銀輪蓮廻魂≼⓪≽境東夢方界   作:カイバーマン。

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天人ではありますが天人ではありません、何言ってるかよくわからないと思うけど


#48 銀天時子

博麗神社に暗雲が差し込んでる中、人里にもまた新たな脅威が迫り込んで来た。

 

「思い切って下界に降りてみたけど、なるほど、下々の存在も随分と楽しく暮らしてるみたいね」

 

慌ただしく動いてる人間達を観察するかのように眺めながら歩く少女が一人。

 

長い青髪を揺らしながら優雅に、そしてナチュラルに一般庶民を見下す彼女は実はこの幻想郷に住む者ではない。

 

 

比那名居天子

天界という雲の上に住む天人で、比那名居一族の娘。

 

天人というのは天界の神々から認められ、天界に住む事を許された元人間の事を指し、決して宇宙人を指す言葉では無い。

 

名家のお嬢様という事もあってワガママで自己中心的、何より自由奔放な性格の為に他の天人から不良娘として扱われ半ば邪険に思われている。

齢数百歳以上。その理由は単に寿命が長いのではなく、死神を追っ払っているため。死神に負ければ死ぬからである。

 

彼女の帽子に付いている桃の実は仙果と呼ばれ、神仙に霊力や不老長寿を与える実とされており、天人の主食でもある。

 

しかし彼女曰く「これぐらいしか食べるモノが天界にないからぶっちゃけもう飽きてる」らしい。

 

「天界の退屈な生活、しつこい死神との戦い、腐るほどある桃、そういうのにウンザリしてたから気晴らしの下界バカンスも悪くないわね」

 

退屈な生活に嫌気がさしていた常日頃からこの幻想郷の地に降りてみたいと思っていた。

 

そして今日は周りの目が届いてないほんの僅かの隙を突いて、半ば天界から脱走した身で呑気に遊びに来ていたのだ。

 

「立川とかいう場所で長期休暇取ってる仏と神の息子の気持ちが少しわかった気がするわ、ん?」

 

上機嫌な足取りで橋の上を歩いていたその時、天子は橋の下の河原で何かを見つけた。

 

銀髪の天然パーマの男が人一人分は入るであろうドラム缶を用意して

 

黙々と中に河原の石を拾って詰めているではないか。

 

「何かしらアレ、普段は下民風情のやってる事なんかどうでもいいけど、せっかく下界に舞い降りたんだから話でも聞いて来ようかしら」

 

無言でより重そうな石を選んでドラム缶に入れていくその男に興味を持ち、下界バカンスで気分の良い天子は河原の方へと歩いて来た。

 

「ちょっとそこの天パ頭、こんな河原で一体何の儀式をしているのかしら?」

「あ? なんだお前、この辺じゃ見かけねぇツラだな」

 

銀髪天然パーマの男がドラム缶に手を置きながら振り返る。

 

その人物は幻想郷の管理人・八雲紫の夫の八雲銀時なのだが

 

下界の知識にはてんで疎い天子は相手が誰なのかわからずに腕を組みながら得意げに鼻を鳴らす。

 

「私の名は比那名居天子、天人よ」

「天人? あー神様の気まぐれのおかげで天上界に住むことが出来た成金共か」

「私を前にしてどストレートに失礼な事言ってくれるわね……」

「で、そんな神様の下僕共が何しに幻想郷に来てんだ? 悪いけど今俺忙しいからよそ行ってくんない?」

「私が来たのはただの気晴らしよ、そして私が今気になってるのはそれ」

 

死んだ魚の様な目で天人の事を成金風情、神様の下僕と片付ける銀時に少々カチンと頭にきたものの

 

天子はそんな事よりも彼が手を置いているドラム缶をビシッと指差した。

 

「アンタがやってる怪しげな行為がなんなのか教えなさい」

「……いや別に怪しい事なんてやってないんで」

「はぁ? どっからどう見ても怪しいでしょ、ちょっとそのドラム缶なんなのよ中身見せて……」

「いやいやホント危ないから近づかないで、怪しい事なんてしてないって言ってんだからさっさと向こうに……」

 

尋ねた瞬間銀時はあからさまに目を逸らして何かを隠してる様子だった。

 

それを見抜いて天子はサッとそのドラム化の方へと駆け寄って中身を見ようとが銀時は彼女の首根っこを掴んで引き離そうとするも……

 

ドラム缶の中身をほんの少し除く事に成功した天子はあるモノを目にする

 

ギチギチに縄できつく縛り付けられ、口にピッタリとガムテープを張りつけられた

 

妖怪の山の鴉天狗・パパラッチの射命丸文の姿を

 

「んんー!!!」

「え、あのちょっと……今この中に明らか妖怪がいたんだけど……」

「……いないよ」

「んー!!!」

「いやいるでしょ! さっきからんー!って涙目で叫んでるじゃない!」

「そう? 俺は何も聞こえないけど?」

 

