銀輪蓮廻魂≼⓪≽境東夢方界   作:カイバーマン。

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#62 鈴楽美神

人間の子供を誘拐した、返して欲しくば紅魔館に来い

 

といった感じの事が書かれた書状を受け取った八雲銀時と博麗霊夢は

 

霧の湖を超え、そのまた深い霧に覆われた中に存在する大きな館が彼等の目の前に現れた。

 

紅魔館

 

窓も無く内部も見る事の出来ない完全に密閉されたような不気味な屋敷を前に

 

銀時はケッと面白くなさそうに口をへの字にする。

 

「呼ばれたから来てやったのに迎えも出さねぇのかよここの館の主は」

「……迎えはいないけど門番ならいるみたいよ、一応」

「あ?」

 

広大な庭や像を所有する今まで見た事がない程の立派な屋敷を見上げながら銀時が嫌味を言っていると

 

霊夢がふと大きな門の前で何かがいるのを見つけて指を差す。

 

銀時が霧を見通すように目を凝らしてジーと見てみると

 

「おや、客人が来るのは何時振りでしょうね」

「!?」

「しかし残念ながら私は主に何人たりとも通すなと強く言われておりますので、あなた達には……」

 

霧の奥にぼんやりと人影が現れ、そこから聞こえた女性の声に銀時は目を見開く。

 

やはりこちらが来るのを前提に、既に門番を館の前に置いていたのか

 

銀時と霊夢が警戒していると霧はゆっくりと晴れていき、門の前に立っていた人物が遂に姿を現す

 

その正体は……

 

「ここで眠ってもらいますZZZZZZZZ」

「ってオメェが眠ってんじゃねぇかァァァァ! 何もしかして今の寝言!?」

 

門の隣にある壁に背を預け、腕を組んだ状態で両目をしっかり瞑りながら鼻ちょうちんをこれでもかと膨らませている中華風の恰好をした女性。

 

紅美鈴

 

紅魔館の門番を務める凄腕の拳法使いの妖怪。

 

なのだがいつも気を張り詰めた性格をしているおかげで

 

一度その気を緩ますとこの様にどこででも寝てしまうという失態を犯す事が稀にあるのだという

 

銀時と霊夢は先程彼女が言っていた言葉は全て寝言だったのかと理解すると、門の方へと歩み寄ってまじまじと美鈴を見つめる。

 

「ZZZZZ……」

「寝てるわね気持ちよさそうに……」

「寝てません、寝てませんよ……寝てませんからお仕置きは勘弁してくだZZZZZ」

「おい寝ながら寝てる事の言い訳してるぞコイツ……」

 

頭を上下にガクンガクンと動かしながらブツブツ寝言を呟く美鈴に二人は怪訝な表情浮かべた後顔を合わせて

 

「え~と……どうなのかしらコレ? 先に行っていいのコレ?」

「起こしたら起こしたらで面倒だぞコイツ、寝てるクセに一分の隙も見当たらねぇ所から察するに相当の猛者に違いねぇし」

「そうね、それじゃあここでしばらく寝かせてあげましょう」

「そうそう、人が昼寝してる所を邪魔しちゃいけないってよく言うだろ」

 

そう言い合って二人は寝ている美鈴を起こさずにそっと門を潜ろうとする

 

だがそこへ

 

「んぐはッ!」

「「え!?」」

 

何が起こったのやら、突然美鈴の頭頂部に深々と鋭いナイフが突き刺さったのだ。

 

その痛みで目を覚ましてしまった美鈴は、寝ぼけた様子で声を出しながら慌てて頭に刺さったナイフを引っこ抜く。

 

「ふぅ~死ぬとこでした……」

「……」

 

手に持った己の血がたっぷり付いたナイフをその辺にポイッと捨てると

 

真横で唖然とした表情でこっちを見ながら固まっている銀時と霊夢に気付かずに

 

美鈴は再び壁に背を預けて

 

「さて、どうせ誰も来ないでしょうし二度寝でも……ふんごッ!」

「「また刺さったぁ!!」」

 

まさかの二度寝をおっ始めようとする美鈴に再び鋭いナイフが彼女に眉間にグッサリと食い込む。

 

人間だったら、いや妖怪でも即死じゃないかと思われる致命傷を受けてなお

 

驚いている銀時と霊夢を尻目に美鈴はまた起きてナイフを引っこ抜く。

 

「ふわぁ~今日は随分と頭にナイフが刺さ……ん?」

「「あ……」」

 

欠伸をしながらチラリと横に目を向けると美鈴は初めてそこに銀時達がいる事に気付く。

 

銀時と霊夢が頬を引きつらせながら無言で彼女に笑いかけていると

 

