機動戦士ガンダムSEED〜日本国自衛隊〜   作:名無之助

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今回自衛隊出てきません、ユーラシア連邦のターンですかね…戦闘描写…と言えるか怪しいですが…。


第十八話・アルテミスの戦い

アルテミス崩壊、その知らせが日本に届く前、即ちアルテミス崩壊前まで時間を遡る。

 

ヘリオポリス崩壊後、地球軍の勢力圏を目指し移動していたアークエンジェルだったが、そのクルー…特にマリューを始めとした幹部たちは重苦しい空気をまとっていた。

 

アークエンジェルは、ヘリオポリスにてキラが避難民を回収してしまった事で、非常に不味い立場となっていたのだ。

 

アークエンジェルが事の重大さを再認識させられたのは、ユーラシア連邦の宇宙要塞アルテミスでの出来事であった。

 

この時、アークエンジェルは、本国と微妙な関係であるユーラシア連邦といえども友軍と言う事で、アルテミスに寄港できた事で安心感を持っていたが、事は簡単ではなかった。

 

それは、寄港直後である。アークエンジェルは司令の命令で待機を言い渡され、マリューやフラガ、ナタルは突如乗り込んできたアルテミス司令のユーラシア連邦中将、アンド・ロ・メダロフが引き連れてきたアルテミス要塞憲兵隊により一時拘束されてしまう。

 

本来、彼はここの指揮官ではなかったが、前任者が性犯罪で処罰された為に、その後任として着任しており、軍人としても優秀な人物であった。

 

そして、その彼は、本国からアークエンジェルについて知らされていた。

 

ただし、内容としては、ヘリオポリスにて救助作業中の自衛隊へ何ら報告する事なく避難民を回収し、そのまま自衛隊に引き渡さずに連れ去ってしまったと言う事だった。

 

そして、マリュー達に対する事情聴取が行われたが、司令のメダロフ中将からしてみれば、マリュー達の証言はフラガ大尉を除き、同じ軍人とは思えない位に情けないものにしか思えなかった。

 

そも、民間人を戦闘に駆り出すなど、例え本人達が望んだとしてもそれを受け入れるなど考えられない。何故なら、それは軍人の領分…自らの領域を侵されるのと同義だと考えるからだ。

 

しかし、マリュー達はそれに気づいていない。いや、目を背けているのか…

 

ただ、彼が最も許せなかったのは、マリュー達が人手が足りないからと、それを受け入れた事。さらに兵器を動かす為に、民間人の少年しか動かせられないから彼に戦わせるなどと言う余りにふざけた事をさも仕方がなかったと言うように語った事である。

 

人手が足りないなら、少ない人数で運用する方策を考えればいい。正規の軍人はブリッジにいた者だけでは無いはずだ。

 

レーダーなどオペレーターが足りないなら民間人ではなく、他の部署から正規の軍人を連れてきて配置させれば良い。兵器を動かす事が出来ないなら、民間人に頼らずに戦闘にならないように逃げれば良い。逃げれないなら、無駄に民間人を危険に晒し戦うより、敵に降伏すれば良い。少なくとも、基本的に、国と民間人を守るのが軍人の仕事だが、軍事的観点から降伏できないのなら、そして任務を完遂出来ないなら、民間人のみ脱出させ、自沈しろ。

 

 最新兵器は、一度失ってもまた設計図さえ残っていれば作れる。しかし、民間人を巻き込み、失態を演じた挙句、その民間人諸共敵にやられるなどと言うことになれば、市民の軍に対する信頼は地に堕ちるだろう。

 

そしてそれはいつか、自らに跳ね返ってくる。

 

軍が民間人から疫病神とみられ始めては如何ともし難く、兵の士気は下がり、戦いに不利になるだろう。

 

彼は其処まで考えたところで、マリュー達の母国である大西洋連邦に対し、こうつぶやいた。

 

