訂正 前章の最後に判明した大蛇丸の造っていた薬の名前は『覚醒丸』→『醒心丸』です。
ちなみに醒心丸はサスケが呪印の状態2に覚醒する時に飲んだヤバイ薬です。オリジナルの怪しい薬登場シーンではなく原作にあったやつなんです。普通に間違えて覚えていて読んでいる人には訳わからん新薬登場させてしまっていました。すみません。
奈良シカマルは基本的に任務以外の予定を入れることがない。理由は自分の為の時間を過ごすことが最も大事な予定だからだ。
しかし何事にも例外はある。たとえば友人との時間。自分の時間と同じぐらいには、意味のある時間だ。
そしてそれとは別に不本意ながら、自分の時間よりも優先しなくてはいけない事もある。
奈良一族には通常の任務に加えて、ある重要な業務がある。
木の葉の薬学関連の書籍の管理をすることがそうだ。
今は医療の発展が著しいがそれでも薬学に関しては未だ、古くから積み重なった経験からなる知識が必要になる。
とはいえ直接それに携われるのは奈良一族の中でも限られた極一部の上役だけだ。
ただ、季節ごとの改訂版や新しい書籍を公共施設に献本したりといった、そういった雑用はもっぱら下っ端の下忍の仕事になる。
面倒くさいが、こればっかりはサボるわけにはいかない。
「どーも」
「あらシカマル君、こんにちは」
「…うす。コレ、新しい本っす」
「はい、ご苦労さま。ちょっと待って、今確認するから」
「ういっす」
カウンターの上に本を置くと、中々重たい音が響いた。シカマルは疲れた肩を回しながら、近くの椅子に腰を掛ける。
しばらくは暇だ。休みながらぼんやりと周囲を眺める。
図書館にはこれ以外の用事ではあまり来たことがなかった。自分の家の倉庫の方がよほど詳細な書籍があるし、そもそも本を読むという習慣がない。一度読めば内容は頭に入るので、必要な知識を詰め込んだ後は、日常的に本を手に取る理由がないからだ。
──はぁ、疲れた……。
下忍というのはアカデミー時代よりも色々な雑用を押し付けられる。一応一端の忍になったことで、ある程度の責任が伴う仕事を割り振れるようになるからだ。この手のお使い染みた雑用も、そういうことだ。
中忍にでもなれたなら、こんな雑用から解放されるだろうか。シカマルは一瞬だけ魅力を感じたが、だがどうせ中忍になったらなったでより重い責任のある仕事が降ってくるだろうことが容易に想像がついた。
一生雑用も嫌だが責任のある仕事も嫌だった。
自分の人生に思いを馳せながら、溜息をつく。
一族という括りの中に居る忍なら多かれ少なかれ感じる類の悩みだ。これを名誉と思うことができれば楽なのだが、生憎とシカマルはそうではなかった。
しかし一族に生まれたからこそ得られた物も多い。
キリがない悩みだ。といつも通りの結論に至る。
うだうだと考えるのも面倒になって、シカマルは思考を捨ててぼけーっとすることにした。
「────あれ、シカマルじゃねーか」
「………ん?」
「こんなところで珍しいな」
知らない女がいた。目に痛い金髪をポニーテールにした妙に目力の強い気の強そうな女だ。気の強い女は苦手だ。何故なら自分の母親を思い起こさせられるからだ。
思わず無視しようか考えたが、この女からは名前を呼ばれている。知り合いならばその対応は流石に良くない。
「チョウジは一緒じゃねーのか?」
その物言いには記憶に引っかかるものがあった。そしてそれに該当する人物は一人しかいない。
よくよく見れば、面影がある。
「……お前、ナルトか」
こう表現すべきなのかどうかわからないが、ナルトが女に変わっていた。ナルトとは男友達と同じ感覚で接していたがために、シカマルは一瞬、どう対応すべきか悩んだ。
率直に考えて、めんどくせー、というのが感想だった。
