機動戦士ガンダムSEED〜日本国自衛隊〜   作:名無之助

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自衛隊の活躍があるかもです…


第三十五話・AA出航直前…伊豆基地防空戦

CE 71年 4月14日 午前7時30分 アークエンジェルは日本国自衛隊伊豆基地のドックにて出航の準備を進めていた。

 

アークエンジェルは、この基地に入港してから様々な出来事があり、中でも大きな出来事は、ストライクのパイロットだった大和 吉良(やまと きら)がアークエンジェルを降りることとなったこと、更に、カガリも日本の預かりとなったため、ストライクのパイロットには、必然的にムウ・ラ・フラガがなる事になったという事である。

 

そして、出航の準備を進めているアークエンジェルだが、艦長のマリューと、副長のナタルは伊豆基地の司令官室にて、伊豆基地司令 相良 浩二(さがら こうじ)陸将との会談を行っていた。

 

まず言葉を発したのは相良陸将だった。

 

「君達も災難だね…日本の国会は酷かっただろう?テレビで見てたよ…」

 

おどけたように話す相良陸将にマリュー達は戸惑いがあった。

 

「は、はあ……あの」

 

彼の言葉にマリューは若干どう答えるべきか迷うが、いざ言葉を発しようとすると、相良陸将に遮られてしまう。

 

「いや、済まないね、答えにくい質問だったようだ…ところで、君達は出航後はこのままアラスカに?」

 

「はい、その予定ですが……何か?」

 

先ほどとは変わり、真剣な様子の相良陸将の質問に、質問の意図が分からないとマリュー達は首をひねる。

 

すると、彼の口から、驚くべき言葉が発せられた。

 

「アラスカに行くのはやめた方が良い…と私は思うがね……」

 

「い、いったい何故ですか?」

 

ナタルが戸惑いながらも尋ねると、相良陸将は少し考えてから、口を開いた。

 

「私が上から知らされた情報によれば…アラスカにはサイクロプスが設置されている可能性が高い……これはユーラシアも把握している情報だ。

 

そして、我々はザフトのアラスカ攻撃作戦が近いうちに行われるという情報も掴んでいる。

 

多分大西洋連邦は、ザフトのアラスカ攻撃部隊を味方や基地諸共殲滅する腹積もりだろう。

 

だから、アラスカに行くのはやめた方が良いと警告させて貰うよ…まあ、無理だろうけど、一応今の情報は頭に入れておいた方がいい」

 

話の内容に、マリューやナタルはショックを隠しきれずにいた…そして、そんな時である。

 

基地にけたたましい警報音が鳴り響いたのは…。

 

理由は簡単である。

 

アークエンジェルが伊豆基地にいる事をザフトに気づかれてしまったために、そのアークエンジェルを今度こそ沈めるため、ザラ隊…クルーゼが地上に降りてきており、それに合流したため、この時点ではクルーゼ隊となる…を主力とする攻撃部隊が襲撃してきたのである。

 

日本とプラントはすでに戦争状態にあり、攻撃されるという事自体は不自然ではないが、しかし、ザフトの洋上戦力は大半が潜水艦であり、また、お世辞にも静寂性が高いとは言えないものであり、それが日本の対潜哨戒網を突破してくるという時点で不可思議であった。

 

日本の対潜哨戒網は諸外国からは、鉄壁、突破は困難と評されており、特に潜水艦乗りからは地獄の門を自ら潜るようなものだとか、とある国の潜水艦乗りからは、日本の対潜哨戒網を突破しろと命令されるなら軍を脱走する方がマシ、などと言われている。

 

それを突破してくると言うのは、それ即ち最上級の脅威と認識するには十分すぎる理由となる。

 

ザフトの潜水艦が日本の対潜哨戒網を突破した…これは、日本の自衛隊にとって最大の屈辱であり、伊豆基地の海自部隊の指揮官は、すぐに相良陸将に許可を取ると、対潜哨戒を強化するため部隊を発進させた。

