東アジア某所…其処にはある研究所がある。
そして、その研究所を目指し飛行する数機の輸送機のすがたがあった。
その輸送機は、研究所のレーダー探知圏内に入る手前で姿が見えなくなる。
その輸送機には20名の目出し帽で顔を隠し、武装など完全装備の男達が乗り込んでいた…。
そう、彼らこそが、日本の誇る精鋭【特殊作戦群】その中でも上位の実力を持つ第一小隊、そして他の輸送機にもそれぞれ特殊作戦群でも上位の第二、第三小隊が搭乗し、その時を待っていた…。
「光学迷彩システム作動、ポイントまで約1分」
「降下1分前、総員起立、降下用意」
パイロットから報告を受け、作戦指揮官を兼務する第一小隊隊長が指示を出す。
隊員達は静かに立ち上がり降下の準備を行う。
彼らは静かだった…が、その彼らの目には熱いマグマの様な闘志がみなぎり、その時に備えている。
パイロットから再度声がかかる、
「ポイントまで30秒」
そして遂にその時が来た。
「降下10秒前!………3・2・1・0 降下開始!」
3機の輸送機から次々と隊員達が飛び出し降下して行く、隊長が最後に降下し、輸送機はまた引き返して行く。
次に彼らが来る時は全てが終わった時である。
ーー
特殊作戦群が降下した頃、その事を知らない研究所の正門を警備する兵士が隣の兵士と会話していた。
「なあ、何か変な音がしないか?」
「そうか?俺は聞こえないが…大方、あのY字眉毛がまたなんかしてんじゃないか?」
「Y字?なんのことだ?」
「所長だよ、アードラーとか言う気色悪いじじい」
「あーなるほど、納得、あの眉毛どうなってるんだろうな…実験に使われてる奴らも同情するよ…」
「そうだな……まだ幼い子供も実験に使われてるし……ん?」
警備兵の1人が正門に繋がる道の脇にある林に違和感を覚えそちらを向く…するとさっきまで会話していた兵士からくぐもったうめき声が聞こえた。
「…へ?どうし…っむぐ…っ…⁉︎」
林から目を離し其方に目を向けると、ゆっくりと地面に倒れて行く同僚が目に映り、その後ろに居る黒い人影が何なのか、彼は事態を把握する前に後ろから口を塞がれ一瞬で意識を奪われる。
彼らが目覚めることはもう永遠に無い。
よく見ると、正門に続く道には十数体の武装した男達が倒れ伏していた…。
「正門制圧……侍、これより突入する」
『こちら忍者、下水道からの潜入に成功』
『アサシン、裏口より進入に成功、警備兵6名を処理、これより所定の行動に入る』
侍、忍者、アサシン…これらは暗号符丁、コードネームで、1、2、3小隊のことである。
正門から突入した一小隊が目指すのは地下の監禁部屋であり、忍者が目指すのは所長室、アサシンは破壊工作と言う分担となっている。
研究所の内部に軍靴の音が響き、漸く事態に気付いた部隊が動き出していたが、既に通信設備がアサシンにより切断され、救援を呼ぶことが出来なくなっていた。
「くそ!どうなってる!?」
『此方第二研究棟第三通路!侵入者と交戦!至急応援求む!』
『地下収容所警備小隊より警備本部!助けてくれ‼︎もう奴らがそこま……っブツ』
警備部隊の指揮を執っている劉少佐は事態が余りにも早く進んでしまい、対応が後手後手になっている事へ苛立ちを隠せなくなっていた。
「クソ!所長はまだ来ないのか⁉︎」
彼は事態の深刻さから、所長を呼び指示を貰おうとしたが、その所長が未だ本部にいていなかった。
すると、通信兵がおずおずと少佐に話しかけてきた。
「あ、あの少佐…所長は直属の研究員と被験体No.018号 中島 天山 他、特別個体 ブーステッドチルドレン上級個体 01〜03を伴い地下格納庫へ向かったと特別研究棟警備分隊より先程連絡が…」
「な……バカな、なぜ早く言わない⁉︎クソ!あの狸じじいが‼︎」
ーー
劉少佐が警備本部で喚いている頃、特殊作戦群のニ小隊…忍者は、情報にあった所長室へ向かう途中、その所長一行と遭遇、護衛兵と戦闘となっていた。
「クソ!遮蔽物が少なすぎる、このままでは逃げられるぞ!」
「………せめて被害者だけは助け出す…1個分隊続け、他は援護しろ」
そう言って コードネーム忍者を率いているニ小隊の隊長が、他の隊員が閃光弾を投げ、相手が混乱する隙を突き、駆けていく、其れに続き分隊4名が吶喊、援護の隊員は隊長らに敵の射撃がいかないよう巧みな牽制射撃により其れを援護する。
突然の閃光弾、そして突撃に護衛部隊は驚き、対応が遅れ、対応しようにも牽制され思うような対応が出来ない。
その隙を突きニ小隊の隊長以下突撃した隊員は、被害者1人を確保、護衛兵数名を無力化した。
「おのれ!ワシの実験素材を渡すものか!」
