尺が足りなくて3話構成になっちゃいましたー、すんません。ということで中編スタート。
前回のあらすじ
洩矢諏訪子が宴会に参加できなかった事にむくれて妖怪の山を消滅させると宣言
真撰組が密偵、山崎退は急遽、今日の間に前以上の宴会を開かせなきゃいけない事に
頼みの綱として山崎、天狗の先輩である射命丸文へ救援要請
文は自分では何ともできないので幻想郷の管理人・八雲紫の夫である八雲銀時を利用しようと企む。
そしてそれから数刻後、夕方過ぎの守矢神社にて彼女に呼ばれた八雲銀時が現れた。
幻想郷がピンチだというのにいつも以上にけだるそうにしながら小指でを鼻をほじっていると、彼の腰に何者かが抱きつく。
「いやいやいや! さすがは八雲の旦那様ですねー! 懐も広ければ人望もこれまた厚い! さすがは幻想郷の裏の支配者と呼ばれるだけあって多くのメンバーを集めて来て下さったようで天狗一同おおいに感謝していますよー!」
「下らねぇ世辞はいいからさっさと飯なり酒なり持って来い、ぶっ殺すぞ」
上の者へヨイショする時に用いる敬語口調にチェンジしていつもの様に腹に一物抱えながらお膳立てしてくる文
長い付き合いのおかげで彼女の言ってる事に全く信用できない銀時は、そんな彼女の頭を掴んで腰元から引き離す。
「ったく博麗神社でのんびり昼寝してたらいきなりやってきたと思ったら、「幻想郷を脅かす異変が起きたから今すぐ宴会に参加できる連中を大勢連れて来て欲しい」とかほざきやがって……そんなのテメーでやりゃあいいだろうが」
「無理です! 私皆さんに信用されてないんで!」
「だよねぇ、一応言ってみた俺がバカだったよ、お前信じるなら松永久秀の方がよっぽど信じれるわ」
文の頭に手を乗せながら銀時はもう片方の手で無事に鼻から鼻くそを取り出してピンと小指で弾いていると
神社の方から彼の下へ一柱の神様が手を上げながらニコニコしてやってくる。
「やぁやぁ初めましてだね、アンタが幻想郷の管理人さん?」
「管理人は俺じゃなくて俺のカミさん、アンタが祟り神を操る洩矢諏訪子か?」
「いかにもその通り、しばらく幻想郷で厄介になるからよろしく頼む」
「おたくが大人しくいてりゃあ問題ねぇよ、ただ今回の騒動はちぃっとばかし問題だな」
自分の下へやって来た守矢神社の裏の支配者たる洩矢諏訪子の登場に対して、銀時は全くビビりもせずに慣れた様子で窘める。
「ウチにとって妖怪の山は人間とのバランスを合わせるだけじゃなくて他の妖怪のお目付け役も担ってるんだ。例え神様であろうとおいそれと簡単に破壊されちゃ困るんだよ、次またこの山吹っ飛ばそうと企んだら、そん時は容赦無く全員外の世界へ強制送還だからな」
「んー実に正論だが神という存在は年中大人しくしているとたまにうさ晴らししたくなる時があるんだよ、火山だってそうだろ? 少しは大目に見てやるのも下々の存在の務めだよ?」
仏頂面で説明する銀時を前にしてもなお、諏訪子は反省するどころか開き直ってる様子。
「ま、今日の宴会が約束通り豪勢な大宴会となれば、そちらさんの事情に頷いてあげても構わないよ」
「……俺本当に神様って奴が嫌い」
「どこまで上から目線なんですかねこのロリ神様は」
機嫌良さそうに笑顔を浮かべ、私を楽しませてみろと言ってのけるこの神様に対して、銀時と文が軽く苛立ちを募らせていると
「何よ豪華な食事と酒が用意されるっていうから来たのになんにもないじゃないのよ!」
「ほほー、この神社、霊夢の所の神社よりデカいし綺麗だな」
自分たち以上に苛立っている様子の巫女、博麗霊夢が食べ物がない事に腹を立てて現れた。
一緒に来た霧雨魔理沙は、そんな事どうでも良さそうにただ神社を観察している。
「お、よぉ霊夢の親父と鴉天狗、呼ばれたから来てやったぜぃ」
「あ? テメェは呼んでねぇよ、呼んだのは霊夢だけだコノヤロー、テメェはさっさと帰れバカヤロー」
