銀輪蓮廻魂≼⓪≽境東夢方界   作:カイバーマン。

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んー……これちょっとマズイかもしれませんなぁ……


#63 チュリー理沙パ魔 

紅魔館の門版、紅美鈴を突如やって来た神楽に任せた銀時と霊夢は遂に内部へと侵入する。

 

館の中は薄暗く、唯一の明かりは火がともされた燭台のみ。

 

そんな気味の悪い廊下を歩きながら彼等はひたすら奥へと進んでいく。

 

「ったく呼ばれたから来てやったのに、何処歩いても誰もいねぇじゃねぇか」

「招待した客にディナーも寄越さないとはとんだケチな家主ね、出会った瞬間ドロップキック決めてやりたいわ」

 

二人で一向に姿を見せない家主に対してブツブツと文句を言いつつ、無駄に長い廊下を歩いていた銀時達の前に

 

天井に届く程少々大きめの扉が前に立ち塞がった。

 

二人はその前で立ち止まると無言で目を合わせて軽く頷き

 

ギィっと小さな音を立ててゆっくりとその扉を二人で開けてみた。

 

すると彼等の視界に現れたのは

 

「っておいなんだコレ? いきなり滅茶苦茶広い空間に出て来たぞ?」

「そこら中に本棚が置いてあるわね、ここまで膨大な書物があるのを見るのは初めてだわ」

 

そこは天井高く本棚がひしめき合っている巨大な部屋であった。

 

所狭しにみっちり分厚い本が綺麗に整頓され、どれもこれも貴重に保管されている。

 

これ程の数の本がある所なんて、人里でも香林堂でも無いので流石に霊夢も目をも開いて驚いていた。

 

「ホントに凄い本の数ね、これが噂に聞く図書館って奴かしら?」

「いいから先に進むぞ、確かに幻想郷では珍しい光景だがのんびり眺めてる場合じゃ……」

 

ちょっと立ち止まって何冊か取ってみようかと思っている霊夢だが

 

銀時はしかめっ面を浮かべたまま全く興味無さそうに奥へと進もうとする。

 

だがそこで彼は一つの本棚が視界に入ってピタリと足を止めてしまった。

 

その一際大切に保管されている大きな本棚には

 

 

 

 

 

 

上から下まで全て『少年ジャンプ』という雑誌で埋め尽くされていたのである。

 

「ジャ! ジャ! ジャンプゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

「うわ! 急にどうしたのよアンタ!」

「嘘だろオイ!! 幻想郷じゃ入手困難なあのジャンプが!! ずっと昔の頃から今の奴までキチンと全部置かれているなんて!!」

 

創刊号から今週号までのジャンプがまさか幻想郷のこんな館で拝めるとは思いもしなかった銀時

 

思わずその本棚を食い入るように見つめながら、彼は震える手でゆっくりと触れようとしたその時

 

 

 

 

 

 

「汚い手で私のジャンプに触らないで頂戴」

「!?」

 

突如鋭い少女の声が部屋の奥から発せられた。

 

その言葉に手を止めてすぐに銀時が振り返ると

 

大量の書物が乗った机の奥で、椅子に腰かけて両手に持った本を集中して読んでいる紫髪の少女がそこにいた。

 

 

彼女の名はパチュリー・ノーレッジ

 

紅魔館の主と長く友人関係を築いている魔法使いであり、膨大な書物を読んだ事によって得た知識は幻想郷でもトップクラスに値する。

 

しかし自身の身体はやや病弱な為に滅多に外出する子は無く、基本はこの図書館に引き籠ってただひたすら本を読む事に人生を費やしている少々不憫な少女である。

 

「ここにある本は全て私の私物よ、借りたきゃキチンと私の許可を取りなさい、まあ許可なんてする気は無いけど」

 

本のページをめくりながらこちらに一瞥もせずに口を開くパチュリー。

 

あまりにも隙だらけかつ余裕を見せるその態度に、銀時と霊夢は怪訝な様子で彼女の方へと歩み寄る。

 

「ここにある本全部オメェの私物だと? てことはあのジャンプも全部お前が揃えたっていうのか?」

「そうよ、少年ジャンプは万の魔法書に匹敵する程読んだ者を魅了させる書物、より優れた魔法使いとなる為には必要不可欠な存在と言っても過言ではないわ」

「いやそんなのアリスから聞いた事も無いんだけど……あのぉちなみにジャンプ作品の単行本とかも置いてある?」

「愚問ね、ヒット作品からすぐに打ち切りにあってしまった作品まで全て完備しているわ」

「マジでか!?」

 

