悪魔の店   作:執筆使い

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リクエストスペシャル。本日は誰もが嫌うであろう白いマスコットキャラクターとのコラボ...だったんですが、まどマギに対する自己解釈を書きたいと変な方向へ筆が進んでしまった結果【まどマギ】とのコラボとなりました。要するにキュウべぇがあんまり出て来ません。具体的にいうと映画のワンシーンで店員と会話するぐらいしか出番ありません。
そしてオリジナル魔法少女(及び魔女)が出ており、殆ど其奴に出番が食われてます。

俺はキュウべぇや原作キャラが見たいんだ! テメェのオリキャラなんざ見たくもねぇ!! という方はブラウザバック推奨です。そうでない方はどうぞお楽しみください。





リクエストスペシャル『星獣に死を』

 

 

カランと鳴るはドアの音

コロンと鳴るはベルの音

 

 

 

悪魔の店には何でもあります

お客様の願いや要望を必ず叶えて差し上げます

 

 

 

はてさて、今日のお客様は?

 

 

 

 

 

〜SP80 夜鷹の夢〜

 

 

「遠路はるばる、いらっしゃいませお客様。本日はどういったご用件ですか?」

 

 

「ここは悪魔のお店であっているかしら?」

 

 

「ええ、そうですよ。どんな願いも叶える無料の商品が並ぶのが売りの悪魔の店はこちらです」

 

 

「じゃあ、依頼は出来るのかしら?」

 

 

「勿論。但しその場合は対価が必要となりますがいかがいたしますか?」

 

 

 

「...殺してほしい人物がいるの」

 

 

「ほう...それはそれは、思春期の少女にありがちな悩みですねぇ。ドロドロしたやつですか? ギスギスしたものですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三日後に、私を殺してほしいの」

 

 

「...」

 

 

「全てが終わった後報酬としてこれを払うわ。もしそれでも足りなければ諦める。足りるのであれば──」

 

 

 

そう言って少女は宝石を一つ取り出した。それを見た店員は全てを察する。笑みを浮かべながらも、客の緊張感を削ぐ様な軽快な雰囲気を消して宝石をまじまじと見つめる。

 

 

「ふむ、良いでしょう。では、それまでの三日間をただ待つのも暇ですし、」

 

 

そう言って、まるで最初からそこにあったかの様な素早さで茶を淹れ少女に差し出す。

 

 

「話でもしましょう。場を持たすのはこれでも得意ですので、別名コミュ力お化けは伊達じゃありませんよ」

 

 

「...ありがとう」

 

 

ラベンダーだろうか? 花の香りが少女の鼻をくすぐった。

 

 

..............................

 

.....................

 

...........

 

 

「紅茶を飲んで落ち着かれたところで、これからの事でも話しましょうか?」

 

 

「これから死ぬ人にそんな話なんてあるわけ...」

 

 

「寝泊まりの話ですよ、お客様。年端もいかない少女を野宿させるわけにはいかない、かといって私と一緒の部屋で寝泊まりという訳にもいきませんでしょう」

 

 

「私に身寄りが無いと言いたいの?」

 

 

「これから死ぬ。その上ボロボロになってまでこんな所に来る人間に身寄りがあると誰が思いますかねぇ」

 

 

そう言って、店員は後ろの商品棚をノックするかのようにコンコンと叩く。するとどうだろうか、店がほんの少し揺れたのち、棚が粘土細工の様に形を変え3桁の数字が書かれたドアが壁にぴったりと張り付いた。126と書かれたドアの1をこれまた店員は引きちぎりこねくり回した後にテーブルの向かいに座る少女に差し出す。

 

 

「要らないわ」

 

 

「ベッド付きテレビ付きバスルーム付きクローゼット付きの個室でございます。プライバシーは守りますのでご安心を」

 

 

「要らない」

 

 

「サービスも充実しておりますので、死ぬ前の決して後悔せぬであろう最大限の想い出を残せます」

 

 

「要らない」

 

 

「お客様──」

 

 

「私はっ!! ...死にたいの。死ぬべきなの。だから、その時までの間に幸せになりたくない。なりたくないの...」

 

 

「でしたら何故、この店に来たのでしょうか? どうして3日の猶予を与えたのでしょうか?」

 

 

