こちらは【後編】となっております、先に【前編、中編】をお読みいただければと思います。
全体を通してかなり長い物語となりますがよろしくお願いします。
【中編】にて幻想郷フェスティバルが終わり、プリズムリバー邸での打ち上げに誘われる稀神サグメ、夜には月へ帰らなければならなかったが月の民として月へ帰還するよりも、幻想郷で友達との繋がりを優先することを決めたサグメ
そんな彼女を応援する蓬莱山輝夜は『サグメを幻想郷に一日滞在させる許可』を月に連絡(脅し)してくれる事を約束してくれました。
一日自由になったサグメは友達のルーミア、物部布都、堀川雷鼓、そしてプリズムリバー三姉妹と共に打ち上げ会場であるプリズムリバー邸へと赴く事になります。
プリズムリバー邸に隠された秘密
そして八雲紫、彼女は何を想うのか
それでは始まります
痛みは消えない 胸の奥にいつも響いているけれど
夜風に震える小さな手で 愛する想いを手渡したい
遠く離れた貴方たちの心に 届きます様に
【プリズムリバー邸への道 霧の湖周辺 17:30】
人里で買い出しを済ませたサグメ達は打ち上げの会場であるプリズムリバー邸へと向かっていた。
七人は霧が掛かった森の中を歩いている。
ルーミア「7日~♪ なのか~♪」
物部布都「そ~なのか~♪」
ルナサ・プリズムリバー「そ~なのか~♪」
メルラン・プリズムリバー「そ~なのか~♪」
メルラン「7日~♪ なのか~♪ さんハイッ!」
布都、ルナサ、ルーミア「そーなのかー!」
ルーミア、布都、ルナサ、メルラン「わははー♪」
リリカ・プリズムリバー「えぇ…いつの間に布都さんと仲良くなったの…?」
堀川雷鼓「私達が買い出しをしてる時じゃないかしら、ふふっ♪ 楽しそうね♪」
リリカ「私達三人に買いに行かせて何してるんだろうと思ったら…布都さんノリが良い人なんですね、ちょっと意外かも」
雷鼓「そう? 布都さん結構グイグイ来るタイプの人よ?」
リリカ「へぇ~…ってまだ宴会もしてないのにあんなにテンション高くしちゃって大丈夫なんですか?」
雷鼓「大丈夫大丈夫♪ 宴会の前祝いって感じだもの♪」
リリカ「はぁ…宴会やる前に疲れなきゃ良いですけどね」
リリカ(あ、もしかしてサグメさんの事でかな…? 輝夜さんと雷鼓さんの話を思い返せば嬉しいってのは伝わるもんね…)
稀神サグメ「……」スタスタ
雷鼓「…? あら、サグメさん」
サグメ「…!」
雷鼓「さっきから黙っちゃってるけど何か心配事?」
サグメ「ふふっ…♪ そうではないよ、雷鼓」
サグメ「ただそうだな、まだ実感が湧かないんだ…私が月に直接連絡を取った訳では無いからかもしれないな」
サグメ「永遠亭ではない場所、月とは関係ない場所に一日居られる…しかも心を許せる友と語らい、酒を酌み交わす事が出来る」
リリカ、雷鼓「…」
サグメ「夢の様なんだ……私にとってはとても嬉しい事なのにこう…ルーミアや布都の様に嬉しさを体や言葉で表現出来ないのが少しもどかしくてな」
リリカ、雷鼓「……ぷっ…!」
サグメ「! う、うん?」
リリカ「ふふふっ! サグメさんって可愛い人なんですね♪ クールなのに友達想いって素敵だと思います」
サグメ「か、可愛い…!?」
雷鼓「あ、リリカ分かる? そこがサグメさんの魅力なのよねぇ♪」
サグメ「い、いや待ってくれ…! 私に魅力など…」
雷鼓「私はねぇ♪ いつもは寡黙で謙虚なサグメさんなんだけど心の中では私達と一緒に居て遊びたいっ! って想ってくれてるサグメさんが本当に好きなのよ~♪」
サグメ「ら、雷鼓…! 私はそんな…///」カアッ
リリカ「あ、顔赤いですよサグメさん」
雷鼓「ふふっ、サグメさん可愛い♪」
サグメ「か、からかわないでくれ…///」カアッ
リリカ「ふふっ…♪」