 

また、同じく伊豆基地に駐留する空自の指揮官も同様に許可を得てすぐに航空隊をザフト迎撃に向かわせた。

 

そして、相良陸将も、未だ対潜哨戒網が突破されたショックはあるものの基地司令として冷静に対処した。

 

まず彼はマリューとナタルをアークエンジェルへ戻し、自身は基地司令室へと向かう、向かう途中も携帯端末から指示を出し、近隣の自治体や警察、消防などにザフト部隊の接近を伝え、民間人の避難を開始させ、基地も厳戒態勢へ移行、政府へ事態を報告し、迎撃態勢を整えた。

 

ーー

 

伊豆基地司令室

 

「まもなく、空自第312航空隊〈アンタレス〉及び313航空隊〈ドラゴン〉が基地防空ラインへ到着、ザフト部隊に接敵します。ザフト部隊の総数…ディンタイプ8、ジンタイプ8、更にデュエル、イージスを確認、その他未確認の新型も確認しております。

航空隊は両部隊合わせて32機…ザフト部隊との接敵まで後1分!」

 

司令部の中は高い緊張感が漂っていた。

 

そして、オペレーター達や基地司令を始め司令部要員もパネルに映し出される戦術画面を緊張しながら食い入る様に眺める。

 

そして、接敵した。

 

戦闘機隊の無線が回線が繋がっているため司令部内に流れてくる。

 

『アンタレスリーダーよりHQ、敵を捕捉、攻撃を開始する』

 

「HQ了解、攻撃を開始せよ」

 

『アンタレス1FOX2!』

 

アンタレス隊は一番機に続き他の機もミサイルを発射、続いてもう一つの戦闘機隊もミサイル攻撃を開始した。

 

『ドラゴンリーダーより各機、攻撃開始、FOX2!』

 

こちらも一番機に続いて各機がミサイルを発射する。

 

『ダメだ!ミサイル攻撃効果微小!敵MS一機を撃墜も他は回避された!これより近接戦に入る!』

 

『敵が早い!実弾が効かない奴がいる!』

 

そしてザフトMS部隊と、空自戦闘機隊との近接戦が開始すれた。

 

その戦闘の様子は、司令部のパネルに衛星を介してリアルタイムで中継されており、殆ど初めての実戦に誰一人声を出すこともなく画面に視線を向けている。

 

相良陸将はその中にあって、空自部隊は時間稼ぎにしかならないと悟っており、追加の指示を出すことにした。

 

「空自部隊が抜かれる可能性がある、直ちに基地内にいる全MS部隊並びに陸海空宇の戦闘可能な全ての部隊の出動を命令する」

 

いつになく険しい表情で出された命令にオペレーター達は一瞬硬直するが、すぐに各部隊へ命令を伝達する。

 

命令が伝達されてすぐに各部隊から出動完了の報告が入ってくる。

「第5121独立MS小隊発進完了!続いて海自第1MS試験小隊発進、航宙自衛隊第3独立戦隊より、艦載MS部隊の発進及び配置完了との報告!空自第81高射隊配置完了!陸自各戦車隊並びに特化小隊配置よし!戦闘ヘリ部隊は上空待機!普通科部隊は対MS分隊を中心に配置を完了、基地の全部隊配置完了しました!」

 

命令伝達から数分で全部隊の配置が完了、そして、その頃にはザフト部隊と戦う戦闘機隊の通信からは、悲鳴に近い音声が流れて来るようになっていた。

 

ーー

伊豆基地防空ライン

 

そこではザフトMS部隊と伊豆基地所属の空自戦闘機隊の戦いが繰り広げられていた。

 

『敵が!敵が上から接近!回避しろドラゴン1!』

 

上方から近接武器を構え迫るザフト新型機、味方からの警告にドラゴン1も回避しようとするが間に合わない。

 

『こ、こんな馬鹿な!…グワァ!』

 

