか……何アレ?」
「何アルかアレ?」
三人がそちらに視線を向けて同じ事を呟いて顔をしかめると、その生物はかなり大きな図体の割には軽快なステップでこちらへ歩み寄って来た。
そして三人のすぐ目の前に立つと再びこちらを凝視。
「え、ちょっと待って、さすがにコレは銀さんも知らないんだけど? 妖怪? それとも神様の一種?」
「怖いんだけど、何も言わずにずっとこっちを見つめて来るんだけど……銀さんちょっと何か言ってみて下さいよ」
「確かエジプトにこんな神様がいたような気が……いやでもまさかエジプトから遥々こんな所まで来るような神様なんていねぇだろうし……」
「なんか私達というより銀ちゃんをガン見してるみたいアルヨ、おい天パ、お前神様怒らせたんじゃネーカ?」
「いや俺エジプト行った事ねぇんだけど、あのーすみませんなんか人違いしてませんか? 俺別にピラミッドで墓荒らしとかしてないんで」
新八は頬を引きつらせ、神楽はキョトンとしている中、銀時は恐る恐るその生物に話しかけると
その一点の曇りもない表情をしたまま彼(?)はヒョイッと一枚のプラカードを取り出した。
そこに書かれているのは
『桂さん知りませんか?』
「……ヅラ? ってかもしかしてそれが会話方法なの?」
「桂さんってさっき銀さんが言ってた悪霊ですよね、確か冥界に行ったんじゃ……」
どうやら言葉を使わずプラカードのみで会話を成立させる生物らしい。
怪訝な様子を浮かべる銀時にまたもやスッとプラカードを提示
『白玉楼にはもういません、ついさっきこの人里に再び降り立ちました』
「はぁ? アイツもうコッチ戻って来てんの? 幽々子の野郎ちゃんと見張っておけよ……」
『彼女はもう2~300年居てもいいとおっしゃたのですが、桂さんがどうしても下界に戻りたいと……』
「なんだコイツ、随分と詳しいじゃねぇか、ひょっとして白玉楼にはびこるスタンドか?」
やってみると以外と会話出来るモンだと思いつつ、どうやって瞬時に台詞をプラカードに書いているのだろうという疑問も浮かぶが、ツッコむのも面倒臭いので銀時はひとまずこの生物の正体を見極めようとしていると
「おーエリザベス! ここにいたのか探したぞ!」
『桂さん!』
「げ! お前!」
人込みの中から一際デカい声を出してこちらに向かって駆け寄って来たのはまさかの悪霊・桂小太郎。
いきなりの彼の登場に生物はすぐ様振り返り銀時もまた思いきり嫌そうな顔を浮かべた。
「ヅラ、テメェまたこっち戻って来やがったのか、いい加減成仏しろバカヤロー」
「ヅラじゃない桂だ、先日は世話になったな銀時。まさか突然気を失い目が覚めた時にはまた幽々子殿の屋敷で厄介になるハメになるとは。恐らく国家転覆を図る我等へ八雲紫が刺客が送り奇襲をかけてきたのだろう、くッ!」
「くッ!じゃねぇよ、まあおおむね間違ってはねぇけど」
どうやら前回の時に桂は気を失った事や部下達が全ていなくなってしまった事も全て自分達を狙った刺客がやった事だと判断しているらしい。
正確に言えばそれは銀時なのだが、やはりというかさっぱりその事に気付いていないのである。
銀時はそんな昔馴染みに呆れながらも髪を掻き毟りながら彼の隣にいる生物へ視線を泳がした。
「で? なんだよこの化け物、すっげぇ気持ち悪いんだけどお前のペット?」
「気持ち悪くないエリザベスだ、化け物などとそんな事を本人の前で言うな」
「エリザベス~?」
奇妙な生物=エリザベスだと聞いて銀時は首を傾げる。
そんな名前の生き物、幻想郷に長く滞在しているが聞いた事も見た事も無い。
「どこで拾ったんだよこんなの、なんか危なそうだから元いた場所へ捨てて来なさい」
「お母さんかお前は、エリザベスは幽々子殿から直々に賜った俺の新しき相棒だ、害はない」
「いや単体だとそうでもないけどお前とセットだと気持ち悪さが増すんだよ、てかお前が気持ち悪い」
「祟り殺すぞ貴様」
エリザベスに不信感を募らせ更には自分にも毒を吐いてくる銀時に桂が即座に脅しをかけていると、彼の話を銀時と一緒に聞いていた新八がふと気になった事があった。
