機動戦士ガンダムSEED〜日本国自衛隊〜   作:名無之助

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第四十一話・東京動乱 3

警視庁機動隊特殊装備行動団…通称 特装団の一個中隊8機が新宿駅へ到着したのは、出動命令を受けてから既に1時間が経った頃であった。

 

出動命令を受けてからすぐに出動した特装団だったが、市民団体からの妨害もあり、その制圧(・・)に時間をとられたのである。

 

団体関係者の拘束は応援の警官隊に任せてきたものの、100人程の団体をたった8機で制圧しなければならなかったため、時間がかかってしまった。

 

そして現場に到着した特装団がまず見たのは、大破し横転した警視庁銃器対策部隊の運用する装甲車両と、同じく横転し炎上する数台のパトカー。そして炎上する車両の周囲には、黒く焼けた焼死体や、血を流し倒れている警察官、巻き込まれた市民たちの姿であった。

 

「これは…ひどいな……」

 

新宿駅へ到着した特装団第2中隊8機は、その光景に唖然とし、隊長も余りの光景に息を呑む。

 

しかし、駅の構内から今だに続く銃声に気づいた隊長はいち早く我に帰り指示を出す。

 

「中隊各機、駅の構内から今だに銃声が聞こえている。機体のサイズ的に我々は内部への突入は不向きだ。よってこれより本部へ状況の報告並びに周囲の確保を行う。ただし、米倉と佐渡は機体から降りて内部の様子を探ってきてくれ、出来れば内部の警官と連絡をつけてくれると助かる」

 

「了解した」

 

「了解です…」

 

隊長は機体から降りた2人が新宿駅構内へ入って行くのを確認した後、本部へと通信を繋いだ。

 

「本部、こちら特装2-1新宿駅へ到着。駅の外部には武装集団は確認出来ません。現在構内より銃声を確認したため、隊員2名を偵察へ向かわせております。我が隊は機体サイズから内部への突入は不向きと考えられ、SATの投入を具申します」

 

『特装2-1、こちら本部。現在SATは首相官邸並びに国会議事堂方面へ展開中。待機していた部隊も七瀬大臣救出のため、日本教育連合組織委員会本部に展開中のため、其方へ回せる部隊の余裕がない。現在自衛隊の特殊部隊の出動を要請中…ちょっと待て……特装第2中隊へ新たな命令を伝達する。特装団第2中隊は一部戦力を練馬駐屯地方面へ向かわせ、市民団体から妨害を受けて立ち往生している陸自部隊と合流し、支援してください…陸自部隊は実弾しか装備しておらず、市民団体の排除に苦戦している模様。尚、応援の警官隊も向かっている』

 

「特装2-1了解」

 

本部との通信を終えた隊長は、中隊の自分の小隊から二機を練馬駐屯地方面へと向かわせ、残りは警戒態勢で待機するよう指示を出した。

 

この時彼は銃声が既に止んでいることに気づいてはいなかった。

 

ーー

 

駅構内へと入った特装団第2中隊の米倉と佐渡の2人は、銃声のする方へ警戒しながら進んで行く。

 

構内は銃撃戦の為か照明がところどころ破損し、ちらほらと市民や警官の死体も見られた。

 

そんな中、佐渡がふと視線を向けた先…柱の丁度影になるような場所で、放心したようにへたり込んでいる若い警察官を見つけた。

 

佐渡は米倉の肩を叩き、米倉と一緒にその警察官のところへ駆け寄る。

 

「おい、あんた大丈夫か!?」

 

「怪我はあるか?」

 

近寄ると、その警察官の只ならぬ様子に2人は慌てて声を掛ける。

 

「………あ、あなた方は…」

 

それまで放心していた警察官が米倉たちの方へ視線を向け、掠れた声で問う。

 

「俺は警視庁特殊装備行動団の佐渡、こっちは米倉だ。状況は聞いてる。あんたは?」

 

「僕は…新宿警察署地域課、新宿駅前交番の仁科と言います…。同僚の田中と上司の狩野警部と一緒に警備に当たってました…。皆…皆目の前で死んでしまった…警部も…僕の…僕のせいで…」

 

話すうちに仁科の目から涙が溢れ出し、止めどなく流れ始める。

 

佐渡と米倉はそれを見ているしか出来なかった。

 

少しして落ち着いたのか、仁科は米倉たちの駅構内の探索に同行することとなった。

 

「先程はお見苦しいところを見せてしまい、すいません」

 

そう恥ずかしそうに話す仁科に、2人は気にするなと声を掛け、銃声のする方へ進んで行く。

 

そして、3人は信じられない光景を目撃する。

 

 

「キエェェェアァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

「チェストォォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

老人2人が刀を手に、武装集団のアサルトライフルの銃弾を弾いていたのである。

 

しかも、数十人の武装集団の内、既に半分が制圧されており、更に、彼等老人2人の後ろには、市民と負傷した鉄道警察隊の警察官が、こちらはどこか虚ろな表情で老人2人を眺めている。

 

カオスな状況に3人がしばし呆然としていると、武装集団が弾切れを起こしたのか再装填をしようとした。

 

その時である。

 

「示現流、稲郷 利秋(とうごう りしゅう)推して参る!!!キエェェェア!!!」

 

「同じく、山口一刀流 徳田 新之助(とくだ しんのすけ)隙やりぃ!!!ドゥリャァァァァァァァァ!!!」

 

武装集団がその老人二人にボコボコにされるその光景を見たとある警官は後にこう語った。

 

「現代の兵器で武装した武装集団相手に無双する老人を見た瞬間、いつ自分は異世界に転生したんだろうと思った…そして…転生してなくてショックだった……自分で何を言って居るのか分か(ry…」

 

こうして、新宿駅に関しては、特装団と特殊部隊の出番は天元堂のあずきバーを買いにきただけの老人2人によって食いつぶされるのであった…。

 

新宿駅の武装集団はこうして鎮圧された。

 

 




徳田 新之助の刀は稲郷 利秋の持ってた予備の刀を借りました。


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