さて...久しぶりにいつものを書きますか(相当久しぶりなんで多分味気ないと思います)
「いや...いや...助けて...おにい...」
「ふふっ、...さようなら、美人さん。貴方の血はじっくりと頂くわ」
その言葉を最期に、女性は干からびた死体として路地裏で発見された。
カランと鳴るはドアの音
コロンと鳴るはベルの音
悪魔の店には何でもあります
お客様の願いや要望を叶えて差し上げます
さてさて、今日のお客様は?
〜ep91 老若〜
「本日はどういったご用件ですか? お客様」
「若さが...欲しい」
嗄れた声で、女性は言う。それに対して店員は笑顔のままいつも通りの行動をした。
「成る程...それ程までにストイックとは、実に尊敬しますねぇ。少々お待ちを」
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「こちらでございます」
「...演芸会のコスプレかしら? 尖った差し歯に、黒いコートなんでまるで...」
「そちらをお召しになればあら不思議! 不老不死の吸血鬼となり、他人の血を差し歯で吸えば永遠の若さを保てるでしょう」
「やぁね...吸血鬼だなんて、昼間だと外も歩けないじゃない。若さを見せつける相手が居なくちゃ話にもならないわ」
客は、そう文句を言う。
「ああ、その心配はありませんよ。日中でも行動できます。大体、太陽光を浴びて死ぬ様な吸血鬼になる道具を私が作る訳ありません。そんな失敗作を作るのはさぞ、偉そうで、約束事を破る程狡猾で、同胞殺しも躊躇わない程の外道で、2千年寝る様なグータラなお方でしょし...おっと、少しばかり脱線してしまいました。お客様の心配している事は大丈夫ですよ。プライベートには一切の支障がありませんので」
暫し黙る女性、じっくりと黒いコートを凝らして見て、やがてもうここしかないからという理由で諦めたのか、頷いた。
「買うわ。それで、幾ら払えば良いのかしら?」
「お代は結構ですよ。忠告を聞いてさえくれれば」
「忠告?」
その言葉に店員は、人差し指を口に当てて、片目を瞑っている顔を近づけて、ただ一言こう言った。
「決して、短いスパンで大量に吸いすぎないように...一年おきが妥当でしょうかねぇ」
Side C
「ハァァァァァァァ、ア!! 美味しかった!!」
最初は苦くて吐きそうな程不味い赤い液。良薬は口に苦しを的確に表した様な味が、私の全身を駆け巡っていたのが物凄く懐かしい。だけどそれで得たものは素晴らしい。
「艶々、老いなんてまっっっっっっっっったく感じない。感じさせない。整形じゃない自然の若さを得られるのがこんなに良いなんて」
整形との最大の違いは、肉体まで若返ることが出来るということ。体についた錆がまるごと取れた様な感覚はもう何度もやって病みつきになっている。お陰で心にも余裕が出来ちゃった。まるで、グータラ生活をしていた引きこもりが外で運動してリフレッシュした様! 余裕で爽やかな生活無しじゃ居られなくなったわ!!
「鏡良し! うん、鏡が見れるのもすごく良い!! なんだか心まで若返ったのかしら!!」
あれだけ年をとって.............あれ?
「そういえば、あれからどれくらい経ったんだろう? 何度か、一年おきじゃなくて一週間おきに血を吸うのを繰り返してるのはわかってるけど?」
....うーーーーーーん? わからないや。そういえばわたしのなまえはなんだっけ? ぎめいばっかりつかってたからわすれちゃったな。
「まぁ、ちゃんとわかさをたもってるし、ぎめいのままでいっか」
ああ、ちをすうのがたのしみだな。
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「ふぅーーーっ。フゥッッッッッ!! 血...ち...」
ああ、吸いたい。一年おきなんてやだ。時々破っていたけどなにもおきない。あたまもからだもわかくなっている。ちがおいしい。すいたい。たべたい。
「もっと...もっと...おいしいおいしいちをたべたい」
どこ、どこ、ちはどこに...........!!
