銀輪蓮廻魂≼⓪≽境東夢方界   作:カイバーマン。

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一週間ぶりの投稿です。それでは二人の過去回想からスタートです


#38 坂映本姫

今から千年以上前に遡る。

 

源頼光によって集められた人ならざる者達は

 

頼光のいる屋敷での会議を終えて、雪も積もった寒い夜道を徒歩で歩きながら家へと帰る所であった。

 

「は~こんなクソ寒い日にわざわざ俺達を呼びつけるんじゃねぇよ、頼光の野郎」

「なんだその言い方は、お前俺達が一体誰のおかげでこうして公の場を歩けると思っているのだ。人外である俺達を拾って世話してくれているのは他でもない頼光公だぞ」

「俺をお前等と一緒にすんな、テメェやそこの化け狸と違って俺は平然と人間の中に紛れ込んで普通に食っていけるんだよ、ちょっと年取らなかったり死なない点を除けば俺もごく普通の人間だ」

「除けるかそんなデカい要素! 完全に化け物だろ!」

 

雪が積もり歩きにくい場所を、しっかりと身を暖かく包んだ格好で先頭を歩くのは坂田銀時。

 

そしてその後ろを彼よりも軽装ではあるが防寒着をキチンと着飾っている桂小太郎だ。

 

 

「人間の中に紛れ込んだらひたすら浮きまくるぞ! 「え、なんであの人十年以上この村にいるのにずっと同じ見た目してるの?」って怪しまれるわ普通に!!」

「問題ねぇ「ちょっと美容に気を使ったり適度に整形してるんです、叶姉妹の如く常に美しくあり続けたいんです」とか言えば大抵の主婦は誤魔化せる」

「叶姉妹って誰!? 主婦だけ誤魔化しても意味ないだろ!」

 

銀時の適当な言い分に対し桂がすかさずツッコミを入れて叫んでいる中

 

そんな二人をよそに、後ろでしゃがみ込んでいるのは彼等の仲間である

 

「おーおー、こりゃ寒そうじゃのぉ、どれ、わしのを貸したるか」

 

四国の大妖怪こと化け狸・坂本辰馬の姿があった。今とは違いサングラスは掛けていない

 

銀時や桂よりもずっと薄着な上に、唯一防寒対策として被っていた三度傘と持っていた手拭いを、あろう事か道の途中にあったあるモノに楽し気に被せていた。

 

それに気付いて銀時はふと後ろへと振り返る。

 

「おい何してんだお前、ってなんだそれ? もしかして地蔵か?」

「おう金時、ふと見かけたんじゃが、こげな人気の少ない道で一人でポツンと頭の上に雪ば乗せちょってて可哀想と思っての。せめて笠と首に巻くモンでも付けりゃあ暖かくなるじゃろうと思うてな」

「銀時だバカヤロー、長くつるんでるんだから名前ぐらい覚えろよ腐れ狸。地蔵をいたわる前にまず俺の名前を一語一句間違えずに覚えろ」

 

坂本が傘を被せて、手拭いを首に巻いてあげているのは、こんな人も寄り付かない小さな道にひっそりとあった地蔵であった。

 

ボロボロで所々欠けている所から察するに、相当昔からここに置いてあるのだろう。

 

そんな地蔵を前にして、坂本はちょっとした気まぐれで行動を起こしてみたらしい。

 

「確かに地蔵っつうのは閻魔の化身だから丁重に扱えって、ガキの頃に俺も教えてもらった事あったけどさ。何もこんな寒い日にわざわざテメーの傘貸してやるバカがどこにいんだよ」

「いいではないか、坂本、お前もたまには味のある真似をするではないか。地蔵様もきっと喜んでくれているであろう」

 

しかめっ面の銀時に対し桂は坂本の行いを素直に褒め称えると、坂本は「アハハハハ!」と大きな声で笑い

 

「まあぶっちゃけ! 最近読んだ書物でこういう展開があったの思いだしたからついやって見たかったんじゃがの! 笠売りのじいさんが家に帰る時に七つの地蔵に売り物の笠と自分の手拭いを付けて! そんで家ば帰ってすぐに寝て朝になったら! 戸の先に地蔵様からの贈り物が仰山あったちゅう話じゃけんど!」