美鈴はキョトンとした表情をしばし浮かべた後、ふと銀時の方へ目を向けた次の瞬間

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! すみませんすみませんすみませんすみませぇぇぇぇぇぇぇん!!!!」

「え、なに!? どうした急に!」

 

急にとち狂ったように叫び始め、そして急いで両膝と両手を突いてこちらに謝りながら土下座する美鈴

 

「ちょっと暖かかったから魔が差してしまっただけなんです! どうせ誰も来ないだろうしちょっと寝ててもバレないでしょって私の中の悪魔が囁いたせいなんです! 私自身はちゃんと一生懸命仕事に励もうと思っていたんです! だからもう1カ月間食事抜きとかそういうお仕置きはもう勘弁して下さい!」

「うわ……アンタいつの間にこの女を飼いならしてたの……引くわー」

「な訳ねぇだろ! こんな奴に調教プレイなんざ仕込んだ覚えはねぇよ!」

 

何度も頭を地面に擦り付けながら必死に謝って来る美鈴を見て

 

霊夢はすぐに銀時が彼女に何かしらのドSなプレイをしていたのではないかと彼に軽蔑の眼差しを向ける。

 

だが当然、銀時は彼女に会った事さえ初めてなので覚えはないので首を激しく横に振る。

 

「ったくお前のせいで変な誤解されたじゃねぇか……とりあえずお前頭上げてもう一度俺の顔見てみろ」

「え? うわぁぁぁぁ!! 本当にごめんなさい許してください!」

「なんで顔見てもビビってんだよ! 一体俺を誰と間違えてんだテメェ!」

「あ、あれ? よく見たら男? でも顔と雰囲気がどことなくあの人に似てる様な……」

 

こちらの顔を見てもなお素っ頓狂な声で悲鳴を上げる美鈴だが

 

しばらく彼の顔を見続けてようやく何か変だと気付いたらしい。

 

「ん~とですね……もしかして私の人違いでよろしいのでしょうか?」

「そうだよ、俺は八雲銀時、お前の所の主に用があるから来ただけのお客様だコノヤロー」

「ハハハそうだったんですか……つい目の前でお見苦しい醜態を見せてしまい申し訳ありません……でもホントに似ててるなぁあの人に……」

 

銀時の顔をまじまじと見つめながら、どこぞの誰かと勘違いしてしまった事を苦笑しながら謝る美鈴。

 

「えーと初めまして、私はこの紅魔館の門番を務めている紅美鈴という者です。生憎ですが今主には誰も通すなと言われておりますので、申し訳ありませんがお引き取り願えませんか?」

「そうはいかねぇんだよこっちも、テメェのその主とやらがちょいと狼藉を働いたもんでね、幻想郷の管理人としては見過ごす事出来ねぇんだよ」

 

ご丁寧な口調で帰って欲しいという美鈴に銀時が仏頂面ですぐに無理だと返事をするも

 

そこに霊夢が突如ジト目を彼に向けながら

 

「あんた自身は管理人じゃないでしょ、アンタは幻想郷の管理人の八雲紫のヒモ旦那やってる八雲銀時でしょ?」

「余計な口挟むんじゃねぇよ! 俺だって幻想郷の為に頑張ってるんだから管理人と自称しても良いだろうが! 少しぐらい背伸びしたって別に良いだろうが!!」

 

霊夢に向かってキレ気味に銀時が怒鳴りつけていると、美鈴はそんな二人を見て困った様子で首を傾げる。

 

「えーどうしてもここを通りたいとおっしゃるのであれば、まずはこの私と戦って勝ってもらわねばいけませんね。失礼ですがお二人はそれなりの実力はお持ちですか? こう見えて私結構強いですよ? 素直に退いてくれるなら追いはしませんけど……」

「いやそういうやられ役みたいな台詞はいいから、さっさとかかってこい」

「な! 一応こっちは親切心で言ったんですよ!?」

「いいから来いって、ワンパンで沈めてやるから」

 

悪意はない警告をする美鈴に対して銀時は挑発的に手でクイクイッと誘った後、隣にいた霊夢の背中をポンと叩き

 

「コイツが」

「ってアンタが戦いなさいよ! 今完全にアンタがコイツと戦う流れだったじゃない!」

「前菜なんぞ食べる気もしねぇ、こちとらメインディッシュ一択だ。それ以外は全部お前が食っていいぞ」

「その台詞は本当の食事を食べる時に使われたら嬉しいけど……敵アジトの中ボスフルコースなんざ嬉しくもなんともないわ……」

 

すべてを託そうと他力本願っぷりを発揮する銀時に霊夢が恨めしそうな顔で睨み付けていると

 

二人が素直に退かないと判断した美鈴は、「え~と……」と敵対する相手にも関わらず慎重な様子で拳を構える。

 

