天城中将が近衛海軍に属してから、日本帝国海軍は大々的な改革が成された。
艦隊を構成することにおいて、航空母艦の必要性と航空機の有能性を説くと、日本帝国艦隊に1隻ずつ空母が配備されたのだが、搭載機数の少なさと航空母艦の少なさが問題になった。
鳳翔型航空母艦は30機しか搭載出来ないのに対し、翔鶴型航空母艦は150機も搭載出来た。
艦の船体の規模と格納庫の広さが違うのだが、天城大佐は赤城型と瑞鳳型の両航空母艦の設計図と技術を横流しにした上で、駆逐艦や巡洋艦の設計も少しずつ始めていた。
それが、2カ月前のこと。
現在は戦闘機の開発を急いでいた。
いくら航空母艦がたくさん出来ても、航空機と操縦者の育成をしなければ意味は無い。
元からある90式艦上戦闘機一型は様々な問題を抱えていた。
複葉機ということもあるが、今の世界複葉機の戦闘機等が当たり前である。
そこに、天城の発案で96式艦上戦闘機が採用された。90式よりも旋回性能が良く、速度、航続距離が長いことから生産ラインに乗った。
96式の艦上戦闘機、艦上攻撃機、艦上爆撃機が空母の甲板に乗り、操縦者達は熟練達のシゴキに耐え抜いた者だけが乗ることを許された。
何しろ1人乗りの航空機であるため事故で死ぬこともあり得る。
余計な金を使わないように旧式機を練習機として再利用した。
そして、
1914年広島県 呉
この海に三笠は停泊していた。
三笠のすぐそばには舷梯に乗った海兵生徒が海援隊の女子士官に蹴られているという奇妙な光景があった。
「来ましたね。海兵の悪ガキどもが・・・」
才谷大佐は、窓から外の舷梯の様子を見てクスクス笑っていた。
「ふふ、鈴木さん(少尉)たら・・・、はりきっちゃって・・・!」
舷梯では鈴木少尉と男子海兵生徒が言い合いをし、舷梯のそばでは、伸びた海兵生徒が浮かんでいた。
「とはいえ、あの中で「ボッケモン」はいるのでしょうか?」
「まあ、どげんかのう。」
ボッケモン・・鹿児島の方言で、つまり大胆不敵な人がいるかどうかというところだろう。
「ところで、何故隆介少将はこちらに?」
「・・・まあ、なんだ。色々と・・・・な。」
「また、柊さんとかな?」
「いや、・・・天城中将絡み。」
「喧嘩したと?」
「いや、何というか。近衛海軍に属してから色々根回しをしているらしくて、うちらの艦隊も近々公開が出来るということよ。」
「いいじゃないのか?」
「この日本帝国における戦艦の中で最大級の戦艦がお披露目だよ~。憲兵隊に陸戦隊が色々慌ただしくて、追い出されただけなんだ。」
「・・・それは、・・・・・
ご愁傷さまです。」
「しかし、だ。最近の若いのは碌な奴が居ないと仁志さんも言っていましたよ。」
天城仁志中将は時に現役としての知識を広めるために教壇に立ち、教鞭を振るうこともあるのだが、
「無駄にプライドが高い奴らばっかで、授業を聞きやしないそうで。」
「・・・あいつらも同じか?」
「さあ、少なくとも天城仁志中将自ら教鞭を振るい、駄目な奴は即退学させているそうですよ。まあ、俺自身も時々甲板に降りて見回りをするさ。」
「ふ、それは有り難いな。」
「まあ、無駄にプライドだけ高い奴には上下関係をしっかり身に着けてもらわんとな。
海援隊とはいえ、天城中将の許可は貰っているからな。」
とんでもない悪企みをしながら笑顔で笑う本田隆介。
その隆介を二人は少し退いた場所で見ていた。
「そういえば、元日本帝国海軍連合艦隊旗艦戦艦三笠は黄海海戦、日本海海戦を戦い抜いた殊勲艦だったな。」
「ええ、日露戦争終結直前に呉で謎の大爆沈、そして今は海軍支援総隊所属練習戦艦「みかさ」。」
「・・・んじゃ、ちょいと行ってくら。」
「ちょっと、ここは3階・・・」