一向にこちらに顔すら上げようとしないパチュリーの話を聞きながら銀時は口を大きく開けて驚愕の表情。

 

一体どうやって外の世界にあるジャンプを手に入れることが出来ているのかはわからないが

 

とにかく彼女もまた自分と同じ熱狂的ジャンプファンだと知ってやや親近感を覚えた。

 

「おいコイツ見てくれは無愛想だがいい奴っぽいぞ、なんか同じジャンプを愛する者同士として強い絆的なモンを感じたんだけど俺」

「いやコイツ紅魔館に住んでるんでしょ? だったらもれなく私達の敵じゃないの、ジャンプの絆とかそんなしょーもないモンよりまずさっさと倒しましょうよ」

「バカ野郎! ジャンプを愛する奴に悪い奴はいねぇんだよ! コイツは敵じゃねぇ同志だ!!」

「アンタねぇ……」

 

なに言ってんだコイツといった感じで呆れた表情を霊夢が浮かべていると

 

力強く叫んでいる銀時の言葉が聞こえていたのか、パチュリーは手に持った書物

 

今週号の少年ジャンプを読みながら再び口を開く。

 

「ああ、一体誰かと思えばあなた達もしかしてレミィに会いに来た人達? 新参者のメイドにそそのかされておかしな事やらかしたとは聞いて来たけど、大方それを懲らしめにやって来たって事ね」

「おいよく見たらアイツが読んでるのジャンプだぞ! それも今週号だ! すみませんワンパークだけでもいいから読ませてくれませんか!?」

「アンタはちょっと黙ってなさい」

 

パチュリーが夢中になって読んでいるのがジャンプだと気付いて、本来の目的も忘れて舞い上がっている銀時の前に手を出して嗜めながら、霊夢は彼女の方へとジト目を向ける。

 

「アンタの予想通り私達はここの家主をちょっとばかりシメに来てやったのよ、そいつがどこにいるか教えてくれない? 素直に吐けば危害は加えないわよ」

「悪いけどそれは出来ないわね、この前その家主に「この館にやって来た奴等は完膚なきまでに叩きのめしなさい、さもないとアンタの大切な漫画ごと館から追い出すわよ極潰しが」と釘を刺されているのよ」

 

霊夢の忠告に初めてパチュリーはこちらに顔を上げると、パタンとジャンプを両手で閉じながらやる気無さそうにゆっくりと椅子から立ち上がる。

 

「毎日働かずにこの部屋で大好きなジャンプに囲まれながらのニートライフ、そんな私の幸福を奪おうとするのであれば、悪いけど私は全力であなた達をここから追い出すしかないの、そうしないと私が彼女に追い出されるし」

「いっそ追い出された方が良いわよアンタ……見るからに堕落しきってるから」

 

働きたくないニートの下らない理由に霊夢はしかめっ面で頷いていると、席から立ち上がったパチュリーがフラフラした足取りでこちらの方へ歩み寄ろうとする。

 

「堕落した立派なニートであろうと私自身は本物の魔法使い、二人がかりで来ようと負けるつもりは毛頭ないわ」

「魔法使い……厄介な相手ね」

「魔法使いかぁ、俺魔法使いにはあんま良い思い出ないし、何より同志に手を出したくないから今回はお前に任せるわ」

「はぁ!? だからアンタも一緒に戦いなさ……!」

 

向こうは戦う気満々だが銀時はどうしても魔法使い兼ジャンプ同志であるパチュリーとはやり合いたくない様子。

 

そんな彼にすかさず霊夢が振り返ろうとすると……

 

 

 

 

 

 

「おいぃ~す!! おいパチュリー! またジャンプ借りて来てやったぜ~!!」

「「!?」」

「あなた……! 性懲りもなくまた……!」

 

突然この部屋の扉をドーンと乱暴に開けて勢い良く叫びながらズカズカと入って来る少女が彼女達の前にいきなり現れたのだ。

 

パチュリーと同じく魔法使いではあるが人間

 

白黒魔法使いこと霧雨魔理沙が

 

