関西圏の私はあまり台風に直撃されることがないのでちょっとわくわくしてます。学校休校ですwktk
「合言葉は決して忘れるでないぞ。──では、君のことはグリフィンドール塔までわしが送ろうかの」
ダンブルドアは朗らかにそう言い、そして私の先を歩き始めた。すっかり静かになった広間を出て、大理石の階段を登り動く階段に乗り、またいくつか階を上がる。
背の高い彼の後ろを歩くうちにふと、彼が私の歩幅に合わせてゆっくり歩いていることに気が付いた。
「───君の予見のことについて、聞いてもいいかな?」
ダンブルドアは突然口を開いた。しかしその足は止まることなくグリフィンドール塔へと向かっている。
「はい」
相手はダンブルドアだ。先程の私の話で何かおかしな点を見つけたのだろうかと内心ドギマギしながら応えた。
「君の話を聞く限り、その予言は君の母上と同じものと思うが、間違いないかね?」
「はい。ですが私の予言──未来視と言うべきでしょうか?これは少しでも可能性のあるものをいくつか示していた母のものとは違い、現時点でこの先起こる可能性の最も高い未来だけを見るものだと思います」
ダンブルドアは足を止め、振り返った。
「ほとんど必ず起こり、ほんの少しのことで未来の変えることが可能な君の予言を、わしに伝えてしもうてよかったのかね?」
我ながら言うのも何だが、わしの影響力は絶大じゃぞ、と彼は言う。気が付けば、彼の向こう側、階段の上にはあの肖像画が見えた。彼女は椅子に座ったまますやすやと眠っている。
半月メガネの奥の彼の目を見つめ、頷いた。厳しい目つきだ。
「先生なら、ペティグリューの様子を見られると信じていたので」
「予見ではなく?」
「私は自分の未来はもちろん見れませんし、その未来に関わりのある人物に触れなければ未来を探ることはできません。先生には先程お会いしたばかりなので、今のはあくまで父から聞いた限りの先生の様子からの予想です」
ダンブルドアは頷いた。
「ふむ…ならばわしは君の予想通りの人間だったというわけじゃな」
少しいたずらっぽく微笑んだ彼に釣られ、私も思わず微笑んだ。そして彼は「さあ、寝る時間じゃ」と階段の残り1段を登った。目の前には巨大な絵画。太った
「あらダンブルドア先生。こんな夜更けにどうされましたの?」
ダンブルドアが肖像画の前に立ったことで婦人は目を覚ましたらしい。眠そうな声で尋ねる彼女は、彼の背後にいる私には気が付いていないようだ。
「生徒を送り届けに来たのじゃよ。わしとの長話に付き合ってもろうたのじゃが、1年生じゃから寮の場所も合言葉も知らぬからの」
そっと私の背を押して見えるように前に引き出しながらダンブルドアは言った。婦人も納得したようだ。
「そうでしたの。では、合言葉は?」
「カプート ドラコニス」
ダンブルドアがそう唱えると肖像画がぱっと開き、その後ろの壁の少し高い位置に穴があるのが見えた。
ダンブルドアはくるりと私を振り返り、優雅に寮の入り口を示す。
「合言葉はしばらくこのままじゃ。忘れるでないぞ」
「はい。ありがとうごさいます」
彼は満足気にゆったりと頷いた。
早速、その穴へと向かう。他学年と比べて小柄な一年生が登るにしては位置が高いが、頑張れば登れなくもない高さだ。
穴の縁に手を掛け、勢いを付けてジャンプしようとしたとき、ふと地面が競り上がり楽に上がれる高さになった。後ろを振り返れば、ダンブルドアが杖を袖にしまうところだった。
「ありがとうございます」
会釈をして穴に登れば、大体彼と視線の高さが同じになった。私が登り切ったのを感知したのか、外に開いていた肖像画がゆっくりと滑るように閉まりはじめる。
「おやすみなさい、先生」
「おやすみ、レジーナ。いい夢を」
挨拶を交わしてすぐに肖像画の向こうに先生が見えなくなった。
珍しく緊張していたのか、その扉が完全に閉まった途端溜息が漏れた。誰もいない談話室に、暖炉で残り火がパチパチと爆ぜる音だけが響く。まだふわりと温かい。
静かな部屋。落ち着いた、少し抑えたような金の色と深い紅で統一されたその部屋には確かに、先程まで何人かの生徒たちが騒いでいた痕跡が残っている。
ホグワーツ特急で購入したのだろうお菓子の包みや、先程のハッカ入りキャンディの包み、何かのイタズラグッズの副産物と思われる紙くずの山が部屋の所々に落ちていた。
それらを避けながら談話室を横切り、女子塔の方へと向かう。もう瞼は重く、足も鉛のようだ。すぐにベッドに飛び込みたいところだがまだだめだ。自分を叱咤しながら重い足取りのまま階段を登り、自分の部屋を探す。寮の部屋は廊下いっぱいに、1m毎に扉があった。空間拡張呪文でも掛かっているのだろう。
私の部屋はすぐに見つかった。手前から3つめの扉だ。ドアノッカーの上にはルームメートの名前。
『レジーナ・ブラック、ラベンダー・ブラウン、
ハーマイオニー・グレンジャー、パーバティ・パチル』
ブラウンの文字に溜息混じりにドアノブを掴み、音を立てないようにゆっくりと回した。そっとその部屋に足を踏み入れる。
まず、談話室と同じように紅と金をベースにした装飾が施されたベッドが目に入った。その中には静かに寝息を立てるルームメートが───?