「やれやれ、相変わらず私に対してはツンツンだなこのおっさんは。何時になったらデレるんだ、それはそれでキモいから遠慮するが」
「あなたは白黒魔法使いこと霧雨魔理沙……」
銀時と文が二人で諏訪子と話してるのを見かけたので、軽く手を上げて挨拶する魔理沙だが、銀時はしかめっ面で彼女を拒絶。
魔理沙の登場を見て文はふと思い出し、ハッと気づいた。
「そういえば噂で聞いたんですけどね八雲銀時さん、あなたここ最近どこぞの魔法使いと夜な夜な密会をしていると聞いたんですがそれってもしかして……ぐお!」
「俺がいつこんなガキと密会してるって……? 山が大変だってのに下らねぇゴシップネタ考えてるんだったらこの場で焼き鳥にすんぞ」
「いだだだだだ! アイアンクローは止めて! 頭スイカみたいに割れちゃいますからそれ!」
口元にニヤリと笑みを浮かべて文が銀時に尋ねようとした瞬間、すかさず銀時の手が彼女の頭を上から鷲掴みにし、ミリミリと音を立てて彼女の頭部に彼の指が入り込むのであった。
それを見ていた魔理沙は苦笑しつつ後頭部に両手を回しながら
「残念ながらこのおっさんの愛人の魔法使いってのは私じゃないぜ? そいつはア……」
「なにパパラッチに情報売ろうとしてんのよこの盗人魔法使い!」
「あだッ!」
突然魔理沙の背中に軽く蹴りを入れて黙らせる少女が一人。
背中をさすりながら魔理沙が後ろに振り向くと、魔理沙と同じく魔法使い、アリス・マーガトロイドがジト目を向けながら立っていた。
「全く、これだから私はアンタの事が嫌いなのよ、少しは他人プライバシーを守るとか考えられない訳?」
「んだよ人がせっかくおたく等の関係をオープンにしてやろうとあげたのに」
「オープンって何? 別に私とこの男はなんの関係も無いわよ、ただの友人程度でしかないわ」
「あれ? そうだっけ? 私はてっきりもうとっくにデキてるかと」
「そ、そんな訳ないでしょーが! 色々とあったけど健全よ健全! あんな奴の事なんかどーでもいんだから!」
魔理沙に対してムキになって頬をほんのり紅色に染めながらも全面的に否定するアリス。
そんな彼女を見て文は銀時に鷲掴みにされた状態のまま
「……あ、魔理沙さんじゃなくてこっち……ぐがががががががが!!!」
何かに勘付いたか様子を見せる文の頭を突然片手でなく両手で掴むと、上下に動かして激しくシェイクし始める。
「まいったな、記憶を飛ばす能力なんざ持ってねぇしどうっすかな、ああそうか、殺せばいいんだ」
「ええぇ! 旦那様目がマジになっておられますよ! すみません今記憶が飛びました! アリスさんの反応や言動を見て何かに勘付いたような気がしましたが忘れてしまいました! だから殺さずに生かしてください! 身体でも新聞でもなんでも売りますから!」
「いやその二つはいらねぇから」
そう言って文の頭からパッと両手を離し、彼女を地面に落として尻もち突かせる。
地面に座ったままの彼女に脅すように睨み付けながら銀時はペッと地面に唾を吐き捨てると、そそくさとアリスの方へと歩み寄ると、ポンと彼女の頭に手を置き
「やっぱりお前はそのままのお前が一番いいよ、今度から酒飲まずに素面で付き合おうや」
「や、止めてよいきなりどういう事!? 頭撫でて来るなんてもしかして酔ってるのあなた!?」
唐突に自分の頭を撫でていつもよりちょっと優しそうな言動な銀時に、アリスはそのギャップ性に心打たれつつも気丈を振る舞いなんとか持ち直すのであった。
「おい鴉天狗、絶好の特ダネだぞ、記事にしないのか?」
「んな真似したら私殺されますよ確実に……あの人の目はマジでした、当分記事にするのは無理そうですね」
「当分って事は諦めてないんだな」
「ここで暴力に屈したら韋駄天のパパラッチの名が泣くってモンですよ……」
「いやお前のそんな二つ名聞いた覚え無いんだが?」