「ああん? どうして霊夢と八雲の旦那もいるんだ?」

「魔理沙!? アンタこそどうしてこんな所にいんのよ!!」

「ひょっとしてお前達もパチュリーからジャンプ借りに来たのか?」

「違うわよ! 異変の解決に来てるのよ!」

「チッ、よりにもよってなんでコイツが現れるんだよ……」

 

現れて早々銀時と霊夢を見てキョトンとくびを傾げる魔理沙に

 

銀時が思いきり嫌そうな顔で舌打ちしていると

 

それ以上に不快感を現した表情を浮かべるパチュリーがすぐに強い敵意を彼女に剥き出す。

 

「ここん所頻繁にやってくるわねあなた……毎度毎度ジャンプを借りパクして何度私を怒らせれば気が済むのかしら……?」

「おいおい会っていきなり睨み付けるなよパチュリー、同じ魔法使い同士仲よくしようぜ? つー事で今週号のジャンプ貸してくれ、死んだら返すから」

「あぁ!? 半端モンの自称魔法使いの分際でこの私と同列に扱おうとするなんて随分とナメた態度取ってくれるわね! もう限界だわこの場で叩き潰してやるわ盗人!」

「うわぁ今度はいきなりキレだしたぞコイツ……情緒不安定?」

 

どうやらパチュリーはこうしていつもやって来る魔理沙に何度も愛するジャンプを借りパクされる被害に遭っているらしい。

 

メラメラと怒りの炎を燃やしながら銀時と霊夢を無視して魔理沙だけを恨めしそうに睨みつつ、彼女は両手をバッと突き付ける。

 

「先週号のジャンプだってまだ私読み切ってなかったんだから!! それと一緒に盗んだヒロアカの単行本も全巻返しなさい!!」

「あぁ悪かった悪かった、今度いつか返すから、気が向いたらな持って来てやるから、だから今週号貸してくれ、あとギンタマン全巻」

「この期に及んでまた借りパクする気かおんどりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ヘラヘラ笑いながら全く反省していない態度で手の平を向けて来た魔理沙に

 

すっかり激昂した様子で襲い掛かるパチュリー

 

両手から放った青色の玉を思いきり魔理沙目掛けてぶん投げて、いきなり戦いをおっ始めるのであった。

 

「返せぇ! 私のジャンプを返せぇ!!」

「ったくいつもは無愛想で冷めた感じのクセに、ジャンプの事になるといきなり熱くなりやがって……キャラ変わり過ぎだろ全く」

 

パチュリーの放った青い弾丸を帽子を手で押さえながら軽く避けつつ、魔理沙は傍にいた霊夢に声を掛ける。

 

「おい霊夢、こいつの相手は私がしておくから先に行ってくれ」

「は?」

「話なら紫から聞いているぜ、ここの館の主が人間の子供を攫ったんだろ?」

「ア、アンタ知ってたの……?」

 

どうやら彼女がここに来たのは単にパチュリーからジャンプをパクろうとしていた訳ではないらしい。

 

それに気付いて目を見開く霊夢に、魔理沙はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「異変の解決なんていう面白いイベントを私が見逃す訳ないだろ? 私も一口食わせろよ、相手がいつも戦ってるコイツなのが少し不満だけど」

「……礼は言わないわよ」

「素直に礼なんて言うキャラじゃないだろお前」

「……」

 

パチュリーの攻撃をモロともせずに反撃し始めた魔理沙を一瞥すると、霊夢はクルリと踵を変えてこの部屋の奥にある新たな道へと続く扉を見つけた。

 

「負けんじゃないわよ」

「お前もな」

 

短い言葉を交え終えつつ霊夢は扉の方へ、魔理沙はパチュリーの方へと駆けて行った。

 

そして銀時もまた霊夢を追う前にクルリと魔理沙たちの方へ振り返り

 

「絶対に負けんじゃねぇぞ、オメェがこんな所でくたばる奴じゃねぇって俺はちゃんとわかってるさ。そんな奴さっさとぶっ倒しちまえ」

 

そう言いながら銀時はフッと笑って見せた後、スゥーと大きく息を吸って

 

 

 

 

 

 

「頑張れパチュリィィィィィィィィ!!! そんな腐れ魔法使いなんざぶっ殺せぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」

「っておい!! 応援するのは私じゃないのかよ!」

 

最後に敵である筈のパチュリーに力強いエールを送ると銀時は霊夢と共に扉の方へと向かって行くのであった。

 

次回、二人の前に遂に館の主が現れる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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