「その話なら俺も最近読んだな、なるほど、大方自分にも福が舞い込んで来るかと思い面白半分で実践したという訳か、お前らしい」

 

笑いながら後頭部に手を置いて白状する坂本に桂がフッと笑い返していると、銀時も彼等の話を聞いて思いだしたかのように「あ~」と言いながらポンと手を叩く。

 

「俺もその話読んだ事あるわ、アレだろ? 武闘家の爺さんがケツに尻尾生えた赤ん坊を見つけて育てて、その赤ん坊が成長して七つの玉を集める為の冒険に出る摩訶不思議なアドベンチャーだろ?」

「爺さんが出てくる所と七つという個数以外全く違うではないか! ていうかなんだそのハチャメチャが押し寄せて来そうな物語は! なんか物凄く面白そうな予感がするぞ!」

「いや~急に頭の中にフッと湧いてさ、きっと海の先にある国で実写の劇も作ってもらえそうなぐらい売れるんじゃないのコレ?」

「それは多分止めて置いた方がいいと思う! なんか原作者も「あれ?」って思うぐらいハチャメチャで摩訶不思議な劇になる様な気がする!!」

 

坂本と桂の知る物語とは全くかすりもしない話を思い出している銀時。

 

昔からこの男はよくわからない発言や行動をするので、それを嗜めるのは決まって桂の役目である。

 

すると銀時はまたもや急に動き出し、自分達が向かう方向とは別の道へと歩き出す。

 

「あ、俺今日はこっちの方へ行くんで、んじゃまた」

「ちょっと待て銀時、そっちは別方向であろう。俺達の家はこのまま真っ直ぐ向かわねば辿り着けんぞ」

「いや今晩は家戻るつもりないから俺、家に帰ってもあの女房面した妖怪がいてめんどくせぇし」

 

腕をさすりながら体を暖めつつ、銀時はそそくさと別方向へと歩き出して行ってしまう。

 

「あんな訳の分からねぇ事で喚き出す妖怪女なんざよりも、俺の話のよくわかってくれる不死女の所で寝泊まりしてた方がよっぽど落ち着くんだよ」

「不死女……ああ、例の白髪のおなごか。そういえばここ最近のお前はよくあのおなごとつるんでる機会が多いな、嫁にでもする気か?」

「なんじゃ銀時! おまん紫ちゃんがおんのに別の女に乗り換えたんか!? あんなええ女がこげに寒い中おまんの帰りをまっちょるのに! おまんは勝手に別の女の所へ行って夜な夜な遊んどるっちゅうんか!?」

「いや別に俺あの妖怪と付き合ってる訳でも夫婦になった覚えもねぇし、ただアイツが勝手に俺の家に居座ってるだけだから。という事で銀さんはそんな居候はほっといて気の知れた女の所へ行ってきまーす」

 

坂本が声高々に叫んで銀時を呼び止めようとするも、自由気ままに生きる事を生業とする彼はそんな事知ったこっちゃないと言った感じで歩みを止めずにそのまま行ってしまった。

 

吹雪の中でゆっくりと消えていく彼の後ろ姿を見送りながら、残された坂本はやれやれと呆れたように首を横に振る。

 

「女に困らんというのは羨ましいとも思うが、あんな男じゃ紫ちゃんも大変じゃのぉ」

「全く、侍でありながらおなごなどに現を抜かすとは、いずれ奴の性根を叩き直してやらねば」

「おまんはおまんで生真面目すぎるぜよ、ヅラ。どこぞに惚れちょる女とかおらんのか?」

「ヅラじゃない桂だ、俺にはそんなものは必要ない。俺はもうとっくに人としての生を捨て、霊と成り果ててしまった、相手が同じ霊となれば別だが、人間と今更恋に焦がれる事などあり得ん」

 

相も変わらず堅物な物言いをすると桂は踵を返して銀時とは別の方向へと歩き出す。

 

取り残された坂本はボリボリとクセッ毛の強い髪を掻きむしった後、最後に地蔵の前へとしゃがみ込んで両手を合わせて拝んでみる。

 

