銀輪蓮廻魂≼⓪≽境東夢方界   作:カイバーマン。

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#43 マパ霊紅紫妹夢パマ

八雲銀時は妻である八雲紫、元色々と関係のあった不死身の元人間の藤原妹紅、それとおまけでアリス・マーガトロイドを連れてとある場所の前に立っていた。

 

「いやいや、それでなんで私の神社に来るわけ?」

「人里でコイツ等が暴れてみろ、この幻想郷にどんだけ被害を与えるか容易に想像できるじゃねぇか」

 

八雲銀時が話しかけているのは、博麗神社の巫女である博麗霊夢。

 

腕を組んでしかめっ面を浮かべる彼女に、銀時がバツの悪そうな顔で髪を掻きむしる。

 

「どうせ周りのモンぶっ壊すんなら、大した被害にもならねぇここで好きに暴れれば良いと思ってよ」

「それは私に対する宣誓布告と思っていいのかしら? 買うわよ? 全力で買ってアンタに勝つわよ?」

 

自分が蒔いた種で争い始めようとする女達を連れて来て厄介事に関わせようとするばかりか、あまつさえ自分の寝床を戦場にしようと企んでいた銀時に、霊夢は仏頂面のまま拳を掲げて威嚇してみせる。

 

「こちとら夕食の準備で忙しいのよ、アンタが地獄で持ってきたお土産の「地獄草」を煮込んでる最中だってのに」

「え、あのずっと奇怪な声で泣き叫ぶ口が付いている変なモンを食う気なのお前? 俺洒落であげただけなんだけど?」

「いや食う気とかじゃなくてもう既に食べてるから私、煮込めばいいダシが出るのよあの草、干したヤモリを入れればなお味が良くなるし」

「そこまでいくとたくましいというより、もはやお前を人間としてカウントするかどうか悩むわ俺」

 

霊夢の食事事情には度々ツッコミを入れていた銀時であったが、いくらなんでも地獄産の植物を躊躇なく煮込んで口に入れているとは思ってもいなかった。

 

少しずつ人間離れして来ている彼女に銀時がやや心配そうに死んだ目で見つめていると、ふと霊夢が彼の背後にいる者達の方へ視線を傾ける。

 

「それよりアンタの後で紫と妹紅がメンチ切り合ってるわよ、止めたらどうなの?」

「ん? ああ心配すんな」

 

銀時の背後では紫と妹紅が真顔で無言のまま、静かにただジッと顔を近づけながら見つめ合っていた。

 

その光景に霊夢がやや危機感を覚えていると銀時は安心させるかのように

 

「睨み合ってるまでならまだ可愛いモンだ、ほっとけほっとけ、もういちいち止めるのもめんどくせぇ」

「そもそもアンタのせいでしょうが」

「どちらかが先に手を出したらもう誰にも止められねぇけど、その場一帯が焦土と化し生き物全てが死に絶えるだろうけど」

「それだけ聞けばもう心配しかしないわ! ちょっと私の神社の外で戦争おっ始めようとしないでよ!!」

 

真顔で恐ろしい結末を語り出す銀時にツッコミを入れつつ、霊夢は止める気のない彼を押しのけて自ら紫と妹紅の方へ歩み寄る。

 

「いい加減にしなさいよアンタ達! 頭冷やしてアンタ達が争ってるその原因についてよく考えてみなさいよ!」

 

大妖怪と不死者が相手であろうと平然と思った事を口に出来るのが霊夢の強い所である。

 

そして彼女は二人に啖呵を切ると、ピッと自分の背後にいる銀時を親指で指さしながら

 

「アンタ達が取り合ってるのは”アレ”よ、ぶっちゃけ争う価値があると思うのあのバカに?」

「霊夢ちゃん! いきなり流れ弾が飛んできたよこっちに!!」

 

はっきりと正論を述べる霊夢とその後ろで叫ぶ銀時。

 