リリカ(あ、姉さん達が言ってたサグメさんのギャップってのが分かってしまったかも…)
リリカ「噂のサグメさんとこうやって実際に会って喋って思ったんですけど…サグメさんって結構頭の中でグルグル考えちゃうタイプの人ですよね?」
サグメ「それは……良く言われる」
サグメ(主にドレミーにだが)
リリカ「あぁやっぱり、私もそうだから良く分かるんですよ」
サグメ「…? そうなのか?」
リリカ「はい…ほらあの二人、私の姉さん達の事なんですけど、もう何と言うか…私が確りしてないとまともに人と話せなくなることが多々あるんです、ツッコミみたいなフォローをしてあげるだけなんですけどね、そのフォローの言葉を考えるのにグルグルするときがありまして…」
リリカ「ルナ姉はライブ終わりな事もあって今はあんなにハイテンションになってるんですけど本当は終始暗い…いや、大人しい性格なんです」
リリカ「大人しいのは良いことなんですけどその大人しさが激し過ぎると言うか…」
サグメ「激しい?」
リリカ「二日前の話なんですけど今日のフェスで演奏する曲の練習をしてたんです…練習終わって直ぐはあのぐらいのハイテンションなんですけどね…」
リリカ「私がふと目を離した隙に控え室の隅に踞って何かブツブツ呟いてるんですよ、私には見慣れた光景なので『あぁ、またやってるなぁ…』で済むんですけど私達の家じゃなくて周りに人がたくさんいたから放っておけなくてやめさせたんです…だって怖いじゃないですか、どんよりオーラ出しながら部屋の隅っこでブツブツ独り言なんて」
サグメ「…独り言とは何を?」
リリカ「『どうしたらリリカみたいに人気が出るのか…』とか『どうしたらメルランみたいにテンション高くして生きていけるのかなぁ…』とか『はぁ…鬱だわぁ…』とかです」
サグメ(鬱…?)
雷鼓「そこがルナサの良いところだって私は思っているんだけどね、良い方向に考えてみれば自分で自分の事を分析出来て打開策を見つけようとしているじゃない」
リリカ「そうなんですかねぇ…でもそれルナ姉に言わないで下さいよ? たぶん変な方向に捉えてしまうと思うので」
サグメ「ならば素直に明るくなってはどうか…と言えば良いのでは無いか?」
リリカ「それもダメですね、言われた事を歪曲して捉える事があるので…」
ルナサ「今日は7日じゃ無いけどー…?」
ルナサ、ルーミア、布都、メルラン「7日なのか~♪」
サグメ「…とてもそうは見えないのだが」
リリカ「練習終わりのちょっとした時間だけなんです、それを過ぎれば大人しくてたまに変な事を言ういつものルナ姉に戻ってくれるんです」
雷鼓「ルナサは演奏前と後のクールダウンが激しいのかもしれないわね」
サグメ「……それは音楽家として、か?」
雷鼓「ん~、私はそう感じるわね」
リリカ「ノリで済ませられればそれで良い…いや、良くは無いですね、はぁ…普通にしてれば何でもそつなくこなす真面目で頼りになる姉さんなんだけどなぁ」
サグメ「……」
リリカ「あ、メル姉の話もしますね…メル姉はルナ姉と同じで暗いときはルナ姉みたいに暗くなってしまうんですけど明るい時はとことん明るい性格なんです、メル姉も演奏した後になるんですよ」
サグメ「ルナサとは逆なのだな」
雷鼓「メルランは心のアップダウンが激しい感じよね♪」
リリカ「ですね、明るすぎてそのハイテンションに着いていけないんですよ、しかも突発的にやるもんだから余計に…」
サグメ「突発的…?」
リリカ「大きな声を出したりとか、口調を荒げていきなり『イェェエーイ!!』とか『ヤッフゥゥー!!』とか…後は気分が異常に高揚したり支離滅裂な言動をするんです、酷いときなんか『うひゃひゃひゃー!』とか『私は躁なんだー!』なんて言ったりしますからね」
サグメ「……」
サグメ(そう…? ……躁の事か?)