銀時にすぐにドラム缶から引き離されたが天子はハッキリと見た。

 

妖怪が一匹身動き取れない状態で涙目で必死に助けを求めているのを

 

しかし銀時は問い詰めて来る天子に手を横に振りながらすっとぼけた態度を取りながら足元にあった大きな石を両手で拾って

 

「ほーらやっぱり中には誰もいないじゃないですかー」

「んぐほッ!」

「いや呻き声上げたわよ! 重い石をほおり投げられてんぐほッ!って叫んだわよ絶対!」

「あーはいはいわかりました、じゃあいいよ中にいるって事で」

 

指を突き付けながら叫んでくる天子に銀時は諦めた様子でため息を突くと、突然キッとした目つきで彼女に向かって

 

「けど今見てるモノは誰にも言うんじゃねぇぞ……言ったらお前もこの淫獣鴉と共に川の底に沈める」

「淫獣鴉と共にって……てか沈める気だったのそれ! 川の底なんて浅いんだからすぐバレるでしょうが!」

「いいんだよ、見つかるまでに中の奴が水死してくれれば」

「……その妖怪となんかあったのアンタ」

「いいえ何もありません、決して何もなかったと誓います、神に誓います、妻に誓います」

「そう何度も誓われると逆になんかありましたって白状してるモンよ……」

 

光の無い目で何度も誓う誓うとブツブツ呟き始める銀時に天子が若干引いていると、彼はコキコキと肩を鳴らしながら

 

「なんか石詰めるの疲れたわ、ちょっとお前やってくんない?」

「この期に及んで私を共犯にする気!?」

「大丈夫、中の奴が暴れても石でぶっ叩けば大人しくなるし、さあ遠慮せずにどんどん投げ入れなさい」

「ぐほーッ!」

「……そこまで殺したがるって事は余程の事があったんでしょうねきっと」

 

ドラム缶の中の文がまたなんか叫んでいるのもお構いなしにどんどん石を投げ入れていく銀時の持つ強い殺意に勘付いて、天子は気になったのでドラム缶へと顔を覗かせると中へと手を伸ばし

 

「はい、これで喋れるでしょう」

「ぷっはーッ! 誰だか知りませんが助かりましたーッ!」

「あ、テメェ! なに勝手な真似してんだ!」

「アンタが事情を言おうとしないから直接こっちに聞こうと思っただけよ」

 

射命丸の口を塞ぐガムテープをビリッと引き離して彼女から話を聞く事にした天子。

 

勝手な真似をされて怒る銀時をよそに、天子は文を見下ろしながら腕を組み

 

「で? アンタこの男となんかあったの!?」

「はい! キッスしました!」

「……え?」

「この男が妻に隠れて不倫しているという証拠をでっち上げる為に私のファーストキッスをあげてそれを記事にしようとしました! しかしコレは決して悪意があった訳ではなく純粋なる記者魂に従っただけであり私はなにも悪く……!」

 

尋ねたこちらに向かって文はやや早口で洗いざらい全て吐き出すかのように事の経緯を教えて来た。

 

そう、全ては彼女がこの銀時という男を利用して記事をでっち上げる為にやらかした事。

 

その話を聞き終える前に天子はそれを静かに諭すと……

 

「ふん!!」

「あぁぁぁぁぁぁぁ!! がばぁぁ!!」

 

ドラム缶から文を両手で引っこ抜いて、そのまま川に向かって全力でぶん投げた。

 

突然の出来事に文は叫びながら川の底に頭からダイブし、ゴン!という鈍い音を立てた後、プカーっと背中から浮いて静かに下流に流されていくのであった。

 

「……アンタが殺したい気持ちはなんとなくわかったわ」

「おい何勝手にアイツを放してんだ、アイツを野放しにしてるとまたなんか企みそうじゃねぇか」

「そうだったわね、ついノリで思い切り投げちゃったわ」

 

せっかくこの世から抹殺してやろうと目論んでいた銀時の計画がパーである。

 

しかし天子は全く悪びれもせずにフンと鼻を鳴らした。

 

「しかしこの幻想郷ってのはホント天界とは大違いね、まさかこんな太陽も昇ってる時間から河原で妖怪一匹を殺そうとする男に出くわすなんて」

「こんな事幻想郷じゃ日常茶飯事だ、むしろ最近は平和続きで割と充実してるんだよ。天界から来たのは別に構わねぇが、余計な災厄も連れ込んで来るならあの鴉の様にテメェも駆除されるって事は覚えとけ」

「あら下民の分際で私に勝てると思ってるの? どっからその自信が現れるのかは知らないけど発言には気を付けた方がいいわよ、こちとら最強の死神と何十年も殺し合いを続けて来た……」

 

外部から余計な面倒事を持ち込まれてはたまったものではない

 