しかしここまで見た目が変化してそれに触れない方が不自然だろう。
「見た目がずいぶん、変わったな」
見慣れぬ少女は、シカマルの内心に同調するが如く、どうでも良さそうに頷いた。
「まぁ、色々あってな」
心底どうでも良さそうだった。
その所作はまるで以前と変わっていない。
どうやら見た目以外はあんまり変わっていないようだった。シカマルはわずかにあった緊張を解いた。
面倒くさそうなやり取りはしなくて済みそうだと判断する。
気の強い女は苦手だが、『女女している女』も苦手なのだ。気を使いたくない。
「………なんつーか、お前のそういう所、安心するわ…」
「なにが」
「めんどくさくねぇってことだ。──後、珍しいのはお互い様だろ」
「オレは最近割と来るってばよ」
「…………そーいや、説明会のときにも本持ってたな」
驚くべきことにどうやら古馴染みの少女はあれから継続して色々努力しているようだ。そう考えて、自分で否定する。空回り気味ではあったが、努力は今までもしていたことは知っていた。故にこれだって、シカマルにしてみればそれほど驚くべきことではないのだ。
そのように思いつつ、しかし口では正反対の軽口を叩く。
「お前がそうしてるの、違和感がすげーな」
「うるせぇってばよ」
「火影になるんだっけか………よくそんなめんどくせーもん目指せるもんだ」
「なるんじゃなくて、超えるんだってばよ」
「はー………」
熱気がスゴイ。シカマルは引いた。まったく共感が沸かない。上昇意欲が強いのとも違う、理解不能の情熱だ。
「そうだ、丁度いいや。ちょっとこの本について聞きたいんだけど」
「…………なんでンなことをオレに聞くんだよ、めんどくせー」
「あのさあのさ、この本、歴史の本なんだけどさ、なんか書いてることが変なんだってばよ」
「聞けよオイ」
ツッコミつつ、わずかな違和感。
オレ、べつに勉強してるキャラじゃなかったよな……?
アカデミーでのペーパーテストは毎回ナルトと同じ零点の落ちこぼれ扱いだったはず。
しかしナルトのことだ。考えても無駄かもしれない。シカマルは覚えた違和感を一旦捨てた。
仕方なく、ナルトが広げた本のページを眺める。しばらく視線を走らせたが、ごくごく普通の歴史書に見えた。
「………どこが変なんだよ」
「こっちも見てくれってばよ。ホラ、この名前の忍、こっちでは男って書いてあるのにこっちでは女になってる」
「あー…………それか」
シカマルは納得して頷いた。
「古い歴史書だと女を男って書いてるやつがたまにあるんだよ」
「………なんで?」
「知るかよ………確か、名誉の為、だったか?」
「??」
昔の忍の一族の人間関係は多くの場合一族の中で完結していた。同盟や主従関係こそあれ、それは交流がある、というだけであって同じ一族とは見做さなかった。
一族に属する条件は単純だ。
同じ血が流れていること。
そして婚姻関係も原則的に同じ一族同士だと決まっていた。
ここまでわかれば後は単純な話だ。
女性を戦場に出せばそれだけ一族の子供を産める女性の数が減る。女性の数が減れば一年に生まれる子供の数も減る。
戦力が増えるメリットを差し引いても、デメリットの方が大きい。
文化や風習は実益の後を付いてくる。
故に女性を戦場に送るのは余裕がない表れだとされ、恥ずべき行為だと考える文化が生まれた。
もし女性を戦場に送ることがあっても、自分たちの歴史書にはその人物を女ではなく男と書く場合が往々にしてあった。あるいは相手の一族を侮辱するために男を女と書く例も多くはないが、あったそうだ。
大戦以前の忍の歴史に登場する女性の数が、圧倒的に少ない理由がそれだ。
「ま、要するに古い世代ほど男とか女とかにうるさいってことだよ」