「大西洋連邦の軍人教育は、癌細胞に侵された内臓見たいな物か…」

 

彼が癌細胞と言ったのは、ブルーコスモスなるテロリスト組織や、軍産複合体にいい様にされている大西洋連邦軍に対する哀れみと、皮肉として出た言葉であった。

 

そして彼は、民間人をこのままアークエンジェルに乗せておくのは危険だと考え、日本の自衛隊に対し、引き渡す為に民間人をアルテミスに収容し、自衛隊に迎えに来てもらう事を考えたが、その時である、アルテミスに非常警報が鳴り響いたのは…。

 

警報が鳴った瞬間、司令である彼は直ぐに執務室から司令室へと向かい、其処で絶望に似た感情に襲われた。

 

アルテミスを難攻不落足らしめているシールドが無力化された…つまり、アルテミスは今、完全に無防備と成ってしまったのだ。

 

しかし、彼は直ぐに思考を切り替え、即座に必要な命令を出していく。

 

 

「…ぼ、防御シールドが…消えた……っ!不味い!アルテミスの防衛艦隊は直ちに出動!MA隊も全力出撃だ!急げ!あとはアークエンジェルの連中を釈放し緊急発進させい!あれには民間人が乗っている、万が一にも民間人が巻き込まれるなど認められん!」

 

彼は、自らのできる中で最善を尽くし、民間人を守ろうと考えたのだ。

 

 

彼は次々と命令を出していく、彼は軍人としての自らの考えに基づいて命令を出す。

 

少しでも民間人が戦闘に巻き込まれないように…そしてそれは、彼自身がそこまで民間人が戦闘に巻き込まれることを気にするのは、開戦初期、ザフトが地上へ降下し、激しい戦いに成った時、戦闘に負け、 撤退する味方が市民ごと橋を爆破した際に家族がそれに巻き込まれ、それにより家族を失っていたことも、彼に大きく影響を与えていた。

 

そして、戦闘は始まり、其れは苛烈を極めた。

 

『畜生やられた!うわあー!!!』

 

『対空砲火がすり抜けられた!カバーしてくれ!』

 

『被弾⁉︎…母さー…っ』

 

次々と、敵MSによりMAや戦闘艦が火球へと変えられ、搭乗員の断末魔の叫びや、今尚必死で戦う兵士達の声がNJ下であっても通信が可能な範囲内から司令室へと流れ込む。

 

「アークエンジェルが港湾を出ました!」

 

「防衛艦隊二番艦 ピトムニク 轟沈!!」

 

「MA第三中隊壊滅!!!」

 

「司令!防衛艦隊のMA損害率50%!艦隊の被害甚大!要塞にも被害が出ています!」

 

「MA隊の残存、並びに防衛艦隊は、アークエンジェルのアルテミス離脱を援護、アークエンジェルへ通信、アークエンジェルは戦闘には参加せず、最大戦速で離脱せよ!いいか⁉︎絶対に戦闘には参加するな!市民を生還させることを優先せよ!」

 

アークエンジェルへ通信回線を繋ぎ命令を伝える、すると、アークエンジェル艦長のマリューから、少し間を置いて、返答がきた。

 

『……了解しました、アークエンジェルは戦闘には参加せず、市民の生還に全力を尽くします。

 

……閣下』

 

マリューから閣下と呼ばれたことに、メダロフは面食らう、なんせ、大西洋連邦の軍人から形式上以外で閣下などと呼ばれるなど、思っても見なかったのだから、しかし、マリューの目には、彼に対する敬意が読み取れた。

 

マリューは、事情聴取の際の彼が、自らの尊敬する上官、ハルバートン少将や、ヘリオポリスで自分達に怒りをぶつけた自衛隊の司令官の姿と重なり、そして、彼らと同じ様に自らの信念を持つ軍人で、尊敬に値する人物だと察したのだ。

メダロフは、面食らうが、直ぐに持ち直し、通信モニター越しにマリューを見遣る。

 

