機動戦士ガンダムSEED〜日本国自衛隊〜   作:名無之助

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第三十六話・AA出航…伊豆基地防衛戦

伊豆基地の防空ラインが突破されたのと同時刻、伊豆基地より報告を受けた政府は緊急の安全保障会議を招集、そこで、いくつかのことが閣議決定された。

 

まず一つは、伊豆基地防衛に関してである。

 

防衛戦の現場指揮は基地司令に一任し、増援や、その他の基地、駐屯地の部隊の移動など、広域における戦略指揮を東部方面隊総監部へと移行したのだ。

 

二つ目は、報復攻撃計画の発動準備命令の発令、本土攻撃を受け、内閣は再構築戦争後から現在まで適用が特定野党、市民団体からの反対により見送られていた有事武力攻撃緊急事態対策法の適応とそれを根拠とし、発令する旨を決定

 

三つ目は、MS開発計画、量産計画のいくつかを前倒しで進めること、その為の必要予算を上で挙げた法律を根拠とし、決定したのである。

 

そして、東部方面隊総監の小島 保 陸将は、東部方面隊総監部の司令室にて、各基地や部隊への司令を出し続けていた。

 

「小松基地第302航空隊並びに百里基地第304航空隊スクランブル!伊豆基地救援に向かいます!横須賀基地所属第1機動艦群、演習海域より伊豆基地へ急行中!到着まで1時間!伊豆基地防備艦隊、被害甚大なれど港湾脱出に成功、現在敵潜水艦の捜索、撃破の為展開中との報告!」

 

「木更津の戦闘ヘリ部隊並びに、館山からも対潜ヘリ部隊を出させろ!厚木の部隊はどうなっている?」

 

 

「現在、厚木の第1航空団第2航空隊がスクランブルし、伊豆基地へ向かっています」

 

小島陸将は部下の報告を聞いてから、疲れからか目を抑え、小さく息を吐く、そして、部下を見据え、次の支持を出すのだった…。

 

「……あとは…相良次第だな、それと、沿岸部の各駐屯地、並びに空自、海自基地は第一級警戒態勢をとるよう伝達せよ!」

 

「了解!」

 

伊豆基地は、防空ラインを突破したザフト部隊との激戦が始まっていた。

 

基地司令部では、直接戦っている隊員たちの悲鳴、絶叫がオペレーターたちのヘッドホンから流れ、それでも尚、オペレーターたちは自身の仕事を全うすべく戦っていた。

 

『だめだ!実体弾じゃ効果なし!…うわぁ!?』

 

『対MS分隊最後の一隊がやられた!ちくしょう‼︎こちらのMS部隊はザフトのイージス、デュエルの二機に抑えられている!』

 

『こちら5121小隊、ジンタイプ3機目を撃墜!これでザフトのジンは壊滅…』

 

5121小隊からの報告に司令室は湧き上がりかけたが、レーダーを監視するオペレーターの報告にその表情は絶望に変わる。

 

「れ…レーダーに新たな敵影を確認……数ディンタイプ三、ジンタイプ五機!!」

 

「水中用レーダー並びにソナーにも感あり!これは…ポイント101にザフトの水中MS部隊!数は4…奴らの狙いは一体…」

 

オペレーターはザフトの水中MS部隊が上陸する進路ではなく、海底にぶつかるような進路を取ったことを疑問に感じたが、相良陸将は、ザフトの意図に気がつき叫ぶ。

 

「その水中MS部隊をなんとしてでも仕留めろ!奴らは迂回進路から地中を掘ってアークエンジェルのドック近くまで侵攻する気だ!非戦闘員を避難させた地下シェルターが危険に晒されるぞ‼︎」

 

「っ!?了解!海自第一MS試験隊へ、ザフト水中MS部隊の迎撃を命じます!地下シェルターが危険です!ポイント101へ急行してください!急いで!」

 

 

『了解した、急いで向かう!』

 

 

ポイント101付近、海自第一MS試験隊はザフト水中MS部隊の捕捉に何とか間に合い、強襲を仕掛けた。

 

「ザフト水中MSはグーンと確認した、攻撃開始!各機魚雷発射せよ!」

 

『『了解』』

 

MS試験隊から発射された魚雷は、ザフト水中MS部隊を目指し進む、ザフト部隊は魚雷に気づき回避行動に出るが、魚雷の一つが一機のMSを捉え、海の藻屑へと変える。

 

そして、三機同士になった双方の部隊は近接戦に突入する。

 

グーンと戦うのは、自衛隊が先のインド洋から帰還した迅龍、水龍の艦載機である八式の戦闘データを教訓に改良された新型のOSを装備した機体であり、機体名もまだ決まって居ない試験段階の新型機であったが、それらは、グーンを圧倒した。

 

水中用レーザーカノンや、ライフル型レールガン、小型連装魚雷などを装備した自衛隊の水中MSは、近接戦にも強かったのだ。

 

グーンの攻撃をかわし様にレールガンをグーンの横腹へと撃ち込む者、グーンの近接攻撃にはカウンターでサーベルを突き立てる者、そして、僚機を攻撃しようとした敵機に背後から魚雷を撃ち込む者…気がつけば、ザフト水中MS部隊は壊滅して居た…。