そんな二人に先程まで睨み合っていた紫がようやく振り返ってため息を突いた。

 

「そりゃ私だってあの人なんかの事でこんなに熱くなるなんてアホらしいとは思ってるわよ」

「あの人なんかって言った!? テメーの旦那の事をあの人なんかって言った!?」

「でもこの女が妙にウチの人にしつこく付き纏うもんだから、つい負けじと対抗してしまうのよね」

 

少し落ち着いた様子で軽く旦那をディスりながら呟く紫に、隣にいた妹紅がフンと鼻を鳴らしながらチラリと霊夢の方へ横目をやる。

 

「コイツは私の方がしつこく付き纏うとは言っているがな霊夢、ぶっちゃけ千年前はコイツの方がずっとこの男に付き纏っていたんだぞ」

「ああ、それは萃香に聞いた事あるけど……」

「それで根負けしたこの男が仕方なく結婚してやったんだ、紛れもなくストーカーはコイツの方だよ、それもかなり悪質な」

「ウチの人は根負けしたから私と結婚したわけじゃないわよ、年月を重ねる内に誰と共に人生を送るべきかキチンと選んだ結果だから、自分が捨てられたからって私の事をストーカー扱いしないで欲しいわね」

「黙ってろ、今私は霊夢と話してんだ、口を挟むな妖怪風情」

 

向かいにいる紫が霊夢との会話の途中でしゃしゃり出て来たので、妹紅は不機嫌そうに彼女を黙らせると改めて霊夢の方へ振り返った。

 

「なんつうかお前も大変だな霊夢、こんな奴が親代わりで。最近ちゃんと飯食ってるのか?」

「食べてるわよ、虫とか草とか水とか」

「現代社会じゃそりゃまともに食べれてるって言わないんだよ、仕方ねぇ今度またタケノコ持って来てやるか」

「マジで!? 久しぶりに固い物が食べられるわ!!」

 

さり気なく食料を提供する事を約束する妹紅に嬉しそうに歓喜の声を上げる霊夢。

 

そんな二人のやり取りを見て銀時はある事に気付く。

 

「おい「また」ってどういう事だオイ、もしかしてお前、前にも霊夢の奴に食べ物とか与えてたのか?」

「ずっと前からたまにな、お前等がロクな食べ物与えないって聞いてたからさ、不憫に思って私が畑で採れたモン上げに来てんだよ」

「何それ俺知らなかったんだけど……」

「霊夢には私から言うなって釘を刺しておいたんだよ、お前に教えたらいずれそこの妖怪の耳にも届いて面倒事になるだろ?」

 

自分達の知らぬ所で勝手に霊夢に食べ物を提供していた事を初めて知った銀時が微妙な表情を浮かべていると

 

紫もまた心底面白くなさそうな表情で妹紅にジト目を向ける。

 

「大方まずは外側から攻略しようって魂胆だったのでしょ、霊夢を自分に懐かせていずれはウチの亭主も攻略しようとか企んでたって所ね。昔からよくある汚い手口よ」

「言っておくけど私はあくまで腹を空かしたコイツを哀れんだから施しを与えていただけだ、お前等の娘同然だからとかそんな事は関係なくただ個人的に前々から気になってただけだ」

「口でならなんとでも言えるわ」

「あーそういや昔からよくある汚い手口で思い出したけど、自分に構ってくれない男を振り向かせる為に、男の上司に散々自分が男の正妻だとアピールしていた滑稽な大妖怪様がいたっけな?」

「……」

 

耳の上を掻きながら口元に笑みを浮かべて、どこぞの妖怪が千年以上前に行っていた事をポロッとバラす妹紅に

 

紫はジト目を止めて本気で殺意の込めた目つきで睨み付ける。

 

「それ以上その口滑らせるとダルマにして永遠に地底の更に底に沈めるわ」

「おうやってみろよ、逆にお前を灰になるまで何万回も燃やし尽くしてやる」

「待った待ったアンタ達ストップ! 私の神社で面倒事起こすなって言ったでしょ!!」

 