「え~地蔵様地蔵様~、何卒わしに可愛い嫁さんば連れてきてください、それと女をたぶらかす金時の奴になんらかの制裁と、ヅラの奴に何時かでいいんで出逢いの一つでもくれてやってください」

 

随分と長い願い事を言い終えると坂本は目を開けて地蔵を眺めてみる。

 

無論何も起こる筈がない、相も変わらずみずぼらしい外見をした地蔵だ。

 

当たり前か、と言った感じで坂本はフッと笑った後立ち上がり、行ってしまう桂の方へと駆け足気味で追いかける。

 

「おーい待たんかいヅラ~」

「ヅラじゃない桂だ、それにしても今日は随分と冷えるな……」

「はよう家ば戻って暖かいモンでも飲まんと凍え死ぬぜよ」

「こんな時期でも洞窟に住んで平気でいられるお前ならその心配はないだろ」

 

彼の笠と手拭いを付けた地蔵は

 

降り続ける雪の中で

 

去っていく坂本の背中をただ静かに見送るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時間は進んで早朝。

 

坂本は真っ暗闇な洞窟の中で甲高いいびきを掻きながら爆睡中だった。

 

彼の住処は銀時や桂とは違い薄暗い洞窟。

 

石造りの床に藁を敷いただけの簡易な寝床でさえ、狸として長年暮らしていた彼にとっては何も不自由はない。

 

今日もまた源頼光に呼ばれているので、すぐにでもここを発たなければいけないのだが……寝る前に飲んだ酒が効きすぎて一向に起きる気配がなかった。

 

すると

 

「全くいい加減起きたらどうですか、早くしないと遅刻しますよ」

「……んあ?」

 

耳元で聞き慣れない女性の声が聞こえた気がする、と坂本はつい反射的に目をパチリと開けるとムクリと上半身を起こした。

 

未だ覚醒していない状態でそのままボーっと座り込んでいると、彼の前へスッと何かが差し出される。

 

「なにぶん料理の仕方はまだ覚えていないので味の保証は出来ませんが……木の実をダシにして作った汁物です」

「え? ああどうもどうも……」

 

木の皿の中には細切れになった木の実が水の中で浮いているだけという、なんとも料理とは言い難い代物であったが。

 

ボケーっとしたまま坂本はそれを有難く受け取ると、何の抵抗も無くそれをグッと一気飲みしてすぐに飲み干す。

 

「どうですか? 口に合いましたか?」

「……何とも言えない苦々しさが口の中で混ざり合っとるの、まあ昔は木の実ばっか食うてた時期があったし、懐かしい味がして料理自体は悪くなか……」

「そうですか、それは良かった」

「ところで聞きたい事あるんじゃけど……」

 

虚ろな目でググッと首を動かしていくと、坂本はようやく声のする方向へと振り向いた。

 

「おまん、誰?」

「いきなり何を言うんですか、まさかこの笠と首に巻かれた手拭いを見て気付かないとでも?」

「……」

 

次第にぼんやりしてた視界がハッキリとなって、坂本の目の前にはとある女性が立っていた。

 

短い緑髪の、これまた桂よりも生真面目そうな印象を持つキリっとした表情を浮かべている

 

そして頭に被っているのは笠、首に巻いてるのは手拭い。

 

坂本はその二つのアイテムをジーッと眺めた後、急に思い出したかのようにパチリと大きく目を開ける。

 

「ありゃ? それって確か、昨晩わしが地蔵様に付けてやった笠と手拭いじゃなか? どげんしておまんが付けとるんじゃ?」

「やれやれまだ寝ぼけているのですか? コレは正真正銘あなたが私に送ってくれたモノではありませんか、私はその地蔵本人です。昨晩の礼をする為にここへと足を運んだのです」

「あーそう、それはわざわざどうも……ってはぁ!?」

 

彼女の正体を聞いてやっとこさ坂本の脳は完全に目覚めた。目を大きく見開きながら素っ頓狂な声を上げ、まじまじと彼女を見つめる。

 