 

「……機体の性能に助けられたな…」

 

これは隊長の言葉であるが、これが同一の機体であれば、ここまでの機動性はなく、ステルス性や武装の種類も限られ、苦戦しただろうと思い、部下達はその言葉に頷いた。

 

時を同じくして、アーク・エンジェルは、基地司令の相良陸将に、隙を見て出航し、離脱するように命じられた。

 

もちろん納得はしなかったが、相良の説得に折れ、隙を見て伊豆基地を脱出する事となる。

 

アーク・エンジェルの入るドックの近くでは、自衛隊のMS部隊と戦車隊がザフトのイージスとデュエル、更には増援も交えたディン4機を同時に相手どり、まさに激戦となって居た。

 

「クソ!強い!」

 

徳田は悔しげにつぶやく、近接戦に持ち込みはしたが、それでもたった二機に互角に抑えられてしまって居た。

 

しかも、それだけではない、機動性を重視した機体であるため、パワー性能で劣勢だったのだ、起動力で撹乱しつつ一撃を放つも、受け止められてしまっては押し込む事すらままならない。

 

「徳田、連携を崩すなよ!……!?戦車部隊、顔を出すな!」

 

隊長である南部三佐が叫ぶ、そう、南部や徳田達MS部隊を援護するため建造物の陰からザフトMSを狙おうとした戦車部隊が、建造物の陰から出てきて攻撃をかけようとしたのである。

 

しかし、彼らはすぐさま上空にいるディンに攻撃されて、機銃による応戦虚しく、残骸と化す。

 

「……クソ、言わんこっちゃない…だが、仇は取る!…ちょうど良い…テストさせて貰うぞ?…全弾チタン製の特注品だ……受け取れぇ‼︎」

 

南部の機体から両肩に背負うように装備された箱のような装備の扉が開き、チタン製の多連発グレネード弾が、戦車隊を攻撃するために降下してきて居たディン部隊を襲う。

 

この攻撃にディンは二機が撃墜され、残りは上空へと逃げ出す。

 

そして、イージスとデュエルの二機は、ディンを攻撃した南部の隙をつき、攻撃を掛けようとし、徳田機がそれを阻止するためビームを放ち、デュエルの脚を吹き飛ばす。

 

デュエルが徳田機に標的を変え、突撃しようとしたその時である、逃げ出した二機が突如として爆散した。

 

そして、デュエルに対し、バルカン砲がその前方を通り過ぎる。

 

南部や徳田達伊豆基地にいる自衛隊員達は、思わず空を見上げると、自衛隊の通信回線から待ち望んだ知らせが入る。

 

『こちら第2航空隊!これより上空から支援する!』

 

『同じくこちら第302航空隊!救援に来たぞ!敵部隊の位置を教えられたし!』

 

「了解!来援感謝する!敵部隊は港湾方面にジンタイプが展開、こちらの部隊と戦闘中!ディンタイプは今ので全滅した。あとは、ザフトのイージス、デュエルの二機が現在こちらで戦闘中だったが、来援が来ると同時に後退を開始した模様!」

 

『了解した!追撃は我々と既に追撃に向かった第304航空隊が行う!木更津の戦闘ヘリ部隊もまもなく到着する!あとは任せてくれ!』

 

そう言って、戦闘機部隊は後退するイージス、デュエルを含むザフト部隊を追撃し、ザフト部隊はイージスとデュエルを残し壊滅に追い込まれる。

 

その1時間後

 

「アークエンジェル発進!進路をアラスカへ!」

 

アーク・エンジェルが出航し、アラスカへと向かうのであった…。

 

 

その後、対潜ヘリ部隊や展開した自衛隊の機動艦隊、防備艦隊の捜索網が拡大されるとザフト潜水艦部隊は早々に発見され、一隻が撃沈、一隻拿捕、もう一隻はデュエル、イージスを収容して離脱を図ったが、自衛隊の追撃をほうほうの体で何とか振り切り、ボロボロになりながらもカーペンタリアへとたどり着くことに成功するのだった。

 

伊豆基地防衛戦での自衛隊側戦死者は321名 負傷者469名 更に41名の行方不明を出した。

 

物的損害

艦艇2隻 港湾脱出時に撃沈

 

戦闘機35機 (追撃戦の損害含む)

 

戦車28両

 

装甲車両18両

 

対空ミサイル車両 4両(内一両のみ修復可能レベルの損傷)

 

自走高射機関砲 3両

 

戦闘ヘリ8機(追撃戦の損害含む)

 

対潜ヘリ4機(犯人はデュエル、撤退時に八つ当たり気味に撃破)

 

MS4機(パイロットは生還、第三独立戦隊所属機)

 

基地レーダー施設一部破損

 

港湾設備壊滅

 

作戦目標 伊豆基地およびアーク・エンジェル防衛 成功

 

 

ーー

ザフト側損害

 

新型1機大破

 

ディンタイプ11機撃墜

 

ジンタイプ13機撃墜無いし大破

 

潜水艦 一隻撃沈 一隻拿捕 一隻中破

 

作戦目標 伊豆基地内のアーク・エンジェル撃破 失敗

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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