小笠原諸島西南沖の海域にて
戦艦出雲、航空母艦飛龍、重巡洋艦蔵王、鞍馬の4隻は行先を失い洋上に停泊していた。
「これが、我々の戦隊の場所です。」
「そして、こちらが日本の現在の状態です。」
出雲艦内の会議室に艦隊司令と4隻の艦長、航空隊隊長達が集まって今後について、話合いが行われていた。
「航空参謀長、君から見て日本はどうだった?」
「はい、少なくとも、1910年代の建造物があり、我々が過去に来たと推定されます。」
「しかし、ウィルキア王国なる国家がなかった。あの辺りならあるはずなのだが、」
「・・・本田司令、我々はどうするべきでしょうか?」
「・・・・・・。我々は帰る場所を失った。元々、そのつもりだった。だが、今回ばかりは」
「だが、あれだけバカスカ撃っておいて補給もしていないにも関わらず弾薬燃料は満タンだった。これは理解出来ん。」
「諸君、状況は極めて混乱している。我々の知る世界ではなく、全く知らない未知の世界だ。何とかして、現地日本軍と接触したいが、」
「航空隊でちょいとやってみる?」
参謀や艦長達が考えて唸る中、航空隊隊長の一人が提案を出したが
「悪戯に燃料を消費出来ない。」
という理由で却下された。
「航空燃料全く消費してないんですよ。」
「それでもだ。あまりこの世界でまだむやみにその機体を晒せない。」
上級士官達が会議をしている頃、出雲最上艦橋の見張りの一人が有るものを見つけた。
「ん?あれは・・」
「どうした?」
「右舷海上、女性らしき姿。」
「浮かんでいるな。遭難者か、国際信号旗、救難行動中を上げろ!」
「医療班待機!」
「救出準備急げ!」
出雲から内火艇が出て漂流者を救助したことは、会議中のこの部屋にも知らされた。
「そうか、・・この話についてまた明日としよう。今日は解散だ。」
本田艦隊司令はそう言って足早に会議室を後にした。本田隆介が戦うことよりも、救難救助行動をなにより最優先することは誰もが知っていた。
「それで、容態は?」
「中度の低体温症ね。こればかりは温めるしか、無いわ。一応、温めた点滴を身体に打つようにして身体の中からゆっくり温めないと危険だわ。」
「そうか、わかった。意識が回復したら教えてくれ。」
「ええ、もちろん。それより隆介、最近疲れてない?足元力んでいるの分かるよ。」
「・・・・・・はぁ、由香里さんには敵わないな。最近寝不足なんだよ。」
堂島由香里は軍医学大学卒業した人で、軍医少佐であるが、同期の中の人であり、よく世話になっている。
「ほら、そこで横になっていいから。そのまま寝てもいいし。」
「そうはいかんよ。」
「最近、隆介が無理しているの、他の艦長や参謀達分かっているのよ。皆心配しているの。」
「まだ、大丈夫なのだが・・」
「もう危ないです。偶には周りに頼りなさいよ。いつまでもそんな事やっていると倒れるよ」
「・・・・・分かった。そうするよ。」
「同期といっても隆介はここにいる誰よりも若いんだから。あんまり無理すると医務室に担ぎ込まれるよ。」
「・・・ああ、少し寝る。」
努力家故に過労死寸前まで仕事をすることが基地勤務の間何度も起き、その度に基地司令が泡を吹いて倒れるという事態になっていたため陸上勤務から海上勤務に移されたのだが、根本は結局変わらなかった。何とか対策するために、彼の交友関係を洗い出し、彼の所属する艦隊に配属したりと、当時の基地司令は忙しかったらしい。
由香里が床に着いた隆介の対応を終えた頃、
「中々肝が据わった軍医だな。」
「あら、起きていたの。と、言ってもまだ会話は出来ても危ないからね。」
救助された女性が起き上がろうとするのを、由香里さんが阻止する。
「まだ、寝ていなさい。」
「大丈夫なのだが、・・ここは従っておこう。」
「そうしなさい。中度の低体温症とはいえ命に関わる事なのだから。」
「・・・分かった。」
「さーて、艦長に報告しますか。」
「すまないが、ここは?」
「戦艦出雲の中ですよ。」
海援隊旗艦三笠から遠泳したら迷った。
三笠がいるだろう方角を目指して泳いだが、どの風景も同じ。
海上で漂流者に成り果てた。
そんな時、遥か遠くに艦影が見えた。
その方向に泳いだ私は、艦が見えたところで力尽きたはずだった。
「(気が付けばここにいる。戦艦出雲というらしいが、今の海軍に出雲という戦艦は存在しない。
では、何故彼女は出雲と答えた?
偽装?
それは考えにくいわね。けど、この艦三笠より快適ね。医務室だけでここまでね)」
女性は、快適な部屋で言われた通りに寝ることにした。