毎度の事ながら私は龍が如くシリーズを全くといっていい程知りません。しかも期待している読者の皆様には申し訳ありませんが、
(悪い意味での)原作クラッシャー、というか原作キャラは一切でない(ガチ)、年代は2018年頃(つまり原作アフター)
そして...今回出て来るのは、【もしも店員が悪魔ではなく、普通の人間だったら】がコンセプトのキャラクターです(つまり店員本人ではない)。そういうのでも大丈夫だという方は、寛大な心を維持しつつ今回の話を読んでくださると幸いです。
-BAR-
「この神室町は今まで多くのヤクザに仕切られたり...争いの火種が広がったり...こんな風になるまでは、ここはいつも騒がしかったもんさ...」
女将は愚痴話を客に喋る。
「でも最近、新たな来客が飛び込んで来たのよ...」
「...」
「悪魔って呼ばれる今時見ない様なヤクザでね...嫌、極道というべきかしら。苦味走ったら強面でいい男らしくてね...“悪魔”っていうのは通り名で
客は話を聞きつつ、静かにグラスに口付けをする。
「って、目の見えないお客さんにはこんな話してもつまらないでしょうね」
「...いえ」
中身を飲み干した男はそう言って、勘定を多めに置いた。
「え...あのっ、お釣り「これは礼です。良い酒と、良い
そう言って、男は杖をつきながら飲み場を後にするのだった。
〜SP50 悪魔ガ如ク〜
「昼間もでしたが...夜はもっと、て所ですか...こうもだとは思いませんでしたね...」
黒いジャケットをまるでマントの様に羽織っている男は、おぼつかない足取りで大通りを歩いていた。出で立ちでいえば、多少変わった格好である彼であるが、この街ではそんな事を言う者は誰一人としていない。寧ろ、こんな無警戒に近い盲目の男に対する黒い視線が多かった。それは此処がそういう町となってしまった事を暗に示しているのだった。
-ドンッッッッ-
「っとと...すいません」
誰かにぶつかってしまったので咄嗟に謝る。目が見えないのは長いのでいつもならこんな事にはならないが、賑やかさに気を取られてしまった様だ。
だからこそ、ついうっかり胸倉を掴まれるのもある意味当然の事であった。
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一瞬だった...つっても、胸倉を掴まれてからはある程度悶着があったがな...
最初は掴まれた
だけど掴んでた方は若造だったからなぁ、ある程度暴言吐いたら殴りかかろうとしたんだよ。
そっからが一瞬さ...柔術、って感じか? 投げ飛ばしてね。でも気絶してないからかえって逆上してしまって、俺も思わず危ねぇって叫んじまった。
だが兄ちゃんは見向きもせず杖を構えたかと思えばこう...そうそうそんな感じだ。
何というか、餓鬼の頃見た時代劇を思い出したよ...勝なんとかってのだったか、そいつが演じてたあれだよ。あぁ、名前が思い出せねぇそいつとダブって見えちまったのさ。兄ちゃんが。
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一刀。余りの速さに誰一人として見えないそれは襲いかかって来た若造に振るわれた。
一連の動きを終え、ピタリと止まる両者。
「...どうも、すいません。あんまりに殺気だってたものですから...手足をほんの少し、斬らせ(折らせ)て頂きました」
幸いだったのは木製の杖だった事だろうか。折れた事の痛みで、襲いかかって来た若造は蹲っていた。
「て、テメェ...何もんだ...」
「私はつい最近来たばかりの旅ガラス、大層な者じゃあありませんよ」
「嘘だ...さっきの投げだって、今やった事だって、どう考えても只者じゃねぇだろ!! そんなスゲェ奴...テメェは、一体何者なんだよ!!」
叫ぶ若造。その言葉を聞き、男はもう一回...もう一回だけ口を開いた。
「貴方にはそう見えてるんですか...生憎、目の見えない私は、そう思う事は出来ませんので...」
真っ暗な場所にはには、紅く、苦しい光景が映っていた...
「すいませんね...貴方の思う通りの答えは出せません」
男は杖をつきながら、おぼつかない足取りで歩き出すのだった。
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「お前が、悪音天魔だな?」
人通りが少ない場所に漸く出た時、後ろからそんな問いが聞こえた。
「はて...どちら様でしょうか? 生憎、見えないものでして...聞き覚えの無い声ですし...」
惚けつつも、警戒を解かないのは男の生活病だろうか。ただ1人を除き、彼は決して油断などしない人間だからだろうか。
「いや何...答える必要は無い」
目の前の人間...
「成る程、こういう手合いですか...」
「外じゃどんな風に言われてたか知らねぇが、此処で目立ったのが運の尽きだ...」
部下であろう者の1人に、ナイフを突きつけられる男。目の見えない男とて、何度も味わったその雰囲気から察している。
「このまま死ぬか、近江連合の懐刀として使われ続けるか、どちらを選ぶ?」
数にして、数十...ふぅ、と息を吐き切り男は答える。
「抜いたからには...命を賭けるんでしょうね...」
「あ? 何言っ」
一瞬であった。ナイフを突きつけた男の胴から赤い飛沫が遅れて飛び散る。
「
【悪魔】は見えなくした両目を開いた。
「テメェ...どうやら死を選ぶみたいだな!!」
言うが早いか、その場にいる全員が得物、或いは自らの手足を以って男に襲いかかる。
「あなた方全員...斬り伏せるって意味ですよ!!」
男は自らの得物を構えるのだった。
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血塗れになった場所にて、男は1人たたずむ。
「...変わったのは、見たくも無いこの
月を見上げ、呟いている。
「独りじゃあ、中々見つからないですね...」
神室町にて、1人の人間が探し物をしていた。
変わり果てたこの街へ、捨ててしまったものを探しに、只々歩いていた...
こんな出来となってしまい
本当に...本当にすいませんでした!!!
(一応)キャラ紹介
悪音天魔
日本各地を転々としている謎の旅ガラス。店員とは別人であり普通の人間。その証拠に丁寧口調と、顔立ちは店員に似ているが(そっくりという訳ではない)いくつか違う点もある。
例
仕立ての良い黒いスーツとズボンを着てはいるが、ジャケット部分は袖を通さずマントの様に羽織っている。
片目ではなく、両目に切り傷と抉られた跡がある。なので正真正銘の盲目ではあるが、その代わり耳と勘が鋭敏になった。
自分に襲いかかるどうしようもない悪人であれば、例え誰だろうと容赦しない(店員は、客相手でならばある程度寛大)。
店員が神殺しの悪魔ならば、天魔は悪殺しの悪魔。
モチーフは勿論、誰もが知っている時代劇のあの方(あくまで大まかな設定のみ)