悪魔の店   作:執筆使い

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リクエストスペシャル。皆様はアメコミがお好きでしょうか? 今回はそんなアメコミからとあるキャラクターとのコラボです。

因みに恐らく殆どの読者が知らないと思うので、【アメコミ パニッシャー】と検索エンジンで打ち込んでから予め調べてください。キャラを知ってる前提での話なのでわからない人にはひたすらわからないと思います。

また、割と何でもありな展開が多々あります。そう言うのがちょっと許せない方はお気を付けて下さい。では、どうぞごゆっくり。


リクエストスペシャル『執行者』

 

 

 

 

「...悪魔店員」

 

 

 

あらゆることを俺はやってきた

記憶は俺を苦しめない

 

 

苦しめるのは記憶よりも過去のほうだ。

──人々が魂を売った悪魔がいる

 

 

 

 

 

 

 

奴がやってくる、迎えにやってくるんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜SP71 パニッシャー〜

 

 

暗い、暗い、真っ暗な倉庫。月明かりすら入らない程に閉まっている場所故に、入り口から侵入したところで何も見えないだろう。

お互いに夜目が効いてなければの話ではあるが。

 

 

黒いスーツの男が、先に動く。一撃を入れる為に駆けて近付く。それに対しもう1人はマシンガンを両手で持ち構え、近づけまいと撃つ。

普通の人間であればそのまま蜂の巣だが、生憎常人ではない男はありえない速度でそれら全てを躱しながら駆ける。

 

 

「ふぅ...」

 

 

──速い

 

咄嗟に引き金から手を離し、上体を後ろに逸らしたのは前線へ戦い続けたが故の直感であった。絶対に避けきれない速度の回し蹴りが空を切ったのは、たぐり寄せた幸運であった。逸らした勢いのままバク転をして大きく距離を取る。

 

 

「良い判断、ですが遅いですねぇ...パニッシャー」

 

 

「!」

 

 

声が聞こえる方へ無意識に目線を向けてしまった。右には誰もいない。ハッと左を向こうとするよりも先に、死なない程度の拳が背中に当たるのが早かった。

その気になれば、悪を容易く倒せる英雄になれた拳は大の男を吹き飛ばす。数回跳ねて、十メートル程まで転がり横たわった。ピクリとも動かないという事からも、気絶したのだろう。

 

 

「...」

 

 

そう結論付けた男は、パニッシャーと呼ばれた執行者へ背を向け、倉庫から出ようとする。

 

 

突然であるが、悪魔店員という男は身体能力が高いのであって近接格闘に秀でているわけではない。魔術で強化を施し格上相手に戦った事もあったが、彼の動きは全て我流。近接においては細かい手加減はあれど、打撃そのものに対する技術を持ち合わせているわけではなかった。

 

 

「...!」

 

 

左肩を撃ち抜かれた。振り向くと其処には五体満足で立っていた執行者の姿。恐らく、強靭な防弾チョッキを予め着込んでいたのだろう。仮に店員が武術の達人で発勁でも実戦で使えれば結果が変わっただろうが、どちらかといえば彼は剛拳の使い手。事前にそれを知っていたパニッシャーはこれで防いだのだ。

其処に関しては別段驚きもしない。ただ、自分の左肩を撃ち抜かれたという事と、自分の魔力が乱れている状態に陥っているという事実が執行者に対する関心を寄せたのだ。

 

 

「成る程、対象の魔力を無理矢理捻じ曲げ乱れさせ、部位ごと破壊する弾丸ですか...厄介ですねぇ(魔術師殺しの起源弾と原理は似ているといったところですか...)」

 

 

左肩から先をへし折り外し、投げ捨てる。敢えて再生させないのは人間相手故の、本気を出さないという敬意にも近い縛りだろうか。兎も角片腕を失った上にバランスが変わったので微かに右の方へと傾く。これで機動力と攻撃力はだいぶ削がれたと判断した執行者は次の行動に移す為に既に装填した先程のマシンガンを構えながら進む。

 

 

「執行開始」

 

 

自分よりも身体能力が圧倒的に高いのに、先程吹き飛ばされたのに彼は一切の躊躇いなしに発砲しながら近づく。その姿はまさしく、悪そのものを憎む執行者。離れようにも片腕で数多の銃弾を弾きながらな上にバランスが悪く、先程の素早い動きが出来ない店員は鬱陶しく感じつつも本命の銃弾を警戒している。十メートル離れた2人が文字通り接敵するほんの0.1秒の間、執行者は凄まじい思考速度で狙いを絞る。