シカマルは、そう投げやりにまとめた。
シカマルにしても男とか女に拘る性分なのは明らかに父親の影響であり、そしてその父親もまた、一族の伝統から影響を受けているのだろう。里という単位で忍が纏まってそれなりに長い年月が経つがそれでもなお、未だに一族と伝統という括りは残り続けている。
秘伝、秘術、秘薬、秘技──、響きは格好いいかもしれないが、要するに同じ里の仲間であっても完全には腹は見せ合ってはいないということ。
ゆっくりと同化してはいるのだろう。けれど、まだ時間は必要なのだ。
「ふーん、なるほど……」
わかったようなそうでないような顔でナルトは頷いた。面倒くささを押し殺してまで説明してやったのに、とシカマルは少し呆れた。
仮にナルトがその時代に生まれていたとしたら、火影になるという夢を見ることすら許されなかっただろう。まぁその時代には火影も里も存在しないのだが。などと益体の無い思考を回す。
「本に書いてあることが全部正しいわけじゃないのな」
ナルトらしい答えにシカマルは笑って頷いた。
「はっ、そりゃそうだろ。特に歴史なんてもんは勝った方の視点で書くもんだしな」
奈良一族が公開している薬学の研究も、いま届けたばかりの本も、その全てを明らかにしているわけではない。公開してもいいと判断した情報だけを選別してから、段階的に公表しているのだ。と、これも脳内だけで呟く。
「……そっか」
少し、青い顔をしてナルトは頷いた。
「どうした?」
「あ、いや、なんでもないってばよ」
「…………」
どう見ても嘘だな。
と、思ったが触れない。
元から、ナルトには触れられない部分が幾つかあった。何故か、里の大人達から排斥されていること。親がいない理由。『四代目』火影との関係。そして九尾の妖狐について。シカマルは薄々、様々な事柄を察しつつも、しかしそれらには一切触れてこなかった。友人でも、否、友人だからこそ、相手が口に出さない以上は踏み込まない。
それが忍の一族に生まれた人間の処世術だ。
これまで一度も、ナルトはシカマルに助けを求めたことはなかった。だからこそ、差し出がましい真似はしない。
「慣れない勉強のしすぎで眠くなったか? ──あんま無理すんなよ」
「うるせーって、さんきゅーなシカマル」
ナルトは舌を出すと片手を上げて歩き去っていく。
それをシカマルは黙って眺めた。
「──はい、シカマル君。確認終わったわ」
ナルトが歩き去ったのを見計らったように、司書の中年の女性はシカマルに声を掛けてきた。
友人と喋っていたから待ってくれていたのか、たまたまこのタイミングで確認が終わったのか、あるいは──。シカマルはこれまでと同じようにあえてそれを確定させることなく、挨拶を返して図書館を出た。
思い浮かべるのは、あの古馴染みの少女のこと。何時も通りに見えて、何時もとは少しだけ様子が違っていた。
ガシガシと頭を掻いた。
今度からたまには、図書館に寄っていくか。
このぐらいなら、別に踏み込み過ぎには当てはまらないだろう。
そう思ったのだった。
夕暮れの時間、猿飛木ノ葉丸は、疲れで足を引きずりながら歩いていた。エビスの特訓はアカデミーが終わった後、日が暮れるまで続けられる。
とはいえ、疲れているのは特訓が理由ではなく、特訓が終わった後に伊勢ウドンとのおいろけの術の練習が白熱しすぎてしまったせいだった。
チャクラを危うく枯渇しかけたところで我に返ったが時すでに遅し。
体を引きずって家に帰る羽目になったのだった。
疲れと空腹で視界がグルグルと回る。
木ノ葉丸の通る道の両脇には小売りの店が軒を連ねており、時折見かける屋台からは腹に響く匂いが漂っている。
ポケットを探ってみる。……お小遣いの残りの小銭が数枚転がり出てくる。
