悪魔の店   作:執筆使い

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リクエストスペシャル。本日はGetBackers ー奪還屋ーから、赤屍蔵人...ですが、今回はぶっちゃけオリキャラメインの回となっています。それと、Aルート後の話なので店員は一切出てきません。

ふざけんな! 俺は店員とDrジャッカルの絡みが見たいんだ!! という方、悪魔の店本編90話をご覧になってください。少しは気が晴れると思います。





リクエストスペシャル『悪魔と天使の間に...』

 

 

 

【殺せ】

 

 

──此処は何処だ?

 

 

【殺せ】

 

 

──僕は誰だ?

 

 

【殺せ】

 

 

──暖かい

 

 

【殺せ】

 

 

──僕は生きている

 

 

【殺せ】

 

 

──真っ暗で、冷たい

 

 

【殺せ】

 

 

──死ぬのは、嫌だ

 

 

【殺せ】

 

 

──生きたい

 

 

【殺せ】

 

 

──僕は、生きたい

 

 

〜SP65 我ハ何処ニ在リ?〜

 

 

 

 

 

 

宙に立つ。文面にすると矛盾した言葉ではあるが、彼等の状況を表すとしたらこれ以上ない程に的確だった。

そも、方や世界最強にして最低の運び屋。方やそれに渡り合えている存在である。物理法則などといった我々の範疇の内に留まる動きなどする筈もない。何より、宇宙空間で戦っている時点で今更である。

 

 

「──」

 

 

名前の無い生まれたばかりの存在。仮にそれと呼称しよう。それは何かを叫びながら、運び屋──Drジャッカルに襲いかかる。右腕には黒い気の様なもの、そして...

 

 

「!!」

 

 

左腕にも気を纏っている。しかも白だ。底が見えない程の黒は重く、眩い白は疾く、その二つが運び屋に襲いかかる。それに対し、驚きと関心を見せながら、運び屋はただ笑みを浮かべて一言。

 

 

「その程度ですか?」

 

 

言うが速いか、運び屋は一撃でも貰えば神ですら致命傷になりうる双腕を素手で受け止め、それの顔面にただの蹴りを入れた。強靭なはずの肉体を容易く吹き飛ばし、運び屋は更なる追撃を加える為何処からかメスを取り出して数本投げつける。そのメスはありとあらゆるものを切り刻む事の出来る刃物であり、例え全知全能の神であっても防ぐのは不可能な代物である。その上、投げ出されたメスの速度は運び屋とそれ同様、光をも超えた速度で向かってきている。体勢を立て直していないものには躱せないだろう。

 

 

【Stop(止まれ)】

 

 

だから止めた。魔術を使い、数本のメスを無理矢理止めた。不可能に近い事だ。数本だけといえど、Drジャッカルのメスを真正面から止める魔術を扱える者など、それこそ悪魔店員ぐらいなものだ。だがこの場には、否──世界の全ての何処にも彼は居ない。既に消えた身である。だからこそ、異常事態なのだ。何故生まれたばかりのそれが魔術と天使の力を使え、剰え運び屋と渡り合えているのか。

だが、そんなことなどお構い無しにメスを追加で次々と投げつける。先程述べた言葉とは裏腹に、運び屋の顔には期待のニ文字が浮かんでいた。何本も、何本も止めるが限界が来たのだろう。

 

 

「っぐ、ガァ!?」

 

 

ある本数を境に突破され数本胴体に突き抜ける。だが致命傷を避けたそれは、すぐさま白い光に覆われた左手を数カ所の風穴に翳して治す。初めてにも関わらず、まるで傷など最初からなかったかのような出来栄えであった。

 

 

「成る程...今のが天使のですか。面白い」

 

 

そこからの展開は単調だった。襲いかかったところをメスで切り裂き、間一髪致命傷を避けながら少なくない傷を治療。そして再度襲いかかり...それを長時間続ける。

 

それは生きる為、ただがむしゃらに拳を振り続けた。相手が世界最強クラスだろうと、決して怯まずにだ。死に何度も直面しかけてもだ。

 

 

【殺せ】

 

 

そのニ文字が呪詛の様に耳にへばりついている。故に止まらない。止められない。何度も切り刻もうにも生まれ持ったスペックと超直感とも言えるべきセンスで避けられて再生されてしまうので埒があかない。

