銀輪蓮廻魂≼⓪≽境東夢方界   作:カイバーマン。

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#4 銀助之時霖

香霖堂。

その店は魔法の森入口近くにある。

見た目は瓦屋根の目立つ和風の一軒家。

幻想郷で唯一外の世界の道具、冥界の道具、妖怪の道具、魔法の道具全てを扱う道具屋であり。販売だけでなく買い取りも行っている。 人妖ともに拒まれず、誰でも利用できるお店なのだが。 店主が気に入ったものは非売品としてしまうため商品は少ない。

頻繁に仕入れを行っているのか商品の入れ替わりが早く、珍品が流れ着いていることも。

商品の値段は基本的に時価。要相談。

たまに紅白姿の巫女や白黒の魔法使いが入り浸っているのを見る事がある。

 

そして薄汚れた店内のカウンターには、今日も座って一人で店の切り盛りをしている店主の男がいた

 

「毎度の事ながら客足が少ないな、別に僕は構わないが」

 

森近霖之助。

半分人間半分妖怪、いわゆる半妖の一種であり、かつては人里にある「霧雨店」という大手道具屋で修業を重ねて、後にここでは自分の能力は活かせないと独立する。そうして結界の外から流れて来た品や忘れられた古の品を扱う古道具屋、香霖堂を開いたのだ。

しかし彼に関しては商売人と言うより趣味人と呼んだ方が正しい。

 

本人も多少自覚があり、商売というより趣味で店を開いているスタンスを続けており、金を払う気が全くない知り合い二人が「ツケ」で買い物をしたり、店の商品を勝手に持っていったりしてもあまり気にしていない。

とはいえ一応商売する気はあるようで、店主としての礼儀をわきまえ、売り時だと思った時には積極的に商品をアピールすることもあるようだ。

 

そんな気まぐれな性格な店主が営んでる訳か、常連はいるものの客足はいつも少なく店そのものとして成り立っているのかいささか疑問である。

 

「相変わらずワケのわかんねぇモンばっか並んでるなここは」

「気配も無く一瞬で店の中に現れるのはいい加減止めてくれないかな”大妖怪の亭主殿”」

 

そしてそんな彼の店にいつの間にかそこにいて雑に並んでいる商品を物色している男が一人。

この幻想郷では知る人ぞ知る、人でも妖怪でもない素性の知れぬ謎の人物、八雲銀時だ。

 

「生憎だがそちらが望む様な商品はまだ仕入れてないよ」

「別に買いに来た訳じゃねぇから、俺はただ暇つぶしがてらに来てるだけだ」

「冷やかしはもっとご遠慮願いたいんだがね」

 

彼はたまにこうしてやってきてフラフラと店内を見渡した後、気に入った物を買っていったりする常連の一人でもある。貴重なお得意様でもあるから無下には出来ないが、大抵は買わずにさっさと帰ってしまうので霖之助の接客の仕方もどこか雑だった。まあ彼は基本誰に対してもこんな感じだが

 

「ああ、でも今そちらがいつも買っていく書物が外の世界から流れついてきたんだっけな」

「んだよ、またいかがわしい本でも俺に売りつけようとしてんのか? カミさんの式神にバレて殺されかけたんだぞこっちは」

「それは買った方の責任だから売っただけの僕に非はないだろう」

 

ブツブツ文句を言う銀時を軽くスルーして霖之助はしゃがみ込んでカウンターの下から何かを取り出そうとする。

 

「心配しなくても今回の本は君が毎週買っている」

 

そう言って彼がカウンターの上に置いて銀時に見せたのは

 

「週刊少年ジャンプだ」

「おーコレコレ、コレがねぇと今週始まらねぇんだよ」

 

色々なキャラクターが所狭しと載っている表紙を眺めながら、銀時は嬉しそうに手を取る。

 

少年ジャンプ

外の世界にある漫画雑誌という奴で書籍の中には色々な作家が描いた漫画が並べられており、幻想郷ではこの店にしか売っていない。

こちらではあまり知られていないモノではあるが一部の人間や妖怪からは熱狂的な支持を得ていて香霖堂の貴重な収入源の一つともなっている。

そして銀時もまた数十年前からこの雑誌のファンでもあった。

 

「コレっていつもお前の店の所にしか売ってねぇけどどっから流通してんの?」

「生憎だがそれは言えないな、特に誰よりも八雲紫と繋がりのある相手には」

「なるほど、紫にとってはあまりよろしくない事をやらかしてる連中がいるって訳か」

「さあどうだろうね」

 

雑誌を手に取りながら銀時はジト目を霖之助に向けるも、彼は平然とした様子で肩をすくめて何も答えようとしない。

何を隠しているのか本来であれば紫に代わってここで吐かせるべきなのかもしれないが銀時は別段気にせずに

 