「銀さん、桂さんの言ってた幽々子殿って人が冥界の主なんですよね? 桂さんに恋してるとかいう……」
「ああ、それがどうかしたか」
「さっき桂さん、このエリザベスって生き物、その幽々子さんから預かったみたいな事言いませんでした?」
「……幽々子がこのバケモンを?」
新八の言葉を聞いて銀時はエリザベスの方へ振り返ると眉間にしわを寄せる。
「アイツこんなの飼ってたっけ?」
『飼われてました』
あの屋敷には何度も足を運んでいるがこんな生物一度も見た事が無い、もし一度でも見ていれば絶対に忘れないであろうし、下手すれば一生夢の中に出て来そうなインパクトだ。
しかもエリザベス本人が自ら飼われていたとプラカードで主張するので、ますます胡散臭い。
「おいヅラ、お前コレ本当に幽々子から預かったのか? 俺こんな奴アイツの屋敷で見た事ねぇぞ」
「ヅラじゃない桂だ。幽々子殿から預かったのは本当の話だ、エリザベスとの出会いは下界へと降りる際、俺が屋敷を後にしようとした時に、幽々子殿から少し待って欲しいと言われ、玄関でしばらく待っていた時だ」
疑り深い銀時にムッとしながら桂はエリザベスとの運命の出会いを腕を組みながら語り始めた。
「そうしていると廊下をドスドスと歩いてエリザベスがやってきたのだ、そしてプラカードを取り出し『幽々子様の命令で、あなたのお傍に仕わせて頂く事になったエリザベスです』とご丁寧に自己紹介され、ちょうど部下も全て失っていた俺は幽々子殿のご厚意に甘えてこの者と共に下界へと降り立ったのだ」
「アイツ、ヅラに惚れてるからって甘過ぎるんだよ……コイツ悪霊だぞ? 本来地獄に叩き落とすべき存在ナンバーワンだろうが……」
幽々子が実の所、桂に対して特別な感情を持っている事は以前屋敷へ伺った時に直接本人に聞いた。
だからといってこの危険な悪霊を野放しにした挙句下界に降ろさせて、更にはなんだかよくわからない生物まで仲間として連れて行かせるとは……
「一度坂本の所へ行ってこの事相談した方がいいな……いや相談するならアイツの嫁さんの方が適任か……」
「何はともあれ俺は無事に攘夷志士として幻想郷を生まれ変わらせるという野望を胸に再びこの地に舞い戻ったのだ、そして新しき仲間、エリザベスとな」
『はい、桂さん!』
「ううむこうして見ると中々可愛げのある見た目をしているではないか、俺は流行には疎いとよく言われるがコレがきっと今流行りのゆるキャラという奴なのではないか?」
「幻想郷ご当地のゆるキャラとしては絶対に認知しねぇからなこんなモンスター」
まじまじとエリザベスを見つめながらフフッと笑う桂に銀時がけだるそうにツッコミを入れていると、
『……』
「む? どうしたエリザベス、急に背を向けて」
不意にエリザベスがクルリと振り返り桂に背を向けてしまった。
「一度お前をじっくり観察してみたかったのだ、もっとちゃんと見せてくれ」
『いや……さすがにそんないきなり……』
「ん? どうしてそんなに体を震わせているのだ? まさか見られて恥ずかしい訳ではあるまい」
『ごめんなさい……こういうの初めてなもので……』
急におかしな態度を取るエリザベス、プラカードに書かれてる文字も震えていて、大きな体も何やら恥ずかしそうに縮こませてしまう。
そんな態度を見て銀時はふともしや?と妙な予感が頭をよぎる。
「ヅラ……その生物幽々子から預かった時、幽々子も傍にいたか?」
「幽々子殿? いやいなかったぞ、俺を玄関に待たせた後幽々子殿は奥の部屋へと向かい、しばらくしてその部屋からエリザベスが俺の元へやって来たのだ」
「……」
予感がそろそろ確信へ迫りつつあると、今度はバタバタ慌てた様子で何者かがこちらに駆け込んで来た。
「銀時さん!」
「あ、妖夢、丁度お前を呼ぼうとしてたんだ、どうした?」
現れたのは普段は滅多に人里には下りてこない幽々子の従者、魂魄妖夢。
慌ただしそうに銀時の方へやってくるが、彼に向かって何か言おうとする前にふと銀時の前にいた桂が彼女の視界に入る。