『ドラゴン1ロスト!各機に告ぐ、密集せよ!単機で挑むな!やられるだけだ!』

 

アンタレスリーダーは味方への指示を出しながら新型へミサイルを撃つが新型は見事な動きでそれを回避、カウンターを浴びせようと突撃砲を射撃するが、アンタレスはそれを神業とも呼べる動きで紙一重でかわしながら、新型へ機関砲を叩き込む。

 

機関砲は新型に対して直撃はせず、大した損害は与えられなかったが、突撃砲一つを破壊することに成功する。

 

しかし、彼の反撃も虚しく、デュエルやイージスを含む部隊と戦うには、通常兵器では分が悪く、一機、また一機と撃墜されていく。

 

『くそ!チョロチョロとしやがって!テメェら通すわけにはいかねぇんだよ!』

 

『ドラゴン3!寄せ!突っ込むな!…くそ、後ろは任せろ!』

 

二機の自衛隊機がイージスへと連携して攻撃を仕掛けるが、フェイズシフトに守られた装甲は傷つけることすら出来ない。

 

『ちくしょうダメか!うわぁ!』

 

『ドラゴン3!?……っ‼︎』

 

お返しとばかりにイージスから撃ち出されたビームにより、二機は回避もすることが出来ず、撃墜されてしまう。

 

『ドラゴン3、4ロスト‼︎防空ラインが抜かれた‼︎追撃する‼︎』

 

この時点で、戦闘機隊はもはや6機まで減らされ、更に、その殆どが大小の損傷を受けている状態であり、ザフト部隊に防空ラインを突破されてしまう。

 

それでも彼らは自衛隊隊員として、本土への攻撃を防ごうと死力を尽くし追撃をかけるが、一機を残し全滅してしまう。

 

そして、最後の一機は、新型との一対一のドッグファイトを演じることとなる。

 

『…動きが早い……手強いな…くそ、追撃は無理か、だが…お前だけは堕とす!FOX2‼︎』

 

アンタレス1は新型に対し最後のミサイルを発射し、そして、機関砲を撃ちながら接近する、しかし、新型はミサイルを残った突撃砲を使い撃墜、アンタレス1も攻撃を受けるが、紙一重でかわす。

 

しかし、それを読んでいたかの様に新型は、散弾をその予測進路へむけ発射、アンタレス1はそれを回避しようとするが機体は右の主翼を三分の一ほど削り取られてしまう。

 

機体を制御するのも困難になってしまったが、その状態にもかかわらず急旋回をかけ、新型に再度機関砲を叩き込み、素早く回避行動に移る新型の右の脚部を破壊することに成功した。

 

だが、反撃もここまでで、新型の反撃を受け、回避行動を取ろうとした際に尾翼を損傷、かろうじて機体を維持することは出来るが、とても戦闘できる状態では無くなり、また、新型も右脚部と左腕部が大破、更に、推進装置に故障が発生したため、後退を余儀なくされ、この二機の勝負は痛み分けに終わる。

 

アンタレス1は敵の新型も後退を余儀なくされたことで撃墜を免れるが、機体の損傷が激しく、基地まで持たせることが出来ずに墜落、彼自身は脱出に成功するが、救助が来るまでの間、海での漂流を余儀なくされた。

 

そして、脱出前、彼に敵の新型から通信が入っていた。

 

『…日本のパイロット…私はザフトのラウ・ル・クルーゼだ、ぜひ、君の名を聞いておきたい』

 

そう言ってきた敵パイロットに対し、彼も答える。

 

『…日本国航空自衛隊、第312航空隊隊長、守人 護(もりと まもる)三等空佐だ』

 

『…守人 護 三等空佐 その名…覚えておこう…』

 

そう言って一方的に通信は切られ、ザフトの新型は去っていった。

そこで聞いた敵パイロットの名を、波に身を任せる彼は呟く。

 

「ラウ・ル・クルーゼ……お前は…必ず……」

 

 

そして、伊豆基地でも、戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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