ズキズキする頭を押さえながらゆっくりと起き上がる文に、魔理沙が銀時とアリスを指差しながら尋ねてみた所、どうやらまだ彼女は記事にする事は諦めてない様子。
こりゃいつかマジで殺されるなと魔理沙が文を見てしみじみと思っていると、そんな彼女の下へ諏訪子が面白げに歩み寄って来る。
「ほほぅ幻想郷の管理人の旦那と、博麗の巫女、そんで魔法使いが二人か。まだまだパンチが甘いな、神奈子以上に宴会を行う為にはもっと集めて欲しいんだが」
「あん? コレが霊夢の言ってた神様か? 随分とちっこいな」
「言葉が過ぎますよ魔理沙さん、心配しないで下さい諏訪子様、あの八雲銀時という男はちゃらんぽらんですが無駄に人脈がありますので、まだまだ色んな連中に声掛けたみたいですよ」
まだ納得していない様子の諏訪子に、魔理沙を押しのけて文がすかさずフォローに入る。
するとそれからタイミング良く、銀時が呼んだであろうメンバーがゾロゾロとやってきた。
「ここがイタズラし放題の神社ね!よし! ルナ! スター! 早速そこら中にカラースプレーで落書きするわよ!」
「え、カラースプレー!? 私色鉛筆しか持ってきてないんだけど!? どうしようスター!」
「いやそもそもイタズラし放題って誰が言ったのさ……私達はただアリスさんと一緒に遊びに来ただけじゃん」
光の三妖精ことサニーが意気揚々と現れ、続いてルナが慌てて飛び出し、二人に遅れて呆れた様子でスターがやってきた。
どうもこの三匹、事情も聞かずにただ遊び目的のために来ただけらしい
「うわ~三バカ妖精がいるよ、あたい嫌いなんだよなあの三匹、弱いくせにやたらと突っかかって来るし。まだこのあたいが最強だって事を認めようとしないし」
「あ、バカチルノじゃないの! 何よアンタ! またバカな事して私達を邪魔する気でしょ!」
「あたいはバカじゃないっての! またまとめて氷漬けにされたいのかコノヤロー!」
今度は同じく妖精であるチルノがフラフラ~と宙を舞いながら降りて来た。三妖精を見た途端すぐにしかめっ面を浮かべて嘆いていると、早速三妖精の中のリーダー格(自称)であるサニーが食って掛かる。
どうやら妖精同士でも何かと相性が悪い関係があるのだろうか、そのまま2匹は空中で睨み合いながら言い合いを始め出した。
「見て下さい藍様! なんだか妖精達が喧嘩してますよ!」
「橙、妖精というのは頭が悪くてしょっちゅうああやって大騒ぎしてるんだ。バカがうつるから離れて……」
「私も混ぜろ~!」
「……まあ妖精の生態を勉強する事は必要かもしれないからな、橙は勉強家だな本当に」
続いてやって来たのは八雲紫の式神である八雲藍と、更にその式神である橙。
親子の様にやって来ると橙は早速妖精同士で言い合いをしているチルノとサニーの下へ元気に走り出す。
そしてそれを一瞬止めようとするも、つい甘やかしてしまうクセで彼女の行動を許してしまう藍。
「あなたいい加減自分の式神をまともに操れたらどうなのかしら? 一度は強めに言ってあげないとずっとあんな調子よあの子」
「も、申し訳ありません紫様、ですが橙はまだまだ子供みたいなものですからつい……」
「その言い訳何十年も聞いてるんだけど私」
「…………」
勝手に行ってしまう橙の背中を見送りながら自分に言い聞かせるように呟く藍を、彼女の主人である八雲紫がため息交じりに窘める。
彼女の言葉に蘭は申し訳なさそうに無言で頭を深々と下げていると
「おお、そこにいるのはいつぞやお会いした銀時のカミさんではないか」
紫の方へ嬉しそうに声を上げながら後ろからやって来たのは、まさかの攘夷志士・桂小太郎であった。
銀時は呼んでない筈なのだが、どうやら何処かで小耳に挟んだのか、勝手に来てしまったらしい。
「あの時は色々とゴタゴタしてしまい申し訳なかった、機会を改めて次こそは八雲紫の討伐作戦を決起しようではないか、八雲紫殿」
