日本海にて東アジア共和国と海自護衛艦隊が戦闘を開始する直前より、日本の首都東京で異変が起こり始めた。
日本政府は、無用な混乱を避けるために避難勧告などは出しておらず、自主避難を呼びかけ、シェルターを解放するにとどめていたが、殆どの国民は避難をしていなかった。
最初の異変はある一本の警察無線から始まる。
『新宿08より本部、現在ナンバープレートを付けていない白の大型トラック3台が千代田区方面へ向け信号を無視しながら逃走中!現在追跡している。至急応援の手配を要請する!現在位置靖国通りの電話局前を通過!』
『こちら本部了解』
『警視庁より各局、警視庁より各局、新宿区靖国通りにて不審車両が逃走中、不審車両は白の大型トラック3台でナンバープレートを付けていない模様、現在新宿08が追跡中!不審車両は千代田区方面へ向かっているとのこと、付近を警戒中の車両は直ちに急行せよ!』
この無線の直後、更に別の緊急連絡が入る。
『警視庁より各局、警視庁より各局、千代田区水道橋付近にて白の不審な大型トラック4台が通行人を跳ね逃走中との通報あり、現在警邏121、113が追跡中、応援要請あり、付近の車両は直ちに急行せよ、不審車両は皇居方面へ向かって逃走中!また、内調より、G事案の可能性ありとの情報提供あり、警戒せよ』
同時刻、首相官邸前
「戦争やめろ!内閣退陣!!!」
「「戦争やめろ!内閣退陣!!!」」
「自衛隊解散!!!殺人集団!!!」
「「自衛隊解散!!!殺人集団!!!」」
数百人のデモ隊が官邸前でシュプレヒコールをあげていた。
そして、警備の警察官が拡声器で警告している。
『直ちに解散しなさい!!!無許可でのデモ活動は法律に抵触します!!!直ちに解散ーーっ!!!』
警告していた警察官が突如として倒れる。
倒れた警察官からは血が流れ出ていた。
そして、デモ隊から数十人の人間が前に出てきて、突然警備の警官隊にサイレンサー付きの拳銃を発砲し始める。
デモ隊はパニックになり、逃げ始めるが、警察官を撃った犯人達はそれを意に介さず警察官に発砲を続ける。
警官隊は機動隊が前面に出て反撃をするが、突然の事態に未だに混乱があり、負傷した警察官を後ろへ引きずり、機動隊は盾を構え、拳銃を抜き撃ち返す。
『こちら首相官邸前、第1機動隊第2中隊!!!G事案発生!!!首相官邸前で警察官が撃たれた!!!現在数十名からなる武装集団による攻撃を受けている!!!応援を要請する!!』
機動隊が本部へそう連絡した直後、本部からもたらされたのは最悪な状況を伝えるものだった。
『こちら本部!!!現在各所にて発砲事件発生中!!応援は少し待て!!また、各局へ緊急連絡。七瀬内務大臣が拉致された模様!!!犯行グループは日本教育連合組織委員会本部に立てこもっている!!!追加連絡。警視庁より各局、警視庁より各局。新宿駅前にてG事案発生。警察車両が銃撃を受け大破。ロケット弾が使用されたとの未確認情報。現在、新宿駅前交番が犯人グループと交戦中。付近のPCは至急急行せよ!!!尚、これは千代田区方面へ逃走していたのとは別のグループと思われる』
新宿駅前
大勢の民間人が逃げ惑う中、駅の入り口にて交番の警察官たちは必死に犯人グループを阻止しようと戦っていた。
「くそ!撃て!撃ち返せ!!!」
「皆さん伏せてください!!!伏せて!!!」
「狩野警部!!!本部から状況を報告せよと…」
「そんな暇は無い!!!状況は切迫!応援の1人でも寄越せと伝えろ!!!」