「おまんがあの地蔵様がか!? な、なげにそげな姿に!?」

「路上に立つ姿はいわばば仮の姿です、こちらが本当の姿、本名は四季映姫と言います」

「ああどうも、わしは坂本辰馬っちゅう化け狸です、いや言ってる場合じゃないぜよ! まさかおまん! あの本の通りにまさか傘を被せたわしに本当に恩返しにでも来たというんか!?」

「その通りです、寒さに凍えそうな私に対して傘を被せ、手拭いを首に巻いてくれた恩を返す為に来ました」

「うおぉ、まさかほんにに来てくれるとは思わなかったぜよ、こっちは冗談半分じゃったのに……」

「という事で改めまして」

 

あの時の地蔵だと聞いて坂本は驚きつつも、後頭部を掻きながら恩返しに来てくれたという事に喜んでいいのやら申し訳ないやらの気持ちで仕方なく苦笑して見せる。

 

すると彼女は突然、地面にぺたりと正座になると、こちらに向かって仰々しく両手を地に付け深々と頭を下げて

 

「あなたの願い通りこれからはあなたの妻となり一生を共にすることを誓います。今後もよしなに」

「まさかまさかの急展開にわしビックリ!! わしがいつおまんを嫁さんにしたいと願ったの!?」

「昨晩私に拝みながら祈っていたではありませんか、自分に可愛い妻を下さいと。 可愛いかは私自身よくわかりませんが、とにかく嫁になる覚悟が出来ました」

「嫁ば行く事は一晩で出来る覚悟じゃないと思うんじゃが……いきなり押しかけて妻になるとは信じられん話じゃ、事実は書物よりも奇なりとは言ったもんじゃて」

 

早朝からいきなり自分に汁物を作ってくれたのはそういう意図があったのかと納得しつつ、坂本はこうもあっさりと妖怪である自分に嫁ごうとする地蔵様に対し呆れたようにため息を突くと

 

「まあとにかくわしから言う事はただ一つじゃきん、地蔵様、こげな真似されたらいくらわしでも驚きを隠せん、じゃからこの場で遠慮なくハッキリと言わせてくれ」

 

急に改まった様子で坂本は珍しく真顔になると、仏頂面でいる彼女をジッと見つめ、そして……

 

 

 

 

 

 

 

「こんなわしでもいいなら喜んで~!! いやー地蔵様と夫婦になれるとは夢にも思わなんだ! これからよろしゅう頼んます~!!」

「理解が早くて何よりです、ところで私の事は地蔵様ではなく映姫と呼んでください。私もこれからはあなたの事を辰馬と呼ばせて頂きますので」

「はいはい! 夫婦となれば当たり前じゃきん! 共に頑張ろうぜよ映姫ちゃん! アハハハハハ~!!」

「ちゃんは付けなくていいです」

 

いつもの様にヘラヘラ笑いながらアッサリと彼女からの求婚を承諾する坂本。

 

快く了承してくれた彼に少々満足げな様子で頷きつつ、ポーカフェイスは一切崩さない映姫は晴れて彼の妻となる事が決まった。

 

恐らく何も深く考えちゃいないのであろう、夫婦になるという重大な決断であろうと、まあなんとかなるだろうという安易に決めてしまうのが坂本辰馬という男である。

 

かくしてここに、大妖怪の化け狸と閻魔の化身である地蔵がまさかの洞窟内で夫婦の契りを交わした。

 

数刻後、源頼光の屋敷にて坂本は映姫を連れて、銀時や桂、そしてもう一人の仲間と主君の頼光公に

 

上機嫌な様子で結婚の報告をするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っという事でそれから私と辰馬はあなた方に祝福されながら夫婦の契りを交わし、今に至るという訳です」

「いや展開早すぎるだろうがぁぁぁぁぁぁ!!! なにそんなアッサリとお互いに受け入れてんだよ!!」

 

そして時間は再び今に戻り

 

地獄の閻魔となった映姫はハッキリと記憶している夫との馴れ初めを銀時と紫に話し終えていた。

 

しかしあまりにも簡潔かつ、なんの捻りも無くサクッと結婚してしまった二人に、聞き終えた銀時は即座に彼女に向かってツッコミを入れた。

 