「あった! あったわ!! おいしそうなおんなのこが!! はやく、はやく!!」
わかくなりたい。もっとあのあじをたのしみたい。だからはやく!! はやく!!
「血血血血血血血血血血血血血血チチチチチチチチちちちちちちちちちちち!!」
-ザグシュッッッッッッッ!!-
「あ...れ....? うで、きられ...」
「漸くかかってくれたな。吸血鬼さんよ」
だれ...? おんなかとおもったら、しろいふくをきたおとこ?
「....ちがない。ちが...アアアアアアアアアアアアアアァァァァァァッァ!!」
「あ! おい!! くそ、逃した!!」
ニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロ。
ニゲロ。まだしにたくない...
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「イラッシャイマセ...おやおや、20年ぶりですねぇ。そんな様子でどうしましたか?」
「ち...チ...血ィィィィィィィィィ!!」
「ふむ...成る程、忠告を破りましたね?」
男は正体を──ガブジュッッッッ──
「おやおや、困りました。まさか私の血を吸おうとするとは。中途半端はこれだから怖いですねぇ」
「ふーーーっ、ふーーーーーっ。血だ! 血だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
男は正体を現したが、なおも女性は血を吸う。飢えた喉を駆け巡って腹に到達するのを理解して、彼女は幸せを痛感した。
「ああああああああああ、が!? かは...あつい...からだがあつ...」
数秒だけの幸せを堪能した彼女に襲いかかったのは、灼熱を伴う激痛だった。身体中に無数の聖痕が現れ、そこから光が体外へ所狭しに飛び出る。
「あがあああああああああああああ!!」
「私の血は、天使にとっても、悪魔にとっても猛毒なんですよ。一滴でもその身に浴びれば永遠に呪われるか、浄化されるかの代物を直接飲んだら...まぁそうなりますねぇ」
男は答える。
「さて...追手の退魔師が来てるようですし、すぐに終わらせますか」
「からだぁ! からだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「お代は、貴方の魂とさせていただきます」
悪魔は笑い出す
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「しらばっくれるな!! ここに吸血鬼が来たって事はわかっているんだ! あいつは俺の...たった一人残った家族を殺した吸血鬼なんだ。ずっと探し求めた」
「くどいですねぇ。此処にはそんな
「黙れ!! アレは俺の生きる意味なんだ!! 見つけてやる...
「ふむ...そうですか」
店員は、瞬時に後ろに回ったかと思えば、頭に軽い一発を喰らわせた。そして気絶する男に魔法をかける。元の場所へ戻す魔法だ。
「お気持ちはわかりますよ。ですが、貴方はお客様になり得ないので何も言うことはできません。ただ一人、身を焦がしながら吸血鬼を殺し続けて下さい」
そう言って、彼は送り届けた。
「ノコルタマシイハアといつつ」
今日も彼は店を営む
ありとあらゆる商品が並ぶ悪魔の店を営む...
オマケ
※アウターゾーンという漫画を見て思い付いた小ネタ。ぶっちゃけ本編後の至極どうでも良い蛇足なので読み飛ばして構いません。この話はこれから書く方の本編には関係ないです。
Quiet talk root1
コワレタセカイを経た悪魔の助手は、世界を回った。自分の主人が愛していたこの世界を回っていた。永く、永く、あまりにも永く回っていた。
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あの日からどれほどの刻が経ったか。傷跡もすっかり癒えた世界らの、ある場所で一人の女性が人間を見続けていた。
多くの男が惚れる様な妖艶さと、正体を掴めさせない雰囲気を纏った女性。
誰だろうか? 何者なのだろうか? お名前は? 年齢は?
名前はミザリィ。多くの人に笑顔を向ける女性は、多くの人を奇妙な体験へ迷い込ませる。ある時は冷酷に、ある時は穏やかに...
そんな彼女にとっての幸せは、存在しない。もう二度と、存在しない....故に、彼女の名前は