リクエストスペシャル。今回はドラクエで有名なあのモンスターでございます。正直私はドラクエシリーズを全く知らないのでもしかしたら設定とか口調? とか間違っているところもあると思いますが、どうかご容赦を。
それでは始めていきます。
カランと鳴るはドアの音
コロンと鳴るはベルの音
悪魔の店には何でもあります
お客様の願いや要望を必ず叶えて差し上げます
はてさて、今日のお客様は?
〜SP30 悪魔のパーフェクトトレーニング教室〜
「本日はどういったご用件ですか? お客様」
客は、喋れない代わりに身振りで店員に話す
「ふむふむ...成る程、自分を鍛えたいですか。言っておきますが私の修行は少々キツいですよ...その上1ヶ月以内という制限がござますが」
灰色のスライム...メタルキングは大きく頷く
「そうですか...では報酬はそちらの冠としましょう。暫く商売はザイに任せておいてと」
店員がパチン、と指を鳴らすとスライムは人の姿となった
「!?」
「これが1番やり易いので...戻りたい時は戻りたいと思えば、人型になりたい場合は人型になりたいと思えばそれぞれなれますので」
「あ、ありがとうございます...なんだな」
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「まず最初は何をすれば良いんだな? 準備運動...?」
「いえいえ、そんなもの必要ありません。スポーツで強くなるために来た訳じゃないでしょう?」
店員はチェスの駒を取り出す
「これから行うのはこれらとの戦闘。因みにオリハルコン製ですのでちょっとやそっとでは壊れません」
歩兵、城兵、騎士、女王、僧兵がそれぞれ一体ずつ人間大にまで巨大化し、全てが元メタルキングに襲いかかるのであった。
「ひっ、ひえっ!?」
「ほれほれ、逃げ回っているといつまでたっても終わりませんし...死にますよ?」
歩兵が殴った場所に綺麗な穴が空いた。周囲に皹一つ入っていない事から、一点に全ての力が無駄なく叩き出されている事がわかる。
「ま、頑張って下さい。死にそうになったら自己申告して下されば涙のどんぐりで首の皮一枚繋げますのでご安心を」
因みに店員の言う涙のどんぐりとは、名前の通り雀の涙ほどしか回復できないアイテムである。本人曰くそうでもしないと甘えてしまうからだとか。
まさしく彼は悪魔であった。
「た、助けてなんだなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
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彼は臆病な王様だった。敵(勇者一行)が現れた際は例え仲間が居ても真っ先に逃げてしまうほどの臆病さであった。
多くのモンスターは彼を罵倒した。彼自身わかっている。自分が悪いんだとわかっている。それでも彼は直す事が出来なかった。
だからこそ今に至る。あれから1ヶ月...最初は腹が減れば(恐らく人間の姿になったからだろう)そこらの木の実を食べたりしたのだが、それではろくに動けない事を思い知らされた。ひたすら相手から逃げながら、何故か行く手を阻むかの様に出現するモンスター(スライム除く)を倒していって、あまりの空腹さに...
「...」
もうその事を考えるのはよそう。彼は現在相手のチェス兵の前に立ちはだかり様子見をしている。今までの臆病者のそれとは違う。まるで獲物を狩る野生の如き目であった。
「(最初に来るのは馬に乗った奴なんだな!)」
彼の思惑通り、盾と槍を持った馬面の騎士が今にも串刺しにせんと襲いかかる。それを躱し突き出して来た槍を掴み取る元メタルキング。
槍だろうが剣だろうが、攻撃をした瞬間の手元は力など伴わないものだ。だから力尽くとはいえオリハルコン製の槍を奪い取り、そのまま五体に突き刺し貫通させる事なぞ訳ない。
「(次...触ると痛い奴とパンチが凄い奴...なんだな!)」
次に来たのは全身が刃物の様に切れる僧兵と、筋金入りの近接格闘家である歩兵。所謂挟み撃ちの状況であったが慌てずに構える。
歩兵の拳を空いた手でいなして、先程の容量で今度は相手の力を利用して僧兵の方へと投げ飛ばす。ぶつかって動けなくなった所で槍による乱れ突きが炸裂した。あくまで狙うは四肢、移動手段をなくした二体の駒はその場で横たわる。
「(今度はこっちから行くんだな!!)」
感発入れずに、用途を満たせないほどボロボロになった槍を一番素早いであろう女王に投げる。当然避けるがそれが狙いだった。敢えてそうさせることで一気に近づく隙を作った彼はすさまじい巨体である城兵へと突っ込み踏み台とした。
