【正義の味方】
この作品内での意味合いはヒーローの如く悪を倒す存在という訳ではなく、困っている人、ある理由から正義を振りかざす事の出来ない者、傷つき弱った者の
皮肉な事に、本編に出て来た登場人物の中で最もこれに近いのは...
※タイトルに書いてあるとある名言の和訳+それに対する個人的な解釈を書いてるだけです。本編にはもしかしたらあまり関係の無い話なのかもしれませんので、気にしないでください。
〜 【彼】と共にいた者達 〜
嗚呼、死が彼女を迎える。彼はただ一つの幸せを彼女に全うさせた。
あらゆる病の気すら、死の一欠片でしかない。故に彼女が勝てる道理など最初から存在しなかった。
「これが...私が、多く奪った...嗚呼、これで良いんです。私はこういう風に...」
そんな事など、知っていた。女性が流している涙を、彼は一切流さなかった。
「これが...貴女の幸せですか?」
とうの昔、あの日に質問されて、それ以降涙を流せなくなった。心が壊れてしまいそうでも、それ以上に疑問が思い浮かんでしまった。
──アナタのシアワセはなんですか?
呪われた言葉だ。一人の死神はその答えを得る為に、永遠にも等しい旅を続けているのだから。
未だに彼は涙を流す暇が出来ない。未だに彼は多くの人の終わりを齎す。未だに彼は歩く方向を変えない。
何もわからない彼ではあるが、ただ一つ
「ええ...これが...私のシアワセ...」
死に逝く人のその笑顔は、彼の決意を固めてくれている。それだけは、自身もわかっている事である。
枯葉が一枚、一人の幸せに落ちた。
「...」
男は、そっと下ろし、シルクハットを被って、真っ直ぐと進み消えていった。
物語はエンドマークで終わるが、生き物はそうではない。故に死神は真っ直ぐへと歩いた。これ以上醜く歪ませない為にも。
これ以上醜く歪まない為にも
分解、再生、組成、変化...
分解再生組成変化、分解再生組成変化、分解再生組成変化、分解再生組成変化、分解再生組成変化...
目紛しく、両者は互いで楽しんでいた。
「さぁ、次はどうだ? どう動く? 予想のつかないその動きと振る舞いで私を楽しませてくれ!!」
「好き勝手動いてそんなリアクションされたのは初めてだなぁ。君、面白いよ。うん!」
願わくば、この遊戯が永遠に続けば。だが、どちらも普段の行いはお世辞にも良いとは言えない。だからだろう、
終わりは、訪れた。
-ピシッッッッッ-
ボロボロにひび割れ始める。組み替えで修復する事も、もはや追いつかなかった。お互い本気になった。その本気が余りにもかけ離れ過ぎた結果である。
「ほらほら! まだまだ終わらせないよ!! ボクはまだ満足していない!!!」
笑顔、故に誰もが恐れる。誰もが呑み込まれる。誰もが彼を拒絶する。目を背けようとする。
黙示録の獣──聖書に書かれたそれは、かの狂ってしまった者がそれを書いた諦めそのものであり、誰も、本人さえもそれを否定しようとしなかった。
「...ぁあ、そうだ! もっと私に見せろ!! ッハハハハハハハハハ!! そうか、これが私すら知らなかったものか!!! そう実感させてみろ!!!!」
裂け始めた口角を上げながら知能の人形は観察する。目を一切背けず、現実を一切否定せず、目の前のものを見る。
互いに狂ってようと構わない。これで良い。これが彼等の望みだ。罅どころかちりになるまでボロボロになろうと、化け物と表現する事すら悍ましく感じる姿になろうと、御構い無しだ。
「そうだ...そうだ!!」
「そうだ...そうだ!!」
「「もっと長く、続け!! この楽しい時間が永遠に!!」」
どんなに歪んでいると言われようが、狂っていると蔑まれようが、決して辞めない。退屈を何より嫌い、周りに合わせようともせず、常に視点を変える者。それが楽しむのを生き甲斐としたロクデナシだから。楽しめない者の意見など聞く筈がなかった。
世界がどうなろうと気にする訳がなかった
考える。正義とは、この全ての世界ではどう扱われているのだろうか? と。不完全な作りだ、不完全な存在だ。別に怒っている訳ではなく、ただただ同情していた。憐れんでいた。
「嗚呼、間違っているのに、どうして貴女は僕の邪魔をするの?」
少年はそう聞いた。
「間違えながらも前に進んでいるから...そんな答えじゃだめかしら?」
赤い女神が答えた。
「嗚呼、やっぱり僕は間違っていたって事なの?」
少年はそう聞いた。
「いいえ。それも一つの在り方かもしれないわ。他ならぬ私が遠い昔そうだったから」
黄色い女神はそう答えた。
「...じゃあ、どうして、貴女は僕の邪魔をしたの? 地獄の女神」
少年は改めてもう一度、そう聞いた。
「...私の弟子だった一人が、そんな彼等に手を差し伸べ、前へ進むよう助言する様な...そんな悪魔だったからよん」
青い女神はそう答えた。
それを聞いて、彼女の表情を見て、あらゆる存在を超えた筈の少年は漸く全てを理解した。
「じゃあ、僕の願いは叶ったんだね」
「ええ、そう貴方が思うのだったら。【彼】は誰よりも口下手だから答えるとは思わないけどねん」
嘗て、魔の全てを知り、全ての世界の上に立つ存在がいた。だが長い年月を経てか、ある日を境にか、その存在は居なくなっていた。
少年の目の前には、人間が大好きで、奇抜な衣に包まれた...そんな一つの女神しか居なかった。
故に少年は満足そうに消えていくのだった...
To be continued...
次、最終回です。