「…なんだ」

 

『……閣下に出会え、光栄でした!』

 

そして、マリューは口から出された言葉に、メダロフは愉快そうに口を歪めた。

 

「青二才が。そう思うなら、今私が与えた任務を完遂してみせろ、其れくらいできるだろう。本来の軍人の仕事なのだからな!」

 

『はい!アークエンジェルは民間人を生還させるために全力を尽くします!』

 

通信が切れると、彼は、通信モニターとは別のモニターに移されるアークエンジェルの姿を見遣る。いま、アークエンジェルを守るために、ユーラシア連邦の艦隊が必死でザフトの部隊に抗戦していた。

 

イージスや、デュエル、バスター、ブリッツなど、四機のGと、更に、十数機のMSを相手取る戦いは、一方的に蹂躙されるに等しく、しかし、其れでも、上官であるメダロフに触発され、士気が高いアルテミス防衛部隊は、結果として、アークエンジェルに一度も(・・・)敵を取り付かせなかった。

 

アルテミス防衛艦隊、そしてMA部隊は文字通り全滅し、アークエンジェルを取り逃がしたザフト部隊は、未だ砲台からビームを撃ち、抵抗を続ける要塞に対し、アークエンジェルを取り逃がした鬱憤を晴らす様に猛攻を仕掛けた。

 

「青二才は私か……諸君、済まないな、降伏すらできる状態ではなく成ってしまった。全て、私の失態だ…済まない」

 

破壊され尽くし、誘爆が続く要塞の司令室で、メダロフは幕僚たちやオペレーター達に語りかけていた。

 

すでに、脱出の手段はなく、降伏も通信システムが破壊され、することが出来ない。程なく、司令室も誘爆で崩壊するであろうが、幕僚たちやオペレーター達は、皆、暗い表情ではなく、任務をやり遂げた様な達成感を持った顔をしていた。

「閣下、これは我らの勝ちです。我らはアークエンジェルを無傷で逃したのですから…任務は成功ですかね」

 

「…ふ、其れはまだ分からん。だが…彼女ならうまくやれるだろうさ…まあ、あとは自衛隊に任せるとしよう……諸君、感謝する」

 

「閣下と戦えて、光栄でした!」

 

「諸君と戦えて、光栄だった!」

 

メダロフが敬礼すると、幕僚たちやオペレーター達もメダロフに対し、一斉に敬礼を送る。

 

その直後、司令室の天井が崩れ、爆風と炎が司令室を包み込み、此処に、アルテミスは完全にその機能を喪失し、崩壊した…。

 

ユーラシア連邦宇宙軍 アンド・ロ・メダロフ中将。のちに、アルテミス会戦と呼ばれるこの戦いに置いて、指揮をとったザフトの英雄クルーゼをして、「奴が居なければ足つきを逃すことも無かっただろう」と言わしめた勇将は、この戦いにてその生涯に幕を閉じた。

 

彼には後に、其れを知った日本政府の働きかけによりユーラシア連邦最高の栄誉である、ユーラシア連邦英雄勲章が授与され、彼の親族で生き残って居た者へと送られた。

 

 

 




ご意見、ご感想お待ちしてます。

登場人物紹介は、まだ増えそうなんで、低軌道会戦後くらいに出したく思います。

あと、アルテミス司令官が、事情聴取てマリューとどんなやり取りをしたのかは、脳内補完でお願いします。

マリューが、彼を尊敬できると考えた、これがヒントになるかと……脳内補完というのは、それぞれで感じ方も違うと思うので……自分がこう諭されたら…と想像してみてください。

完結も見えてきたので、今後についてアンケートを実施します。

  • destinyルートへ行く
  • 宇宙戦艦ルートへ行く
  • 連載停止中のほかの作品を続き書けや
  • 新連載しつつゆっくり続きでOK
  • 徳田くんのR18

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