原作でもあまり言及されていませんが終始、何気に可哀想な役回りです。
11時半、ほぼ時間通りだった。
燃え残った暖炉の炭が僅かに赤く、談話室で対峙する4人を照らしている。否、正確には3人か。私は別にハリーたちを止めはしない。
「ハリー、まさか本当にあなたがこんなことをするとは思わなかったわ」
ハーマイオニーは今の今まで消していたランプに灯りを付け掲げた。その明りに、先よりもずっと明瞭にしかめっ面の3人が照らし出される。
「また君か!ベッドに戻れよ!」
ロンはカンカンだ。彼の隣で完全に呆れているハリーと目が合った。
「本当はあなたのお兄さんに言おうと思ったのよ。パーシーに。監督生だから絶対に止めさせるわ」
ハーマイオニーは容赦なく言い放つが、私からすれば、どうしてパーシーに言わなかったのか疑問だ。私なんかよりきっと彼の方がハーマイオニーの意見に賛同してくれるはずなのに彼女はそうしなかった。
本来ならそこに彼女の優しさと言える部分を見出してもいいはずなのに、完全に頭に来ているロンと呆れているハリーはそんなことに気付く余地もなく。
「行こう」
ハリーはカンカンのロンを引っ張り、私とハーマイオニーを避けて肖像画の穴に入っていく。
私ならそこで諦めてしまうのに、ハーマイオニーは諦めない。2人の後を追った。
「ねぇ!もしあなたたちが捕まったら、グリフィンドールがどうなるか気にならないの?」
点数のことなんて、彼女がハリーたちを心配する口実でしかないのに、どうして彼女はそれを言わないのだろうか。
ハーマイオニーは続けた。しかし彼女の後ろ━━つまり私の後ろでもあるのだが━━では主のいない肖像画の隠し扉がゆっくりと閉まりつつあった。閉め出し確定だ。
「自分のことばっかり気にして!スリザリンが寮杯を獲るなんて私は嫌よ!私とジーナで稼いだ点数を、あなたたちがご破算にするんだわ!」
「ハーマイオニー、私は今のところそんなに点は稼いでないわ。むしろマイナスよ」
思わず口を挟んだがヒートアップしたハーマイオニーは私に聞く耳を持たなかった。
一方でハリーとロンは、ハーマイオニーがあれだけ言ってもまだ、決闘へ向かおうとしている。というか、彼女が止めさせようとすればするほど、彼らは彼女から離れようと更に躍起になる気がした。
ついにハーマイオニーが折れた。
「もういいわよ!ちゃんと忠告はしましたからね!明日の家に帰る汽車の中で私が言ったことを思い出すでしょう!あなたたちは本当に━━━」
本当に、何なのか。
談話室に戻ろうとした彼女が見たのは、空っぽの肖像画。つまりは鍵穴のない鍵のかかった扉。いくら鍵があっても開けられない。
ハーマイオニーはぐるりとハリーたちを振り返り、腰に手を当て2人を睨み付けた。
「さあ、どうしてくれるの?」
とんだ責任転嫁だ。
「ハーマイオニー、こればかりは2人のせいにできないわ。流石に個人の責任よ。それに、もう少し声を抑えないとフィルチに見つかるわ」
「ジーナの言う通りだ、ハーマイオニー。僕たちのせいじゃない。それに、もう行かなきゃ。遅れちゃうよ」
ハリーが言い、ハーマイオニーに言いがかりをつけられ怒り心頭のロンを引っ張り先を行き始めた。
「一緒に行くわ」
そう言うハーマイオニーの神経に驚かされた。
「ダメ!来るなよ、僕らの決闘だ」
「ここに突っ立ってフィルチに捕まるのを待ってろって言うの?4人とも見つかったら私、フィルチに本当のことを言うわ。私とジーナはあなたたちを止めようとしたって。あなたたちは私たちの証人になるのよ」
巻き添え。私は別にハリーたちを止めないのに、ハーマイオニーは完全に私を味方に仕立てあげた。ハリーとロンの目が、裏切り者を見る目になった気がした。
「君、相当の神経の持ち主だよ!」
ロンが大声を出した。
全くその通りだと賛同したいところだが声が大きすぎる。