「ま、別にいいわ。俺はコイツが手元に来てくれるなら誰がコソコソとやってようが構わしねぇよ。ぶっちゃけ紫の方もその事についてはとっくに知ってるだろうしな」

「だと思ったよ」

「そんじゃ、俺はこれで、あ」

 

懐からゴソゴソと財布を取りだそうとする銀時だがすぐにある事に気づいてバツの悪そうな顔を浮かべる。

 

「ヤベェ、財布忘れちまった」

「生憎だが払うもんは払ってもらわないと商品は渡せないよ」

「わ~ってるよ、今からちょっくら家に戻るから待っとけ、1分後にまた来るから」

 

そう言って銀時はジャンプをカウンターに戻して一旦家に帰ろうとしていると、店のドアがガチャリと開いた。

 

「相変わらず商品ゴチャゴチャしてるわね……そろそろ整理とかした方がいいわよ霖之助さん」

「ああ、いらっしゃい」

「あん?」

 

聞き慣れた声に反射的に銀時は後ろに振り返ると、博麗の巫女、博麗霊夢が足元に散らばっている商品、もといガラクタを踏まないようにしながら店内へと入って来た。

すると霊夢も霖之助の前にいる銀時に気づいた様子で「あ」と声を出し

 

「ゲスの極みじゃない、何してるのこんな所で」

「ゲスの極み言うな、ジャンプ買いに来たんだよ」

「そう奇遇ね、私もそれ買いに来たのよ」

 

銀時がいる事など別に気にせずに、霊夢は彼の隣に立つと霖之助の方へ顔を上げる。

 

「霖之助さんまだ残ってる?」

「ああ、ここにあるのが最後の一冊だよ」

「ってそれ俺が買おうとしてた奴じゃねぇか!!」

 

先程お金が無いという事で渋々カウンターに置いたばかりのジャンプをなんの躊躇も見せずに霊夢に渡す霖之助に銀時がツッコミをいれているがその間に

 

「じゃあいつも通りツケでお願いね」

「いつか払いに来てくれよ」

「気が向いたらね、それじゃあ」

「おいツケってなんだ! なんで俺の時はちゃんと金払わせようとしたのにコイツからは一文も貰わずにジャンプ渡してんだコラ! ちょっと待て!」

 

まるで自分がいないかのようにトントン拍子で買い物済ませて帰ろうとする霊夢の肩を掴んで銀時は慌てて止める。

 

「おい小娘! それは俺のジャンプだ返せ!!」

「はぁ? 頭大丈夫なのアンタ? なんで私が買ったジャンプがアンタのジャンプになるのよ」

「そのジャンプはお前が買う前に俺が買うってここの店主と約束していたんだよ! そうだよな!」

「約束した覚えは無いが」

 

霊夢の持っているジャンプを無理矢理もぎ取ろうとしながら銀時は霖之助の方へ確認を取るが彼は冷静な態度で

 

「まあ最初に商品を買おうとしたのは確かにそちらだったね、けどそちらは財布を忘れてたから代価を払えなかった。てことは後に求めて来た霊夢の方に買う権利が移るのもなんらおかしくないと思うけど」

「いやおかしいだろ! そもそもコイツはツケ払いがOKでなんで俺からはキッチリ金取ろうとするんだよ!」

 

店主であるなら客に対して平等に接するべきだと抗議する銀時だが、生憎だが霖之助は客商売には向いていない性格。そういう常識は通用しない。

 

「付き合いの差かな、僕と霊夢はあの子を通じて昔から交流してるし」

「俺とも付き合い長いだろ霖之助君!」

「そちらは付き合い長い分胡散臭くて信用できない所あるんだよね」

 

霖之助の銀時への率直な評価に霊夢もうんうんと頷く。

 

「確かにあの紫の旦那だしね、最近人の神社で愛人まで作った男だし」

「人聞きの悪い事言うんじゃねぇよ!」

 

いらぬ事まで付け足す霊夢に銀時は叫びながら霖之助の方へ振り返った。

 

「そもそもおかしいだろお前、どうしてコイツとあの不良娘にはとことん甘いんだよ! 知ってんだぞこっちは! お前がコイツの服作ったりアイツの為にマジックアイテム作ってあげたり!! しかも全部ツケにしてやってる事もな!」

「いやまあ別にそこまで収入が欲しいって訳でもないしね、この身体だから別に金欠でも困る事は無いし」

「じゃあ俺もツケ払いで!」

「それは出来ないな」

「なんでだよ!」

 

断固としてそこだけは譲ろうとしない霖之助に銀時は苛立ちを募らせながら霊夢をジロリと睨み付けて

 

