悪魔の店   作:執筆使い

154 / 202



毎度お馴染みリクエストスペシャル。今回はゲゲゲ鬼太郎...じゃなくてジゲゲ奇異太郎という、別の妖怪系漫画のキャラクターとのコラボでございます。ただ、今回はかなり端折っている上に地の文が特殊なので、先にウェブ漫画にて『奇異太郎君の日常』と『奇異太郎少年の妖怪絵日記』を読むことをオススメします(というか、読んでからじゃないと描写が頭に入らないと思います...特に最初)




因みにお察しの方もいると思いますが、店員は全く出てきません。寧ろ終始根津幹(ネズミ)男が出て来ます。というか悪魔の店要素ほぼ皆無です。それでも良いという方は是非ごゆっくり楽しんでください。









リクエストスペシャル『あの日の思い出』

 

 

 

 

 

「これパチモンですよ...なんで猿の手にハムスターの霊が憑いているんですか」

 

 

「ンー、俺の勘も鈍ったかねェ...これで最後っと」

 

 

とあるマンションにて、様々な曰く付きを整理している2人。片方はネズミの様な髭を蓄えた小汚い老人、もう片方はどこにでもいる様な普通の青年。木乃伊の様に干からびた手で最後らしく、しまった後に少しばかり背伸びをした。

 

 

「お疲れ〜、今回はツケといてくれや。おめえの欲しがってたアレ、いいのが手に入りそうだからよ」

 

 

「しょうがないですね。期待してますよ?」

 

 

そして、少しばかり雑談を始める2人。会話の内容に関しては、この場で書いてしまうと最悪この小説ごと消えてしまう可能性があるので敢えて伏せる。

 

 

「───ところでどうよ。奇異太郎。故郷に顔出して見る気はねぇんかい?」

 

 

ふと、その言葉を聞いて、青年は昔の事を思い浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜SP46 故郷〜

 

 

1人で散歩をしている際、見るからに怪しいおっさんが道端で座り込んでいるのを見かけた。どうやら行商らしい。

 

 

「いらっしゃい。何か買うかね? 今だったらこのアナベル人形なんかがオススメだが...」

 

 

小汚いおっさんは、そう言って赤毛の少女を俺に見せる。普通の人だったらわぁ可愛い! いつか来る彼女の為に買おうかな!! とでもなるだろうが残念だったな。生憎、そういう曰く付きは見てわかるのだ。

 

 

「見るからに怪しい人から物を貰っちゃいけないと言われてますので」

 

 

敢えて皮肉交じりで答える。だがどうやら向こうは諦めていない様で、それならばと次のを出す。

 

 

「これなんかはどうだい? といっても、曰く付きだが...」

 

 

今度は逆。確かに霊憑きではあるが曰く付きかと言われればそこまででもない代物である。これではっきりした。

 

 

「...言っておくが、そんなのに騙されるほど俺の目は節穴じゃないぞ」

 

 

「おっと...ひひひ...やっぱわかっているみてぇだな。お客さん」

 

 

当たり前だ。寧ろこんなあからさまなのに引っかかる方が難しい。わかっていなかったら、この小汚い汚っさんはどうするつもりだったのかを問い詰めたい。

 

 

「おいおい...汚っさんはないだろう...俺にはちゃんとあくm...ゲフゲフン、根津 幹男っていう名前があるんだぜ?」

 

 

「...それじゃあ、その根津 幹男さんはなんで態々こんな事をしたんだ?」

 

 

「...いや何、昔の友人に似てたもんでね。お客さん、名前はなんて言うんだい?」

 

 

知らない人から以下略。そう言うわけなので敢えて俺は偽名を名乗るとした。

 

 

「ジョン・スミスと言います」

 

 

「山田太郎ってなりじゃあねぇだろう」

 

 

速攻でバレた。

 

 

「...ま、良いや。お客さんのプライバシーには強く干渉しないのがモットーだしな。それに...」

 

 

そう言って指差す方向には...どうやら少し日が暮れはじめてしまったらしい。すずが心配して俺の名前を呼びながらこっちへ向かってきてるではないか。

 

 

「ひひひ...態々聞かなくともわかってしまったしよ。そんじゃあ遅い時間だし、そろそろ俺も動くとするか」

 

 

そう言って、まるで霧の様に消える行商人。狐に化かされた気分というのか? すずが俺の元に着いた頃には跡形も無く消えていた。

 

 

「...ひょっとしたら、もう会えないのかもしれない」

 

 

そう考えると少しばかり寂しいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー数週間後ー

 

 

「おう、お客さん。また会ったな」

 

 

普通に道端で再開した。しんみりを返せ。

 

 

「お、そうだ。丁度良い稼ぎのバイトがあるんだが...どうだい? 一緒に来てみるか? 勿論日帰りだぜ?」

 

 

どうやらちょくちょくこの街にて商売をするらしい。それと時々バイトを紹介するので悪い話ではないが、毎回俺を囮にするのはやめて欲しい。舞浜に殴り込みに来た時なんか、おじさんが逃げた後に現れた黒いスーツの執事? みたいな格好をした人に助けられなければ...正直トラウマものである。とはいえ、離れでの日常に新たな刺激が現れたのもまた事実。邪険に扱いはせずに過ごすのであった。

 

 

 

おしまい

 

 

................................

 

....................

 

..........

 

 

嘗ての思い出を浮かべ、少し悲しい笑みを浮かべる青年。

 

 

「...ひひひ、まぁオレにとっちゃどうでもいいがね」

 

 

そう言って、笑い声を上げるおっさん。

 

 

「んじゃ帰るとすっか! おめーの方もうまい話があったら頼むぜ。いひひひひひひ!」

 

 

軽快な笑い声と、バタンというドアの音と共に行商人は部屋を出て行く。

 

 

「故郷...か...」

 

 

人は、振り返る事は出来ても戻る事の出来ない生き物である。思い出は、そんな人間に許された悲しみを和らげる特権だが...

 

 

 

 

 

 

それが働いた事など一度もない。何故なら人は実物を求める生き物だからである。欲張りで欲しがりな生き物だからである。故に青年...奇異太郎は戻らないあの日々に少しばかりふけるのであった...

 

 

 

 

 

今日も青年は日々を生きる

奇妙な日々を楽しみながら、嘗ての故郷に想いを馳せる...

 

 

 

 

 

 










一応キャラ紹介(奇異太郎に関しては漫画の方を見てください。そっちの方が説明するより早いです)


根津 幹男
どこかで見たことのある出で立ちをした流離いの行商人。時々現れては奇異太郎に儲け話を持ち込んだり、手に入れた曰く付き商品が本物かどうかの査定をしてもらったりしている。どうやら奇異太郎を誰かと重ねている節があるが...?

因みに正体に関しては不明で、とある人物が助手の目を掻い潜って出掛けるために、嘗ての悪友の見た目と性格に変装した姿という噂(オリジナル設定)があるのだが、真実は闇の中である。




▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。