銀輪蓮廻魂≼⓪≽境東夢方界   作:カイバーマン。

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#74 輪廻

 

「まあしかし生まれ変わりと言ってもアレだ、確たる証拠も無い上に私自身にも自覚は無い。だが永琳が言うには、その八意松陽と私は非常に近い匂いと気配を感じるみたいなんだ、それにその男は私と近しい力を持っていたというし」

「う~ん、言われてみれば確かにそんな感じするかもしれないわね……」

 

人里で子供に授業を教える事を何よりの楽しみである半妖、上白沢慧音

 

永遠亭で永琳に訪問しに来た形でやってきた彼女をジッと見つめながら

 

その彼女が自分の父である八意松陽の生まれ変わりと聞いて輝夜は怪訝な様子で首を傾げると

 

「じゃあ聞くけど、アンタは子供が粗相をしでかしたらどうする?」

「愛の拳を頭に食らわして地面に埋めさせて反省させる」

「あ、これ完全に私のパパだわ」

「いやそんな判断基準で良いんですか姫様……」

 

こちらの問いに胸を張って自信満々に即答する慧音を見てすぐに確信して頷く輝夜

 

そんな判断方法でいいのかと、同席していた鈴仙は頬を引きつらせ困惑の色を浮かべていた。

 

「お師匠様も本当にそう思っているんですか?」

「まあ確かに絶対にそうだとは言い切れないけど、もしそうだったら面白そうじゃない?」

「面白そうじゃないって……こっちもこっちで適当過ぎるでしょ……」

「地獄に出向いて彼女の前世が誰だったのか聞ければ手っ取り早いんだけど、守秘義務もあるからって教えてくれないのよあの仏頂面頑固補佐官」

「ああ、地獄には行って確かめようとはしたんですね……仏頂面頑固補佐官?」

 

なんだその特徴的なあだ名は?と鈴仙が疑問に思う傍ら、永琳は慧音の方へと顔を上げる

 

「でもこうして彼女が作ったこの幻想郷で慧音と巡り合えたのも、もしかしたら彼女が望んだ夢のシナリオだったのかもしれないと思うのよね」

「幻想郷を作ったという事は八雲紫の事だな、前に永琳から色々と話を聞いてはいたが……彼女であればそれは可能なんだろうな、そもそも彼女の方から私をこっちに誘って来た経緯だし」

 

腕を組んでこの幻想郷の管理人である紫と初めて会った事を思い出し、慧音は眉を顰める。

 

「だがどうしてこの世界の創始者である彼女は幻想郷などという、あの世とこの世から隔離された場所を作ったんだろうな」

「恐らく隠れ蓑としてでしょうね、妖怪である自分や不死者の夫では外の世界で暮らすには何かと窮屈だったのよ。それで自分達と近しい境遇の連中を集めて妖怪と人間が共に暮らす都を作り上げた」

「なるほど、最初の目的は自分達夫婦の安寧の地を作る事だったという訳か。その為に他人も巻き込んで都まで作ってしまうとは、中々にしたたかな奴だ全く」

 

あの世とこの世の境界にスキマを作り、そこに世に忘れられた者達を集わせ共に生活させる

 

それはあくまで表向きの理由であり、事の実態はただの夫婦が余生を過ごす隠れ蓑を生み出す為だったという紫の目的に慧音は不満そうな声を漏らしながらも口元は若干笑っていた。

 

「それでは彼女はまんまとこの幻想郷で夫と仲慎ましく暮らせたという訳か、しかし解せぬのは、どうして自分の事情を知る永琳や輝夜、そして私の親友であり夫の元カノである妹紅もここに住まわせてやったのだろうな」

「事情を知っている私達だからこそ監視をしやすくしたかったのでしょう」

 

鈴仙にカップの追加をしながら永琳は慧音の疑問に答える。

 

「妹紅という者はわからないけど……張り合う相手でも欲しかったんじゃないの? 暇つぶしの良い相手になるでしょうし」

「安寧の地で平和を謳歌し過ぎても退屈だから、それで彼女を幻想郷に入る事を許可したのか。やはりどうも紫という女は根っこから歪んでるみたいだな」

「昔は裏表の無い良い子だったのよ、授業も真面目に受けてたし人見知りのウチの娘とも打ち解けてたし」

 

そう彼女は変わってしまった。

 

この世界で結局彼女は自分に会いに来る事は無かったので詳しくは知らないが

 

彼女が作ったこの歪な世界を見てそれはすぐに感じ取っていた

 

「蓮子がいなくなり、その後私の息子に会うまでの間はすっかり荒れてしまったみたいなのよ、元々独占欲は強そうな彼女だったけど、この世界ではそれが更に強くなっていたみたい、それに……」

「焦っていたのでしょうねきっと、もっと彼と一緒の時間を過ごしたのよ彼女は」

 

永琳の考察に口を挟んだのは輝夜

 

