機動戦士ガンダムSEED〜日本国自衛隊〜   作:名無之助

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第十九話・動き出す歯車

ユーラシア連邦の宇宙要塞アルテミスの崩壊。そして指揮官であり、ユーラシア連邦内でも人望のあったアンド・ロ・メダロフ中将の戦死は、ユーラシア連邦に衝撃を与えた。

 

また、ユーラシア連邦はそれ以前からの経緯から、その原因となったアークエンジェル…いや、そのアークエンジェルが所属する大西洋連邦へと不信感を募らせる事となる。

 

また、嘗て再構築戦争の際、国家体制がロシアからユーラシア連邦へと変わった直後の国内の安定しない時期に東アジア共和国からの侵攻を受けたユーラシア連邦は、東アジア共和国の大規模攻勢により一時的に首都を放棄せざるを得なくなり、ユーラシア連邦は亡命政府の受け入れを各国に申し入れたが、受け入れてくれたのは日本だけであった。

 

そして、大規模反攻作戦の発動までの間、大統領以下の亡命政府を受け入れてくれていた日本との関係、最近ではその日本からの人道支援、電力支援などの関係もあったことから、ユーラシア連邦の世論は反連合、連合脱退を叫ぶ声すら出始めていた。

 

ユーラシア連邦首都モスクワ。大統領府では緊急の会議が開かれていた。

 

「大統領……もし、避難民に何かあったなら、日本の怒りは凄まじいものになります。それがザフトのみに向けば良いですが……」

 

「分かっている、首相。彼等は敵に回してはいけないと言う事くらいわね…しかし、やってくれたなザフトは…そして、あの国は…」

 

首相ゲオルグ・タルマン(67)の言葉に、大統領ウィクトル・アント・ラトロワ(61)は険しい表情で答えた。

 

「大統領、私が思うに大西洋連邦は内部で揉めている様子が見られているのですが、誰かが故意にアークエンジェルの情報をザフトに流しているのでは無いかと…」

 

「と言うと?」

 

「それについては私よりも、国家情報省のセルゲイ大臣が詳しいかと。私もセルゲイ大臣から聞いたので…」

 

「本当か?セルゲイ大臣」

 

セルゲイと呼ばれた男性は、体格は痩せ型で顔つきは優男と言われるが、その眼光は鋭く、それだけで近寄りがたい雰囲気を出している男性であり、元は諜報員としていくつもの国の情報収集に関与している人物で、年齢は41。フルネームは ニコラス・セルゲイと言う。

 

「…はい、現在大西洋連邦軍内には二つの派閥があるようで、一つは、我が国の軍内にも多くいると思われる…ブルーコスモス。その盟主、ムルタ・アズラエルと関係の深い軍人からなるブルーコスモス派…此方は大西洋連邦軍の三分の二の割合を占めているようです」

「ブルーコスモス……か。我が軍に入り込んでいるブルーコスモスシンパは監視しているだろうな?」

 

「はい、それは大丈夫です。次に良識派と呼ばれる派閥ですが、あのアークエンジェルとMS開発を推進したハルバートン准将が属する派閥です。此方のトップは、ビンセント・ハーリング大将…大西洋連邦空軍長官との事ですが……大統領?」

 

「……ビンセントか…懐かしい名を聞いたな…いや、続けてくれ」

 

「は、現在のところ、大西洋連邦は空軍はほぼ全てが良識派と見て良いでしょうが、宇宙軍については、その逆のようで…ハルバートン准将以外では、良識派の将官一人だけでした。

大統領は、以前大使館パーティーで大統領に紅茶をしつこく進めてきた大西洋連邦の将官を覚えてますか?」

 

「…ああ、彼の紅茶は確かに美味かった。私がコーヒー一筋から紅茶も嗜む様になったきっかけだったが…彼が?」

 

大統領の言葉に、セルゲイ大臣は頷く。

 

「はい、現在は地球連合宇宙軍第10艦隊司令のグリーン・ワイアット中将です。この二人以外、大西洋連邦宇宙軍に良識派の将軍は確認できませんでした」

 

それを聞いた大統領は頭を抱え、いくら関係の悪い国とはいえ、その惨状には憐れみすら覚える、と言う心境であった。

 

「それと、アークエンジェルの情報を故意に流していたものがいると言うのは事実のようで、その人物はすでに消されているようです。

確か、名前はエルランとか言う将官でしたが、ハルバートンを蹴落としたいがためだけに情報を流していたようです。また、大西洋連邦上層部もそれを利用しようとし、黙認していた節が有ります」

 

 

 

「そうか……巻き込まれる方はたまったものではないな……せめて避難民だけでも救出したくとも、我が軍の艦隊は今は動けん…件のワイアット中将となんとか接触し、避難民を無事に日本に引き渡せる様に動いてもらう様に頼めないものか…いくらハルバートン准将の第8艦隊と合流を目指すといっても、第8艦隊だけでザフトの部隊相手では……絶望的だ」

 

「それなのですが…すでに工作員がワイアット中将と接触し了承を得ております。ただ、日本がワイアット中将の動きに警戒している様で…どうやら、東アジアの艦隊が起こしたあの事件の影響かと…」

 

「…日本の反応は無理もない……日本にも秘密裏にこの件を伝え、極秘で動いてもらうよう伝えておけ。情報漏洩の心配もだが、日本はいま狙われているからな……極めて慎重に協力体制を引くのだ」

 

「分かりました、早速日本側と秘密裏に接触し、対応します」

 

「頼んだ」

 

 

かくして、歯車は動き始めた………。日本とユーラシア連邦、二つの国の関係が、後にこの戦争に大きな影響を与える事となる…。

 

 




最近、仕事の関係で、職員の移動などで書く時間が中々取れず、次回はだいぶ先になる可能性が有ります。

申し訳ありません。

完結も見えてきたので、今後についてアンケートを実施します。

  • destinyルートへ行く
  • 宇宙戦艦ルートへ行く
  • 連載停止中のほかの作品を続き書けや
  • 新連載しつつゆっくり続きでOK
  • 徳田くんのR18

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