その言葉を聞き、少女は目を開いて店員を見つめた。涙を流せない程に枯れ果てた目にはクマがあった。それ以上に、痛々しい後悔があった。お互いにそれ以上何も言わず、永いと錯覚する程の数秒を沈黙が満たしていた。

 

ハッと我にかえる少女。一瞬目線を向けるも、鍵に手を伸ばそうともせずに席を立ち勢いよく走り店を出て行った。カランコロンと寂しい音が店によく響いていた。

 

 

「...ザイ。暫くの間店ではなく工房にしてくれませんか? お客様はこれ以降来ませんので」

 

 

店員がそう言うと店が再び揺れて、客をもてなす喫茶の装いが無くなった。代わりに炉と換気扇と鉄といった、道具を作り出す工房が店員の目の前に広がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side C

 

 

「僕と契約して、魔法少女になってよ!」

 

 

今でも思い出す、幸せだった日々の始まり。嫌、幸せだと思わされていた日々の始まり。そのセリフを聞いた当時の私は今と同じ様に生きる意味が自分でもわからなくて、寂しい気持ちで一杯だった。

 

 

「どんな願いでも叶うの?」

 

 

「君が望むならね」

 

 

「だったら──」

 

 

自由に生きたい。私はそう願い、魔法を手にした。夢を持った私はどこまでもどこまでも飛んでいた。()()()()という願いも同時に叶った故か、私は長く永く飛べていた。

空を飛ぶ以外何もしなかったわけではない。時には魔女を倒さなければならない。自分の願いを維持する為にも必要な事だ。宝石が輝いているのを見て、まだ飛べるんだとわかる。白い翼が輝いているのだとわかる。

 

 

 

 

「嘘...そんなのって...じゃあ、私は...あぁ...」

 

 

 

口に出してしまうほど残酷な事実を知ってしまったのは偶然だった。私が人殺しだったと言う事実。願いに夢中になり過ぎて、殺してしまったという事実。強くなかった。夢ばかり見続けてしまったから、どうしようもなく弱かった。泣いた。泣いて泣いて、泣いた。死のうともした。だけど、宝石が薄汚れているのを見て、まだ飛べてしまうのだとわかる。黒い翼に憎しみが乗せられていると感じてしまう。

 

 

「...誰か、」

 

 

ああ、誰も居ないのに、私は誰かを呼ぼうとしていた──

 

 

 

カラン

 

 

 

 

コロン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

..................................

 

....................

 

............

 

 

「ここをこうして、と。ふぅ...ギリギリですが、ようやく完成ですねぇ」

 

 

そういって出来上がったのはふた振りの小刀であった。汗を拭い肩を鳴らしながら着替えの為に更衣室へと向かおうとする店員を止めたのは、ゆっくりと開かれるドアの音だった。

 

 

「ふむ...いらっしゃいませ、ではありませんねぇ。こんな時に一体どうしたんです?」

 

 

店員はドアから入ってきたものを見下ろしながら、問いかける。

 

 

()()()()()()()()?」

 

 

そう呼ばれた小動物は店員の目線に合わせようと、壁をよじ登り窓にある小鳥が休めそうな程の幅のある足場に腰を落として人の言葉を喋りはじめた。

 

 

「それは僕のセリフだよ。君は一体何をしているんだい?」

 

 

「私の店に、貴方が契約させたであろうお客様がやって来て殺してくれと頼まれましたので、その為の武器を作ってたんです。ただどうしても時間が無かったので、オリジナルではなく干将・莫耶という名刀を私流にアレンジして作り上げたのですが」

 

 

「つまり君は魔女を殺す為に、部外者として介入するということかい?」

 

 

「人を殺す為ですよ。アレは魔女ではない。私の店に、無我夢中に来られたのですから」

 

 

「何も得られないというのにかい? 実に馬鹿げている。何の意味も無いというのに、君は我々の機構の一部を消し殺すつもりなのだから」

 

 

「それの何が悪いというのです。寧ろ私からしてみればあなた方こそ馬鹿げているとしか言いようがない。ただ効率的に、無感情に、そして独善的に人間に介入していくとは...私も出来るだけ私情を挟まない主義ですが、そちら程じゃあ無い」

 

 

その言葉に白い獣達は答える。

 

 

 

「君という悪魔だって食事をするだろう

エネルギーの摂取はあらゆる存在が維持するのに必要不可欠なものだ」

 