「……そうね、それを聞いて安心したわ」
「貴様は桂小太郎……!」
相変わらずの勘違いっぷりに紫が思わず無言で固まっていると、先程までシュンとしていた藍がすかさず二人の前に入って桂を睨み付ける。
「丁度いい、ここで貴様の息の根を……!」
攘夷志士であり八雲紫の命を狙う輩となればここで手討ちにしてしまうのが至極当たり前だ。
全身全霊を持って桂を仕留めようと動こうとする藍だが、底で桂の前にバッとあるモノが現れる。
メッセージの書かれたプラカードを掲げて
『桂さんは殺させません』
「な! なんだこの少しカワ……珍妙な生き物は! 紫様こんなの幻想郷にいましたか!?」
「……さあどうだったかしらね……」
「ゆ、紫様!?」
いきなり現れた訳の分からない生き物、エリザベスに藍は一瞬頬を染めてときめいてしまうもすぐに持ち直して紫の方へ尋ねるが。
彼女は言葉少なめにノーリアクションで、ただただジト目で眺めるだけであった。
するとエリザベスは固まっている紫に対してクルリと持っていたプラカードを裏返す。
『初めまして紫、私は桂さんの相棒、エリザベスです』
「……初めましてなのに私の名前は知ってるのね」
『え! い、いやその……なんか見た感じそんな名前なのかなと思っただけだから!』
「……そう、見た目だけで私の名前を言い当てるなんて大したものね」
特に追及もせずにあっさりとエリザベスの言葉を聞き入れる紫、すると桂は誇らしげにエリザベスの頭に手を置きながら
「フッフッフ、エリザベスの先見の明は俺も認める程素晴らしいからな、名前を当てるぐらい造作もない事であろう、先日も地獄から閻魔大王が人里をウロついていると事前に察知してくれたおかげで、俺は無事に逃げおおせる事が出来たのだからな」
『えへへ~』
(そりゃあ閻魔から直接事前に冥界へ報告があっただけでしょ……)
桂に褒められエリザベスは心なしか喜んでいる様子で体を揺すっている。
その光景をただ紫は何も言わずに黙っていると、桂が強めにエリザベスの手を両手で握って
「あの時のおかげで俺はよりお前の必要性を強く感じれたのだ! エリザベス! 例え地獄の底であろうが天界であろうが俺について来い! もはや俺達は一心同体と呼んでも過言ではないコンビだ!! このまま強気絆で結ばれた俺達の力で! あの悪の権現である憎き八雲紫を滅ぼしてみせよう!!」
『か、桂さんがそこまで言ってくれるなんて……! 私! エリザベスとして生きてて良かったぁぁぁぁぁ!!』
(いやあなたエリザベスじゃなし、てか死んでるし……)
敵無しだと言わんばかりに賞賛を送ってくれた桂に、エリザベスはプラカードで至上の喜びを表現している。
そんな様子をただずっと黙って見ている紫を心配したのか、藍がぎこちない様子で彼女に近づく。
「ゆ、紫様どうしたんですか!? なんかいつもと様子がおかしいですよ!?」
「……藍、私あなたに少し言い過ぎたかもしれないわ」
「へ!?」
幻想郷の管理人らしくいつもは余裕の笑みを浮かべていたりするのが八雲紫なのであるが
今の彼女は無の表情と呼ぶべきか、心ここにあらずといった顔をしていた。
こんな顔を見たのは生まれて初めてであった藍が戸惑っていると、紫はゆっくりと彼女の方へと振り返り
「親しい間柄になった事によって情が生まれたモンだからこそ……その者の行為を咎める事が出来ずに傍観者になってしまうあなたの気持ち、今思いきり痛感したわ……」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
まるで旦那みたいに死んだ魚の様な目をしながら
動転する藍に静かに呟く紫であった。
様々な思惑と悲しみを乗せて、遂に宴会が始まる。
紫が素で困惑したのはコレが初めてかもしれない。
桂&エリー、紛れも無く強敵ですな