悪魔の店   作:執筆使い

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※前回に引き続き謎設定謎展開注意


裏設定【店員の父と母について】

二人の本名、家名(グレモリー、ウリエルなどといった、我々が認知している天使や悪魔の()()としての名前のこと)はほぼ謎である。因みに本編の設定は、いつぞやに投稿して消した没設定とはかなり違うので悪しからず。
わかっていることと言えば父は天使(同属からは異端な英雄扱いされていた)で、母は悪魔(悪魔らしくない優しい性格)だという点だけだが...








リクエストスペシャル『最強の魔法:後編』

 

 

 

 

 

 

 

まず先に事を済ませたのは、悪魔である。ドルチルの拳に対して彼は自らの周囲数センチに強力な魔術結界──それこそ先ほどの一撃すら容易く防げるであろう強度を展開し、首を数センチ傾げた。ギリギリまで引きつけられた拳は空を切り、逆にドルチルの顔に魔術結界で覆われた悪魔の拳が突き刺さるのだった。

 

 

「やはりな。そこまで頭に血が上っていれば動きも単純になるもの...当たらなければ、どうと言うことはない」

 

 

悪魔の攻撃はまだ終わらない。右、左、右、顎蹴り上げ、鳩尾膝蹴り、

 

 

「こんな風に」

 

 

そして反撃した所を受け流しカウンターの右ストレートで先程のお返しと言わんばかりに吹き飛ばす。更に、弾む魔方陣を縦横無尽に展開。まるで宇宙規模のピンボールだ。ドルチルは空気抵抗がない分、更に言えば攻撃による一瞬の隙で熱の発生を止めた為、弾む毎に加速していく。しかも、厄介な事に彼は自分で自分の首を締めていた。

 

 

「光以上の加速が出来る。貴様限定だが、さて...」

 

 

通常、どんな事があっても物体が光の速さを超えたりはしない。だが、今の彼は物質ひいては存在の枷を外している状態。上限無しに弾む速度はどんどん上がっていく。

次に悪魔が左手で放つ予定なのは、大振りの左──最大規模の魔術。通常、途轍もない速度で動いている存在にこの攻撃を当てるのは悪魔の動体視力を以ってしても至難であるが、次に、どのタイミングで、どの方向に来るかがわかっていれば

 

 

 

 

 

「ゼロ距離だ。俺の全力の一振りを味わうと良い」

 

 

 

ドルチルの頭に途轍もない衝撃と爆発を与える事ぐらい容易い。神どころか、例え黙示録の獣本体であろうと、例え地獄の最高統括者であろうと、最強の死神であろうと、消え去る一撃を与えた。

こうしてみると呆気ないもの...確かに強敵だ。自分にも勝てるかもしれない。だが所詮バカが行う捨て身の行動だった──

 

 

 

 

 

 

「マダダ」

 

 

 

 

──とは、行かなかったようだな。そう、悪魔は内心毒吐きすぐさま並ぶ程のないぐらいの強力な防御結界を張る。ついでに最大限敵の攻撃を受け流すようなプログラミングを僅かな間で仕込んだ。

だが、気休め程度にしかならないようだ。先程半身を消しとばした一撃が今度は複数、しかも先程の規格外すぎる移動法を利用して周囲のあらゆる方向から無数の熱打撃が全く同時に放たれている。同時に、隙間なく。

 

 

「(ああこれで、終わりか──)」

 

 

受け流すのは不可能。既にヒビが入って隙間から測定不能の熱が服ごと体を貫き焦がす。もう充分だ。これ以上は無理だ。自分には、目的を独りで達成し切る力は無かった。

 

 

■■の英雄にはなれなかった。

 

 

 

 

仮に燃え広がっていれば、全世界が消え去るであろう狭い範囲内での爆発が彼の肉体を包み込み光り輝く。正義が、悪に負ける道理など無い。

故に見事ドルチルは英雄として、その全てを犠牲に悪魔を打ち滅ぼした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「違う...」

 

 

もう充分だ。この物語はここで終わるべきである。

 

 

「違う...」

 

 

これ以上は無理だ。悲しみをこれ以上増やして、何が得られようか。

 

