因みに作者は文ストをあんまり知りません。なのでか文豪スト要素がほぼない作品となっております。もしも愛読者がいたらすいません、ご注意して下さい。
「──ァ」
痛い───
「アアアアァァァァァァァァァァァァァ!!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
手が痛い。足が痛い。心が痛い。
苦しい。苦しい。胸が苦しい。
此処は牢屋。僕は何もしていない。けれど【アイツ】は言う。
「苦痛に耐える術を学べ」
僕は足に杭を打ち付けられた。そしてアイツは牢屋から居なくなった。
怖くて、泣けない。怖くて、眠れない。怖くて、何もできない。
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「...誰か、」
ああ、誰を呼ぼうとしたのだろう? 僕には親は居ないんだ...
「ですが、私は貴方の呼び声で来ましたよ?」
「?!」
黒いオバケがやって来た。
〜SP82 側面的な加虐〜
「オバケとは失礼ですねぇ...コレでもちゃんと足が地面に付いている上に生きていますよ私。こう見えてかなりしぶといですし(ボソッ」
そう言いながら、店員は白髪の少年の目線に合わせるかの様に胡座をかいてニコニコ笑みを浮かべている。少年は、目をこすりながら訝しんでいた。
当たり前だ。いきなり音もなく現れたら誰だって驚くし、怪しむのが人の常。少年の反応は至極真っ当なものである。足に打ち付けられた杭の痛みを忘れるほどの驚きだったのだ。
「怪しむ気持ちはよーくわかります。私も、もしも目の前に見るからに怪しいパンダが居たら、考えうる限りの攻撃でこの世から消し飛ばしますし...という冗談は置いときまして、今日来たのはそうですねぇ...貴方が凄い寂しそうだったので少々話し相手でもしようかと思った次第です。後は純粋な暇つぶしですね」
「暇潰し...?」
目の前の男曰く、最近とある流行病のせいでお客様が自分の経営している店にまで来ないし、その影響で流通のいくつかも止まっているので仕事が無くて暇となった。なので部下に熱りが冷めるまでの休暇を取らせて自分もどこかへ出かけ散歩がてらに、丁度良い場所があったから来たらしい。
「...おっと、気を悪くしたなら申し訳ありません。お詫びと言っては難ですが、もしも私の話を聞いてくだされば...とりあえず」
そういって、男は少年の足に刺さっている釘を指差す。血は固まっており、余計に痛々しさが現れていた。
「それ、どうにかして差し上げましょう」
「...」
少年はコクリと頷いた。男は指を鳴らし、火のついた蝋燭を一本立てた。
「安心して下さい。怪談ではなく、ちょっとした問いかけの様なものです」
男は口を開いた。
───昔々、1人の男がおった。
───彼には仲睦まじい恋人がおり、それはそれは美しい女性であった。
───しかし、それを妬んだ者が2人の目の前で自らの命を代償に呪いを掛けた。
───2人を苦しめる呪いだ。美しかった女性は日を追うごとに醜く、怪物の様な見た目となった。
───周囲の人々は怪物となった女性を見て罵声に指差し、時には石を投げていた。
───男は、それに耐えられなかった。最初こそ女性を守り、優しくしていたが徐々に彼は酷い言葉を浴びせた。
───醜い。居なくなってくれ。大嫌いだ。彼女の顔を見る度にそんな言葉を嘆いていた。
───何日も、何ヶ月も、何年も男は言ったが、女性は悲しみと微笑み、そして徐々に醜くなるその姿で彼を受け止めた。
───ある日の事だ。男はとうとう刃物を手に持ち、切っ先を向けた。
「さて、ここで問います。男は一体誰に刃物を向けたのでしょうか? 理由を含めて答えてください」
少年は、たどたどしくも質問した。何故? その男は女性を傷つけたのかを? 愛していたはずの女性を傷つけたのかを?
「女性の姿に耐えきれなかったからですねぇ...徐々に醜くなっていく姿を見たのですから」
少年の脳裏に浮かんだのは自分を傷つけた人々。自分を捨てた両親。そして、先程の...
自分の手足に刺さっている杭を見て、ならば、と少年は答える。男が刃物を向けた先は女性なのでは? と。考えたくは無いが、女性への愛が冷めて、自分が不幸に落ちてしまった事への八つ当たりが爆発して女性に殺意をぶつけたのでは? と。
男は笑い出す。
「いヽえ、いヽえ、違います。切っ先は女性ではない。しかし、成る程...男が遂に耐えきれなくなって女性に殺意を抱いた...成る程成る程。そう考えても辻褄は合いましょう。醜い女性を愛せなくなった。自分は何も問題は無いのに、周囲から同じように石をぶつけられて爆発した。鬱憤を晴らすために、心にへばりついた泥を吐き出すかの様に
と、矢継ぎ早に言った後に咳払いを1つした。そして長々しい口上に謝罪の言葉を掛けた。男は答え合わせをする。
「切っ先を向けたのは彼自身...つまりは自殺を選んだのですよ」
少年は、疑問符を浮かべる。だが、男の次の一言でその全てを理解した。
「呪いの内容は、
「じゃあつまり...」
「ええ、少々意地悪な問題だったかもしれません。子供である貴方には余りに意地悪過ぎたものでしょう。ですが、
そこまで言って、店員は口を噤んだ。まるで、これ以上言うのは少年の為ではないと言わんばかりに。
「忠告をしておきましょう。どんなものにもあらゆる側面がある。善にも悪たり得る理由が存在し、悪にも善たり得る理由が存在する。故に1つの側面では物事など決められないものだ」
少年は、悪魔を見つめる。
「命知らずに誰かに善を為そうとするか、誰かの為に悪を為そうとするか、今の貴方がどちらへ転ぶかはわかりませんが、決して───」
───1つの視点で、主観だけで相手を見つめない様に。中島敦さん。
その言葉を最後まで聞く前に、少年は唐突な微睡みに瞼を閉じた。
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「暇つぶし、というのは勿論嘘ですよ。私は依頼...いや願いと言うべきでしょうか? 兎も角理由があってあの場に来ました。内容は2つ」
男は頬を撫でる。
「1つ目は少年が少しだけでも気を紛らわせる様に話し相手になる事。もう1つは...これが少々難しくてですね...やたらひっかいたり噛み付いたりする猫が暴れない様に抑える事。まさか油断して顔をひっかけられるとは思いませんでした。ハッハッハ」
男は大きめの引っかき傷を治しながら、こう言った。
「...何故、あの様な質問と忠告をしたかですか? そりゃあ、誰だって私の様な悪魔にはなりたくないでしょうから、そうならない為のコツを教えただけでございます」
今日も男は店を営む
ありとあらゆる商品が並ぶ悪魔の店を営む...
文豪ストレイドッグスを読んでいる人に言うと、店員に話し相手云々の依頼(願い)を言ったのは、序盤で中島敦に杭を打った【アイツ】。つまり孤児院の院長です。色々と分かりづらい内容になってしまい本当にすいません!!