銀輪蓮廻魂≼⓪≽境東夢方界   作:カイバーマン。

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#53 時妹紅藍銀紫

「おう、奇遇だなこんな所で会うなんて」

「……」

 

一人夜の人里をブラブラと歩いていた八雲銀時の前に、自分と同じく暇そうにしていた藤原妹紅とバッタリ鉢合わせした。

 

銀時はいきなり現れた彼女に頬を引きつらせて言葉を失うも、すぐにそそくさと彼女の横を通り過ぎようとするが

 

「っておい、無視はないだろ無視は」

 

逃げようとする彼の腕を掴んで、妹紅は横目を向けながらまた話しかける。

 

「今日は月も綺麗な事だし、丁度飲みたいと思ってた所なんだよ、付き合え」

「いやお前さ……それ意味わかって言ってるの?」

「何が?」

 

自分の腕を離そうとしない妹紅に飲みに行こうと誘われるものの、銀時は浮かない表情で彼女にそっぽ向いたまま

 

「お前紫の奴に完全に目ぇ付けられてるのに、それでもなお俺を飲みに誘うって頭おかしいだろ!! 流石に銀さんもフォロー出来ないよ! なに死にたいの!?」

「いや死ぬに死ねん身体だが?」

「不死身の身体に飽きたからいい加減死んでみたいと思った訳!? なら頼むから一人で死んでくれよ! 俺はこれからもずっと自由気ままに生きていたいんだよホント!」

「私があんなメンヘラ女に殺されると思ってるのか? いくらスキマを操る大妖怪だからってそう簡単に不死者は殺せないだろ」

「仮にお前が死ななくても幻想郷が滅ぶんだよ! アイツの嫉妬ナメんなよ! 千年前はアイツホントヤバかったんだから!!」

 

このまま能力を使えば自分だけでなく、腕を掴んでる妹紅も一緒に転移してしまう。

 

仕方なく銀時は逃げるのを諦めた様子でため息を突くと、クルリと彼女の方へと振り返った。

 

「ぶっちゃけお前の事は好きか嫌いかと問われると好きだよ? だって同じ不死者だし話は合うし気を遣う必要もないし、けどね、それだけじゃ世の中そう甘くないんだよ、例え俺がお前の事を気に入ってようが、俺の愛するカミさんがお前の事を心底嫌ってて、俺に対して「アイツと付き合うな」と言うのであれば、俺はそれに従わぜるを得ない状況なんだよ」

「もしかしてお前、夫婦関係だとアイツの方が上なのか?」

 

確かに幻想郷を取り仕切っているのは実質紫だけでやってるし

 

方は年中フラフラして遊び歩いてるだけの暇なヒモ旦那

 

彼がそう感じてるのも仕方ない

 

「一応己の立場を自覚していたんだな、意外だったよ、何も考えずに充実したヒモライフを送ってると思ってたんだが」

「うるせぇ何がヒモライフだ! これでも銀さんめっちゃ働いてるんだからな! この前なんか天界からやって来た死神と天人を追い出してやったんだぞ!」

「その天人、またこっちに降りて来て平然と人里の寺子屋に遊びに来てたらしいぞ、友人の半妖から聞いた」

「うっそアイツまたこっちに逃げて来たのかよ! てことは高杉まで!?」

「そこまでは知らん、私はお前や紫、博麗の巫女と違って外からの来訪者にはてんで興味ないんでね」

 

唯一の友人である寺子屋で教師を務める半妖から聞いた所によると、どうやら例の天人はまたこっちに脱走して来たらしい。

 

それを聞いて銀時は顔を抑えながらため息をこぼしていると、妹紅はグイグイと彼を引っ張り始める。

 

「まあそんな事よりも、さっさと飲みに行くぞ飲みに」

「だから俺は嫌だって言ってんだろ! お前と一緒に飲んだ事が紫にバレると間違いなくめんどくせぇ事になるんだよ! 頼むよ! 察してくれよホント!」

「もうそういうのいいから、ホントは一緒に飲みたいのは私がちゃんとわかってあげてるから」

「お前が単に飲みたいだけだろ! 頼むから俺の事はそっとしておいてくれぇ!!」

 