「はい!」
犯人グループは自動小銃を乱射しながらも動きは素早く、少なくとも素人のそれではなかった。
しかも、大型トラック3台分、約30人が自動小銃を装備し、リボルバー式の拳銃しか無い交番の警察官たちに牙を剥く。
反撃をしようとした交番警察官が、首から鮮血を吹き出し倒れる。
「田中!!!」
「……ごぷっ!」
田中と呼ばれた若い巡査は、自分を気遣う上司に目でポケットの辺りを示すような素振りを見せる。
「これか?…おい田中?田中っ!!!」
狩野警部は田中の胸ポケットから一枚の写真を取り出し、田中の家族の映るそれを田中に見せようとするが、田中の目からはすでに命を感じることはできなくなっていた。
「……くそ、応援はまだか!!!」
その時、応援のパトカーのサイレンが聞こえ、銃器対策部隊の車両が二台のパトカーと共に駅前へと近づいてきた。
狩野警部ともう1人の巡査は、ほっとするのもつかの間、犯人グループの何人かが筒状のものを向かってくる車両に向けるのを見て叫ぶ。
「や、やめろぉぉぉ!!!」
その叫びと同時に筒から放たれたそれは、二台のパトカーと輸送車に命中し、爆発。輸送車は横転。なんとか車両から這い出してきた隊員が見えるが、犯人グループは黒いソフトボール大の物体…手榴弾をその隊員の方へと投げる。
隊員は助かるはずもなく、原型を留めている車両へも容赦なく手榴弾が投げられ、跡形もなく破壊される。
狩野警部はその光景に呆然とするしかなく、犯人グループが自分たちの方向へ手榴弾を投げ込む。側にいた若い巡査は硬直したように動かない。
狩野警部は巡査を守るため手榴弾の上に覆いかぶさり、衝撃を感じると共に意識を手放した…。
東京を襲う動乱はまだ始まったばかりである…。
新宿駅が武装集団の襲撃を受けている頃、水道橋方面から皇居方面へ向かっていたトラック4台は、警察の執拗な追跡に、その内の一台を警察の妨害のため停車させる。
トラックは、荷台を追跡して来た警察車両の方へ向けた状態で停車した。
追跡していた警視庁の警邏隊、警邏121、113に応援も含めたパトカー4台は、その停車したトラックの荷台が開かれるのを認識した瞬間、突然の銃撃を受けることとなる。
しかもただの銃撃ではなく、トラックの荷台に装備された12.7ミリの機関銃による銃撃で、普通の警察車両がそれを受けて無事で済むはずも無く、パトカー4台は大破炎上し残骸と化す。
乗っていたであろう警察官たちの運命も推して知るべしだろう…。
そして、警視庁本部には次々と通報が寄せられていた。
「新宿駅の鉄道警察隊より応援要請!駅前交番の警察官とは未だ通信は不能。未確認情報として銃器対策部隊壊滅との情報!」
「水道橋方面から皇居方面へ不審車両を追跡中だった車両との通信途絶!東京半蔵門線付近の市民より、パトカー4台が炎上しているとの緊急通報あり!」
「皇宮警察より通報。皇居正門にて武装集団と皇宮警察特別警備隊が銃撃戦に突入!」
「防衛省より、現在武装集団の襲撃を受け、自衛隊警務隊が応戦中!尚、追跡していた警察車両が銃撃を受け大破しているとの情報!」
「…け、警備局長!首相官邸警備の第1機動隊第2中隊より、武装集団が正門を突破して首相官邸へ侵入との緊急連絡!尚第2中隊はその後通信途絶!首相官邸より総理及び内閣が退避!市ヶ谷に向かいました!」
「…一体どうすればいいんだ……こんなこと誰が想定できるっていうのか…」.