雷鼓「元気があるのは良いことじゃない? いつも元気だったら疲れちゃうし、落ち込む事も時には必要な事よ」
リリカ「それはそうなんですけど雷鼓さんみたいに前向きに考えてないと思うんですよねぇ、なんと言うかその場のノリで生きてるって感じがするんで…」
サグメ「……」
メルラン「宴会に~! 行きたいかぁ!?」
ルーミア、布都、ルナサ「おー!」
メルラン「飲み過ぎて最高にハイって奴になるぜぇ!! って思ってた時期もありました……」
布都、ルーミア「おー! って…えっ!?」
ルナサ「メルラン、テンション下がってるよ」
メルラン「! ……なーんちゃってぇ♪ ほらほら♪ 宴会でハジケまくってやるわよぉ!」
ルナサ「それでこそメルランね♪ はぁ…私もそのテンション欲しいわぁ…」
布都、ルーミア「お、おぉ…?」
サグメ(鬱…そして躁…? なんだろう…何か)
サグメ(ルナサとメルランは不安定だ、だがリリカは安定していてとてもしっかりしている印象を受けるな…彼女達は三姉妹、こんなにも差が出るものなのか? 外見は似ているが中身が似てなさすぎる様な…)
サグメ(……)
サグメ(こんなこと思ってはいけないな、彼女達から感じる何かの気の事もそうだが何も考えるな、今は雷鼓達と楽しむ事だけを考えれば良いのだからな…)
サグメ「メルランは貴方から聞いた通りだな」
リリカ「はいそうです、毎日あんな感じなんですよホント…」
雷鼓「あれもメルランの良いところよ♪ 他の人には無い長所だわ♪」
リリカ「そう思ってくれる人に出会えて私達は幸せですよ雷鼓さん」
サグメ「ふふっ…」
雷鼓「ふふっ♪ ん~、私が思うにルナサとメルランだけじゃ心配なのは分かるわ、でもあなたが居るからこそプリズムリバー三姉妹は成り立ってると思うのよ」
リリカ「! …大変なんですよ? 二人の制御…いや、面倒を見るのって」
雷鼓「でも嫌じゃないんでしょ?」
リリカ「まぁ……あんなんでも私の大切な二人の姉ですから…/// はい…///」カァ
雷鼓「ふふっ♪」
サグメ「ふっ…♪」
サグメは歩きながら目を閉じる
サグメ(三つで一つ、三位一体…昔聞いた話では三矢の教えという物にも例えられるか)
サグメ(一人欠けると成功する物もしなくなる、その悲しみにとらわれて虚無を感じてしまうかもしれない…彼女達の演奏がそれに当てはまるのだろう、三人揃わなければ成り立たなくなってしまう…)
サグメ(私も人数は違うが同じなのだろうな、ルーミア達、ドレミー、レイセン達、八意様達…もし彼女らが一人でも欠けてしまったら私の中で悲しみが生まれ、心に穴が開くだろう)
サグメ(……また何を考えているのだ私は、そんなこと考える暇があるな)パチッ
雷鼓「サ~グメさん!!」
サグメ「!?」ビクッ
雷鼓「また考え事してたの? んもう、何を考えちゃうのサグメさんは!」
サグメ「い、いや…別に大したことでは無い」
雷鼓「本当に?」
サグメ「も、もちろんだ」
雷鼓「……」ジーッ
サグメ「うっ…」
雷鼓「……サグメさん」
サグメ「う、うん?」
雷鼓「サグメさんはお酒、どのぐらい飲めるの?」
サグメ「…? な、何?」
雷鼓「お・さ・け♪ どのぐらいいける口なの?」
サグメ「そ、そうだな……あまり好んで飲まないが強い方ではあると思う」
雷鼓「そう、良かったわ♪ ふふっ♪」
雷鼓「はぁ~♪ 早くサグメさんやルーミアちゃん達と飲みたいわぁ、ふふっ♪」
サグメ「……」
サグメ(何故こう……考え込んでしまうのだろうか)
リリカ「…サグメさん」ヒソヒソ
サグメ「うん?」
リリカ「雷鼓さんヤバイんですよ」ヒソヒソ
サグメ「…何がだ?」
リリカ「何ってお酒の強さですよ、甘くみない方が良いです、本当に尋常じゃないですから」ヒソヒソ
リリカ「それからほろ酔い状態になってる雷鼓さんの近くにいかない方が良いですよ」ヒソヒソ
サグメ「何故?」
リリカ「雷鼓さんほろ酔いすると密着してくる癖があるんです、雷鼓さんの妖艶な雰囲気と甘い言葉で口説き落とされかけた女の人を何人か博麗神社の宴会で見たことがあるので」
サグメ「妖艶…?」
リリカ「本当に気を付けた方が良いですよマジで、私とルナ姉も落とされかけましたから」
サグメ「う、うん…!?」
雷鼓「お酒は飲んでも~?」
ルーミア、布都「呑まれるな~♪」
ルナサ、メルラン「飲み返せ~♪」
雷鼓、ルーミア、布都「…え?」
ルナサ、メルラン「え?」
リリカ「……今日割りと本気で飲み過ぎない様に監視しておこうかな」
サグメ「私からは何とも言えない…」
【霧の湖、プリズムリバー邸 18:00】
ルーミア「おぉ~…!」
布都「ぬっ…!? う、うおぉ……!?」
サグメ「立派な屋敷だな…!」
サグメ(建てられてから長い時が経過している様だな…周りの木々、そして霧が出ているが月の光に照らされ、怪しげな雰囲気が出ている)
サグメ(西洋風建築の二階建てか…テラス等は無い、無骨な作りだと言えるだろう)
サグメ(古い洋館…と例えた方が良いだろうか)
雷鼓「ふふっ、相変わらず雰囲気出てるわよねぇ♪」
サグメ(あ、雷鼓もそう思っていたのか)
サグメ「雷鼓はここに来たことが?」
雷鼓「えぇ、でも実は中に入るのは初めてなのよねぇ、演奏練習でも屋敷の前でやるからね♪」
ルーミア「ほー! そーなのかー」
雷鼓「そーなのだー♪」
雷鼓、ルーミア、サグメ、布都「わはー♪」
サグメ(抵抗が無くなっている私がいるのが実感できるな…ふふっ)ニコッ
ルーミア「でもなー、レミリアの館の近くにあったとはなー、全然気付かなかったのだ」
雷鼓「ここら辺一帯の霧…そして生い茂る木々が屋敷を上手く隠しちゃってるのね♪」
布都「ふ、雰囲気だっ…! だけじゃろ…!? そ、そうであろう!?」ブルブル
雷鼓、ルーミア、サグメ「…?」
雷鼓「布都さん何で震えてるの?」
布都「ふ、震えてなぞおらぬぞ! はっはっは!」ブルブル
ルーミア「震えまくってるのだ」ヒソヒソ
雷鼓「ブルブルしてるわね」ヒソヒソ
サグメ(布都、寒いのか?)
