暗闇を照らす一陣の闇   作:定則

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第2話# Is not it possible for the Cinderella to be alone?

 タッタッタンッタッ…

 広いレッスンルームに、小気味良いリズムに乗ったステップの音が響く。

 

「5、6、7、8っ。それじゃ、今日はこれまで」

 

「ッ。ハァッ…はい。ありがとうごさいました。明さん」

 

 どうやら、今日のレッスンはここで終わりのようだ。

 本日のトレーナーである女性、青木明さんに礼を言って、壁際に置いていたスポーツドリンクを取りに行く。

 

「コキュコキュ……ふぅ…」

 

 ドリンクを口に含んで、水分と、スタミナ回復に努める。

 

「ふふっ。お疲れ様、飛鳥ちゃん。それにしても、ここ最近は随分頑張ってるね?」

 

「ああ、そろそろボクはバースデーライブが有るからね」

 

 飛鳥と呼ばれた少女、二宮飛鳥は、問いに答える。

 

「ボクがソロで出演()るライブとしては過去最大規模になるらしいから、いくら練習しても不安な位さ」

 

 それに、と一拍置いて、

 

「頑張らないと、何時までもあの人には追いつけないからね」

 

「…そっか。飛鳥ちゃんは初めから楓さんが目標だもんね」

 

「ボクはスカウトされた身だけどね。それじゃあ、そろそろプロデューサーの所に向かうとするよ」

 

 スポーツドリンクを手に持ち、着替える為に更衣室へ向かう。

 

「頑張ってね。飛鳥ちゃん」

 

「ああ。ありがとう、明さん」

 

 

 ・・・

 

 

 トン、トン…

 

「…?はい、どうぞ」

 

 割り当てられたプロデューサー用の個室でPCと格闘していると、突然扉をノックする音が聞こえてきた。

 楓さんは現在仕事でスタジオに居る。飛鳥のレッスンも、終わる時間にはまだ早い。この時間に誰かが来室するという連絡もないはず。

 考えても解らないので取り敢えず入室してくるのを待つ。

 

「失礼します。お仕事中申し訳ありません」

 

 果たして、入ってきたのは武内Pだった。

 

「おお、武内か。どうしたんだ急に」

 

「いえ、少しお見せしたいものがありまして」

 

 そう言って武内は、一束の書類を見せてきた。

 

「…これって、シンデレラプロジェクトの選考書類か?それも、第三選考ってことは、まだ決定した訳ではないんだろ?そんなもん見せてきて、一体なにが…」

 

 唐突に、一枚の書類に視線が留まる。

 

「…武内、これは」

 

「…このまま進めば、確実に最終選考も通過するようです」

 

 件の選考書類には、顔写真が貼られていた。その容姿は、『目を引く銀髪に真紅の瞳、透き通る様な白い肌を、漆黒のゴスロリ服で染め上げた少女』。

 

「神崎蘭子ちゃん、かぁ…」

 

 少し、考え事をする。

 

「…よし。武内、少し、頼みを聞いてもらえるか?」

 

「?何でしょうか」

 

「もし、このまま彼女が合格したら、一度会わせてもらえないか?その時は、飛鳥も同伴で」

 

「構わないと思います」

 

「大丈夫そうか。ならもう1つ、こっちは、頼みと言うより相談なんだが…」

 

「相談、ですか?」

 

「おう。ちょっと耳を貸してくれ」

 

 …これは少し面白いことになるかもしれない。

 

 

 ・・・

 

 

 トントン

 ノックをして、扉を開ける。

 

「失礼します」

 

 中に入ると、某碇司令の様に椅子に座し、何やらニヤニヤした様子の我がプロデューサー。

 そして、何故か武内Pがいた。

 

「レッスンお疲れ、飛鳥」

 

「ああ、そちらこそお仕事お疲れ様。それより、何でそんなにニヤニヤしているんだ?それに、武内さんがいるなんて珍しいじゃないか」

 

 ボクがそう言って彼に目を向けると、武内さんが律儀に挨拶をしてきた。

 

「二宮さん、レッスンお疲れ様です」

 

「ありがとうございます。武内さんもお疲れ様です」

 

 さて、挨拶も済んだところで、本題に入ろう。

 

「プロデューサー、一先ず、質問に答えてくれるかい?」

 

「…ふふ、飛鳥。一人は嫌か?嫌だよな?」

 

「…は?急に何を言い出すんだい、キミは」

 

 唐突過ぎるプロデューサーの物言いに、全くもって理解が追い付かない。

 ボクがそう疑問を浮かべると、プロデューサーは1枚のコピー用紙を差し出してきた。

 

「CP第三選考オーディション…彼女がどうかしたのかい?」

 

「飛鳥はその子を見てどう思った?」

 

「え、どうって…一目見て独特な印象を与えてくれるね。美穂さんの様に如何にも“カワイイ”アイドル然としていない。あえて言うなら、ボクに近いものを感じる。それに、このゴスロリチックな装い…もしや彼女は所謂ちゅうに…」

 

「二度目になるけど、飛鳥、一人は嫌か?」

 

「…あの、だからその言葉の本心が……まさか」

 

「少し改めさせてもらうな」

 

 

 

 

 

「…その子、神崎蘭子とユニットデビューしてみる気はないか?二宮飛鳥」

 

 

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