必死に嫌がり始める銀時の腕を掴みながら、どこか美味い飲み屋でもないかと探索し始める妹紅であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数分後、銀時は妹紅に無理矢理連れられ近くの酒場に来ていた。

 

「なぁ、最近あの女おかしくないか?」

「おかしいのはお前だろ……言っておくけどコレ一杯飲んだら俺すぐ帰るからな……」

 

カウンターに二人で座りながら、渋々飲み始める銀時に不意に妹紅が口を開く。

 

「この間までは私がお前に近づく事さえ出来なかったのに、ここ最近では簡単にお前に近づけるばかりか、こうして一緒に飲む機会まで出来た、不思議だと思わなかったのか?」

「……まあ正直アレ?っとは思ってるけど、別におかしくはねぇよ、最近のアイツは今頃家で寝てるし」

「まだ日はそこまで暗くなってないぞ」

「アイツは寝るのに朝も夜も関係ねぇよ、寝てぇ時に寝るんだアイツは。一日中寝る事だってよくある事だしよ」

「……」

 

コップに注がれた酒をクイッと飲みながら銀時が答えると、妹紅は顎に手を当て神妙な表情を浮かべる。

 

「それってここ最近の話か?」

「いや昔からたまにそういう日があるんだよ、でも一緒に地獄観光から帰った辺りから、妙に家に籠る日が増えて来たなそういや」

「なるほどな……」

 

そういえばここ最近紫は寝る機会が増えて来た、しかも段々と寝る時間が増えて来てる様な……

 

妹紅の質問でそれに気付き、銀時もまた表情に若干険しさが浮かぶ。

 

「なあ妹紅、妖怪の寿命ってどのぐらいだっけ?」

「知らん、けどあの女と近い年代の妖怪は今も活発に動き回ってるだろ? 年を取って衰えたって訳ではないだろきっと」

「だよな、アイツが病気にかかった事なんかも聞いてねぇし……寝る時間が増えたのは単なるアイツの気まぐれか?」

「なんだ急に心配になったのか? 確かに私達と違ってアイツは長命と言えど不死身じゃない、いずれは私達より先に死ぬ存在だからな」

 

コップをカウンターに置きながら考え込む銀時に、妹紅はニヤリと笑いながらカウンターに頬杖を突く。

 

「だがアイツはそう簡単に死ぬようなタマじゃないだろ、もしかしたらなんらかの方法で不死になれる力でも手に入れて、お前と永遠に添い遂げたいとかそんな野望ぐらい抱えてそうだしな」

「まあそうだよな、俺が心配しても「なに馬鹿な事言ってるの?」って言いながら呆れた顔浮かべるのが目に浮かぶわ」

「あーそうだ辛気臭い話はもう止めよう、酒がマズくなる。私としてはアイツが死ぬのがこの上なく喜ばしい事だが、お前にとっては何よりも恐れてる事態だからな、こんな話したくないだろ?」

「……相変わらず気を遣うのは上手いなお前、不安にさせたのもお前だけど」

「私はただ気になったからお前に聞いただけだ、悪意はない」

 

長年のよしみで銀時を上手く安心させるような事を言ってあげる妹紅。

 

と言っても彼女自身はただこうして彼と飲みたいのであって、別の女の話題をするのはこれ以上耐えられなかった、というのが本音である。

 

「よし今日は朝まで付き合ってもらうとするか、親父さんおかわり」

「朝ってお前……てことは俺朝帰りになるじゃねぇか! そんな長居できるか! これでバレたら紫にますます誤解されちまうだろ!」

「おうされろされろ、そしてさっさと別れろ」

「悪魔かお前は! ふざけんな俺はもう帰る!」

「まあそう言うなって」

 