「お前気を付けろよ、この男絶対ロリコンだ間違いねぇ。いつか溜まったツケを体で返せとか要求してくるぞ」

「霖之助さんがそんな事する訳ないでしょ、アンタじゃあるまいし」

「俺だってしねぇよ! 誰がテメェ等みたいな貧相の身体要求するか!」

 

呆れた様子で呟く霊夢にムキになって否定している銀時に霖之助は「思ったんだが」とおもむろに話しかけた。

 

「霊夢が読み終わった後に借りればいいんじゃないかい?」

「そうよそれでいいでしょ、たかが雑誌ぐらい貸してあげるわよ」

「そんなの俺のプライドが許されねぇんだよ! 俺はお前より数段ジャンプを愛してるんだぞ! むしろジャンプが俺を愛してる!」

「紫にチクるわよ」

 

堂々と浮気発言する銀時に霊夢がボソッとツッコんだ後やれやれといった感じで

 

「じゃあアンタに譲ってあげるわよこれ以上続けるのもめんどくさいし、好きなだけ読みなさい。んで読み終わったら貸してね」

「おーそれでいいんだよ、ちったぁテメーの立場わかって来たじゃねぇか小娘、ペッ!」

「コイツ……」

「人の店で唾吐かないでくれないか?」

 

根負けしてジャンプ買わせる権利を銀時に譲ってあげる霊夢だが、そんな彼女に彼は床に向かって唾を吐きながら悪態を突く。

あまりにも図太い神経に霖之助は呆れを通り越して感心していた。

 

「じゃあ霊夢がそちらに譲ったという事なら、代金キッチリ払って買ってもらおうかな」

「当然よね、むしろ値段倍にしてやったらどうかしら」

「なんだろうねコレ、博麗の巫女はツケ払いOKで八雲の俺は金払えって……もういいけど」

 

後頭部をボリボリと掻きながら銀時はため息を突くと

 

「じゃあちょっくら財布取りに行ってくるから」

「はいはい行ってらっしゃい」

 

霊夢が適当に手を軽く振っていると、霖之助がふと目をまばたきした一瞬で

 

銀時の姿は忽然と目の前から消えていた。

 

「相変わらず見事な移動方法だね、瞬間移動と言うべきなのかな?」

「あー違うわよ霖之助さん」

 

音もなく動作もなく、あっという間に姿を消して移動できる銀時に霖之助が感心していると霊夢が首を横に振る。

 

「アイツの力は”その程度のモン”じゃないのよ、アイツの力は正真正銘常軌を逸してるわ」

「霊夢がそこまで言うなんて珍しいじゃないか、彼は一体どんな能力を持っているんだ」

「めんどくさいから言わない、説明しにくいのよホント」

 

あっけらかんとした感じでそう言うと霊夢はボリボリと後頭部を掻く。

 

「ホントわけわからない力なの、紫が言うには「あの人の力は私とあなたの丁度真ん中辺りにあるような力なのよぉ」だとは聞いたんだけど。上手く説明してもらいたいなら紫にでも聞けばいいと思うわ」

 

あまり似てない紫の口調を真似した後、めんどくさそうにそう言いながら他人任せにする霊夢を見て霖之助は思わずフッと笑ってしまった。

 

「やっぱり君と彼はどことなく似ているな、掴み所が無いというかフワフワと漂う雲の様な所が」

「霖之助さんそれはさすがに怒るわよ。絶対似てないから」

「あくまで客観的な判断だよ、気にしないでくれ」

 

銀時に似てると言われてムスッとした表情を浮かべる霊夢に霖之助がまだ笑っていると

 

店のドアがゆっくりと開いた。

開いたドアから一人の人物がスッと中に入って来ると二人はそちらに顔を向けた。

 

「おや、珍しいなこんな時間に君が来るなんて」

「アンタ二日酔いが酷いとかで家で寝てるとか言ってなかった?」

 

現れた人物は二人と顔見知りだった。

 

 

 

 

 

それから数分後の事

 

「おーい戻って来たよー。財布取りに行ったついでに小便済ませてきたわ」

「あら今頃戻って来たの? もう遅いわよ」

「へ?」

 

店内に財布を持ってパッと現れた銀時に対し、待ってくれていたのか霊夢が悲しいお知らせを彼に伝える。

 

「アンタが戻ってくる間にジャンプ買いに来た奴が来てあっという間に持ち去って行ったわ」

「はぁ!?」

 

目を見開き驚く銀時に今度は霖之助が平然とした様子で

 

「ツケ払いでね」

「あんの盗人魔法使いがぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ここはあらゆる所から流れてきた商品を扱う香霖堂。

ツケ払いが出来るのは店主の知り合い二人のみ。

もしここに来るときはちゃんと財布を持っておくように

 

 

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