あまりの事態に、陣頭指揮をとる警視庁警備局長は呆然と呟く…この事態は彼の力量を多いに超えていた。
「……警備局長、警察庁から特装団を投入するよう通達が来てますが…総監からも同様に指示が来ました」
「自衛隊は出動しないのか?」
「練馬と朝霧からそれぞれ部隊が急行中ですが、市民団体の妨害により遅延しているとの事。その他近隣の駐屯地からは警務隊の一部が出動してますが、こちらも同じですね…」
「局長!内閣より万が一に備え陛下の避難を実施するとの連絡!皇居は現在武装集団の襲撃を受けているため、陸自のヘリ部隊を陛下の救出に派遣するとの事!更に、特装団の出動が総理から直接指示されました!」
「………特装団を出動させよう…」
警視庁機動隊特殊装備行動団…治安維持用MSを装備する、日本の警察で最初の部隊である。
使用する機体は、白バイに手と足をつけたような見た目で、全高3.4m。戦闘ヘリのような形で防弾ガラスがコクピットを覆い、両サイドが開閉できるようになっている。武装は背部に催涙弾の発車筒4、腕にはゴム弾も使用できる5.56ミリ機銃、胴体下部にはテーザーガンが装備されている。この機体は現在、警視庁機動隊特装団に24機配備されており、一部が本部防衛に残り、他は全て武装集団の鎮圧に投入されることとなる。
警備局長はMSに関して懐疑的であり、運用に対し反対派であったが、事ここにいたり、出動させざるを得なくなったのである。
そして、出動した彼らが最初に向かうのは未だ戦闘中の皇居。そして、新宿駅へと投入されることとなる。
同時刻。総理は陸自、警察に対して、出動を妨害する市民に対しての生命を奪わない範囲においての前代未聞となる実力行使命令を出したのであった。
警視庁機動隊特殊装備行動団…通称 特装団の一個中隊8機が新宿駅へ到着したのは、出動命令を受けてから既に1時間が経った頃であった。
出動命令を受けてからすぐに出動した特装団だったが、市民団体からの妨害もあり、その
団体関係者の拘束は応援の警官隊に任せてきたものの、100人程の団体をたった8機で制圧しなければならなかったため、時間がかかってしまった。
そして現場に到着した特装団がまず見たのは、大破し横転した警視庁銃器対策部隊の運用する装甲車両と、同じく横転し炎上する数台のパトカー。そして炎上する車両の周囲には、黒く焼けた焼死体や、血を流し倒れている警察官、巻き込まれた市民たちの姿であった。
「これは…ひどいな……」
新宿駅へ到着した特装団第2中隊8機は、その光景に唖然とし、隊長も余りの光景に息を呑む。
しかし、駅の構内から今だに続く銃声に気づいた隊長はいち早く我に帰り指示を出す。
「中隊各機、駅の構内から今だに銃声が聞こえている。機体のサイズ的に我々は内部への突入は不向きだ。よってこれより本部へ状況の報告並びに周囲の確保を行う。ただし、米倉と佐渡は機体から降りて内部の様子を探ってきてくれ、出来れば内部の警官と連絡をつけてくれると助かる」
「了解した」
「了解です…」
隊長は機体から降りた2人が新宿駅構内へ入って行くのを確認した後、本部へと通信を繋いだ。
「本部、こちら特装2-1新宿駅へ到着。駅の外部には武装集団は確認出来ません。現在構内より銃声を確認したため、隊員2名を偵察へ向かわせております。我が隊は機体サイズから内部への突入は不向きと考えられ、SATの投入を具申します」
『特装2-1、こちら本部。現在SATは首相官邸並びに国会議事堂方面へ展開中。待機していた部隊も七瀬大臣救出のため、日本教育連合組織委員会本部に展開中のため、其方へ回せる部隊の余裕がない。現在自衛隊の特殊部隊の出動を要請中…ちょっと待て……特装第2中隊へ新たな命令を伝達する。特装団第2中隊は一部戦力を練馬駐屯地方面へ向かわせ、市民団体から妨害を受けて立ち往生している陸自部隊と合流し、支援してください…陸自部隊は実弾しか装備しておらず、市民団体の排除に苦戦している模様。尚、応援の警官隊も向かっている』