 

「違う...」

 

 

悪は独りだ。故に、決して上手くいく筈が無い。

 

 

「違う...」

 

 

最早、この物語に悪魔店員は必要「違う!!」

 

 

 

 

 

「...俺は、まだ英雄にはなっていない。彼女を救えていない。例え貴様(ドルチル)が、貴様ら(正義)が、この世界の全てが否定しても、俺は諦めてはいけない。最初から間違えていたとしても...俺は──」

 

 

【悪魔は】

 

 

「彼女の英雄──」

 

 

【右手を】

 

 

「に、なろうとしているたった一人の紛い物だ」

 

 

【解放した】

 

 

 

 

ドルチルは、それに対し迎え撃つ。文字通り正真正銘最期の一撃。全てを賭けたこの攻撃を防ぐ事など、例え最強最悪の右手を持った悪魔ですら不可能であろう。

 

【悪魔は、それでも尚引かずに強大過ぎる無限の熱に向かう。まるで誰かの為に動く英雄が、絶対不可能な試練に立ち向かうかの如く。彼は右手を前に突き出し進む】

 

メートル...センチメートル...ミリメートル、そして両者は激突した。無限に広がろうとする熱量は悪魔の持つ闇相手ですらそう簡単に飲み込まれない。寧ろ、握りつぶそうとしている悪魔の方が多大なるダメージを受け始めている。

 

【恐らくは右手の処理限界をオーバーしているのだろう。軋みと共に激痛以上のものが悪魔に襲いかかる。だが引かない。決して、もう二度と、最期になろうとも、彼は下がろうとしない】

 

 

 

「マダ、マダダァァァァァァァァァ!!」

 

 

「ご...ぐぅ、ぐっ...認め、よう──」

 

 

【悪魔は呟く】

 

 

「俺は、英雄のなり損ないとして、貴様を最大の試練と認めよう──」

 

 

「オォォォォォォォォォ!!」

 

 

ドルチルは、認められた。最大の敵として、消える間際の悪魔に認めら「だから──」

 

 

「!?」

 

 

 

 

「そこを退け...邪魔だ!! ()()()()!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が収まり、立っていたのは..........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【無限の光を食らう右手】

 

 

【一切の光を許さない漆黒の身体】

 

 

【全てが彼を悪と言う】

 

 

【故に独り】

 

 

【彼は全ての敵であれど、全ての味方ではない】

 

 

 

 

そのものは見すぼらしく、今にも消えそうなほどにボロボロだった。

 

 

 

 

【振り返れば彼の後ろに、永く、曲がりくねった道が一つある】

 

 

 

 

 

 

悪夢だ...まるで悪夢の如き物語だ。こんな展開など、正義の一つもないこんな展開など、ハッピーエンドには程遠い。だが安心して欲しい。物語はじきに終わる。と言うよりかは我々は物語の終わりを見た。だから、安心して欲しい。悪魔にとってのハッピーエンドなど此処には無いのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【たった一つの約束で出来ていたその道が、彼の物語であった】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








本文中【】内は魔術の詠唱っぽいナニカだと思えば...というわけでリクエスト初の前後編終わり! 本当ドルチルをこんな風に使ってしまい申し訳ありません!!












【裏設定続き】実は店員は、星の戦士と呼ばれる天使に近い一族と、旧支配者と呼ばれる悪魔の如き一族両方の遠い子孫(末裔)である。今現在この事を知っているのは、この項を読んでいる我々読者のみであり店員本人ですら知らない(最も、彼からしてみれば自分のルーツなど興味もないので調べなかったからであるが)。尚、星の戦士と旧支配者は、一部の読者が知っている存在に良く似た体系と名前の、別の種族である。そう言う事なので仮に店員を直接見た所でSAN値が減る事は無い...多分。きっと。恐らくは。メイビー。






...最後に言っておくが、店員は当然()()()()()()()()()()()ので隠し事をしても無駄である。真実を知れば我々が黙読する真実もまた、我々を認識するのだから。それを理解した上で、もう一度言おう。










ここから先へ進むか? 否か? 知る事の代償を払えるのであれば...









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