「おかえり、ジーナ」
眠っていたはずのハーマイオニーが起き上がった。
「…ただいま。もしかして待っててくれたの?」
「ええ、荷物の確認とかしないといけないから……。ラベンダーとパーバティも待ってるって言ってたんだけど、寝ちゃったわ」
彼女はちらりと隣のベッドを見やった。こんもりと小さな山を築く布団は寝息に合わせてゆっくりと上下していた。
「そうなの。ありがとう。でも色々と疲れてるでしょう?先に寝てていいわよ。私はこれから父さんに手紙を書くから、少し遅くなるわ」
唯一空いているベッドの脇に積まれたトランクの上に置かれたケージの中でコレットが寂しそうに静かに鳴く。
ハーマイオニーは目を擦りながら頷いた。
「そうするわ…私、少し───張り切り過ぎちゃったみたい」
欠伸を噛み殺しながらハーマイオニーは伸びをし、そしてそのままベッドに倒れ込んだ。驚いたコレットが羽を逆立ててギャッと短く鳴いたがハーマイオニーは既に小さな寝息を立てていた。
丸く見開かれた彼女の目が光る。
「大丈夫よ、コレット」
なんだか可笑しくてクスクスと笑いながらケージの扉を開ければ、彼女は不満そうながらものそのそと出てきて私を見上げた。月明かりに照らされて彼女の橙色の目が、少し赤く見える。
「これから手紙を書くから、またお仕事お願いね」
そっと頭を撫でる。そうすると彼女はいつものように気持ちよさそうに目を瞑った。
小さい方のトランクから羊皮紙と羽ペン、インクを取り出しベッド脇の小さなテーブルに置いた。コレットは少し首を傾げながらその様子をじっと見ている。
だが少し手元が暗い。袖から杖を取り出した。
「ルーモス 光よ」
ぽわん、と青白い光が杖先から溢れた。コレットは眩しそうに目を細める。
「ごめんね。これ、持っててくれる?」
夜行性である彼女には少し可哀想ではあるが、光の点った杖を彼女の嘴に咥えさせ明るさを確保してインクにペンの先を浸した。
どう書こう?ハリーやロン、ハーマイオニーのこと、組み分けのこと、フレッドとジョージのこと。
いくつか書き出していくうちにいつの間にか羊皮紙は字で埋まっていく。
「少し書きすぎたかしら?」
最後に名前を書いてインクの瓶に蓋をしながらコレットに尋ねるが、彼女は完全に目を瞑ってしまっていた。
「あぁ…ごめんね、眩しかったわね。──ノックス 闇よ」
彼女から杖を取り上げ、光を消した。その瞬間、一瞬何も見えなくなるがまた次第に月明かりが見え始める。
「さぁコレット、お仕事よ」
書き終わった羊皮紙をクルクルと巻き、紐を結んでコレットに咥えさせた。彼女はぱちくりと一度だけ瞬きして見せる。
それが了解の意であると勝手に解釈して、窓を開けた。
「じゃあ父さんによろしくね、行ってらっしゃい」
バサッと羽音を響かせてコレットは外に飛び出した。男子塔の方から白フクロウが飛び立ったのとほぼ同時だった。白い月と雪のように白いフクロウ、ここからは真っ黒に見えるコレットの飛ぶ姿が幻想的だ。
しかしすぐに白フクロウは軌道を逸れ、禁じられた森の中へと消えていった。今のハリーにはフクロウ便を出すような人はいないのだ。
またいつか、ハリーにシリウスのことを知らせる日が来たらその時は、私やシリウスがその人になるんだろうな、なんて言ったらシリウスは泣いて喜ぶのに、と1人苦笑した。
インクとペンをある程度片してトランクからネグリジェを取り出し着替えて、するりとベッドの中に潜り込んだ。ふかふかと包み込むような温かい布団。それはすぐに私を、夢さえ見ることのない深い眠りに引き込んでいった。
個人的に謎のプリンスのブラウンさんは好きではないです。はしたないですし。何よりハーマイオニーが可愛そうですよね。オパグノ!