けだるそうな顔つきをしながら天子に警告をする銀時だが、彼女はやれやれと首を横に振りながら自分がいかに強いかを証明してやろうとしていると……

 

「おーい八雲の旦那ー! 大変だ―!」

「ああ?」

「なによあの金髪の魔女っ娘」

 

いきなり上空から叫び声が聞こえてくると思ったら、銀時と天子の所に箒に跨った一人の少女が目の前にスタッと着地した。

 

博麗霊夢の悪友・霧雨魔理沙である。

 

「やっと見つけたぜ、アンタこんな大変な時にどこで油売ってんだよ」

「市民の平和を守る為のゴミ掃除だ、テメェこそなんだいきなり」

「実は博麗神社にとんでもねぇ奴が来ててさ……」

「博麗神社にとんでもねぇ奴なんざひっきりなしにやってくるのがデフォルトだろうが」

「いやいや今回は更にヤバいって、なんつうか雰囲気が別物なんだよ」

 

魔理沙に対しては何かと嫌悪感を示す銀時、顔を合わせて早々しかめっ面で追い払おうとするが

 

珍しく彼女も額から汗を流して焦っている様子だった。

 

「そいつがアンタを連れて来いって言って来てさ、そんで私が仕方なく人里を飛び回ってようやく見つけたって訳だぜ」

「そっちから俺に使いを出して呼びつけてくるたぁふてぶてしい野郎だな……で、そいつの名前は?」

「ああ、「俺の名前を出せばあの野郎はすぐに食いつく」って言ってたからちゃんと覚えてるよ名前は確か……」

 

向こうから呼びつけて来る真似なんてされて銀時はますます不機嫌な様子。

 

魔理沙にその人物の名前を尋ねてみると、彼女は人差し指で頭を突きながらしばしの間を置いて……

 

 

 

 

 

 

「あー”高杉晋助”確かそんな名前だったな」

「な! まさかあの高杉か!?」

「なんだやっぱり知り合いか?」

「あの野郎……いきなりこっちに来て俺を呼びつけるとはどういうつもりだ……」

 

高杉晋助、その名前に敏感に察知して目を大きく見開いて驚く銀時。

 

彼にとってはよほど関わりのある人物だったらしい。

 

しかし高杉の登場により苦々しい表情を浮かべる銀時の背後で

 

何故か天子がしかめっ面で舌打ち

 

(アイツまさか私を追いかけに来たっての? どんだけ私に対して執着してるのよったく……モテる女は辛いわ~)

 

内心そんな事を思いながら天子はそっと二人から距離を取ろうとしたその時

 

慌てた様子で魔理沙が口を開いた。

 

「つうか本当に何者なんだあの男、いきなり神社に来たかと思ったらアンタを呼んで来いって命令してくるし、挙句の果てには霊夢の家に勝手に上がり込んでやがったぞ」

「年頃の娘の家にいきなり押しかけてくるたぁふてぇ野郎だ、しゃあねぇ、霊夢が半ば人質にされてる様なモンだこっちから……」

「高杉が年頃の娘の家にいるですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

「うおわ! なんだよお前いきなり!!」

 

高杉が霊夢の家にいると聞いては流石に出向かない訳にはいくまい。

 

渋々銀時は博麗神社へと出向こうとしたその瞬間

 

背後でコッソリ逃げようとしていた天子が彼等の方へ振り向き物凄い形相で叫び出したのだ。

 

「どういう事よそれ!! 私を放置してなにアイツ別の娘の家に遊びに行ってるのよ!! あり得ないでしょ!! この私が近くにいるのに違う女といるとか……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「だからなんなんだよお前! もしかしてお前高杉の事知ってるのか!?」

「当たり前でしょ! 私とアイツはずっと昔からほぼ毎日一緒にいたんだから! 私がどんだけ引き離そうとしてもアイツはその度に私に付き纏って来る!! そう!!」

 

狂ったように喚き散らす天子に銀時と魔理沙が表情をこわばらせていると、彼女は自信満々に胸を張りながらスゥッと息を吸って

 

 

 

 

 

 

「あの男は確実に私の事が好きで好きでたまらないのよ!!! 殺したいほど大好きな私を放置して別の女に鞍替えなんて断じて許さん! ジーザス!! そこの金髪銀髪コンビ! 私をその神社に案内しなさい!!」

「おい八雲の旦那、一体誰なんだコイツ……」

「俺だって知らねぇよ……とりあえず高杉の野郎となんらかの関わりがあるみたいだし、連れてってみるか……」

 

幻想郷に舞い降りた二つの凶星によって

 

新たな波乱が巻き起こる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




死神と天人が共に幻想郷を焦土と化す

消えゆく我が故郷に遂に銀時の怒りが爆発

大妖怪に封じられた能力をいま解き放つ時が来たのだ

死神降臨編、仲間の死を踏み抜いてでも前に進むべし……
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