「ロン、声を抑えて。見つかっちゃうわ」
「しっ…2人とも静かに。何か聞こえるよ」
ハリーが闇に目を凝らしながら短く言った。確かに、何か音が聞こえる。呼吸音だ。ゆったりとした、まるで眠っているようなそれを聞き、ロンも暗がりを透かし見ながら音の根源を探した。
「ミセス・ノリスか?」
「違うわ、もっと大きい…ルーモス━━━ああ、ネビル」
杖を取り出し灯りを付けて見れば、そこにはミセス・ノリスではなく、ネビルが床に丸まってぐっすりと眠っていた。
私たちが近付くと彼はビクッと身体を震わせ、目を覚ました。
「ああよかった!見つけてくれて。もう何時間もここにいるんだよ。ベッドに行こうとしたら新しい合言葉を忘れちゃって」
ネビルは消灯時間を過ぎていることを知らないのか普通に喋り始めた。
「もっと小さい声で話せよ、ネビル。合言葉は『豚の鼻』だけど、今は役になんて立たない。太った婦人が消えたんだ」
ロンは苛立ちを隠そうともせずそう言った。慌ててハリーが話題を逸した。
「具合はどう?ネビル」
「大丈夫。レジーナが助けてくれたんだよね、マダム・ポンフリーが教えてくれたよ。ありがとう」
ネビルはふにゃりと微笑んだ。なにこの可愛い子。
「どういたしまして。大事に至らなくてよかったわ」
「本当、ジーナがいてよかったね━━━悪いけどネビル、僕らはこれから行くところがあるんだ。また後でね」
「そんな!置いて行かないで!」
ネビルは慌てて立ち上がった。一瞬、彼が捨てられそうな子犬に見えた。
「ここでまた一人になるのは嫌だよ、『血みどろ男爵』がもう2度もここを通ったんだよ」
確かにそれは嫌だ。いくらゴーストになって色彩は失われていてもあの銀色の血がベットリこびりついたゴーストを夜中に見るのは、やはり心臓に悪いだろう。
ロンは腕時計に目をやり、それから物凄い顔でネビルとハーマイオニー、そして私を睨み付けた。
「もし君たちのせいで僕たちが捕まるようなことになったら、クィレルが言ってた『悪霊の呪い』を覚えて君たちにかけるまでは、僕、絶対に君たちを許さない」
今日のロンはいつもより数段物騒だ。でも悪霊の呪いはお勧めしない。あれは結構技量がいる。下手に使った術者が呑み込まれるなんてよくあることだ。
ハーマイオニーは口を開きかけたがハリーがジェスチャーで黙らせた。
恐らくハーマイオニーも私と同じことを思ってロンに教えようとしたのだろう。優しいんだけどね…うん。
そんなこんなで険悪な雰囲気のまま、ネビルを含めた5人はハリーの目配せによりトロフィー室へと足を向けた。その道中でさえロンとハーマイオニーは口喧嘩を勃発させそうだったので私かハリーが間に入ることでなんとか、ギリギリ水面下に収めていた。
こんな状況で言うべきでないかも知れないが、夜の城は幻想的だった。
高窓から差し込む月の光が、しんと冷たく静まり返る廊下に瑠璃色の縞模様を写し出している。立ち止まれば何の音も聞こえない、完璧な無音が眠る城を満たしていた。
そんな中を5人は素早く移動して、曲がり角が近付くたび、フィルチかミセス・ノリスに鉢合わせはしないかと緊張し、顔を強張らせた。しかし結局、そのどちらに出会うこともなく無事4階の廊下に辿り着き、抜き足差し足でトロフィー室へと足を踏み入れた。
ドラコもクラップも来ていない。当たり前だ。これは罠なのだから。
しかし何も知らないハリーたちはいつ何時ドラコがドアから飛び込んで来て不意打ちを食らわせかねないと、杖を片手に部屋を壁伝いに歩き、最大限の警戒を払っていた。
一方で私は呑気に月明かりを受けてきらきらと輝くガラスのショーケースの向こうのたくさんのカップや盾、像を見ていた。それらは時折私の動きに合わせて、月の光に瞬くように金銀に煌めいた。
探していた。
ジェームズやシリウス、そしてオリヴィエの名前が、必ずどこかにある。それを見たかった。
