悪魔の店   作:執筆使い

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デスノートって言ってますが、ノートは一切出てきません。性格がめっちゃ綺麗になってますので注意してください。DEATH NOTE 要素はほんの少ししかありません。


それでもよろしい方は楽しんでください。


リクエストスペシャル『デスノート』

 

 

死神は、誰もが一つ職務を全うする為の道具を持っている。

死神はその道具を使い自らの判断で人々を殺す。

人の生き死には本人で決める事が出来ない。本人の努力など関係ない。

関係のない部外者の気分で全て決まってしまう。

 

 

 

 

 

 

──その目は何だ、死神(ギル)。らしくもねぇ悲しそうな目なんてするなよ。俺は復讐の為に神々を殺した。だからその剣で俺の首を斬り落とせ...俺のシアワセは終わったんだ。お前が俺に散々言った殺すべき相手なんだ。

 

 

 

──...っ

 

 

 

──いつもの喧嘩みたいに、剣を振るって、斬りかかって...俺でさえ見切れない捌きで俺の首を斬り落とせば良いんだ...なぁ、そうすれば...

 

 

 

──私は...

 

 

 

──...お前の幸せは何だ? そうやって、震える事なのか? ふざけんじゃねぇ!! お前の幸せは...そんなんじゃないだろ!! これは俺の復讐だ!! 関係ないお前は何も考えるな! 情けを、かけるんじゃねぇよ!!

 

 

 

 

 

初めて、死神は殺せなかった。

如何してだろうか? 彼の目には、目の前の悪魔と同じ涙が溢れていた。

如何してだろうか? 剣を持つ手にこれ以上力が入らなかった。

如何してだろうか? 死神は目の前の一つの命を■■なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜SP53 誰もが(せかい)を嫌い、()()()()()()()()

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

その言葉を聞いて、ハッとなって目の前の客に目線を向けていた。

 

 

「ああ、すいません。このごろ考え事をしてしまいがちでして...すいませんねぇ。つい、最近よく来ている常連のお客様の前で気が緩んでしまってしまいました」

 

 

「そうですか...所で、先程の質問ですが...」

 

 

「...正義についてでしたか? もしも、この世の全ての悪人をどうこうできる正義のヒーローがいたら...」

 

 

確認の言葉に対して、お客様は頷く。

正義に満ち溢れ、悪を許さない純粋な顔...まるで、幼い頃に見た水面の様だ。水面に映っていたものを、もう一度眺めている様だった。

 

 

「...それは最早、正義の味方じゃないと私は思います。目の見えない場所にいる人も、凡ゆる世界にいる人を、自分の思い通りにしたい人を全てどうこう出来てしまう。それは最早、絶対的な神だ」

 

 

大きすぎる理想は、時に傲慢として見なされる。子供はそれで良い。何れ大きくなればそれを理解して、多くはその荷の重さに諦めてしまう。だが、目の前のお客様は諦めないのだろう。

 

 

「正義の味方と言うのは無力な存在だ...貴方が願い様な力を持ち合わせる事は決して出来ない。そんな存在なんですよ...」

 

 

私の背中には、私の手で殺した者達が居る。守れなかった者、悪に堕ちた者、正義として私に立ち向かった者、皆私に殺された。私が殺した様なものだった。

 

 

「だから、誰もなる事なんて出来やしませんよ。そんな多くの悲しみ、背負うには大きすぎるから、誰もがそれに憧れてしまう」

 

 

「...」

 

 

「...っと、すいません。つい否定的な意見をしてしまって。折角のコーヒーが不味くなってしまいますね...」

 

 

「いえ、貴重な意見ありがとうございます。少し、愚痴程度に聞いた事ですので...」

 

 

愚痴...か。多分、お客様の悩みは...嫌、これ以上は考える事はやめておこう。あくまで、彼は()()()のお客様だ。この店のお客様ではない。

 

 

「最近、僕は、もしも世界に意思があれば、人々を嫌っているんだろうって思っています。この世には悪人が多く、それに無関心な人々が殆どだ、って。だから誰かが、動いて、世界中の人々を変えていけば...この世界は...」

 

 

「...何もありませんよ。きっと、変えた先にはお客様の望んだものなど...」

 

 

...どうにかする為に今を無理矢理にでも変える行為は、世界に敵対する悪の様なだからな。嫌、この場合人類に敵対する悪といったところか...どちらにせよ、黙示録の獣並の精神でも無ければ正常ではいられない。

人が世界の悪になるのは、無理な話だ。

 

 

「唯の忠告です。しがない店員の独り言...ですが、あまり考えすぎないほうが良いですよ夜神様。折角のコーヒーが味わえないのですから」

 

 

「...すいません。辛気臭い話をしてしまって...っと、もうこんな時間」

 

 

「ああ、そういえばそろそろ昼休みが終わる時間ですか...毎回学食代わりに此処ですませるのもどうかと思いますけどねぇ」

 

 

「それは言わない約束ですよ。店員さん」

 

 

そう言って、昼食とコーヒーのお代をテーブルに置いてお客様は...夜神月さんは立ち上がり、一礼した後、カバンを持って店を出た。

 

 

「...大学生か」

 

 

指折り、数えてみる。そうか...そう言えば、あの時も同じ様な年齢だったか。人とは流れる時間が違うから大雑把だが、そのぐらいだろう。

 

 

 

 

 

 

「...誰が、止めるのでしょうかねぇ...この悪を。それとも、止められずに終わりを迎えるのでしょうか?」

 

 

私が望むのは後者だ。その為の準備は済ませた。恐らく、気にかける事すら出来ないほど忙しくなるだろう。

 

 

「さて...本業の方はまだまだですが...急がなければなりませんねぇ」

 

 

 

さて、光を取り戻そう。全てを否定してでも、私は闇に生きよう。

 

 

 

 

 

ソレコソガ、ワタシノナレノハテナノダカラ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪魔は、人に希望を見出していた。

愛を知らぬ悪魔は、一人の少女に光を貰った。

人は前に進む。方向は間違ってしまう事もあるが、止まってしまう事もあるが、人は前に進む。

そんな人々が抱く希望を、見届けたい。それが悪魔の正義だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一つの悲しみを味わった。

彼の光は神々に奪われた。

 

 

 

多くの悲しみを見た。

不条理な世界に死に絶える人々を見た。

 

 

 

 

多くの地獄を見てしまった。

助けられなかった。手を伸ばしても届かなかった。

 

 

 

 

 

 

人々を愛していた憎んでいる悪魔は。

世界を守りたかった消したい悪魔は。

 

 

 

 

 

 

...全てを否定する道を選んだ。ただ一人で、その道を選んだ...

 

 

 

 

 




夜神月
デスノートの主人公。今時の子供達にもわかりやすく説明するならば

「新檀黎斗という名はもう捨てた。今の私は...檀、黎斗“神”だ!」みたいな性格と才能とリアクション芸を持った主人公。

因みに今回の話に出ている彼はデスノートを拾う前なので、わりかし好青年である(イメージとしては記憶を失ってエルと協力してた時のライトくん)

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