「特装2-1了解」
本部との通信を終えた隊長は、中隊の自分の小隊から二機を練馬駐屯地方面へと向かわせ、残りは警戒態勢で待機するよう指示を出した。
この時彼は銃声が既に止んでいることに気づいてはいなかった。
ーー
駅構内へと入った特装団第2中隊の米倉と佐渡の2人は、銃声のする方へ警戒しながら進んで行く。
構内は銃撃戦の為か照明がところどころ破損し、ちらほらと市民や警官の死体も見られた。
そんな中、佐渡がふと視線を向けた先…柱の丁度影になるような場所で、放心したようにへたり込んでいる若い警察官を見つけた。
佐渡は米倉の肩を叩き、米倉と一緒にその警察官のところへ駆け寄る。
「おい、あんた大丈夫か!?」
「怪我はあるか?」
近寄ると、その警察官の只ならぬ様子に2人は慌てて声を掛ける。
「………あ、あなた方は…」
それまで放心していた警察官が米倉たちの方へ視線を向け、掠れた声で問う。
「俺は警視庁特殊装備行動団の佐渡、こっちは米倉だ。状況は聞いてる。あんたは?」
「僕は…新宿警察署地域課、新宿駅前交番の仁科と言います…。同僚の田中と上司の狩野警部と一緒に警備に当たってました…。皆…皆目の前で死んでしまった…警部も…僕の…僕のせいで…」
話すうちに仁科の目から涙が溢れ出し、止めどなく流れ始める。
佐渡と米倉はそれを見ているしか出来なかった。
少しして落ち着いたのか、仁科は米倉たちの駅構内の探索に同行することとなった。
「先程はお見苦しいところを見せてしまい、すいません」
そう恥ずかしそうに話す仁科に、2人は気にするなと声を掛け、銃声のする方へ進んで行く。
そして、3人は信じられない光景を目撃する。
「キエェェェアァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
「チェストォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
老人2人が刀を手に、武装集団のアサルトライフルの銃弾を弾いていたのである。
しかも、数十人の武装集団の内、既に半分が制圧されており、更に、彼等老人2人の後ろには、市民と負傷した鉄道警察隊の警察官が、こちらはどこか虚ろな表情で老人2人を眺めている。
カオスな状況に3人がしばし呆然としていると、武装集団が弾切れを起こしたのか再装填をしようとした。
その時である。
「示現流、
「同じく、山口一刀流
武装集団がその老人二人にボコボコにされるその光景を見たとある警官は後にこう語った。
「現代の兵器で武装した武装集団相手に無双する老人を見た瞬間、いつ自分は異世界に転生したんだろうと思った…そして…転生してなくてショックだった……自分で何を言って居るのか分か(ry…」
こうして、新宿駅に関しては、特装団と特殊部隊の出番は天元堂のあずきバーを買いにきただけの老人2人によって食いつぶされるのであった…。
新宿駅の武装集団はこうして鎮圧された。
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練馬駐屯地から出動した陸自部隊は、市民団体に包囲されて身動き出来ない状態となっていた。
駐屯地を取り囲む市民団体を排除するために、駐屯地警備の部隊がゴム弾を大量に消費し、更に増え続ける市民団体への対処も迫られた駐屯地司令(第1師団副師団長兼務)の判断により、ゴム弾は駐屯地警備の部隊に優先配備されたのである。
その為に、彼らが実弾のみしか駐屯地から持ち出せなかった事も一因となり、進路を妨害する市民団体への対処に苦慮する羽目になっていた。