朝帰りなんてしたらそれこそ紫に怒られるに決まっている。

 

急いでこの場を立ち去らねばと銀時が席を立とうとすると

 

そんな彼の肩に妹紅が不意に体を傾けて自分の頭を乗せて来る。

 

「こうして二人で飲むだけでも、私にとっては何百年振りの事なんだぞ。今日だけでいい、どうか今日だけは私に付き合ってくれ」

「……」

 

祈る様に銀時に向かって優しくそんな事を言いながら

 

 

 

 

 

妹紅の両腕はガッチリと銀時の左腕を強くホールドしていた。

 

絶対に逃がさないという、紫に負けない強い執念みたいなモノを感じた銀時は、寒気を感じつつ大人しく立つ事を諦めた。

 

「ったくわかったよ、けど朝までは勘弁してくれよ」

「別にいいだろ仕事してる訳でもあるまいし、ほらコップ出せ」

「しょうがねぇな……」

 

二人だけの飲み会は続行という形となり、妹紅はすぐに彼に向かって酒瓶を向けると、やれやれと言った感じで銀時は置いていたコップを彼女に向かって差し出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺すしかないわね」

 

彼等の一部始終をスキマで捉えていた八雲紫は

 

屋敷の庭の前で座りながら静かに呟いた。

 

ついさっきまで寝ていたのか、服装は寝着のままである。

 

「ここの所寝っぱなしだから油断してたわ……なんなのあの女、どれだけ過去に未練タラタラなのかしら」

 

ボサボサ気味の頭を掻き毟りながら苛立ちを抑え込もうとしつつ、紫は目の前に開いていたスキマを閉じてはぁ~とため息を突く。

 

「ま、それは私も同じ事なんだけど……」

 

頬杖を突きながら思いつめた表情を浮かべる彼女の傍に

 

従者である八雲藍がふと歩み寄って来る。

 

「大丈夫ですか、紫様?」

「大丈夫? 何の事かしら?」

「とぼけないで下さい、ここ最近紫様の就寝時間が伸びている事です」

 

こちらに振り向きもせずにただ前だけ見据える紫に、藍が更に話を続ける。

 

「まさか前に紫様が話されていた”時間”が……もう迫って来ているのですか?」

「……どうかしらね、でもなんだか徐々に感じて来ているのは確かだ」

 

そう言って紫は夜空に浮かぶ月を眺める。

 

そろそろ満月だ、あと二日といった所であろうか

 

あと二日……

 

「もはや自分でも制御できないぐらい身体が勝手に眠る様になっちゃったし……いよいよ”目覚める時”が近いのかもしれないわね」

「では紫様、もしその時が来たら」

「ええ、前に言った通りよ」

 

渇いた笑みを浮かべながら月を眺めつつボソリと呟く紫

 

藍がやや不安そうな目をしていると、そんな彼女にやっと紫が月を見下ろすのを止めて振り返った。

 

「あなたは彼の傍に仕えてあげて、あの人器用だから家事は出来るけど、基本的にめんどくさがりでやろうとしないから、あなたが生活面を支えてあげて」

「はい」

 

まるで彼女に銀時を託すようにそう言うと

 

藍はなんの疑いも無く真顔で深々と頷いた。

 

「それと蔵に置いてある例のアレも……そろそろ出して手入れしておきなさい」

「紫様……! それはまさか……!」

「お願いね」

「……はい」

 

微笑みながら頼んで来る紫に、初めて動揺した様に目を見開く藍だが

 

すぐに彼女の命令を聞いて蔵の方へと向かっていった。

 

「さてと……」

 

一人残った紫は再びスキマを開いて銀時と妹紅の様子を見た

 

二人は酒を飲みながらこれまた楽しそうに盛り上がってる様子。

 

それを見て紫はムカッとしつつも、口元には小さな笑みが

 

 

 

 

 

「最後の夫婦喧嘩をやりましょうか、あなた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そろそろ終わりが見え始めましたね
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