ザフトによる伊豆基地襲撃事件から三週間ほどがたった。
日本は現在、自衛隊へのMSの配備、慣熟訓練を急ピッチで進めている状態であり、その中でもとりわけ、第三独立戦隊のMSのパイロット達は、他の部隊のパイロット達よりもハードなスケジュールをこなすはめになっていた。
具体的には、新編された複数の、それも大隊規模のMS部隊に対する教導任務が割り当てられていたためだ。
MSの教導部隊は別に編成された部隊がすでに存在したが、この部隊はこの部隊で余裕がない状態だったのもある。
しかも、第三独立戦隊に課せられた教導任務は、一ヶ月以内に一線級部隊に仕上げろとの命令であったことも彼らの頭を悩ませた。
「…なんだって一ヶ月以内なんだよ……休みをくれ…」
とあるパイロットのぼやきである。
なぜ、そんな命令が出されたかと言うと、ある作戦の発動が決定されたためであった。
ザフト軍カーペンタリア基地攻略作戦 自衛隊呼称カ1号作戦の発動である。
作戦参加戦力としては自衛隊史上2番目の規模となる。
内約は、海自からは空母を有する一個機動艦群及び通常戦力の二個護衛艦群、一個潜水艦隊および、一個輸送揚陸艦隊(輸送艦、揚陸艦18隻)
陸自からは、MS2個大隊および、人型戦車(小型MS)一個大隊、戦車1個連隊、歩兵(普通科連隊)2個連隊、更に、一個空挺大隊の参加が決定している。
空自は事前の無人機(NJ対策済み)による偵察活動のみ参加し、航宙自衛隊は第三独立戦隊が主力として参加する。
この作戦開始が一ヶ月後と決定されたのである。
それから作戦に参加する各部隊は昼夜を問わず訓練が行われていだのだった。
そんな状況の自衛隊の各部隊に、さらなる試練が降りかかる。
一週間前の事である。
アラスカ基地陥落との情報が入ってきたのは……予想された事ではあったが、自衛隊員達はそれでも衝撃を受けた。
だが、それ以上に、政府も対応に追われていた……
内閣では、国家安全保障会議が開かれ、情報整理と今後の方針の検討が行われていた。
まず最初に、総理大臣の本田が口を開く。
「先週のアラスカ基地陥落に関してだが…地球連合軍アラスカ基地がサイクロプスにより自爆したのは確かなのか?」
「…確かです。守備隊諸共自爆したのを確認が取れました…」
「そうか……やはりな…」
本田は、現在の大西洋連邦ならば、味方を巻き込むやり方に躊躇いなどないことを予感していた。
そして、憤りを覚えていた。
「総理、もう一つ報告がある……」
防衛大臣の鈴木である
「なんだ?」
「防衛省が入手した情報で、アラスカに展開していたユーラシア連邦アラスカ派遣軍が4割ほど生存し、同じくアラスカ守備隊に属していた大西洋連邦第三洋上艦隊の生き残りと、アークエンジェルと共にアラスカを脱出し、オーブへ向かっているとのことだ」
「…オーブはなんと言っている?」
外務大臣が答える
「オーブからは、一時的に寄港を認める方針だとのことです。その後はユーラシア連邦へ向かうと説明を受けているとの事でしたが」
「そうか…なら、今回は静観しよう…だがまあ、オーブが攻撃を受けたら助けないわけには行かないが…な……」
「分かりました。対応はそのようにします」
そうして会議が進んでいた時、会議室に職員が駆け込んできたのである。
「何事か!?」
「…ぱ……パナマがザフト軍の攻撃を受け壊滅!マスドライバー崩壊との事です。それ受け、パナマに向かっていた大西洋連邦の主力艦隊以下、地球連合軍の艦隊が進路を変更!……オーブへ向かう公算大との報告です!!!」
「ば…バカな早すぎる!!…自衛隊に出動準備を命じろ!……くそ…次から次へと………」