悪魔の店   作:執筆使い

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リクエストスペシャル『金色の英雄/悪魔』

 

 

 

 

 

まただ。

 

 

「Mayday! Mayday!!」

 

 

また一機、堕とされた。怖い。恐ろしい。死にたくない。情けないと思うか? だって、そうだろう?

 

 

「Shit!! Holy──」

 

 

誰が予想できる? 行って、落として、帰ってくるだけの簡単な仕事だった筈だ。神の名の下に、自由の名の下に、我々は全て正しかった筈だ。だというのにどうしてこうなった? あんまりにも、あんまりにも、理不尽だろう。

 

 

「Damn it!!」

 

 

嗚呼、等々やって来た。同胞の翼をもぎ取った金色の悪魔に憎悪を向ける。同時に、これをけしかけたであろう連中に向けても。

 

 

 

 

 

「Gremlin!! (悪魔め!!)」

 

 

 

──地獄へ落ちろ、と。最後に中指を立てるしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜SP76 黄金バット〜

 

 

 

「ふむ...これが黄金バットですか。何と言いますか、悪のラスボスみたいな見た目ですねぇ」

 

 

「な、何だい、 黄金バットはカッコいいんだぞ。カッコよくて、どんな奴だってやっつける程強くて、皆んなに優しいんだ。馬鹿にするんだったら例えおじさんでも許さないぞ...」

 

 

「おっとっと、それは大変失礼しました。何せ珍しいものですから」

 

 

「...」

 

 

「しかし随分と上手い絵ですねぇ。所々不鮮明な箇所や輪郭がかすれてボロボロになってる場所があるし...何よりマントがありませんが、まるでそうと感じさせない。まるで命を持って、そこに居るかのようだ」

 

 

「...一生懸命書いたんだ」

 

 

「...」

 

 

「おじさんも知ってる通り、俺ずっと1人だったからさ。お菓子も、おもちゃも買ってもらえないし、紙芝居だって後ろの方。だから、辛うじて見える範囲で自分のヒーローを書こうと思った。そうすれば俺は一人じゃない。俺には黄金バットがついているんだって思えるかもしれないから...」

 

 

「それで、どうでしたか? 寂しさは紛れましたか?」

 

 

「...わからない...よ。いつも頭に嫌な声が聞こえてくるんだ。【そんなものは居ない】って。いつもいつも、今も聞こえているんだ」

 

 

「それは...失礼しました」

 

 

「ハハッ、おじさんいつも謝ってばかり...ゲホッ、ゴホッ、苦しいよ...眠いよ...熱いよ...」

 

 

「でしたらこの特性マント、ゲフンゲフン。この特性毛布にくるまって寝るといい。【ぐっすりと眠れますよ】」

 

 

そう言って、男は七つ道具を少年にかける。きっと魔法の道具なんだろう。安心に包まれながら少年は、そんな事を思う。

 

 

「ねぇ、おじさん...僕は、一人ぼっちで、悪い事ばかりやって来たけど、大丈夫かな?」

 

 

質問の意図を理解した男は答える。

 

 

「大丈夫ですよ。貴方はきっと、お父さん、お母さんに会えます。それに万が一落ちてしまっても、存外悪い所ではありません。何より料理が物凄く美味いんですよ。何せ閻魔大王及びその義理の娘さんの教えが行き届いていますからねぇ。一度見てみましたがあれはもう...うん。知らない方が良いですね。忘れて下さい」

 

 

すっとぼけた様な、和ませる様な喋り方で男は答える。

 

 

「ふー...ん。良かった。じゃあ、もう一つ質問して良い? おじさん...」

 

 

「ええ、答えられる範囲であれば」

 

 

 

 

 

 

 

 

「黄金バットは...ヒーローは...本当にいるの...?」

 

 

 

 

─────────────────

 

 

────────────

 

 

─────

 

 

 

 

 

周囲が燃えている。誰かが叫んでいる。誰かが押しつぶされている。誰かが抱き合っている。誰かが這いずり回っている。

 

 

苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい痛い痛い苦しい苦しい

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い熱い熱い痛い痛い痛い痛い

熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い助けて助けて熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い

助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて◼︎◼︎助けて助けて助けて助けて助けて助けて

 

 

 

 

 

この世の地獄が其処にはあった。男はその景色を見下ろしていた。少年は別の所で眠っている。

下半身のない少年はずっと眠っている。毛布は必要ない。だから男は七つ道具のマントを...血塗れで裏側が赤くなったマントを洗わずに持っている。

 

 

 

「この世に、黄金バットの様な...誰もが憧れるヒーローは居ない。誰かにとっての英雄は、誰かにとっては悪なのだから」

 

 

少年が描いた、渡された絵を見つめながら呟く。

 

 

「しかし...誰もが目を背ける悪というのは存在します。強大で、全てを押し潰せて、他者のことを考えないちっぽけな悪というのは...」

 

 

魔法は、少年の英雄に降りかかる。本物が現れはしない。流石にそこまではしない...出て来たのはマスク、グローブ、ブーツ、ベルト、バトン。それらを持った男は、それ以上の事をする。

 

 

「もしも貴方にとって、それに立ち向かう者達の事が黄金バット(理想のヒーロー)だというのなら...喜ぶといい、少年」

 

 

 

 

 

被って、はめて、履いて、装着して...最後に、赤と黒のマントを背負う。少年の願いを背負う。

見据えるは銀色の鳥。炎を落とした悪魔。白以外を許そうとしない人種。

 

 

 

 

 

「ヒーローは、存在しますよ。例え偽りであったとしても、ね」

 

 

 

 

それらすら霞む悪魔は、笑い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

轟音の後に、翼が一つもぎ取られるのはその数秒後の事であった。

 

 

 

 

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