「とりあえずあなた達を素直に通したらあの人に酷い目に遭わされるんで……わが身を優先してあなた達をここで倒させ……」

 

彼等を通したら今度は頭にナイフだけじゃ済まされない。

 

そう危惧した美鈴は即座に二人の排除を試みようとしたその時

 

 

 

 

 

「ほわちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「な! く!」

 

突如背後から雄叫びと共に明らかな敵意を感じた美鈴は、すかさず振り返って手をクロスさせ

 

チャイナ服を身に纏った自分と同じ中華風の娘の飛び蹴りを間一髪のタイミングで受け止めた。

 

蹴りを受け止めた美鈴の視線の先には

 

「フ、私の蹴りを腕だけで防ぐとは大したもんネ」

「ほう……今日は随分と客人が多いですね」

 

戦闘力だけなら他の妖怪の追随を許さない戦闘民族・夜兎族の血を引く娘、神楽が現れたのだ。

 

「銀ちゃん! 腹ペコ巫女! 早く行くヨロシ! コイツの相手は私がするアル!」

「神楽! お前なんだって一体こんな所に!」

「アネゴから聞いたアル! ここのセンスの悪い館の一番偉い奴に! 新八が連れて行かれたって!」

「なに!? 新八が!?」

 

美鈴と拳でやり合いながら神楽は銀時に誰がここにいるのかを教えてくれた。

 

そう人間の子供が誘われたというのは、あの志村新八の事だったのだ。

 

「アネゴから聞いて私も居てもたってもいられなくなったネ! だからここにカチコミにきたんだヨ!」

「そうか新八の奴がここに……」

「なるほどね、誘拐されたのはあの新八だったのね……」

 

ふらり揃って頷きながら目の前の館を見上げる銀時と霊夢、そうしている間にも神楽と美鈴の戦いは苛烈さを極めていく。

 

「さっさと行くアル二人共! 私もコイツをぶっ飛ばしてすぐに追いかけるネ!」

「わかった、なら俺達は先に新八を助けに行ってくる」

「新八の奴を助ける前にアンタも死ぬんじゃないわよ」

「おう!」

 

美鈴の蹴りを正面からの拳でぶつけながら自分に構わず行けと言ってくれた神楽の為に

 

新八奪還の為に銀時と霊夢は脇目も振らずに門を潜り抜け

 

いよいよ紅魔館の大きな扉目掛けて走り出すのであった。

 

「あ、待ってください! ちょっとあなた! どうしてあの二人を助ける様な真似を!」

「うるせぇ! 別にアイツ等の為に私はお前の足止め役を買った訳じゃねぇんだヨ! 私の狙いはお前だ!!」

「え?」

 

自分とここまで互角に戦える者がいるなんてと内心驚いている美鈴に向かって

 

神楽は目を血走らせながら恐ろしい形相で彼女に明確な殺意を向ける。

 

「物語終盤でいきなり出て来たぽっと出のわき役の分際で! 私と同じチャイナキャラだとかふざけんじゃねぇぞゴラァ!!」

「ええ!? そんな理由で!?」

「チャイナ娘キャラは私一人で十分アル! 消え去れエセチャイナァァァァァァ!!!」

 

美鈴に対して強いライバル意識をと危機感を持った神楽は

 

熱い咆哮を上げながら彼女との激闘を開始するのであった。

 

 

 

 

 

一方彼女のおかげで無事に門を通過出来た銀時達はというと

 

「待ってろ新八! 今すぐ助けに行くからな!」

「ねぇ、所で一つ聞きたい事あるんだけどいいかしら?」

「あん?」

 

扉の前に向かう途中でふと霊夢が銀時にボソリと尋ねた。

 

 

 

 

 

 

「新八って誰だっけ?」

「……知らね」

 

霊夢の問いにしばらく考えた後サラッと素直に返す銀時

 

結構長い間接点が無かったおかげですっかり彼等の記憶から消えてしまっていた新八。

 

かろうじて覚えているのは眼鏡の様な形だった気がする……という曖昧な表現のみであった。

 

「とりあえずこの館にいる奴等全員シメて、そのシメた中にいる連中から新八と思われし奴を拾って持って帰ればいいだろ」

「そうね、最悪2、3発殴っても問題ないわよね、こっちは死ぬ気で助けに来てんだから向こうもそれなりのリスク背負ってくれないと」

「そうそう、という事で紅魔館へ……」

 

ひどく雑な救出方法で人質を助けるを決めた銀時と霊夢は

 

紅魔館の扉に向かって二人揃って思いきり

 

 

 

 

 

「「お邪魔しまぁぁぁぁぁぁぁぁす!!」

 

二つ扉を片方ずつ蹴破り、堂々と正面から攻略を開始するのであった。

 

いざ紅魔館戦

 

 

 

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