「桂! あなたやっぱりこっちに戻って来てたのね! 私が見てない隙に幽々子様をたぶらかしておいて更にまた下界に逃げるなんてよくも!」
「ほぅ、白玉楼の従者殿ではないか、また俺にコテンパンにされに来たのか? 剣での勝負ならいくらでも付き合うぞ」
「く! 嫌な事を思い出させる……! いや今はあなたの相手をしている場合じゃなかったわね……銀時さん少しお話したい事が」
強い敵意を剥き出しにしてくる妖夢に対し桂は余裕綽々と言った態度で笑みを浮かべている。
どうやら白玉楼では何度も幽々子絡みの件で彼女と交戦し、それら全てに打ち勝ったような感じだ。
この男、一見ただのアホなのだが伊達に銀時と共に妖怪退治を行い、生前には英雄と呼ばれる程の猛将であった訳ではない。
彼の挑発に一度は一戦交えようと腰に差す刀に手を置こうとするが、今はもっと大事な用があると妖夢は銀時の方へ改めて振り返った。
「実は幽々子様が……先程から屋敷でお見えにならないんです、探してもどこにもいなくて心配で……」
妖夢のその言葉にエリザベスがギクリと僅かに動揺した様に動いたのを銀時は見逃さなかった。
「だから銀時さんの能力で見つけて欲しくてどうか協力してもらえませんか?」
「……俺の力使うまでも無ぇんじゃねぇかな?」
「え?」
「妖夢、このヘンテコな生き物、お前知ってる?」
スッとエリザベスを指差し銀時が質問すると、妖夢は振り返り始めてその生物と目が合った。
「いえこんなちんちくりんな生き物とは初対面ですけど? ていうかなんなんですコレ? そもそも生き物なんですか? あ……」
何故か目を合わせようとしないこの不思議生物を、妖夢がジロジロと観察していたその時、ふと彼女はある事を思い出した。
「そういえば幽々子様が夜遅くまでこんな見た目をしたブサイクな着ぐるみをせっせと編んで作ってたような……ああ!」
その言葉を妖夢が呟いたと同時に
正体不明の生物エリザベスはクルリとこちらに背を向けて猛スピードで逃げ出した。
「なんであの生物いきなり逃げ……ってあぁぁぁぁぁぁぁ!!! まさかアレ!? 嘘ですよね!? そんなの嘘ですよね!?」
「どうしたんだエリザベス! 待ってくれ! 俺を追いて何処へ行くというのだ!!」
いきなり全力疾走して逃げ出したエリザベスの態度を見て妖夢は勘付き、そして悲鳴のような声を上げながらも追いかけ。
桂もまた行ってしまうエリザベスを慌てて妖夢と共に走り出す。
「待ってくれエリザベス! 俺の片腕としてこの腐った幻想郷を改革する事に手を貸すと言ってくれたではないか! エリザベス! エリザベスゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
「あなたはこんな事していい方じゃないんですよ! あなたは私が最も尊敬し忠誠を誓う御方なんです! これがあなたのやり方なんですか!? これがあなたなりに考えた愛の形なんですか!?」
何処へ向かって逃げ出しているのかわからないが、とにかくがむしゃらに走り去るエリザベスに必死に手を伸ばしながら桂と妖夢は一緒に後を追って行ってしまった。
その場にポツンと残された銀時は、しばらくした後両隣でこれまた彼同様無表情を浮かべている新八と神楽の方へ顔を向け
「よく覚えとけ、アレが恋愛経験ねぇ奴が自分なりに考えた不器用な愛情アピールだ」
「不器用過ぎますね、高倉健でもあそこまでいきませんよ」
「私は応援するアルよ、確かに不器用だけどあんな真似までして好きな男と一緒にいたいと思う所、嫌いじゃないネ」
新八と神楽はまた一つこの幻想郷で学んだ。
本気で愛を伝える想いは人同士であろうが亡霊同士であろうが関係なく
皆それぞれいろんな形で一生懸命伝えようとするのだと
残念ながらエリザベスの正体はいくら口の軽い私でもお答えする事は出来ません。
恐らく読者の方々は皆頭を捻りその正体がなんなのか考えておられるのでしょうに申し訳ない。
アレの正体は皆様が自力で解き明かしてくれることを切に願っております。