再び二人の間で熱い火花が散らし始めていると、すぐに険悪なこの状況を察した霊夢が慌てて二人の間に入って止める。

 

この二人が暴れたら流石に本気で洒落にならない。 

 

「全く、そもそも紫の事も妹紅の事も私は母親だとかそんな感覚持った覚えは一度も無いわよ、小さい頃はアンタの式神の藍に対してそういう幼心はあったかもしれないけど」

「おい、妹紅よりも先にテメーの式神に母親のポジション奪われてるぞ」

「そういえば霊夢は赤ん坊の頃からほとんどあの子が育ててたわね、私も一応やってはいたけど」

 

生みの親がいない彼女にとっては一応銀時と紫は育ての親的なモノなのかもしれないが

 

実の所彼女をここまで育て上げてくれたのは彼等よりも、式神である八雲藍の功績の方が遥かに大きかった。

 

「とにかく、私には親とかそんなモンは必要ないから。こうして一人で自由気ままに生きてる方が割に合ってるのよ、だからこれ以上この場で不毛な争いをするのは止め……」

 

ドライ気味にそう言って霊夢が二人を上手く黙らせようとしていると、彼女の背後にある神社兼自宅である屋敷の戸がガララッと勢いよく開いた。

 

「ちょっと霊夢、さっきからずっと呼んでるんだけどどうして返事しないのよ、ご飯冷めちゃうでしょ早く食べなさい」

「え? ってちょっと何してんのアリス!?」

 

戸を開けたのがまさかのアリスだった事に霊夢はギョッと目を見開く。

 

いつの間に自分の家に入り込んでいたのだろう……

 

 

「さっきから姿見えないと思ってたらなんで私の家にいんのよ! てかご飯ってどうゆう事!? もしかして勝手に家に入り込んだ上に料理までしてたの!?」

「あんま時間無かったからパパッと出来るモンしか作れなかったわ、カルボナーラと牡蠣のガーリックソテー、ミネストローネスープにマッシュルームサラダ、それとデザートのカスタードプリン」

「うっそぉなんなのその横文字一杯のフルコース!? 私の乏しい食生活では全然想像の付かないメニューだわ! ていうかプリンってアレ!? 噂に聞く幻の黄色くて甘い食べ物!?」

 

めんどくさそうにしながらもスラスラと一度も噛まずに自分が作ったと主張してみせる料理の名前を聞いて霊夢は目を丸くさせて驚愕を露にする。

 

そんなモノ彼女は生まれてこの方一度たりとも食べた事が無い。

 

「ちょ! ちょっとどうしたんであられますかアリス様! あなた様が私の家でわざわざ料理作ってくれるなんて初めてじゃござりませんか! ていうか本当に作ってくれたのですか!? 作ったんならそれを食べてよろしいのでございますか!?」

「まあ当然の事をしたまでの事よ、てかあなたが慣れない敬語使うと凄い違和感覚えるから止めて頂戴」

「玄関からでも嗅いだことのない匂いが飛んでくるわ……アリス、アンタまさか本当に私の為に……マジで感謝するわ本当にありがとう」

「ところで霊夢、さっきから私の事を名前で呼んでるけどどういうつもり?」

「……へ?」

 

久しぶりにまともな食事を取れる事に心の底から喜んで思わず変な言葉遣いになる霊夢。

 

しかし珍しく率直に礼を言う彼女に対し、アリスは不機嫌そうに鼻を鳴らすと

 

「私の事はちゃんと「ママ」か「お母さん」と呼びなさい、もしくは「マミー」でもいいわ」

「アンタも母親候補にエントリーしてたんかい! 私の為にご飯作ってくれたのはその為!?」

 

平然とした様子で腕を組みながら自分の事を娘扱いしてきたアリスに霊夢は素っ頓狂な声を上げながら叫んだ。

 