 

 

「仕方ないですねぇ──」

 

 

故に、Drジャッカルは重い腕を上げる。

 

 

【赤い雨】

 

 

本気の技。避けるそれ。だがメスは全て突き刺さる。全身余すところなく、だ。何故なら、運び屋はどう避けるのかを既に知っていたから。やはり、あまりにも似ている。そう思う故に、すぐにパターンを解し覚えてしまったのだ。当たる様に誘導されたそれはひとたまりもなく食らうのも無理はない。

 

 

「(彼が、消える間際に依頼した通りだ。ここまで予想出来た...否、それ程までに彼が憎んでいた者達のエゴが単純で醜かったという事ですか)」

 

 

「あ...ァ...」

 

 

尚も、動こうとする。それ──白と黒の翼を持つ少年は手を伸ばして目の前の男に一撃喰らわそうとする。

 

 

「...誰が生まれてくれと頼んだのですか? 誰が作ってくれと頼んだのですか?」

 

 

運び屋からの質問に、生まれたばかりのそれは答えることなど出来ない。だが、質問の意図を勘違(りか)いしたのだろう。手を伸ばして、口を開いて、血まみれの体を振り絞って、答える。

 

 

「死に...たく、ない。生き、たい」

 

 

生まれた意味も、存在している意味も、それにはわからない。ただ生きたい。この体の暖かい感覚を消したくない。例え呪詛が耳にへばりついても。周りの全てが自分を消そうとしても。目の前の男が切り刻もうとしても。生き続けたい。生き続けて、もっと暖かくなりたい。生まれたばかりの少年(それ)には、充分すぎる答えだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーザンッッッッッッッッッッッ!!!ー

 

 

斬られた。呆気なく、運び屋の手によって斬られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の隣の岩が、真っ二つに割れた。

 

 

..............................

 

....................

 

...........

 

 

──もしも、私が消える事になったら...その後に生まれるであろう()の世話を頼めますか?

 

 

「まさか、私に...史上最低な運び屋に依頼をするとは思いませんでしたよ」

 

 

それは、彼が消える間際に依頼したもの。天使と悪魔の力を有する者。白と黒の翼を持つ者。店員の弟ではある。しかし二人は出会ったこともなければ、出生に立ち合った訳でもない。そもそも、造られた存在だ。

 

 

「私は気分次第でやめるかもしれないというのに」

 

 

店員の血肉から生まれたのではない。店員の別側面という訳でもない。生まれ変わりでもない。早い話、血縁関係を持った赤の他人である。だが、それでも彼は態々運び屋に依頼をし、運び屋もそれを承諾した。

 

 

「...まぁ、退屈はしないから、暫くはそうしましょうか」

 

 

今となっては、彼の思惑などわからない。運び屋は、少年に語りかける。

 

 

「では行き(生き)ましょうか。()()()さん」

 

 

稲光、雷鳴、祝福...彼が名付けた少年は少しの間狼狽え、やがて大きくうなづくと後を付いて行った。

 

 

 

 

 

 

生まれた少年は、今日も生き続ける

全てが終わったこの世界の何処かで生き続ける...

 

 

 

 

 

 

 

 











オリキャラ紹介
【バラク】
店員が消えた日に生まれた少年。店員をこの世から消す為、神々によって造られたは良いが世界のルール(店員と同じ様な存在は2人以上存在できない)によって生まれる事のないまま眠っていた。常に頭の中に【殺せ】という呪詛に近い言葉が流れているが性格は(戦闘態勢に入らなければ)至って温厚。
いざ戦闘に入れば店員とは違い、悪魔の力だけでなく天使の力もお構い無しに使うが生まれたばかりなので荒削りとなる。それでもDrジャッカルこと赤屍蔵人に食い下がれる程である。現在はそのDrジャッカルと行動を共にしている模様。


–余談–

彼を造った神々が消滅した今、彼を造る上で元となった遺伝子が誰のものなのかは不明。少なくとも店員ではないらしい(そもそも扱えない)。つまり彼は悪魔店員の遺伝子そのものを持っている訳ではない。にも関わらず、店員と彼には血縁関係がある模様。しかも契約とか呪いなどといった眉唾物ではなく、真っ当でれっきとした血縁関係である。









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