ハリー・ポッターと半純血の予見者   作:ななじぃ

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暴走した結果。どうやって収拾付けようか←


第21話 大事件

翌朝、昨晩の興奮を引き摺ったままのハリーは朝食の席でロンに“不思議な鏡“の話をした。

 

その話をする間も終わってからも、ハリーは一口も朝食を食べようともせずにぼーっと宙を眺めていた。何かに憑かれたようなうっとりとした表情だ。何となく、それが恐ろしくなった。原作でも確かに彼は鏡に取り憑かれたような表記はあったけれど、それとは少し違うような気がしてならなかった。もしかしたら、いつの間にか未来を変えてしまったのではないかと。

 

「…ハリー、もうその鏡は見ない方がいいわ」

 

つい口を挟むとハリーはムッとした顔をした。

 

「どうして?」

 

「どうしてって…危険だからよ」

 

持っていたスプーンを置いて、ハリーに向き直る。彼のお皿は見事なまでに真っさらだった。

 

「危険なんかじゃないよ。あの鏡は僕に顔も知らなかった家族を見せてくれたんだ」

 

彼は恍惚と言った。その様子は明らかに普通ではない。

 

「だから危険なのよ、ハリー。もう行かないで、お願い」

 

「いやだ!僕は君たちとは違って一度も両親に会ったことがなかったんだ!君に指図される筋合いはないよ!」

 

ハリーの言い分はわかる。けれど、その様子はあまりにもおかしかった。

 

「確かにそうだわ。でもハリー、今のあなたは変よ」

 

「どこも変じゃない!」

 

ハリーは怒鳴り、テーブルに手を叩きつけた。手元のゴブレットが倒れてテーブルにかぼちゃ色のシミを広げていく。かぼちゃのにおいが辺りに立ち込め、上座で食事をしていた数人の先生方が驚いてガチャン、と耳障りな金属音を立てた。

 

「私たちからすれば変なのよ。あなたらしくない」

 

「どこが僕らしくないって言うのさ!」

 

最早広間は静まり返り、ハリーの怒声だけが反響した。広間にいる数少ない人間の目が全てこちらに集中している。しかし怒っているハリーはそのことにさえ気付かず、声を荒げた。

 

「そうやって怒るところよ。お願いだから落ち着いて、ハリー」

 

大事になる前にどうにか落ち着かせようと優しく声をかけるがどうにもならず、ついに上座の先生の1人───マクゴナガルが立ち上がった。

 

「落ち着いてるさ!」

 

彼女はツカツカと真っ直ぐに、大股でこちらに向かってくる。好奇の目は依然、私たちに向けられたままだった。

 

「落ち着いていないわ。家族に会いたい願いが強すぎて鏡に依存してるのよ」

 

「依存なんてしてない!」

 

ハリーが一際強く怒鳴ったとき、マクゴナガルは私と彼の間に割って入った。

 

「何を言い争っているのですか!」

 

「何も!!」

 

ハリーはついに先生にまで怒鳴った。もう冷静など微塵も持ちあわせていない。驚いた彼女は状況を完全に把握できずにぐっと黙りこんだ。

 

「ハリー!聞いてちょうだい。話を聞く限り、あなたが言っているのは“みぞの鏡“よ」

 

「そんな鏡なんて知らない!」

 

「昨日見た鏡のことよ!その前に立った人の心の1番強い望みを映す鏡。1番強い望みっていうのはその人の1番の弱みでもあるの。あの鏡は忌むべきものだわ。だからお願い、もうあそこには行かないで。行ってはダメなの」

 

訴えても、ハリーは幼子のようにブンブンと首を横に振るばかりだ。

 

「忌むべきかどうかは僕が決める!君はヴォルデモートに家族を殺されてないからそう言えるんだ!」

 

名前を聞いた瞬間ロンやマクゴナガル、広間にいる他の人間は怯み何人かが椅子から滑り落ちたが、ハリーもレジーナもさして気に留めもしなかった。

 

「殺されたわよ」

 

ハリーは想像もしていなかった答えに、きょとんとしていた。

 

「え…?」

 

「ミス・ブラック!」

 

たしなめる声も無視して続けた。

 

「私の母は彼の呪いを受けて、そのせいで私を産んで死んだわ。あなたのご両親のように直接的ではなくても、殺されたも同然よ」

 

「ブラック!」

 

さっきよりも鋭い声が飛ぶ。

 

「今のは……今のは良くありません。来なさい」

 

マクゴナガルはわなわなと震えていた。怒りと動揺、悲しみが混沌と存在している。

 

「でも、先生──」

 

「来るのです」

 

ハリーは、と言おうとして、すっぱりと遮られた。その目は鋭く、私を見つめていた。

 

「──はい」

 

 

 

 

 

 

マクゴナガルに先導されるまま押し黙ってひたすら冷えた廊下を歩き、行き着いたのは彼女の執務室だった。所々に猫グッズが見られる以外、厳格な彼女らしい整った部屋だ。

 

「座りなさい」

 

 指されたのは、応接用の深緑色のソファ。言われるままそこに腰掛け、彼女の次の言葉を待った。

 きっと怒られるのだろう。自分のことではあったが、デリカシーのない発言だった。いくらハリーにつられて多少冷静ではなかったとは言え、聞かれてもいない自分の母親の死を、よりにもよって彼に話すなんて…。

 ここまで歩いてくるうちに頭は冷め、どうしてハリーを怒らせて煽るような真似をしたのか、と今更後悔して溜息混じりの息を吐いた。

 