「ブ、ブローム!?」
あまりに突然のことで独特の鳴き声を出しながら驚く城兵。既に空中へと体勢を整えた元メタルキングは必殺の構えをする。
「これが...オラの!!」
それはスライムであれば誰もがする体当たり。鋼鉄の肉体から繰り出されるそれはその進化系でもあるこの名称で呼ばれる。
「メタ・ストライクなんだな!!」
落下の速度、元来持っていて死にかけの修行によって更に進化した鋼、そして本人の意志の強さは、鉄壁のオリハルコンに罅を入れ粉々に砕いた。
休んでいる暇などない、最後に待つは性能上最強の駒である女王。最大の特徴であるその速さをもってすぐさま彼の周囲を覆う。
「ふぅ...」
残像どころか、荒れ狂う何本も束になった線しか周囲には見えない状況であるが、一息ついてその場を立ち尽くす一人の男。
「............今なんだな!!」
城兵の破片を思い切り周囲に投げる彼。女王という駒は確かに強力だ。チェスにおいて上下左右斜めどこまでもいけるその駒は、それが同時に弱点となる。経験者ならばわかると思うが、下手に移動させすぎて、目先の駒にとらわれ過ぎて、孤立してしまったところを歩兵等でやられることがある。
超スピードによる、圧倒的すぎる性能による自滅。オリハルコンの破片と衝突したことにより体中に穴が開き罅が入った。
「...ごめんなんだな」
その隙を逃さず拳を一発撃ちこむ男。完全に崩れ去ったのを見て、彼はその場でへたり込んだのだった。
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「ほう...流石、といったところでしょうか」
店員は拍手をしながら元メタルキングを褒め称える。そして懐からあるものを取り出した。
「...」
「最後の仕上げ...この秘法によって貴方は強くなれますよ。誰にも負けないほどの力を得て、誰にも馬鹿にされな「もういいんだな」ふむ?」
「この一か月で分かった...虫のいい話だというのは分かってる...でもオラは誰も傷つけたくない。あんたが下さったこの力は...その秘法は...誰かを傷つけるための力なんだな」
「...では、貴方様はいったい何を望むのでしょうか?」
「...オラは...どんなに不恰好でも、誰も傷つけない、みんなを守れる王様になりたいんだな」
「...そうですか。仕方ありませんねぇ...」
店員は秘法を懐に仕舞う
「報酬はいりません。こうなっては貰う意義がないので」
店員は笑う
「誠にありがとうございました...
まるで嘲り笑うかのようで...それ以外の別の感情を抱いてるようで...
「オラはこれからも、臆病な王様でいいんだな。悪魔さん」
人の情など一切持ち合わせなくなった、悪魔そのものだった
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「...全く、あと一息でしたのに...残念ですねぇ。強さの中に正義なぞ、始めから存在しないのに...」
今日も彼は店を営む
あらゆる商品が並ぶ悪魔の店を営む...
参考までにメタルキングの比較パラメータ
メタルキング(トレーニング前)
HP 244
ちから 45
かしこさ 55
みのまもり 255
すばやさ 250
耐性 全ての攻撃呪文(店員のを除く)に強い/打撃(店員のを除く)に強い
メタルキング(トレーニング後)
HP 800
ちから135
かしこさ 60
みのまもり 300
すばやさ 300
耐性 トレーニング前と同じ
店員
HP 測定不能
ちから 測定不能
かしこさ 測定不能
みのまもり 測定不能
素早さ 測定不能
耐性 打撃に強い/全ての呪文に強い/全ての状態異常に強い
※ドラゴンクエストモンスターバトルロードのパラメータを参考にしています。
店員式トレーニングとは?
一般的なスポーツで考える様な、走り込みとか素振りとか腕立て腹筋とかと言った唯々基礎体力だけを上げるだけの単純作業なぞ一切存在せず、終始強敵相手との戦闘(殺し合い)を行わせるというガチの戦闘特化のトレーニング。本人曰く「真に一流の武道家はそもそも準備運動などしない...終始殺し合いの気構えをするからです」との事。助手もこのトレーニング方法をやっている。
因みに本人がストイック過ぎて気付いていないが、相当タフな肉体と精神力の持ち主でもない限り死ぬレベルの練習である為、その内容を知っている者(元弟子やその光景を見ていた知人など)の殆どはトラウマとなっている。