白衣の老人が叫び拳銃で隊員を狙うが、その瞬間、拳銃を持った手が撃たれ、残った検体をこれ以上奪わせまいと言う判断となり、少し手間だが隠し通路のある部屋まで一目散に検体や研究員らと逃走を図る……残る護衛兵を盾にして…。
ニ小隊も護衛兵をすぐに無力化し必死に追撃するが、ついに見失ってしまい、即座に思考を転換、確保した被害者の状態確認、そして一個分隊に防護を命じ更に進撃する。
彼らが目的とするのは、研究所の所長の身柄を拘束することであり、逃がす気はさらさら無かったのである。
研究所の警備部隊は既に半壊、特戦群はその実力を発揮し、次々と所内を制圧していく。
ーー
地下へ向かった一小隊は、地下の警備小隊を完全に無力化し、被害者が囚われているだろうエリアへと進入することに成功し、現在は、被害者を解放し保護するべく行動していた。
「ひ、ひい、あ、命だけは…」
「なら、早く被害者が囚われている部屋に案内しろ」
「は、はいぃ!」
一小隊、侍とコードネームを付けられた彼らは、途中で捕らえた研究員を案内役にし、被害者のいる部屋へ案内させていた…。
そして、暫く進むと、その部屋えと辿り着き、扉を開ける。
「こ、ここです…ここに数十体の素体が…」
その部屋は広大で、まるで刑務所の牢屋のように並ぶ檻、その中に、少年や少女らが囚われており、隊員達は直ぐに彼ら、彼女らを解放、救出し、次に、軟禁されていた女性研究員のいる部屋まで行き、見張りで残っていた兵士を制圧し、女性研究員も確保する事に成功し、最優先作戦目標達成を各隊に連絡した。
「此方侍、旅人は帰った…繰り返す、旅人は帰った、作戦目標は達成された。各隊は状況を報せよ、これより研究所より脱出する」
『此方忍者…所長は逃亡、先程複数の被害者を連れた集団と交戦し、被害者1人を保護、所長と思われる男は、繰り返すが逃亡した、更に数名の被害者を未だ連れている、また、副所長を名乗る女を拘束した…これより合流地点へ移動する』
「此方侍、了解した。此方も移動を開始する、アサシンはどうか?」
『此方アサシン、敵の戦車部隊が行動を開始、これを破壊、先程、潜入していた情報調査官の遺体を発見しこれを回収、また、2名の調査官を救出した、工作も既に各所へT爆弾の設置を完了、監視システム、及び対空兵器、レーダーは無力化した。T爆弾の起爆予定時間は0730』
「了解、作戦成功の終了コード、旅人ハ帰ル 0108、を発信せよ」
『了解、……発信を完了、0610時に合流地点に迎えが来る、我々は移動を開始する』
「了解、合流地点で会おう、通信終わり」
ーー
警備本部で喚いていた劉少佐は、監視カメラやレーダー、外部との通信が全て使用不能となったことで動揺するスタッフを必死に落ち着かせようとしたが、そんな中、地下の格納庫の扉が解放されたことを示すランプが点灯し、彼は悟った。
所長は自分達を見捨て逃げたのだと。
「……これが、責任者のすることか、アードラー‼︎」
本部内に彼の叫びが響く。
ーー
それから数十分後、特戦群は追撃の敵部隊を待ち伏せにて殲滅、回収ポイントにて被害者と共に迎えの輸送機に乗り込み、日本へと帰還した。
その後、午前7時30分、T爆弾が起爆、研究所は巨大な焔に包まれ、巨大なキノコ雲の中に消え去った。
地下の警備本部にいた劉少佐は凄まじい衝撃と共に崩れてきた瓦礫に押し潰され、薄れゆく意識の中思った。
(これが外道に手を貸した報い…か…笑えないな…)
彼はそこまで考えたところで、頭上から降ってきた瓦礫に押しつぶされ35年の人生を閉じた。
特戦群は作戦中に、研究所内部から大量の機密書類を確保し、日本政府はその情報に衝撃を受けることとなる。
だが、ひとつ言えることは、救出された実験に使われていた被害者達は、もう、実験に使われる事はなく、日本で治療されれば、未来ある人生を歩むことができると言うことだ。
感想お待ちしてます。
完結も見えてきたので、今後についてアンケートを実施します。
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destinyルートへ行く
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宇宙戦艦ルートへ行く
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連載停止中のほかの作品を続き書けや
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新連載しつつゆっくり続きでOK
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徳田くんのR18