隆介は、艦長室を出ると1階甲板に飛び降りた。
無論、才谷も東郷もこれには驚きだ。
「案内ご苦労、鈴木穂積少尉。後は私がしよう。」
「はい?・・分かりました。」
鈴木少尉は、ついさっきまで居なかったはずの本田少将の姿を今、飛び降りてきたのを見て少し固まったが、後を任せた。
「さて、西郷英毅だったかな。」
「はっ、そうであります。敬礼!」
西郷英樹は突如現れた士官の階級章を見て、海兵生徒5人の姿勢を正せた。
「では、彼女に言われた通り、士官室に行け。荷を置いたら、後方甲板に集まれ。
時間はそうだな。今、1020だ。出港が1100。1030までに集まっておけ。いいな?」
「了解しました。おい、行くぞ!」
西郷に続いて残りの5人も士官室に向かっていった。
「わあ、すごい。」
周りの女子水兵達と険悪なムードだった空間に穴を開けた本田少将の行動は、どちらかというと称賛された。
「さて、後方甲板少し使うが、大丈夫か?」
「出港まで汚さなければ大丈夫よ。」
「分かった。極力汚さないようにしよう。だが、一応掃除用具6人分用意しといてくれ。」
「了解よ。でも、何に使うの?」
「そうだな、少し時間開いているか?」
「?」
鈴木少尉と共に後部甲板で海兵生徒5人を待っていた。
1030丁度に来たのは西郷と李家という海兵生徒だけだった。
2分遅れて2人が到着した。2人は、かなり焦ったらしく1人は2階スロープから転落しながらも合流。1人は段差に躓いて足を痛めながらも到着した。
「1037、西郷。」
「はい、」
「残りの2人は何処に行った?」
怒気を含めた声が、西郷英樹の身体を震わす。
「・・・自分は、分かりません。李家と来た時、部屋はもぬけの殻でした。荷物だけ置かれてありましたけど。」
「そこの2人。俺は5分遅れて到着しても特にお咎めは無いが、
少しは体を大事にしろ。特に2階から落ちた奴、後で医務室に行け。」
「は、はい。」
「分かりました。」
「さて、何時まで経っても来ないから始めてしまうか。」
「何を・・・ですか?」
「お前ら、どこを担当するか決めたか?」
「はい、既に。」
「・・・ほう。優秀だな。西郷のような人材が多くいればいいのだがな。」
「ちーす、すんません遅れました。」
不明の2人が到着した。悪びれることもなく、さも当たり前のように
「1043、・・・・・・。」
「お前ら遅すぎだ!馬鹿野郎。」
「西郷、お前はこの3人を監督しろ。」
「え?・・いや、しかし。」
「上官命令だと、言わせたいのか?」
「・・・いえ、分かりました。」
西郷英樹が引き下がると、本田隆介はおもむろに深く被っていた帽子を取り、
その帽子を鈴木少尉に手渡すと
「遅すぎんだよ!おんどれ等ぁ!」
最高にブチ切れた。
その怒声、艦長室で優雅に紅茶を飲んでいた才谷大佐と東郷元帥にも届いていた。
本人達は突然の罵声にビクリと驚いていたが。
しかし、一番驚いているのは、その隆介に一番近くにいる西郷達と鈴木少尉だが。
「今まで何処に居たんだ?言ってみろ!」
「それ、言う必要があるんですか?どうせ、その階級章も誰かのを借りているんでしょ。」
「・・・なるほど、天城中将の言った通りクズしか居ないようだな!」
隆介は2人の股間を蹴り上げた。
悶絶し、股間に手を抑え、蹲ろうとする2人を隆介は容赦なく回し蹴りをして、海に叩き落した。
当然、一連の騒動に野次馬(海援隊乗組員達(女子))が、集まるのだが。
この時、皆が一斉に心を一つにした。
「(この人怒らしちゃいけない。)」
と。
馬鹿2人を海に投げ出した後、西郷が縄でなんとかして助けたらしいが、助けられた2人の首元には俺が付けていない縄傷があった。
なんでだろうか?
1100、無事に練習戦艦みかさは呉から出港した。