「どうしてあんなことをしたのです。貴女はもっと冷静だと思っていましたよ。よりにもよってミスター・ポッターにあの話を…それ以前に、他に生徒がいる中で“あの人“の話など……」

 

 マクゴナガルは湯気の立つ紅茶を差し出しながら疲れたように言った。

 

「すみません、頭に血が上っていて…冷静ではありませんでした」

 

 スッと通るような独特の匂いを放つ紅い色を見下ろしながら呟くように言った。マクゴナガルの大きな溜息が耳朶を打つ。

 

「冷静ではなかったとしても、あれは良くありません。ただただ論破するだけなら小さな子どもでもできます。彼の気持ちも酌んでおやりなさい」

 

「はい…」

 

項垂れ、膝の上で拳を握りしめた。

 ハリーには酷いことを言ってしまった。いくら彼が鏡に依存していたとはいえ、原作では問題なく“鏡離れ“できていたのだ。私が口出しする必要性などどこにもなかったはずだ。

 

ふと、目の前にクッキーの入った缶が差し出された。

 

「さあ、お上がりなさい」

 

「え……」

 

戸惑っていると、マクゴナガルは更にそれをずい、と私に差し出した。

 

「ジンジャークッキーです。次の話題に移る前に、少し肩の力を抜きなさい」

 

「次の……?」

 

「鏡と、あなたの能力のことについてです。さあ」

 

 少し強引ではあったが悪気はないらしいので恐る恐る、彼女の持つクッキーの缶に手を伸ばした。

 

「えっと…いただきます」

 

 

 

 

 

 

 ようやく彼女の部屋から開放されたとき、連れて来られたときには8時前だった時計ももう今や短針は9時すぎを指していた。1時間以上彼女の部屋にはりつけにされていたことになる。

 さして嫌なことや特段答え辛いようなことを聞かれたわけでもなく(何故鏡の場所を知っているような口振りだったのか、最近嫌な予見はないか、くらいだ)、むしろ協力的な姿勢を示してくれたので、その1時間は大して嫌な時間ではなかった。さらには色々と気にかけていてくれたらしいことが、会話の節々に浮かんでいた。

 

 

 

太った婦人の前に辿り着いたとき、婦人は私を見るなり口を開いた。

 

「あなた、友だちと喧嘩したんですって?広間のコンスタンスから聞いたわよ」

 

コンスタンスというのは広間に飾られている絵画の住民の名前らしい。

 ムッとしてリアクションなど返さずに合言葉を口にした。

 

「クリスマスの次の日に喧嘩なんて、災難ね」

 

婦人は隠し扉を開けようともせず、私を見下ろしていた。

 イライラともう一度、今度は少し大きめに合言葉を言うが彼女は譲らない。むしろ腹を立てたようで、眉間にシワを寄せた。

 

「失礼な子ね」

 

彼女は「動かないわよ」とでも言いたげに腕を組むと、ふんすと鼻息を吐いた。しかしそこで唐突に内側から扉が開き、ドラゴンでも暴れているような激しい物音が漏れた。時折「アイタッ」という声も混ざっている。

 

中から出てきたのはウィーズリーの双子だった。2人は婦人のように私を見るなり「ゲッ」と声を漏らし、穴から飛び降りて普段なら魔法で閉まる扉をわざわざ手で押して閉めた。

 

「今は入らない方がいいぜ」

 

ジョージが言った。

 

「ご立腹さ。手当り次第暴れてる。今はロンとパーシーでなんとか抑えてるけど」

 

すぐにハリーのことだと察しがついた。

 

「私のせいよ。私が行かなきゃ」

 

「「ダメだ」」

 

2人の間を縫って行こうとすると同時に両手で止められた。ぐい、と元の位置に戻される。

 

「どうして?私がハリーを怒らせたんだから、責任はちゃんと──」

 

「君は女の子だ。危ないよ」

 

フレッドが言った。

 

「そうだぜ。ハリーのやつ、結構マジで手当り次第だからな」

 

ジョージは肩を竦めて談話室の方を見やりながら言った。そう言うには、本当なのだろう。それにあの音だ。ただ事ではない。

 

「だから、さあ、ほら、落ち着くまでどこか他のところに居たほうがいいぜ。校庭なんてどうだ?今なら雪が───」

 

「女の子って言ったのはお前だろ、フレッド。図書室は?あそこなら静かだし、ずっと暖かいだろ?」

 

 競うようにそう言って、2人は私の背を押して回れ右させた。2人なりの優しさだ。これが普段の、ハリーと一緒のときの出来事なら、胸が温かくなって嬉しくて、笑ってしまうだろう。けれど今は、ただただ苦しいだけだった。

 

「……ハグリッドのところ、行ってくるわ」

 

呟いて、逃げるように走り出した。

 

「あっ!ちょっ…待てよ、ジーナ!」

 

どちらともつかない声を無視して適当な曲がり角に飛び込んで、自分自身に目くらまし術をかけた。すぐに双子は追いついてきたけれど、2人に私の姿は見えていない。

 ごめんなさい、と心の中で謝りながら音を立てないように2人の横をすり抜けた。向かうのは、どこでもない何処か。ハグリッドのところへなど行けるわけがなかった。

 

2人からある程度離れてから目くらましを解いて、右へ左へ、階段を上って誰もいない廊下を渡って。

 気付けば“みぞの鏡“が置かれている部屋の前の廊下に立っていた。

 

「こんにちは、レジーナ」

 

当然のように、まるで事前に待ち合わせていたかのように彼はそこにいた。

 

 

 

 




わぁ、喧嘩((((
私自身喧嘩の経験が少ないので仲直りの仕方がイマイチわかってないです←
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