マリア「何故それを今ここで言ったの、セレナ」
ベッドで死にかけるエルフナイン。
そのエルフナインの手を取り励ますキャロル。
この光景を描写する文面からは、溢れ出る原作GXへのリスペクトが感じられることだろう。
エルフナインは、儚げに呟いた。
「キャロル……僕はもうすぐ死ぬんだね……」
「バカなことを言うんじゃない、エルフナイン!」
「嘘です、僕は知ってるんです。僕はもうすぐ死ぬんだって……」
「何を言ってるんだ! 今日は世界一位の人がお見舞いに来てくれるんだぞ!」
「嘘です! 世界一位が来るわけないじゃないですか!」
その時、ガラガラガラと病室のドアが開く。
「こんにちは、エルフナイン。世界一位のマリア・カデンツァヴナ・イヴよ」
「わぁ、ホントに来てくれた! マリアさんが世界一位だったんですね!」
「おい待て貴様」
現れたただの優しいマリアを、キャロルが睨む。
「貴様、全米ヒットチャートで一位を取っただけで、贔屓目に見ても全米一位でしかn」
「緒川慎次!」
「はいっ!」
「!?」
「マネージャーの貴方に聞くわ。私は去年、世界何位だった?」
「一位です」
「よしんば私が、全米一位に過ぎなかったとしても?」
「世界……一位です」
ただの野心に満ちたマリアが、不敵に笑う。
「そういうことよ、キャロル」
「どういうことだよ」
「ねえ、マリアさん、どうしたら世界一位になれるんですか?」
エルフナインの顔には、隠し切れない憧れが浮かんでいた。
「うーん、例えば19歳で魔法少女(笑)で言われる人が居るわよね」
「はい」
「私は21歳。でも私はガングニールの少女。
たとえそいつが19歳で少女(笑)だったとしても、私は少女(真)。
そいつが19歳で少女じゃなかったとしても、私は世界一位なのよ、分かる?」
「うん」
ただの野次を口にするマリアが得意げに笑う。
「考えてみると、私は二期で半ばネタ気味な位置から始めさせられたのだよ」
「そうなんだ」
「あの頃が一番辛かった。
よく12位の奴とネットの人にいじめられたものよ。
一番いじめられたのは手紙を書いた切歌だったけど」
「アレでネタにされないとかありえないじゃないですか。
俯かない響さん、暴走しない響さんくらいありえないですよ」
「その頃はいつも妹の名を呼んで枕を濡らしていたわ」
「そうなんだ……世界一位さん、握手をしてくれませんか」
「頑張るのだよ」
ぐっと少女の手を握り、たぶん(容姿の)やらしさなら(世界一位を狙える)マリアが笑う。
「緒川慎次!」
「はいっ!」
「私は去年、全米何位だった?」
「一位です」
「今年、日本一位は誰だ?」
「翼さんです」
「よしんば私が、日本二位だったとしたら?」
「世界…………一位です」
不動の世界一位、それがマリア・カデンツァヴナ・イヴ。
「いや二位だろ! 一位になれてないだろハゲ!」
叫ぶキャロルの言葉も、ただの厄介なマリアには届かない。
「世界一位のマリアさん、僕も世界一位になれるかな?」
「はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」
ただの野暮な質問じゃないかとマリアは笑う。そこで、彼女の電話が鳴った。
「失礼。もしもし? 何? 私を二位だと言う奴が居る?
そいつは何位なの? ガリ位? ……ああ、ガリィね、分かったわ」
マリアは通話を切り、ドアを開けた。緒川も無言でその後に続く。
「失礼するわ。トゥーマーンなだけに真っ二つにしてきてあげましょう」
「なんだこいつマジこわい」
病室の少女達に戦慄と希望を与え、マリアは去って行く。
世界一位の戦いは、まだ始まったばかりだ!
この番組の裏番組にて、熱湯の入ったガラスケースの上で水着姿でプルプル震え、落ちないよう踏ん張っている暁切歌さんの姿が見られた模様