 

 

「(あるツテで手に入れた悪魔殺しの銃弾...流石に四肢だと自切されるか。ならば胴体に撃ち込む)」

 

 

マシンガンを投げ捨て取り出したのは閃光手榴弾。目の前へ優しく投げる。拳銃を構え空いた手で目を隠す。

何も見えない程真っ暗な倉庫が、明るく照らされた。至近距離に居た店員は思わず目を瞑る。だが迎撃の準備は出来ていた。右手が執行者の胴体めがけて突き刺さろうとする。あまりに速い正拳突き。

 

 

間一髪。執行者は勢いをつけたまま飛ぶ。ギリギリ店員の身長を追い越すぐらいの高さ。毛髪が執行者の肩を掠める。狙いは自切のしようがない部位。左の方の背中──心臓部。後は引き金を引くだけ。それだけで、目の前の、決して許される事のない最強の悪に執行が下される。しかし、それよりも先にだ。判断が早かったのだ。

 

 

「惜しかったですねぇ」

 

 

隻腕故のバランスの悪さを利用した。正拳突きは真っ直ぐに放つつもりなぞ毛頭なかった。そのままの勢いで、店員が振り向き掴んだのは例の銃弾を放つ拳銃。銃口一つ抑えれば、ましてやそのまま握り潰せばもう放てない──

 

 

 

 

 

 

BANG!!!

 

 

 

 

 

盲い状態であった為、店員は気付かなかった。拳銃を二丁持っていたことを。予め一発だけ銃弾をもう一つの方へ入れており、手榴弾が作動した直後に片手で一丁ずつ持ち構えていたことを。囮の方を掴まれてしまったので狙いが逸れてしまったが、右肺に撃ち込まれた。上出来だろう。あの店員を出し抜いてここまでしたのだから。

だが、上出来で終わらせるほど彼は甘くなかった。

 

 

「む!?」

 

 

悪を滅ぼせるのであれば、自分がどうなろうと構わない。そういうタイプの人間が遥かに格上の者を相手取り、最後の仕上げとしてする事と言えば古今東西決まっている。

 

 

「執行完了」

 

 

その言葉と共に、倉庫が爆発した。

 

 

...............................

 

.......................

 

.............

 

 

咄嗟であった。無理矢理ではあるが、2()()()転送魔術を使い爆発から逃れた。撃たれてボロボロの身体故か、転送先──どこかの建物の屋上にて仰向けに空を見つめる。幸いだったのは執行者は別の安全な場所へ移動させた事だろう。じゃなかったらこんな満身創痍(表面上は)な悪に容赦なくトドメを刺すに違いない。

 

 

「多分蜂アレルギーの人が刺されるのってこんな感じなんでしょうねぇ。物凄い痛みですよほんと、ッハッハッハ...」

 

 

 

大きく口を開けて、店員は右手首に噛みつきそのまま腕を肩から引きちぎる。そして右腕を放り投げると残った全身はボロボロに崩れて消えていった。

グチュ、グチュ、と肉々しい音を立てたかと思えば右腕を中心に新しい全身服ごと再生する。少し疲れたのか肩でふぅと息をしていた。新しく生えた右目で月を見ていた。

 

 

「正義などないか、正義しかない、か...あの藪医者の言う通りですよ」

 

 

丸く輝く月を見つめていた。

 

 

「お互い、英雄にはなれない程悪を憎んでいた。ああ、もう二度と戦いたくありませんねぇ」

 

 

 

伸ばしても届かない月をただただ見つめていた。

 

 

 

 

「痛い思いは懲り懲りです」

 

 

 

 

今日も彼は店を営む

ありとあらゆる商品が並ぶ悪魔の店を営む...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






キャラ紹介
【パニッシャー(本名:フランク・キャッスル)】
調べてもアメコミだからどうしてもピンとこないという人に、すごいわかりやすい説明をしよう。ワンピースFilmZという映画に出てくるゼファーっていうキャラクターを想像してほしい。パニッシャーは大体あんな感じである(隻腕なのと教え子が沢山居るという点を除けば)。なのでパニッシャーを知らない人はワンピースのZを想像すれば良いのだ。どっちも元海兵ですしね。家族殺されてますしね。多分元ネタなんじゃね? と思うぐらい似てますほんとにマジで。



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