一際大きな盾に書かれたトム・リドルの名は見つけた。しかし今は関係ない。その場を離れ、次の棚を見た途端、それは目に飛び込んで来た。
〈寮対抗クィディッチ優勝チーム グリフィンドール〉
そこに飾られた写真にジェームズとシリウスを見つけた。仲良く肩を組み、誇らしげに優勝カップを掲げている。
その隣に、もう一つあった。その翌年の物だ。
〈寮対抗クィディッチ優勝チーム レイブンクロー〉
チェイサー オリヴィエ・ローレンス
キャプテンだったのか。私と瓜二つな顔で、7番を背負う彼女はやはり誇らしげにカップを掲げている。そして時折、違う方向を向きあっかんべーをして笑っている。きっとその方向にシリウスたちがいたのだろう。
思わず微笑んだ途端、私の幸せな気分は吹き飛んだ。隣の部屋で物音がしたのだ。あまりの出来事に心臓が飛び上がり、咄嗟にハリーを振り返った。彼は杖を振り上げかけていたが、違う。音を立てたのはドラコではなかった。
「いい子だ。しっかり嗅ぐんだぞ、隅の方に潜んでいるかも知れないからな━━━」
フィルチだ。ハリーが顔を強張らせ、私たちに向かってめちゃくちゃに手招きした。
4人はハリーのジェスチャーに従い彼について部屋を後にした。本当に間一髪だった。
「どこかこの辺にいるぞ━━隠れているに違いない」
フィルチのくぐもった嗄れ声が廊下に響いた。
「こっちだよ!」
ハリーが囁いて、鎧がたくさんある長い廊下に私たちを導いた。フィルチがどんどん近付いてくる。ネビルは恐怖のあまり混乱し、ついに突然悲鳴を上げ、闇雲に走り出した。
「ネビル!」
しかし彼は持ち前のドジで蹴っつまずき、前にいたロンの腰に抱きついたせいで二人揃ってまともに鎧に突っ込んだ。
ガッシャーン!
凄まじい音が廊下に響き渡り木霊した。城中の人という人を全て叩き起こしてまいそうな音だった。心臓が、誰かに握られたようにギュッと縮こまった。
「逃げろ!!」
ハリーが叫ぶ。ロンもネビルを怒鳴ることも忘れて疾走した。もう誰も、振り向きさえしなかった。
フィルチがリウマチで助かったと、心からそう思った。もしそうでなければひとり残らず捕まっていただろう。
ハリーに続き、4人は走り続けた。
全速力でドアを引っぺがし次から次へと矢継ぎ早に廊下を駆け抜け、今ここがどこなのか、どこへ向かっているのかさえ誰もわからないまま、タペストリー裏の抜け道を抜けて『妖精の魔法』教室の前の廊下に辿り着いた。
心臓は飛び跳ね、耳元でばくばくと鳴り響いていた。もう冬だというのに額に浮く汗を拭った。
「フィ━━フィルチは撒いたと━━━思うよ」
冷たい壁に寄りかかり、ハリーは汗を拭いながら息を弾ませて言った。ネビルは身体を2つ折にして咳き込んでいた。
ロンも同じようなものだ。
「あの人は━━リウマチよ、上手く、走れないわ」
喉が灼けつくように痛かった。突然全速力で走ったせいで全身が悲鳴を上げている。
「だから━━━言ったじゃない!」
ハーマイオニーは喘ぎ喘ぎ言った。
「塔に戻らなくちゃ━━できるだけ早く」
ロンはいつになく冷静だった。
「マルフォイに嵌められたのよ!」
息を整えてからハーマイオニーが言った。
「ハリー、あなたもわかってるんでしょう?はじめから来る気なんてなかったんだわ━━━あいつが告げ口したのよ。だからフィルチは誰かがトロフィー室に来ることを知ってたのよ」
ハリーの顔が悔しげに歪められた。認めたくなかったのだろう。
「行こう」
ハーマイオニーには何も言わず、ハリーはそう言って塔に戻ろうと廊下を進み始めたが、運が悪かった。ほんの10歩も歩かないうちに、教室のドアがガチャガチャと鳴り、中から誰かが飛び出して来た。ピーブズだ。教室でイタズラをした帰りらしかった。
彼は私たちを見るなり歓声を上げた。咄嗟に彼に杖を向けた。