「出会って即結婚するってなんなのアンタ等!? いや確かにおたくが坂本に連れられてきた時はそりゃ驚いたけども! まさかその日に初めて会ったばかりだったなんて知らなかったよ俺達! もうちょっと二人で長い時間過ごしてから決めるべきだと思うよ本当に!!」

「願いをかなえるのは地蔵菩薩の務め、故に嫁が欲しいと願った辰馬の想いに応えて私が自ら出向いたまでの事。交際期間など不要です、彼が私を必要と求めた時点で私の決心は着いていたのです」

「じゃあ何か!? おたくは坂本以外の奴にも嫁が欲しいと言われればホイホイ嫁になっても良いと思ってた訳!?」

「無論そんな訳ありません、私が彼と夫婦になっても良いと思ったのは、純粋に地蔵である私に対して寒さを凌ぐ為の笠と手拭いを身に付けさせてくれたその優しさです。その優しさに私は心打たれました」

「どっちにしろチョロ過ぎるだろうが! 捨て犬に餌あげる不良にときめく少女漫画のヒロイン並みにチョロ過ぎるんだけどこの閻魔様!」

 

そもそも神や神の化身というのはあっさりと相手と結婚する事パターンが非常に多い。

 

映姫もまた例に漏れずに、ちょっと優しくされただけで即結婚してしまおうと安易に考えてしまうタイプだったらしく、銀時はそんな彼女にツッコミを入れつつ、今度は後ろでヘラヘラ笑いながらついて来ている坂本の方へと振り返る。

 

「おい坂本! お前もお前でなに簡単に地蔵様と結婚してんだよ! 少しは疑問持ったり抵抗感持てよ! 何すんなり受け入れてんの!?」

「いやー確かに最初は驚いたが、そろそろわしもええ人が欲しいと思うておったからの。わざわざ地蔵様が嫁にと向こうから来てくれるのでだから、それこそ甘んじて受け止めなきゃ神様からバチを食らっちまうぜよ」

「テメェもやっぱ安直にそんな考えで決めてやがったのか、結局似た者同士だったって事かよ……なんつうばかげた話だ、結婚なんて大切なモンをそう簡単に決めやがって……」

 

二人の馴れ初めと結婚話にに呆れつつ、銀時はどっと深いため息を突いた後、ふとさっきからずっと黙り込んで何も言わない紫の方へチラリと目配せ

 

「おい、お前もこのお気楽夫婦になんか言ってやれよ紫」

「……私は彼等よりもあなたに言いたい事があるんだけど」

「へ?」

 

銀時が話を振るとようやく紫が重い口を開く。

 

しかし彼女が文句を言いたい相手は坂本でも映姫でもなく……

 

「閻魔様の話で、あなたが私をほったらかしにしてあの女の所へ遊びに行ったって下りがあったんだけど……どういう事かしら? その日私はずっとあなたの帰りを待っていたんだけど、寒い中ずっと一人ぼっちで……」

「ひッ! い、いやあの時の俺はまだ青二才もいいとこで! テメーの中で本当の大切な存在が誰なのか知らなかったんだよ! でも安心してハニー! 今の俺は昔と違ってちゃんと誰が一番なのかわかってるから! 俺の隣は今も昔もお前だけしかいないんだってしっかりとわかってるつもりだから!!」

 

マズい、またもや過去の過ちで紫がえらくご機嫌斜めの様子だ。

 

昔と比べて今はだいぶ丸くなった彼女だが、未だ”彼女”の事となると昔のように嫉妬心を剥き出して攻撃的になる習性があるのだ。

 

銀時が慌てて彼女の肩に手を置きながらなだめようとするも、紫はずっと冷たい視線を彼に向けながら

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇあなた、どこの地獄に堕ちたい?」

「……すんません、なんでもしますんでそれだけは勘弁して下さい」 

 

次の目的地である賽の河原まで

 

銀時は心の底から必死に懺悔しながら謝り続けるのであった。

 

 

 

 




地獄巡り編は次回でラストになると思います、賽の河原……今時の読者は知ってるのかな……
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