「でも夢はいつか覚めるモノよ、彼女、ここ最近の間で疲弊していたみたいじゃない、それはそろそろ夢から覚める兆候だったのよ」

「えと、八雲紫様が夢から覚めたらどうなるんですか? それと彼女が焦る事に関係でも?」

「夢から覚めるという事はまた起きるって事よ、現実でね、そしてこの世界は彼女の夢の一部、彼女が起きるという事はつまり」

 

恐る恐る小さく手を挙手して尋ねて来る鈴仙に、テーブルに頬杖を突きながら輝夜はあっさりとした感じで

 

「この世界の消滅」

「!?」

 

彼女が夢から覚める、それは彼女の願望で作られたこの夢の世界が消えるという事に繋がるのに他ならない

 

それをさも当然の様にぶっちゃける輝夜に鈴仙はビクッと肩を震わせて恐怖に慄いた。

 

「そしたらこの世界そのものが全て無かった事にされるでしょうね、当然部外者である私や永琳でさえも、この世界にいれば一緒に消えていたわ」

「あの、姫様やお師匠様はどうしてそこまでわかっていたんですか……?」

「私は知らなかったわ、知ってたのは永琳よ」

「その私は松陽から聞きましたわ、彼は世界の理を知る者、不安定で歪に出来たこの世界の仕組みも理解出来ていたみたいなので」

 

世界の理を知る者、それが一体どういう事なのかは鈴仙は知らないし、恐らくは輝夜、もしかしたら永琳も詳しくはわからないのかもしれない。

 

長年月の民の頂点に立ち、王として君臨し続けた彼だからこそ持ちうる能力、それがあるからこそ彼はこの世界に入り込む事も、その存在の理由も、そして存在の消滅方法も容易に理解出来たのであろう。

 

「そうか、前世の私はそこまで出来た男だったのか、偉いぞ前の私、まさか世界、この世の全てを知る者だったとは」

「それ自分で自分を褒めてるのと一緒よ」

 

感心した様に自画自賛しながら頷く慧音に輝夜がツッコミを入れると永琳もクスっと笑って

 

「あなたもあなたでこの世の歴史を造ったり削ったり出来るし十分凄いと思うのだけれど」

「え、この女そんな事出来るの? マジで私の父と似た力じゃないのそれ」

「私の場合は不完全な力だがな、妖怪化していないと上手く扱えんし」

「いやそれでも十分チートでしょ」

 

慧音の持つ能力を聞かされて輝夜が軽く驚きつつ話を続けた。

 

「まあそれで話は戻るけど、私の父はこの世界の終わり方、そして同時に救う方法も永琳に教えたみたいなのよ」

「救う方法までわかっていたんですか!? は~お師匠様の旦那様はホントに凄い方ですね……」

「ハハハ、そう褒めるな照れるだろ」

「いやあなたじゃないですから」

「コイツ散々自覚は無いとか言ってたクセに、あっさりと受け入れてるじゃないの前世の自分……」

 

何故か嬉しそうに顔をほころばせる慧音に鈴仙がジト目を向け、輝夜がはぁとため息を突いている中で話を続ける。

 

「この世界を救う方法はただ一つ、八雲紫とこの世界を断ち切り、彼女の支配下から脱却させる事、そうよね永琳」

「はい、彼女と世界を断ち切る事で初めてこの世界は真実に到達し、夢という不透明な存在ではなくなり完全なる世界へと変わるのです」

「で、その方法ってのが……」

「彼女、をこの世界の創造主である八雲紫が夢から覚める前に殺す事です」

「はい!?」

 

世界を救う方法が創造主を殺すというあまりにもぶっ飛んだ回答に、話を聞いていた鈴仙が我が耳を疑う。

 

「殺すんですか!? この世界を作った張本人を!?」

「まあちょっとシンプルに答えちゃったけど要はそういう事なのよ」

「え、えぇ……」

 

あっけらかんとした感じで答えながら、鈴仙が寄越した紅茶のおかわりを飲みつつ永琳は話始める。

 

「夢を見てる途中で自力で起きる前に、他人が頭叩いて無理矢理起こす、人というのは夢を見てる途中で強制的に起こされると現実と夢の判別がつくのが遅れるモノなのよ、つまり寝ぼけた状態ってのが強くなるって意味。その曖昧なタイミングを見計らってゆっくりと慎重に世界と彼女を切り離して独立するのが、この世界を救うたった一つの方法よ」

「……この世界ってとてつもなく不安定なバランスに立っていたんですね、八雲紫が目覚めればそこで世界に終末が訪れていたなんて」

「世界なんてモノは常に不安定なバランスの上で成り立ってるのよ、夢であろうが現実であろうが」

 

この世界の仕組みを知ってしみじみと実感している鈴仙に永琳が正論を言いつつフッと笑う。

 

「そして私は二人の子供に八雲紫が目覚め掛けてるのを教えた、あの二人の事だからどちらが彼女の最期を看取るかで揉めたでしょうね、でもこうしてまだこの世界が健在という事は……」

「どちらかが彼女を殺したという訳ですね……それでこの世界は無事に救われたんでしょうか……」

「少なくとも世界はね、ただ、あの子だけはまだ……」

 

