ディアッカがアフリカの砂漠の村で目を覚ました翌日、村の太陽光発電の装置を借り、MSのバッテリーの充電と、友軍への通信を試みたディアッカだったが、結果として、村の太陽光発電の装置では電力が足りずに、一時的に通信ができSOSを発信できたことくらいしか成果は得られなかった。
そんな中、その日の夕方頃になってから、ディアッカが目覚めた時に居合わせた少女が気晴らしになればとラジオをディアッカのいる部屋へと持ってきていた。
「まさか、ザフトがそこまで押されてるなんてな……笑えねー」
「…ディアッカはザフトのパイロットなんだっけ……」
ふと、少女がその様な事を口にしたかと思うと、その後は何も言わずに部屋から立ち去ってしまう。
「……なんなんだ?」
少女の行動に疑問を感じるディアッカだったが、次にラジオから聞こえてきた言葉に目を見開いた。
『先程入った情報によりますと、本日早朝、インド洋にて地球軍の部隊に甚大な被害を与えていたザフト軍の部隊、通称モラシム隊と呼ばれる部隊が、日本国の潜水艦部隊と地球軍の一部隊に対し攻撃を仕掛け、戦闘が行われた結果、日本国の潜水艦部隊に所属する機動兵器により、指揮官のマルコ・モラシムが戦死、部隊は壊滅したとのことです。モラシム隊は紅海の鯱と呼ばれる精鋭部隊であったとのことですが、日本国の潜水艦部隊も新鋭艦からなる部隊とのことで、更にこの事態を受け、ザフト軍はアフリカ方面に展開可能な戦力を喪失、アフリカ方面の放棄を決定したとの事です』
「……ま、まじかよ…」
ディアッカの呟きは、虚しく部屋の中に消えていった…。
ーー
時間は遡り、早朝
インド洋にて合流を果たしていた自衛隊の潜水艦部隊と、アークエンジェルは、ザフトによる襲撃を警戒しながらインド洋を抜けるべく航行していた。
自衛隊は、先のザフト潜水艦部隊との戦闘の際、戦域を離脱したザフトのMS部隊を八式と呼ばれる水中用機動兵器にて追跡し、その部隊が別働隊と合流するのを確認していた。
そして、常時そのザフト部隊の動向を探るために八式の部隊を交代でザフト部隊へ張り付かせ、監視を行っていた。
なお、先の戦闘で鹵獲したザフト潜水艦に関しては、自衛隊の潜水艦、迅龍と水龍から何名かづつ乗員が乗り移り、ザフトの艦長から操艦方法を聞き出し、なんとか運用していた。
つまり、この自衛隊とアークエンジェルの連合部隊は、アークエンジェル一隻に、潜水艦三隻からの部隊となっていたのである。
そして、ザフト部隊を監視していた八式の部隊からの緊急連絡で事態は動き始めた。
『こちら迅竜第二水中機動小隊!敵部隊に動きあり!MS部隊の発進を確認、現在までに8機、なおも発進を確認!MSの機種はグーン、また発進を確認した、これはゾノと思われる!進路は艦隊へ向かう模様、更に飛行タイプのMS部隊の発進を開始した模様、注意されたし‼︎』
「こちら迅竜、第二水中機動小隊はそのまま監視を続行、ただし、危険と判断した場合は退避せよ、また、エネルギー残量に注意し、本隊からの次の指示を待て」
『第二水中機動小隊、了解!通信終わる!』
連絡を受けた部隊は即座にザフト部隊を迎え撃つ為の行動を開始した。
「聞いての通りだ、アークエンジェル、並びに僚艦へ打電、艦載機を全機発艦させ戦闘配置につけ!もう一度言う、全艦戦闘配置‼︎」
迅龍の艦長の指示の元、迅龍並びに水龍から八式が次々と発艦し、アークエンジェルからは二機の戦闘機が直掩のため発艦、万全の態勢でザフト軍部隊を待ち受けるのだった。