機動戦士ガンダムSEED〜日本国自衛隊〜   作:名無之助

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第四十三話・オーブ防衛線 後編

CE 71年 5月15日 午後21時 オーブへ向かう艦隊の姿があった。

 

日本国海上自衛隊のオーブ救援艦隊である。

 

その編成は以下の通り

 

第1機動艦群

 

旗艦 大鳳型航空母艦一番艦 大鳳

 

同 二番艦 天鳳

 

イージス巡洋艦 雲仙 日高

 

防空巡洋艦 最上型 二隻

 

イージス駆逐艦 二隻

 

汎用駆逐艦 七隻

 

艦艇合計 十五隻

ーー

 

第1護衛艦群

 

旗艦 龍驤型航空母艦 龍驤

 

イージス巡洋艦 阿蘇 六甲

 

防空巡洋艦 最上型 二隻

 

イージス駆逐艦 二隻

 

汎用駆逐艦 五隻

 

艦艇合計 十二隻

 

ーー

 

第二潜水艦隊

 

旗艦 改海竜型潜水艦 (艦載機搭載可能タイプ)

 

未改装型海竜型七隻

 

艦艇合計 八隻

 

ーー

 

オーブ救援艦隊の総数は、その数約三十五隻もの艦隊で有り、更に、陸上部隊の増援を搭載した輸送艦隊十八隻が後方におり、オーブの静止衛星軌道には航宙自衛隊の第三独立戦隊が待機していた。

 

そして、大西洋連邦オーブ侵攻艦隊は悪夢のような一夜を過ごすこととなる。

 

 

ーー

 

午後21時30分 オーブ救援艦隊旗艦 大鳳 艦橋

 

 

「司令、作戦開始地点です。敵艦隊はまだ此方を探知しておりません」

 

副官の言葉に、司令と呼ばれた壮年の男性はそちらへ視線を向けることなく、艦橋から見える海面を真っ直ぐに見つめながら無言で頷く。

 

そして、浅く息を吐くと、艦隊の全艦艇への通信回線を開いた。

 

この時点で、大西洋連邦軍のレーダーには未だに探知されない距離で有り、救援艦隊のレーダーでは大西洋連邦艦隊を捉えている状態である。

 

 

「全航空母艦は、所定の作戦要綱に、基づき第一航空戦闘団から第三航空戦闘団の発進を開始せよ。また、全艦艇へ達する、今作戦は同盟国の命運を左右する、極めて重要な作戦である!諸君が自衛官としてこれまで積み上げてきた研鑽は今、この時こそ真価を発揮するであろう…諸君が自衛官として、その力を最大限に発揮してくれる事を期待して、訓示とする」

 

艦隊司令から出された命令に添い、艦載機が次々と空母から飛び立つ。

 

その光景を眺めながら、司令は副官の言葉を待つ。

 

「司令、敵艦隊射程に収めました。また、敵艦隊も流石に気づいたようで、行動を始めています」

 

副官の告げた報告に、司令は無表情で頷く。

 

そして、命令を出す。

 

「全艦、対水上戦闘用意」

 

副官と艦長が復唱し、各僚艦へと伝達される。

 

「全艦、対水上戦闘用意良し!!!」

 

戦闘用意完了の報告が直ぐに入る。

 

司令は静かに、しかしはっきりとした口調で、号令をかける…その号令でどれほどの命を奪う事になるかが、一瞬頭を過るが、それは今は思考の彼方に追いやり、今は使命を果たすことのみに集中する。

 

「全艦ミサイル攻撃を開始せよ!!!」

 

 

第一機動艦群 イージス巡洋艦 雲仙 CIC

 

「旗艦より、対艦ミサイル攻撃を開始せよとの命令!」

 

艦隊旗艦より命令を受信すると同時に、艦長は即座にそれを実行に移すべく、命令を出す。

 

 

70式艦隊艦誘導弾(ハープーン)攻撃始め!!!」

 

70式艦隊艦誘導弾(ハープーン)攻撃、発射準備よし!!!」

 

発射準備を終え、トリガーを握る担当自衛官の手に汗が滲み、緊張で体がこわばる。それを見た水雷長は、その自衛官の肩に手を置き、力を抜くように出来るだけ穏やかに伝える。

 

そして、強張りが取れたのを確認し、最終号令を出す。

 

70式艦隊艦誘導弾(ハープーン)発射よーい……撃てぇーー!!!」

 

雲仙から対艦ミサイルが発射されると同時に、僚艦からも対艦ミサイルが発射される。

 

全ての艦が、4発ずつミサイルを発射し、敵艦隊へと向かっていく。

 

ーー

 

大西洋連邦オーブ侵攻艦隊は、突然の襲撃に混乱した。

 

「一体何が起きている!?」

 

昼間はアズラエルに役目を奪われていた、侵攻艦隊司令が怒鳴る声が聞こえる。

 