閃光弾を使用したり、部隊指揮官の判断で上空へ向け威嚇射撃をするなどし、ある程度は前へ進むものの、逆上した市民団体がさらに行動をエスカレートさせ、車両から降りて対処に当たる自衛隊員たちと揉み合いになるなど、状況は悪化していく。
そんな状況において、自衛隊員の1人が金槌で顔面を強打され、倒されてしまう。
そこに更に、金属バットを持った男が倒れた自衛隊員に追い打ちをかける。
その光景を見た指揮官は、命令した。
「負傷した隊員を救助せよ、正当防衛射撃始め!!!責任は私が取る!!!」
その命令に隊員達は一瞬理解が遅れたが、再度指揮官から「撃て!」と命じられ、直後に指揮官が倒れた隊員をリンチする市民団体に向け拳銃を発砲する。
「う、うわぁああああああ!!!」
1人の隊員が指揮官に続き叫びながら射撃し始めたのを皮切りに隊員達も射撃を始める。
「う、うわぁ!!!」
「撃ってきやがった!!!人殺しぃぃ!!!」
「ぎゃあ!!!」
「逃げろ!!!」
市民団体はまさか自衛隊員が撃って来るとは想定していなかった様子で、叫び、喚き、逃げ惑う。
隊員達は市民団体が離れたところを素早く負傷した隊員を救助し、態勢を立て直す。
車両数台に負傷した隊員と、射撃を受け負傷した市民団体の人間を収容させ、病院へと移送させる。
警視庁特装団のMSと、応援の警官隊が到着したのはその直後であった。
新宿駅の武装集団が制圧されたとの情報が入り、警官隊らと合流した陸自部隊は、目標を皇居救援に切り替え、急ぎ移動を開始する。
この時、市民団体の死傷者は40人強に登ったが、世論が彼らに同情することは無かった。
救助された自衛隊員は、両目の視力を失い、右耳の聴力まで失うという後遺症を負う事となったことで、むしろ世論は市民団体よりも自衛隊員に同情したのである。
そして、首相官邸でも動きがあった。
首相官邸にはSATの部隊が既に一度突入し、制圧を試みていたが失敗。
逆に壊滅し、生き残った隊員が人質にされてしまっていた。
そして、首相官邸を包囲する警官隊と、立て籠もる武装集団との睨み合いとなり、事態が膠着していた。
そんな状況下であるそこに、数機の自衛隊ヘリが到着する。
上空で待機するヘリ部隊の指揮官から警官隊の指揮をとる内藤 浩二警視正へと通信が入る。
「私は現場の指揮を執っている警視庁の内藤です。要件は?」
内藤が無線越しに尋ねると、少し間を置いて返答があった。
『私は陸上自衛隊の只の三等陸佐です。これから我々は首相官邸への突入を開始するので、内部の情報を教えていただきたい』
通信機越しに聞こえてくる声は酷く無機質で、一切感情を読み取ることが出来なかった。
内藤はそんな存在に若干の気後れを感じつつ、手元の資料を見ながら現在までの情報を伝える。
そして、酷く無機質な礼の言葉を聞いて少し間を置いてから自衛隊のヘリに目線を移すと、今まさにヘリからロープを使い官邸の屋上へ降下するマスクで顔を隠した自衛隊員達の姿を目の当たりにする。
屋上にも武装集団の一部が居たが、彼らは何かをする前に制圧されていた。
そして、建物の中からの銃声が聞こえてくる。
内藤は何が起こっているのか理解が追いつかなかった。
程なくして首相官邸の正面玄関から、人質となっていたSAT隊員達と共に、拘束した武装集団の構成員を連行する自衛隊員達が姿を現した。
内藤は自分たちではどうしようも出来なかった無力感と、膠着した状況を打破してくれた自衛隊の部隊に、それと同じくらいの畏敬の念を抱く。
「私が、陸上自衛隊特殊作戦群の只の三等陸佐です」
「…私は警視庁の内藤です。貴方方のおかげで状況を打開することが出来ました。感謝します」
「いや、それはこちらの台詞だ。貴方方警察が、武装集団の構成などの情報を教えてくれなければ、こんなにスムーズに制圧出来なかった。こちらの方こそ感謝する」