買い食いは、できそうになかった。
せめて視界に入れないように前を向くと、ふと、あの明るい金髪が目に飛び込んできた。
「姉ちゃん!」
「────ほぐぁ?」
木ノ葉丸が呼びかけると、くるりと、少女が振り返った。
金髪に青い瞳。木ノ葉丸よりも随分と高い背。
最近のトレードマークとなっているポニーテールは今は結わずに下ろされていた。髪はやや濡れて艶めいており、首にはタオルがかけられている。黒とオレンジのウェアは、袖が捲られファスナーも外されて中に着ていた黒のインナーが見えていた。
額当ても、今は額には掲げておらず、ウェアのポケットからその黒い布が覗いている。
うずまきナルト。
木ノ葉丸の姉貴分であり、師匠でもあり、憧れでもある。
そして今、その憧れの口には肉まんがはまっていた。
「いほぃか」
口にはまっている肉まん越しに不明瞭な声が響く。恐らく木ノ葉丸の名を呼んだことはわかった。その手にはまだ幾つかの肉まんが抱えられている。木ノ葉丸の視線は、否応なくその肉まんに吸い寄せられていく。
ぐぅう、と大きく音が響く。
ナルトの視線が木ノ葉丸のお腹を捉えた。
木ノ葉丸は視線でナルトに訴え続ける。
「………ふぅか?」
肉まんを差し出された。木ノ葉丸は頷くと同時に礼を言いつつ受け取って頬張った。
「むぐっ!」
熱い!
齧った瞬間に思ったよりもまだ全然熱が冷めていないことに気が付いた。予想外の熱に、木ノ葉丸は飛び上がった。
空腹から思いっきりかぶりついたのがよくなかったが、もう後の祭りだ。
口の中の突如として灼熱地獄が発生してしまった。
喜びから一転、のたうちまわる。
「ほら」
呆れた様子のナルトが、片手に持っていた缶ジュースを手渡してくれた。蓋がすでに開いているそれを木ノ葉丸は一気に呷った。
冷たいリンゴジュースが咥内を流れて熱を取り去っていく。ヒリヒリと痛む舌を外に出しながら木ノ葉丸は一息ついた。
「あーあ、まだちょっとしか飲んでないのに」
「ごめんだぞコレ。ナルト姉ちゃん」
「まぁいいけど。後輩に奢るのは先輩の役目だからよ」
肉まんを頬張りながらナルトは少し得意そうにそう嘯いた。
頬を染めて胸を張っている。どうやらナルトは人に奢るのが好きなようだ、と木ノ葉丸は思った。ちなみに実は、木ノ葉丸は基本的に人に奢られるのがあまり好きではない。何故なら、大抵の人間は三代目火影の孫だからという理由でなにかとよくしてくれるからだ。それを理解してからは理由なく物を贈られたりした場合は受け取らずに断っていた。他人に物をねだることも、ほとんどしなくなった。
もちろん、ナルトは例外だ。
ナルトだけは木ノ葉丸自身に良くしたいと思ってくれていることがわかるから。
なので遠慮なく色々ねだっている。
幾つかあった肉まんも、二人で食べるとあっという間に無くなってしまった。
ナルトは機嫌が良さそうに調子の外れた鼻歌を歌っている。
そんなナルトを、通りすがる人々はチラチラと眺めているのを、木ノ葉丸は察していた。
火影の孫として生まれた時から人に注目されてきた木ノ葉丸は人の視線には敏感な方だ。故に以前よりそのことには気が付いていた。
ナルトはまったく気にした様子はない。
「…………」
気にはならないのか、以前、ナルトに問うたことがあったが、その答えはあっけらかんとした「別に。もう慣れたってばよ」という言葉で返され、それ以上は何も言わなかった。
今も視線は続いている。
しかし、それは以前までとは少し毛色が違って感じられた。
前は、冷たい目線や嫌悪の視線が多かった。露骨に避けるようにしている人もいた。
今もそれはある。けれど、そうではない視線も混じっているように、木ノ葉丸には感じられた。
なんというか、若い男が多い。