「ラングロック!お願いだから止めて!フィルチが━━」
フィルチが来る、そう言おうとしたのに、もう遅かった。廊下の向こうで大きな音がした。
落ち武者のようなフィルチが髪を振り乱し痛む身体に鞭打ち全力で走ってくる。
「逃げろ!」
またハリーが叫ぶ。
2度目の全力疾走で、5人はまた命からがら逃げ出した。
ここは4階右側の廊下。突き当りで鍵のかかった部屋にぶち当たった。勢いの付き過ぎたハリーが思いっきり額をぶつけた。
「いッ…!?」
「もうダメだ!!」
絶望的にロンが呻いた。
「おしまいだ!一環の終わりだ!」
バタバタと足音が近づいて来る。ハーマイオニーとネビルの顔がどんどん青ざめていった。
「ハリー、ロン、ちょっと退いて!」
本来ならここはハーマイオニーの出番のはずだがどうしてか彼女は思考停止状態に陥っていた。仕方なく杖を取り出し鍵のかかったドアに向ける。
「アロホモラ!」
カチッと軽い音と共に鍵が開き、ハリーたちの重みでドアがパッと開いた。そのまま5人は折り重なって中に雪崩れ込み、急いでドアを閉めた。
私以外の皆はドアにぴったりと耳を付けて、神経を研ぎ澄ました。
「どっちに行った?早く言え、ピーブズ」
フィルチの声だ。
その後にはピーブズのもごもごと言う声が聞こえるが、舌縛りがまだ効いているのではっきりとした言葉にはならない。
「はっきり言え!連中はどっちに行った?!」
イライラした声が廊下に響いた。
あの呪文はどうしてか私が使うと効力が暫く続く。もう大丈夫だろう。
何も言わない(言えない)ピーブズについに我慢できなくなったフィルチは怒り狂い大声で悪態をつき、ピーブズは解けない舌と格闘しながらポンッと消えた。
その間私はずっと、その声を聞きながら杖を手にしたまま背後に意識を向けていた。
そしてフィルチが私たちを探してどこかに消えると、4人は安堵からずるずると座り込んだ。
「フィルチはこのドアには鍵がかかってると思ってる。もう大丈━━━」
何が大丈夫なものか。
私に大丈夫と言おうとして振り返ったハリーが見たのは巨大な3頭犬。しかも敵意を剥き出しにして唸り、その口からは大量の涎が網のようにだらりと垂れている。大丈夫なわけがない。
まだ私たちの命があったのは、あまりに唐突過ぎて3頭犬たちが不意を突かれて戸惑ったからだ。
しかしもうその戸惑いもない。轟く雷のような唸り声がそれを証明していた。咄嗟に私が『キラキラ星』を口ずさみ、ハリーはドアノブを弄った。歌を聞いた途端、3頭犬の瞼がとろんと下がり始めたことに気付いたのはハーマイオニーだけだった。
ドアが開いたその瞬間、また5人は雪崩るように飛び出して走り出した。ハリーが犬から離れたい一心でドアを、乱暴にではあるが閉めてくれたのは有り難かった。
走って、走って、走り続けてやっと8階の太った婦人の肖像画の前に辿り着いた時にはもう、5人は息も絶え絶えだった。
「まぁ、一体どこに行ってたの?」
「何でもないよ━━豚の鼻」
上着は肩からずり落ちそうだし、顔は真っ赤で汗だく、息もまともにできていなかったがそう言うほかないだろう。
婦人は合言葉を聞くと言及することなく扉を開け、通してくれた。
やっと思いで入り口の穴を這い上がり、談話室のソファに沈み込む頃には全身が細かく震え、皆生まれたてのシカのようだった。あまりの疲労と緊張から、口が聞けるようになるのに暫くかかった。
ネビルに関してはもう二度と口が利けないのではとさえ思えた。
「あ━━あんな怪物を城の中に閉じ込めておくなんて、先生は何を考えてるんだ!?それにジーナ、なんで君はあんな状況で歌なんか歌おうと思ったんだい?!気でも狂ったかと思ったよ!」
やっとロンが口を開くと、ハーマイオニーは不機嫌さを取り戻しロンに突っかかった。
「あなた、どこに目をつけてるの?あの犬が何の上に乗ってたか、見なかった?それにジーナが歌を歌ったのはちゃんと理由があるわ」
