悪魔の店   作:執筆使い

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リクエストスペシャル。今回はストリートファイターというアーケードゲームで知ってる人も多いであろうあのキャラとのコラボです。


※注意:今回も例の如く、店員が最後しか登場しません。前半(というか大部分)はジェルマ66から、既存であるオリキャラが登場します。
また、作者はストリートファイターをやった事もなければ、原作を知らないで書いてますので

「◾️◾️様がこんなに弱いわけないだろ!!」

「◾️◾️様がこんなに強いわけないだろ!!」

「あーん、◾️◾️様が負けちゃった!!」

となる読者もいるかもしれません。そんな話でもよろしい方は、どうぞごゆっくりお楽しみ下さい。





リクエストスペシャル『赤き魔人』

 

 

 

彼の男は人の形

彼の男の拳は模倣

 

 

彼の男の生き様に意味は要らず

無銘の男は立ち上がった

 

 

 

 

無拳ネモ...66の者共が1人

見据えるは赤き魔人であった。

 

 

 

 

 

 

 

〜SP72 無銘の拳〜

 

 

「フ...ジェルマ66か。クハハ、貴様らの目には何も見えておらぬ。我が勝利という運命すらもな」

 

 

そう言って構えるは支配者──ベガ。その肉体には膨大なサイコパワーが滲み出ている。その赤き肉体は雄々しく、冷酷に佇む。

 

 

「貴様、勝利、運命...」

 

 

おうむ返し。人形──ネモは拳を両方前に出す。所謂ボクシングスタイルに近い構えはただただ手にの方へと、確実に執行するための拳を作ろうと用意している。その白き肉体からは何も感じられず、だが冷淡に佇んでいる。

 

 

「...!!」

 

 

先に動いたのはネモ。その足さばきは日本武道の摺足である。柔道家、剣道家、が普段行なっている足さばきを想像して欲しい。素人でもわかりやすく言うならば、あんな風に足の裏を極限まで地面につけて、まるで地面を滑るように動き前進する。アレである。利点はフットワークと違い、起こりを判断しづらいという事。

 

 

「ぬっ」

 

 

現に接近を許してしまった。が、欠点も存在する。一部を除き拳での打撃には向かない事。故にネモはそれを利用して虚の構えであるボクシングスタイルを取った。摺足と同時にグーからパーに変えた事に気付いた時には、既に両腕はその赤い服の襟を捉えていた。

何故、柔道で畳が必要か? 素人とて説明しなくともわかるだろう。後はそのまま勝負をつけるだけ、ネモの作業じみた心は早くもそう結論付けた。

 

 

「──!?」

 

 

誤算は幾つかある。ベガ自身が武術に関してある程度技を知っていた事。彼にはサイコパワーという超能力があったという事。そもそも、彼は地面にものすごい勢いで投げつけられたところでやられてしまうほどヤワではないという事。

 

 

 

1番は、ベガという男を見誤り過ぎたという事。

 

 

硬い地面に叩きつけられていたのは、ネモの方だった。通常であれば肺への衝撃と肋骨へのダメージで息ができずに悶える所だろうが、彼は人形故にすぐさま仕切り直しの為にいつのまにか掴まれた腕を弾き後方へと跳び距離を取る。

 

 

「遅いわぁ!!」

 

 

咄嗟に両腕を十字に組み前へ構えた。相当強い打撃であれ防げるその構えを取ったのは、成る程、確かに良い判断であろう。だが、ベガという男を知っていて、ましてやどういう技を使うかを知る者であれば、その一連の動作に対して愚策と零す。

 

 

防御(うけ)ては駄目なのだ。

 

 

踏ん張っ(持ち堪え)ては駄目なのだ。

 

 

失敗してでも、その技をかわそうとすべきだった。そうすれば直撃は避けられた。例え脇腹に当たろうとも直撃は避けられた。

 

突進を受け止めたネモを襲ったのは不可視の衝撃。物理的な防御なぞ、意味を成さない。複数に渡るそれは人形でありながら着実なダメージを負わせる。計6回が腕を弾き、苦悶の表情を取らせる。すかさず、もう一度投げんが為にベガが動こうとしたところで、異変を感じた。

 

 

「ぬっ!」

 

 

──重い

 

 

まるで、根の張った大木を持ち上げようとする様な重量感。明らかに先程投げた時とは違う。サイコパワーを動員してもピクリと動かない。

重心を下向きに、踏ん張っていた。ただそれだけ。しかしほぼ全ての重心を臍の下に集中している。ネモは胸倉を掴み返し、上体を大きく仰け反る。

 

 

 

頭突き。まるで不良が相手にぶちかます時に使う、単純で荒っぽく雑な技。否、技というよりかは暴力。兎も角、その一撃を帽子越しとはいえ食らったベガはふらつく。その隙に、拳を大きく振りかぶって

 

 

 

 

グンッッッッッッッッッッ!!

