悪魔の店   作:執筆使い

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リクエストスペシャル。本日はケロロ軍曹からある親子とのコラボです。
設定違いや口調違いがあると思いますが温かい目で読んでください。






リクエストスペシャル『IB-失楽園-』

 

 

 

 

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! っと...あー、成る程」

 

 

洋館に佇む石像の前に突然現れた男はある程度察して懐から道具を取り出そうと弄る。

 

 

「久々の緊急の呼び出しというから何かと思えば...お代は後で請求するとして、えーと石化用は確かこの辺に...ありました!」

 

 

そう言って取り出したのは液体の入った瓶。彼はコルクの蓋を開けて中に入っているそれを石像にぶっかけた。

 

 

「ナイタール溶液〜(ダミ声)...こほん。さて、そろそろですかね」

 

 

男が錬金術師だった時によく用いた溶液は石像の表面を腐食させ、ヒビを作った。

 

 

 

 

「ああ、そうでした服を用意しないといけませんねぇ。それにしても暫く見ないうちに随分と変わった様ですねぇ、ネブラ...ああいや、お客様も。かれこれ数千年ぶりでしょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カランと鳴るはドアの音

コロンと鳴るはベルの音

 

 

 

 

悪魔の店には何でもあります

お客様の願いや要望を必ず叶えて差し上げます

 

 

 

はてさて、今日のお客様は?

 

 

 

 

〜SP76 人間機械〜

 

 

「はっはっは!! 一児の父になっていた事もですが、まさか人間にしてやられるとは、実に素晴らしい醜態ですよ。お客様」

 

 

「ダディ、彼は何者? 全く感じない」

 

 

『彼は...あー、私が生まれたばかりで右も左もわからなかった時に()()()お世話になった...この星でいう所の師匠にあたる者だ』

 

 

着替え終えて暗幕から顔を覗かせる無機質な少女。喋る黒い髪飾り。そして悪魔らしい笑みを浮かべて二人に話しかける男。全員闇に生きる者ゆえに、ただ会話しているだけだというのに禍々しい雰囲気が屋敷を包んでいた。

知り合い同士である男は髪飾りの紹介に少し物申したい事があったか、肩をすぼめて首を横に振った。

 

 

「随分と嫌われた者ですねぇ。ただ単に生き抜く方法を教えただけで、少しばかり鍛えただけなんですよ...そこまで言うのでしたらもう一度やりますか? 不覚を取ったぐらいですから大分鈍っているでしょうしね」

 

 

髪飾りは鍛え方の内容を脳裏に浮かべて、少々震えていた。誰だって、思い出したくない過去が二つぐらいはあるものだ。敢えてそれには触れずに男は少女の方に視線を向け値踏みをするかの様に顎に手を当て考えるそぶりをする。

 

 

「ふむ...成る程、()()()()()()()()()()()()気の所為ですね。まぁそんな事よりも、貴方は上で震えているお客様とは違い、生きる為ではなく生きる様になりたいが為に人ならざるものを食べているらしいですが...それは何故ですか? 今の状態でしたら、ずっと存在し続けることができる。綺麗な星々を眺める事も出来る。綺麗でい続ける事も出来る。誰もが求めてやまない永遠の中に居るのに、どうしてそれを手放すのでしょうか? ただ言われるがままじゃあ無いでしょう?」

 

 

「...」

 

 

男が言っている事は、我々人間の感性からしてみれば至極真っ当な疑問だった。生きていないということはすなわち老いもなく、死もなく、綺麗な景色を眺めて幸せな風景を楽しみ続けられる不老不死になっているということ。恐怖も何もないそれを手放すというのは、まるで楽園を手放そうとしたアダムとイブの様だ。

男の質問に対して人形は目線をそらすこと無く、誤魔化しも怯えもなく...

 

 

「冬樹が、人間だから」

 

 

そう答えた。理由はただ単純。ただ一人の人間の為。純粋だった。人間じゃないからこそ男には彼女の目が純粋に見えた。同時に惜しいとも思った。彼は人間の醜さと強さ、そして美しさを知っていたから。だからこそ彼は懐をから本を一冊取り出す。

 

 

「アリサ=サザンクロスと言いましたか...良い答えを聞かせてもらいました。本来でしたらその答えを石化解除の報酬代わりにしようと思ったんですがねぇ。どうも貴女の父が料金の方を後払いするらしいので等価交換としてこちらを差し上げます。何の対価も無しに利益を求めるのは経営者の名折れですから」

 

 

銀河鉄道999というタイトルが書かれていた一冊の本を、少女に手渡した。男はこの本が好きだったのだろう。表紙やページに所々皺や汚れ、指紋の形をした模様が付着している。また、ある魔法がそれにはかけられていた。

 

 

「その本は全巻の全ページを一冊に、コンパクトサイズでまとめる魔法を付与させたものでして、サイズの割に読み終えるのは時間がかかりますよ」

 

 

「...」

 

 

「さて、私はそろそろ帰らせてもらいます。どうもこれ以上私がいるとお客様が狼狽えるどころかヤバイ事に成りそうです」

 

 

そう言って、男はフッと煙の様に館から消えた。足跡一つ残さず、魔法の様に消えた。

 

 

 

屋敷には、綺麗な少女と、その少女の願いを叶えようとする父親が残っていた。

 

 

 

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.......................

 

.............

 

 

「果たして彼女はイヴになり得るかどうか...まぁ、これは私にもわかりませんよ」

 

 

悪魔は笑い出す。

 

 

「それ程までに人間はかわいそうないきものですから」

 

 

今日も彼は店を営む

ありとあらゆる商品が並ぶ悪魔の店を営む...

 

 

 

 

 






Q.ナイタール溶液って何なの?

A.実在する腐食作用をもたらす液体で、主に金属を加工するのに用いられている。ぶっちゃけ私は化学のかの字も知らない程頭が悪いのでこれを用いて石化解除が行えるのかどうかは知らない。誰かこの手の話に詳しい人が居たら教えて欲しいです。



Q.何でネブラもアリサも店員を食べようとしなかったの?

A.メントスを数個食べた直後にコーラを一気飲みをしている自分を想像してみて下さい。そういう事です(現に初めて会った時のネブラは彼を捕食して物理的に痛い目に遭ったので尚更)



Q.アリサをまじまじと見て、店員が意味深な発言をしたのは?

A.店員曰く、アリサを作った人物に心当たりがあるらしいとのこと。とはいえ同じ中世でもサン=ジェルマン伯爵は()()()は18世紀の人物でアリサが作られたのは15世紀だから信憑性は...



Q.ネブラさん途中から終始無言だったけどマジでどうしたの?

A.そっとしておいて下さい。彼にだって思い出したくないトラウマの一つや二つあるんです。



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