「床の上じゃない?」
ハリーが一応意見を述べたが、あまりにも馬鹿馬鹿しかった。
「僕、足なんか見てなかった。頭が3つもあるんだ、それだけで精一杯だよ」
正論だが、ハーマイオニーはカチンと来たようだ。
「違う。床じゃない。仕掛け扉の上に立ってたのよ。何かを守ってるに違いないわ。歌も、見なかったの?ジーナが歌った途端、犬は眠り始めたの」
「へぇ、そりゃすごいね」
ロンはぐるりと目を回しながら癪に障る言い方をした。
「あなたたち、さぞご満足でしょうね。もしかしたらみんな殺されてたかも知れないのに━━━━もっと悪いことに退学になったかも知れないのよ」
その瞬間、今のハーマイオニーの価値観にはついて行けないと確信した。
「では、みなさん、お差し支えなければ、私たちは休ませていただくわ」
そう言ってハーマイオニーは私の腕をむんずと掴んで引っ張り起こし、半分引き摺るように女子寮に続く階段に引っ張って行った。その手には力が篭もり、指が食い込んでいる。刺すような痛みが走った。
「は、離して、ハーマイオニー!痛い!」
ハーマイオニーは離してはくれなかった。泣いていた。
階段を上る足取りはしっかりしているけれど、その頬には涙が伝っている。思わず口を閉じた。
誰も、何も言わなかった。
階段上りきると沈黙を守ったまま、ハーマイオニーは部屋のドアを開け、中に入ってからそっと手を離し、そこでやっと小さく「ごめんなさい」と呟くように言った。
「わ、悪気はなかったの。ごめんなさい」
「いいのよ、ハーマイオニー。気にしないわ━━さあ、さっさと寝ましょう」
まだ掴まれていた部分は痛むけれどそれは表に出さず微笑んだ。ハーマイオニーも悲しげに微笑み、頷いた。
「ええ、そうね…おやすみなさい」
ハーマイオニーはベッドに潜り込むと、相当疲れたのだろう、すぐに深い寝息を立て始めた。
しかし私はすぐには眠ることはできずにぼんやりと、フラッフィーの『癖』を知っていた言い訳を考えていた。そんな時だ。
私のベッドに1番近い窓に大きな影がうつった。長い包みを持ったワシミミズク━━━コレットだ。
ベッドから飛び起き、窓を開け放した。
「こんな時間に誰から…?」
コレットはスィーっと滑るように部屋に入り、私のベッドにそれを落とした。やはり私宛てだ。
茶色の包みはやけに大きく、ただの届け物ではないことだけは確かだった。外側に貼り付けられたメモに書かれた文字は、よく見覚えのある文字だった。
『レジーナへ
素晴らしい報せを受けて私は感動している。君なら選ばれると思っていたが、まさか一年生で選ばれるとは。でも、こうなった経緯もちゃんと聞いたよ。そういうところが私に似てしまったのは少し不安だが、嬉しいことに変わりはないだろう。
これは君へのプレゼントだ。大切にしなさい。皆の前では開けないように。
シリウス』
━━━まさか。
慌てて包みを解いて見れば、それは新品のニンバス2000だった。スラリとしたマホガニーの柄には艶があり、先端近くには細く流れるような金の飾り文字で『ニンバス2000』と書かれている。穂には長く真っ直ぐな小枝がすっきりと纏められ、美しい流線型を描いていた。
思わず溜息を吐いた。
まさかシリウスがこんなにいい箒を買ってくれるとは、思いもしなかった。そもそも、クィディッチの選手に選ばれたことも、一連の決闘騒ぎで綺麗さっぱり吹き飛んでしまっていたのに。
箒を仕舞うため、もう一度綺麗に包み直す間もずっと、柄の金文字が頭から離れなかった。
そっとその包みをベッドの下に隠し、代わりに文机に向かってシリウス宛ての手紙を書くために羽ペンの先をインクに浸けた。
長くなってしまった…!すみません!疲れましたよね、私も疲れました←
こんなに文字数多いと誤字脱字が怖いです。
閲覧ありがとうございます!