するとアリスはいきなり沈んだ表情を浮かべて

 

「だって仕方ないじゃない……片方は正妻でもう片方はずっと昔に恋仲だった人……それに比べて私はまだなんにもあの人を振り向かせる要素が無いの!! もうこうなったら母親になるしかないじゃない!! 母親になってあの人と一緒にあなたを真心込めて育てるしかないじゃない!!」

「いやその理屈はおかしい!」

「だから霊夢」

 

何やら彼女なりに色々と悩んでいたらしいが、その結果がコレとは如何なものかと霊夢がツッコむも

 

アリスはガシッと彼女の両肩を強く掴みながらそっと微笑み

 

「これからは私もここに住むわ、それで一緒にお父さんが帰って来るのを待ちましょう」

「アンタ暴走するといつも来世の方向につっ走ろうとするわね!! 頭冷やして冷静になりなさいよ!」

「これからずっと私の事をママと呼んでくれるなら、毎日あなたの為にご馳走作ってあげるわよ」

「……」

 

極貧生活でひもじい思いをしている霊夢には効果てきめんの交換条件、笑いかけながら良い話だろと誘って来るアリスに霊夢は真顔になって固まると……

 

「い、いや無理! やっぱ無理!! 流石にそれだけは出来ないから! ご馳走は死ぬ程欲しいけどなんかそれをしたらもう引き返せない気がする!!」

「おう、よく言ったじゃねぇか霊夢」

 

ちょっと迷いはしたが首をブンブンと横に振ってアリスからの誘惑を断ち切る事に成功した霊夢

 

するとアリスの背後、つまり家の玄関から銀時がズルズルと音を立てて皿に乗ったカルボナーラを食べながら戻って来た。

 

「伊達に博麗の巫女を名乗ってるだけはあるな、魔女との取引に応じないたぁお前も成長したな」

「アンタはアンタで何勝手に人の家上がり込んでモノ食べてんのよ……何その白くて長いの? ラーメン?」

「いやカルボナーラに決まってんだろ」

「カルボナーラってラーメンだったの? 知らなかったわ」

「嘘だろコイツ……」

 

キョトンとした表情で銀時が何を食べているのかよくわかっていない様子の霊夢。どうやらカルボナーラという存在そのもの自体よく知らないらしい。

 

確かにこの幻想郷では珍しい類の料理ではあるが……彼女は決して頭は悪くない、むしろ賢い方だとは思っていたが生まれてこの方あまり良い食べ物を食した経験が無いのが仇となり、その辺の知識についてはとことん疎いらしいのが初めて分かった。

 

「今後はお前の食生活について真面目に考えた方が良いのかもしれねぇな、育ち盛りだし……ところで紫と妹紅の奴の戦争は終わったのか? 被害状況はどんぐらいだ? 何人死んだ?」

「誰も死んじゃいないわよ、今の所はただ睨み合ってるだけだけど、このままだと一触即発よ」

「……しゃあねぇな」

 

フォークでつまんでカルボナーラを一口頬張りながら銀時はまだ睨み合いながら何かブツブツと毒を吐き合っている紫と妹紅を見てふぅっとため息。

 

「酒でも飲ませて酔わせてみるか、それで大人しくなるかはわからねぇけど。おいアリス、ちょっくら人里行って酒買って来い、金はこっちで出すから」

「はいパパ」

「パパ!?」

 

アリスが真顔でまさかのパパ呼びだった事に銀時が驚きつつも、彼女は気味が悪いぐらいに自分の指示に従って人里へと向かう為に神社の階段を降りて行くのであった。

 

「……パパってどういう事だオイ」

「知らないわよパパ」

「え!?」

 

素知らぬ顔で言いながらもしれっとパパと呼んで来た霊夢に銀時はまたもや驚き言葉を失う。

 

自分が見てない所で一体何があったのだろうか……

 

銀時も疑問もよそに、ギスギスした飲み会が博麗神社で幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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