暗闇を照らす一陣の闇   作:定則

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第1話# The girl thus suffer the ash.

「やあ。ボクはアスカ、二宮飛鳥。ボクはキミの事を知らないけど、キミはボクの事を……?」

「ああ。すまない。知っているからこの場所へ、この世界へ足を踏み込んだのだろう?」

「それじゃあ、始める前にちょっとした注意事を口にさせてもらおう」

「一つ。この物語は、映像媒体のストーリーを基本とした、つまり346プロでのお話であること。なのでCP担当Pは当然登場するし、ちひろさんは緑色の悪魔ではない」

「二つ。この物語には、パーソナルを持つ奴が登場する。苦手な部類なら、注意してほしいな」

 

「おーい。飛鳥?さっきから何を言ってんだ?」

 

「おっと、噂をすれば、と言った所かな。それじゃあ、そろそろ始めようか。ボク達『ダークイルミネイト』の往く、偶像世界の物語を…!」

 

 

 

  THE iDOLM@STER CINDERELLA GIRLS

  ~暗闇を照らす一陣の闇~

 

 

 

 

 

「アイドル部門期待の新規プロジェクト、担当プロデューサーか…」

 

「…はい」

 

「やるじゃねぇか武内!暫く見ない間にこんなデカい肩書き貰うなんて」

 

「いや、自分はそんな…大役が務められる器ではありませんので」

 

「良いじゃねぇか。お前が努力して会社に貰ったんだから、もっと誇っても」

 

 今現在は仕事終わりで、この無愛想な後輩プロデューサーを連れて居酒屋に来ている。

 

「それに、それだけ大きなプロジェクトに参加するアイドル達だ。いくら卵とは言え、仕事は安定すると思うぞ」

 

 そう言えば、まだ自己紹介するのを忘れていた。

 初めまして。私、346プロダクションアイドル部門に所属するプロデューサー、近衛田と申します。以後、近衛田Pとお呼びください。

 

「いえ、未だ見ぬアイドル達を侮辱する訳ではありませんが、しかし、先輩の高垣さん等に比べると…」

 

 そう、何を隠そう私、近衛田は、今をときめく346プロを代表するトップアイドル、高垣楓のプロデューサーである。

 

「……」

 

「せ、先輩?なぜそんな不機嫌そうな顔を…」

 

「…俺の担当は、楓さんだけじゃねぇ」

 

「あ…い、いえ、二宮さんも先輩の担当であることは十分理解していて!」

 

「はぁ…俺だって分かってるよ。楓さんと飛鳥では開きがあることぐらい」

 

 別段飛鳥に人気が無い訳ではない。むしろ、若手のなかではトップクラスだと言える。

 しかし、若手のトップクラスと、全体のトップでは、決して誤差とは言えない差が開く。

 まあ、俺がこの仕事を初めてから、楓さんとは二人三脚でやって前来たのに対して、飛鳥がデビューしたのは、つい3ヶ月前だ。

 飛鳥は少し異色なアイドルだが、今の人気ぶりを見る限り、結果は上々といった所だろう。

 

「まぁ、その、何だ。シンデレラプロジェクトだったか?ちひろさんが事務員に就くみたいだし、今西部長もいる。俺も出来れば補助にまわったりするから、頑張れよ?」

 

「…ありがとうございます」

 

「いいっていいって。それじゃ、そろそろ出ますか」

 

「あ、先輩。お会計は」

 

「昇任祝い…とは少し違うけど、今日は俺からの奢りだ」

 

「ありがとうございます。では、後一品だけ…」

 

「待て武内。何でまだ頼もうとしてる?」

 

「食には関心がありますので」

 

「さっきもう帰るって話になったじゃねぇか。と言うかあんま高いの頼まないでくれよ?金払うの俺なんだから」

 

 この野郎、俺が奢るって言った瞬間に露骨に遠慮しなくなりやがった。

 まったく、普段から人に対してこれくらい図太く出来たら、()()はならなかっただろうに。

 

「先輩。今日はお話を聞いて頂き、ありがとうございました」

 

「おお。出来ればお前が食べ終わるのを待ってたことに対しても言ってほしいけどな」

 

 まあ、こいつの中でも未だに燻ってるだろうから、一言だけ言わせてもらおう。

 

「お前もさ、昔のことばかり考えてうだうだやってないで、目前の事を気張ってやれよ?じゃないとアイドル達にも失礼だからさ」

 

「…はい」

 

 

  ・・・

 

 

 ♪~♪♪~

 ふと、雪が降り行くこの道中に、きらびやかな音楽が流れ始める。

 気になって歩く足を止めると、これまたきらびやかな衣装に身を包んだ女の子達が、大画面に写し出されていた。

 この曲は聞いたことがある。確か『お願いシンデレラ』という曲名で、今流行りのアイドルソングだったはずだ。

 私自身詳しくは知らないが、346プロという事務所に所属するアイドルの選抜メンバーが歌う曲だと、何処かで聞いたことがある。

 

(…綺麗)

 

 時間が過ぎ、差している黒い日傘の外から雪が入ってくるのも気にせず、画面越しのアイドル達に目を奪われてしまう。

 

『この魔法は、私達だけのモノじゃない』

『会場のみんなが、王子様に、シンデレラになれるから!』

 

 -----

 

 響き渡る地を這う様な大歓声。その中心で手を振る九人のアイドル。

 時間にして、3、4分だろうか。気が付けばステージの照明は消えて、ライブは終わりを迎えている。

 …完全に魅せられていた。これまでアイドルと言うものを余り知らなかったのにも関わらず、視線が釘付けになっていた。

 

(私達だけのモノじゃない、か…)

 

 先程のライブ中にアイドルの一人が発した言葉だ。

 そのアイドルの名前は確か…

 

「高垣、楓…」

 

 ここまで心が揺さぶられたのは、初めてかもしれない。

 別世界の話と思う気持ちより、あの舞台に立ちたいという気持ちの方が勝っている。

 

(ふっ…フフッ)

 

 346プロ、そしてシンデレラガールズか。

 良かろう。其方達に近づけるのであれば、灰被りの姫にでもなってみせる。

 

(フハハハハハハハッッ!!ハァッーハッハッハッ!!)

 

 回りに迷惑が掛からないように内心で高笑いしながら、止めていた足を再び動かし始める。

 白い雪とは対照的に、黒い服に身を包んだ少女──神崎蘭子は、差していた日傘を手に持ち直しながら、アイドルになる決意を固めていた。




次のお話から月日が飛びます。
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