 

 

腹に思い切り、それこそ体全体が丸ごと吹っ飛ぶほどの一撃を食らわせた。

 

 

 

「ごふっ!?」

 

 

ワンバウンド、ツーバウンド

 

 

「がふっ!!」

 

 

スリーバウンド、漸く踏み止まる。見れば、口にこそ出してはいないが彼は訴えている。

 

 

 

──まだやるか?

 

 

名も無き拳の者は無機質で鋭い殺気を放っている。

 

 

「抜かせ!!」

 

 

不適に答える赤き支配者。それを聞いたが早い故か──ネモは既に距離を詰めていた。移動術は居合抜きの要領で、拳の構えは空手に近いが異なる。もっと詳しく言えば、左手脚は流水岩砕拳、右手脚は旋風鉄斬拳。無呼吸で繰り出す二大武術の技は敵の体力を確実に奪い執行させるだけの破壊力を持っている。先程の突進に対する防御で十全な蓮撃は望めないが、それでも充分だ。

 

 

「!!!」

 

 

脇腹、喉元、左胸、膝、あらゆる急所を無慈悲に狙う呼吸無しの蓮撃。神をも殺しうる技に死角無し。故にそれ以外をネモは考えなかった。

 

 

「!!」

 

 

まだだ。

 

 

「!!」

 

 

まだ相手は呼吸をしている。

 

 

 

「!!」

 

 

まだ相手は立っている。

 

 

 

...まだ立っている? 違和感を感じた時、蓮撃をしている筈の自分が妙にブレていることに気付いた。焦りにくるものか、目の前の男の倒せなさに来るらしくない苛立ちか、一瞬乱れた。

 

 

「──ア」

 

 

乱れた彼の眼に映るのはサイコパワーを操る赤き魔人。否、だとしたら...だとしたら...本来おうむ返ししか出来ない筈の男が思わず一声上げる事もなし。

逆に吹き飛ばされたのは、闘気故か、サイコパワーによるものか、或いはただの一格闘家の拳を喰らったからか──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうした? その程度で我が覇道を止められると、愚かにも考えていたのか?」

 

 

 

──その時、魔人ベガは神をも凌駕した。

 

 

 

 

 

 

「生意気にも我が肉体を傷付けた礼だ。敗北を貴様にプレゼントしてやろう。我道無き者よ」

 

 

 

ニィッッッッと口角を上げながら、ベガは仕切り直した。まるでここからが本領だと言わんばかりに。

 

 

 

 

 

 

誰も勝てぬ悪の格闘家が現れたと言わんばかりに。それに対し何も恐れを抱けない男は、また別の構えで応戦した。

 

 

 

..............................

 

....................

 

...........

 

 

 

 

「っはっはっは。成る程、戦うという依頼は果たしたが負けておめおめと帰って来ましたか...ネモ?」

 

 

店員は笑いながら、しかし彼の目を一切逸らさず瞬き一つせずに見つめセリフを吐いた。

 

 

「何故、色んな格闘の技を使える貴方が手札の少ない彼に負けたか解りますか?」

 

 

「何故、...」

 

 

ネモは黙る。おうむ返し云々ではなく、本当にわからない故のだんまりだった。

 

 

「それがわからなければ、ずっと勝てませんよ。貴方が望みたいものが見つからなければ、ね」

 

 

そう言って、治療を終えたジェルマの長──悪魔店員は次の依頼の内容をメモを渡すと同時に簡潔に説明すると、最後に肩をポンと叩いて、いつも通りの笑みを浮かべながらこう言った。

 

 

 

 

 

名前(意味)は、考えて探して見つけて初めてわかるものですから」

 

 

 

今日も彼等は商売を営む

ありとあらゆる世界にて、広く深く商売を営む...

 

 

 


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