言葉を交わした二人の指揮官は、片方はマスクをしていて表情は読めないが、それでも友好的に硬い握手を交わすのであった。
同時刻、日本教育連合組織委員会本部に監禁されている、七瀬内務大臣を救出するための作戦が実行に移される。
こちらに派遣されていたSAT部隊は、地上と屋上からビル内へ突入して制圧を開始。そして、支援として派遣された特装団第三中隊第二小隊は、それに先駆け、ビルの正門で警官隊を威嚇している武装集団のトラックの排除を開始した。
トラックの武装集団構成員は、機銃で近づいてくる特装団を攻撃するが、機動性に圧倒され、一機に気を取られる内に他の機から攻撃されて制圧される。
そして、ビル内へといよいよSAT部隊が突入を開始した。
実のところ、このビルに立て籠もる武装集団は、一番規模の小さい集団であり、SAT部隊に数人の死者が出たものの、十数分の戦闘で制圧が完了、七瀬内務大臣の救出に成功する。
ことここにいたり、一番規模の大きい集団である皇居の武装集団を制圧するため、各所の部隊が行動を開始した。
防衛省を襲撃した武装集団は、警戒していた警務隊ならびに陸上自衛隊の救援部隊により早々に排除され、皇居から救出された皇族が一時的に避難している状況となり、市民団体も流石に戦闘後に、よりによって陛下がいるところへ向けて抗議行動はしなかったようである。(しなかったというか、しに行こうとしたら一般人が団体を囲んだ)
そして、皇居前で最後の戦闘が始まる。
皇宮警察も、多数の犠牲者を出しながら未だに侵入を許しておらず、応援の警官隊らもよく健闘していた。
しかし、既に限界も近く、武装集団の使うトラックから浴びせられる機銃の脅威もあり、苦戦を強いられていた。
しかも皇居の武装集団は、どこから入手したのか
既に皇居へ応援に来た特装団の機体にも被害が出ており、一機が大破し残りの3機は対MS誘導弾の脅威のため、下がらざるを得なかった。
「…このままじゃやられる。どうすれば良い…」
皇宮警察の指揮官がそう呟き、武装集団を睨みつける。
すると、突然武装集団のトラックが爆発した。
「な、何が起こった!?」
指揮官が理解する間もなく、武装集団のトラックは瞬く間に全て破壊され、武装集団も混乱する姿が見て取れる。
すると、近くのビルの陰から緑のまだら模様の服を着た集団が視界の片隅に映る。
「あれは……まさか」
指揮官の呟きに僅かに喜びの感情が混ざる。
武装集団もその姿に気づき、対応しようとするが、その隙を逃すほど皇宮警察は甘くない。
そして隙を伺っていた特装団の部隊も行動に移り、別方向から現れた特装団の別働隊と連携し、ロケット弾などを持った武装集団を集中的に制圧し、皇宮警察も救援の陸自部隊や警官隊と共に、武装集団へと攻撃に出た。
戦闘は30分にも及び、武装集団は近くのビルの中や建物の影に逃げ込み激しく抵抗したが、最終的に自衛隊の追加の増援や警察の応援が到着した事で戦意を喪失、生き残った全員が拘束された。
こうして、東京での動乱は幕を閉じたのである。
この事件の直後、東京湾にて一隻の貨物船が無許可で航行しているとの情報を得た海上保安庁は、偶然にも東京湾内で、最終航海を途中で中断していた巡視船つしまに対処を命じ、その貨物船の拿捕に成功、その結果がこの後の出来事に大きく関わって来ることに、この時誰もが予想していなかった。
この一連の動乱での被害。
警察官
118名死亡
62名負傷
パトカー12台大破
装甲車3台大破
皇宮警察
12名死亡
21名負傷
自衛隊
4名負傷
武装集団
81名死亡
34名負傷
28名拘束
市民団体
48名死亡
51名負傷
389名拘束
590名指名手配
一般人
14名死亡
28名負傷
2名行方不明