 

「同様に、この星の人間は希望がなければ生きていけない

彼らは自ら、そんな世界を作り上げてしまった」

 

 

「だからこそ、それを汲み取った上で我々は希望を提供する側に回ることにした

需要と供給...人間と僕達はその信頼の上に成り立っている」

 

 

男は答える

 

 

「信頼? 実におかしな事を言いますねぇ。忠告一つしない詐欺師風情が良く言えたものだ」

 

 

「忠告? そんな無駄で手間な意思は僕達にはないよ

必要性すら感じない。非効率なことをしないだけさ」

 

 

「何も聞こうともしない、耳すら傾けない非効率な者が人間だ

それだというのに何故君は忠告ばかりする? 何故人に深く介入する?」

 

 

「人を全て食らい、世界を思うがままに出来てしまう力を持っていながら

何故君は人間に忠告をするんだい? どうして人を嘲笑い続けられるんだい?」

 

 

男は笑い出す

 

 

「お前という正義の味方(インキュベーター)がその象徴である世界の為に動くのであれば、醜くてみすぼらしくて見捨てても何の問題の無い無価値な人間を誰が見る? 人か? 魔法少女か? 魔女か? 神か? いいや違う。私の様な、誰もが目をそらす程悍ましい悪魔が手を差し伸べるのですよ」

 

 

男は、そう言って店を飛び出した。白い獣が追おうとするが、店の中に入った時点で腹の中である。近くで待機をしたものも含めて、獣は黒い竜の餌として食べられるのだった。その味は、彼等を表すかの様に何も感じず、匂い一つしない、ただ助手の腹をほんの少し満たすだけのものだった。

 

 

 

..............................

 

.....................

 

...........

 

 

 

満月に立ちふさがる様に、一羽の黒い鳥が羽ばたいていた。それに意思など殆ど残っておらず、カラスよりも低い泣き声でただただ叫んであるだけである。だというのに誰も止めようとしなかった。止められなかった。その場にいる人間が倒れている。魔女を退治する魔法少女が攻撃を加えても、すぐさま再生してやり返すかのように少女を確実に仕留める。

 

 

 

どうして空を飛んでいるのかも、どうして泣き声を発しているかも、どうして下にいる人達が耳を塞いで倒れ込んでいるかもわからずに、それは存在していた。何もかもがわからないのならば、それが発している叫び声は何の為に夜空に響いているのか? 助けを待つ為だろうか? 人を喰らう為だろうか? 黒い鳥はないていた。

 

 

「依頼執行の時間です。お客様」

 

 

治る筈の翼が斬られ、鳥は地面へと落ちた。ふた振りの小刀を構える男が、少女の夢を壊しにやって来たのだった。その顔を全てを台無しにする悪魔らしく、怯えるほど真っ黒に透き通る両目であった。

 

 

「◼️◼️◼️◼️!!」

 

 

「ええ、もう貴方は夢に羽ばたく事もない。死をもって、お客様にかけられた魔法を解いて差し上げましょう」

 

 

一刀が、少女の首筋を斬った。

 

 

赤い血飛沫が、男の顔に掛かった。

 

 

少女は漸く、開きっぱなしだった目を瞑る。

 

 

 

 

白と黒の名刀が、人の血で真っ赤に染まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

..............................

 

.....................

 

...........

 

 

 

 

 

「と、いう事もありましたねぇ。それからどうなったか? どうもしませんよ」

 

 

悪魔は笑い出す

 

 

「今もどこかで、正義の味方は世界の為少女の夢を叶えているのですから。せいぜい私は、商売敵であろう彼に対して意味の無い言葉を投げかけるか、一つ増えた墓標の様子を見に行くだけです」

 

 

 

今日も男は店を営む

ありとあらゆる商品が並ぶ悪魔の店を営む...

 

 

 

 

 

 






星獣

その星(地球)に住む獣

人間


なので決して「キュウベェシスベシフォォォォウ!!」という意味合いのタイトルではないです。


ん? 今回の話どっかで見た事あんぞ? ハッハッハ、気のせいですよ気のせい。宇宙ブーメランじゃなくて干将・莫耶ですし、赤いヒーローじゃなくて黒い悪魔ですし、超兵器じゃなくて魔法少女ですし、他作品の空似です。



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