大半は里の外から来たであろう、木ノ葉丸が見かけたことのない男達だが中には里の住民も混じっている。
悪意のある目つきではない。
それどころか好意的に見えなくもない。
そうなった切っ掛けは、木ノ葉丸も理解していた。里外任務から帰ってきてから、ナルトの見た目は随分変わった。前から整った容姿はしていたことは木ノ葉丸は知っていたけれど、見た目が全然女の子らしくなかったせいで他の誰も気が付いていなかったのだ。
でも、今はそうではない。
前よりも背も伸びて、どこか大人びて見える。
オレの姉ちゃんなのに…………。
木ノ葉丸はなんとなく不愉快だった。
今もすれ違った男が流し目にナルトの様子を窺っていたのを木ノ葉丸は見逃さなかった。
ムカついた。
腹立たしい。
ナルトを知らなかった里の外の者はともかく、理由は知らないが今まであれだけあからさまに避けておきながら、見た目が良いことがわかった途端に掌を返すように態度を変えるのは気持ちの良いものではない。
これはナルトにとっては悪いことではないかもしれない。けれど木ノ葉丸には無性に腹立たしかった。
咄嗟に木ノ葉丸は手を伸ばすと、ナルトの手を握った。
「おっ」
ナルトがやや驚いた様子で木ノ葉丸を見た。木ノ葉丸は視線を逸らして前を向いた。
「なんだー?」
「……………なんとなくだぞコレ」
「?」
狐のように目を細めるとナルトは不思議そうに首を傾げた。しかし、木ノ葉丸がそのまま手を握ったまま歩き続けると、特に振り払うことはせずにそのまま手を繋いだままにしてくれた。
木ノ葉丸は周囲をねめつけると精一杯を圧力を放った。
オレの姉ちゃんだ。近づくんじゃねーぞコレ。
ナルトは、木ノ葉丸の憧れで、凄い忍者だが、どこか自分に無頓着というか無防備というか抜けている所がある。特に男に対してそんな感じがする。
守らなくてはいけない。
その為なら、火影の孫という七光りの立場だって使っても構わない。
木ノ葉丸の気も知らずにナルトは再び、のんきに鼻歌を歌い出した。
「友達に見つかったら恥ずかしーんじゃねーの?」
「うっ」
それはその通りだった。ナルトはおかしそうに笑った。しかし木ノ葉丸も意地で手は離さない。
「なんかよ、こうしてると本当の姉弟みたいだな」
ナルトが本当に木ノ葉丸の姉だとしたらそんなに嬉しいことはないだろうと、木ノ葉丸は思った。
それに、そうだとしたら木ノ葉丸同様、ナルトも火影の孫ということになる。そうなったら、この不躾な視線も少しは減るのではないだろうか。
そうなればいいのに。木ノ葉丸はそんなことを想った。
「姉弟、家族、か…………」
ナルトは小さく呟いた。その声に篭められた憧憬に木ノ葉丸は思わずナルトを見上げた。ナルトは明後日の方向をぼんやりと眺めていた。
その視線を追うと、一組の親子連れが目に入った。
どこにでもいそうな普通の親子だ。幼い男の子が親に手を引かれて、人混みの中を歩いていて、手には買い物袋が握られている。どこかで今日の夕飯を買った帰りなのだろう。
ナルトは静かな目でそれを見つめていた。木ノ葉丸は、その親子連れではなく、それを見ているナルトを見上げ続けた。
いつもの強い光を宿した目ではなく、どこか儚い、淡い色の目をしたナルトを。
その後、長い間、折に触れて、木ノ葉丸はこの時のナルトを想い返すことになる。
それは時間で見れば短い間だった。ナルトは視線を切るとまた前を向いて歩きだした。
「そういや……」
「え?」
ふと、ナルトは何かを思い出したように顔を上げた。その顔はいつものナルトに戻っていた。
「あ、いやなんでもねーってばよ」
そう言うと誤魔化すように笑った。
そうして、二人でゆっくり帰り道を歩いた。
また力尽きた………、次でこの閑話は最後です。