しかし、この場で正確に情報が分かるものなど、いるはずがなかった。

 

「分かりません!!!突然後方から多数のミサイルによる攻撃を受けました!!!既に最初のミサイル攻撃で四隻轟沈!!!三隻が大破し戦闘不能!!!現在第二波を探知し、迎撃中!!!」

 

「なんて事だ!!!おい!誰かあのボンクラ坊ちゃんとヤク中トリオ叩き起こしてこい!!!」

 

「「嫌です!!!」」

 

即答だった。

 

「おい新兵!貴様が起こしてこい!!!」

 

新任のオペレーターが艦隊司令に凄まれ、駆けていくのを眺めながら、侵攻艦隊旗艦の艦長は確信めいた予感がした。

 

(負けるかもしれないな…)

 

艦長は小さく呟くが、幸いそれを聞いてるものはいなかった。

 

侵攻艦隊は甚大な被害を出したが、体制を立て直し、反撃を行おうと艦載機を飛ばそうとしたが、その時、レーダーにいくつもの反応が現れる。

 

低空侵入した自衛隊の艦載機部隊による対艦ミサイル攻撃である。

 

「対空戦闘!!!迎撃急げ!!!」

 

「本艦は迎撃成功!!!ただし僚艦被害甚大!!!」

 

「巡洋艦オリオン轟沈!空母レンジャー大破、艦載機格納庫に火災発生し、総員退艦が発令された模様!!!」

 

「司令!オーブの上陸部隊橋頭堡が攻撃を受け、現在戦闘中!!!敵は日本のMS!我が方のMS部隊は圧倒されつつあり!!!航空支援を求めています!」

 

「後方の揚陸艦隊より、潜水艦による攻撃で被害甚大!!!また、我が方の潜水艦隊の反応消失しました!!!」

 

形勢は既に覆されていた。

 

そんな中、アズラエルが艦橋へと入ってくる。

 

「あーあー…僕が居ないと直ぐこれだ…アイツらを投入すればまあ何とかなるでしょう」

 

「そうですな…アズラエル様」

 

艦隊司令はそんな会話をするアズラエルと、いつのまにか居たその腰巾着のサザー…なんとか大佐に冷ややかな視線を送るが、彼らはそれに気づいた様子は無い。

 

そして、新型の3機のMSが昼間に次いで二回目の出撃をするのと同時に、侵攻艦隊を絶望させる光景が現れた。

 

軌道上から降下してきた航宙自衛隊第三独立戦隊の全艦艇が、上空から侵攻艦隊へ攻撃を仕掛けてきたのである。

 

それと同時に、オーブ軍とアークエンジェル以下アラスカの生き残りの部隊も攻勢に出てきたのだから、たまったものではない。

 

せっかく築いた橋頭堡は、日本の陸上自衛隊の上陸部隊と、オーブ軍MS部隊などに挟撃され、制空権は日本に奪われ、新型3機は黒い戦闘機4機と新たに現れた日本の第三独立戦隊のMSにボコボコにされ、もはや侵攻艦隊は戦意を失いかけていた。

 

「もはや…これまでのようですな…」

 

「何を言っているのです?まだ半分以上戦力が残っているのだから、後ろの日本艦隊だけはなんとしても叩いて貰いますよ?この僕の顔に泥を塗ってくれた落とし前をつけてもらわない……」

 

アズラエルがその先を言うことは出来なかった。

 

艦隊司令がアズラエルの眉間を銃で撃ち抜いたのである。

 

その状況についていけないでいるサザーランド大佐は、次の瞬間には兵らによって拘束され、大西洋連邦オーブ侵攻艦隊は降伏した。

 

なぜ艦隊司令がアズラエルを撃ったのか…それは、アズラエルにうんざりしていたのもあるが、実はそれ以外の理由がある。

 

司令の手の中に握られたメモととある情報が保存されたUSB。

 

アズラエルが艦橋に入る直前…日本側から秘匿回線でもたらされた情報

 

 

アズラエル財閥の研究施設の内部映像、そこに移されていたのは、薬物などの人体実験により変わり果てた少年少女達、そして、日本が掴んだアラスカの真実、大西洋連邦の作戦内容と、それを裏で主導していた人物の情報データ…それを見た司令は、倒れているアズラエルに対し、怒りを通り越した冷徹な眼差しを向けるのだった。

 

 

かくして…大西洋連邦本国でも、事態は動き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もしかしたら……読者の皆さんの反応次第で書き直しをするかもしれません。

そして今話の自衛隊はちょっと意地悪というか…

「反撃?残念ながらずっと俺のターン」

となってしまいました。

お知らせ。

アンケートを実施します。あと、完結までの流れについて自分の中で調整したいのでしばらく連載休止します。(多分12月か来年1月までには再開できるかと)

代わりにと言っては何ですが、以前から構想してた新連載みたいなのを出して行きたいと思います。




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