冷静と話をしながらティーカップ片手に永琳が顔を曇らせる。

 

自分の娘と息子が争ったのだ、母親である彼女としては複雑な気持ちなのも無理はない

 

しかしそこでザッザッとこちらに向かって庭を歩いて来る足音が

 

 

 

 

 

 

「まだだ、まだ終わっちゃいねぇよ、この世界の事もアイツの事も」

「!」

 

前触れも気配もなくフラッとやって来た人物がぶっきらぼうにそう言いながら

 

驚く一同の前に姿を現す。

 

「この世界はアイツがいてこそ完成形だ、だからアイツを殺した俺は、アイツをまた取り戻さなきゃならねぇ」

 

全てを、世界の作り手を殺した張本人である八雲銀時が

 

いつもの着物の上に陰陽の印が背中に刻まれた紫色の羽織を背負って

 

「それが旦那の務めであり、アイツの代わりを務める俺の役目だろ?」

「……やっぱり咲夜ではなくあなたが彼女に引導を渡したのね」

「だ、旦那様!? いつの間にいらしたんですか!?」

「おお、お前がまた遊びに来てくれって言ってたからお望み通り来てやったんだよ」

 

永琳や鈴仙に軽く手を挙げて挨拶すると、彼のすぐ後ろにお供としてついて来ていた式神の八雲藍が口を挟む。

 

「銀時様、今はまず紫様の跡を継ぐ為に色々な引継ぎを済ませる方を優先すべきだと思うのですが」

「やっぱお前のその態度には慣れねぇな……せっかくの一家全員集合なんだ、面倒事は後でまとめてやっから水を差すんじゃねぇよ」

「わかりました」

 

かつて紫に接して来たかのような丁寧な物腰で接してくる藍に多少の違和感を感じつつ

 

幻想郷の新たな管理人となった銀時はめんどくさそうに手を振って彼女を下がらせた。

 

「紫は俺が殺った、そんで今は俺がアイツの代わりにここの管理者だ、つー事で俺に逆らう奴は容赦なく幻想郷から出てってもらうんでヨロシク」

「権力フルに使う気満々じゃないの、こんなのが管理人とかもう幻想郷も終わりね……」

「黙れニート、言っとくが一回俺をハメて殺した事を忘れた訳じゃねぇんだぞコラ」

「この野郎……自分だけ就職できたからって偉そうに……」

 

一応姉である輝夜だが、蓮子の時代に一度痛い目に遭わされた事も既に思い出している銀時

 

彼女に対していつもの死んだ魚のような目で脅しながら、彼は彼女達と共に席へと着く。

 

「紫は、現実に戻っちまったアイツはまた俺が探しに行く、どんだけ時間が経とうがな」

「あなたなら絶対にそう言うと思っていたわ、でも果たして出来るのかしらね、あまり簡単には思えないんだけど?」

「俺は輪廻を超えて黄泉の世界からアイツに会いに行ったんだぞ? こっちの世界から向こうの世界に飛び越える真似なんざ安いもんだよ」

 

永琳と笑いかけながらそんな会話を済ませると、銀時はふと一緒に座っている慧音の方を指差し

 

「つかどうしてコイツがいんの?」

「ああ、彼女あなたの父親の生まれ変わり」

「え、マジで? じゃあお前聞くけど、もし目の前に悪さしたガキがいたらどうする?」

「フ、私の愛の拳を頭に食らわして地面に埋めさせて反省させるに決まってるだろ」

「あ~これ完全に俺のダディだわ」

「いやだからそんな判断基準で良いんですか姫様といい旦那様といい! てかなんで欧米風の呼び方!?」

 

こちらの問いに当たり前の様に輝夜の時と同じ答えで返す慧音に、即座に彼女が松陽の生まれ変わりだと納得する銀時

 

そして鈴仙がツッコむ中、彼はテーブルに頬杖を突きながらまた永琳の方へ振り返り

 

「そういやここにアイツも呼んでおいたから、もうそこまで来てんじゃねぇか?」

「アイツ? それってもしかして……」

 

彼からそう聞くと、永琳はもしや……と思っていると彼の背後を見てその目を見開く。

 

 

 

 

 

 

 

彼の後ろからこっちに向かって歩いて来る新たな客人の姿が

 

「弟にしつこく頼まれたから仕方なく来てやったんだけど……変わってないわね」

「フ……あなたもね」

 

メイド姿の恰好をした”彼女”が照れ臭そうに目を背けて後頭部を掻きながら歩いて来ると

 

永琳は静かに微笑み、共に座っている輝夜、慧音、銀時も彼女を迎え入れるのであった。

 

 

 

 

 

 

ここは幻想郷

 

 

 

 

「ただいま」

「おかえり」

 

忘れられた者達が集い、住む場所

 

 

 




原作銀魂は終わるとか言っておいてまさかの移籍という事で完結しやがりませんでしたが

こっちは予定通りちゃんと完結します。

次回、最終回

銀時と紫、二人が導く答えとは……
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