ルナサ「うんそうなんだよね、ルーミアの言う通り影薄いからね、私達の家」
リリカ「そういう事言わないの! 影薄いなんて言われて無いでしょ!」
リリカ「まったく…え~改めまして…♪ プリズムリバー邸にようこそ、無駄に広い屋敷だからゆっくり出来ると思いますよ♪」
メルラン「ふっ……違うわよリリカ、こうよ、こう」
リリカ「へ? 何が?」
メルラン「プリズムリバー邸にようこそ! ダイニング以外は掃除して無くて埃っぽいけどゆっくりしていってね! …よ!」
リリカ「それは真実だけども今言わなくて良いでしょうが!」
メルラン「嘘ついちゃいけないんだよ、リリカ」
リリカ「う…!? あぁんもう嘘とかそんなんじゃ無いでしょ、あのね! 雷鼓さん達は一応お客さんなの、分かるでしょ!?」
ルナサ「……友達に嘘つくのもどうなのかと思うじゃん」
リリカ「おっ…!? お、思うけどぉぉ…! 思うけどもねぇ…? これから宴会するのにテンション下がる事を言っちゃいけないの、親しき仲にも礼儀ありなの! 気を使うとかしてよ!」イラッ
リリカ「てか何で二人ともテンション下がってんの? さっきまでルーミアと布都さんとはしゃいでたじゃん、あの時の二人は何処行ったの?」
ルナサ、メルラン「捨ててきた」
リリカ「はぁぁぁ!? 何で捨てちゃうのよ!」
ルナサ「テンションにもメリハリがあるでしょ」
メルラン「メルランじゃなくてメリハリね? ずっとハイテンションだと宴会やる前に疲れちゃうでしょ?」
リリカ「ぐっ…! そう思ってサグメさんと雷鼓さんにはさっき言ったのにぃ…! 姉さん達にも聞かせてやればよかったよちくしょうめ!」
ルナサ「聞こえなかったもんね」
メルラン「私達に聞かせる必要があるかしら」
リリカ「ぬぁぁ!」ジタバタ
ルナサ、メルラン「ふははは♪」
雷鼓「あっはははっ…♪ 仲良いわねぇ♪」
サグメ「会場でもやっていたな、リリカ達なりの特殊な親睦の深め方なのだろうか」
ルーミア「そーなのかー?」
サグメ「そーな…! ……ルーミアすまない、これは私見なんだ」
ルーミア「でもしょっちゅうやってるから当たってると思うのだ」
サグメ「そ、そーなのかー?」
ルーミア「! そーなのだー♪」
サグメ、ルーミア「わはー♪」
ルーミア「わはは~♪ サグメからやってくれたのだ~♪ やったのだ~♪」
サグメ「ふふっ…♪ ルーミアが導いてくれたお陰だよ」
雷鼓「ふふっ♪ これが私達なりの親睦の深め方なのかもしれないわね♪」
サグメ「! そう…なのかもな、ふふっ」
布都「う、うむ! わ、我もそう思うぞ! わっはっはっは♪」フルフル
サグメ、ルーミア、雷鼓(まだ震えてる…)
リリカ「全くもう…さ、雷鼓さん達、ゆっくり寛いで行って下さいね」
ルナサ「これから宴会で大騒ぎするのにゆっくり寛ぐとかなん」
リリカ「ルナ姉マジで静かにして」
【プリズムリバー邸、エントランスホール】
プリズムリバー邸のエントランスホールは紅魔館には及ばないがそれなりの広さがある。
見上げるとシャンデリアが飾られており、床にはカーペットが敷かれ、それが二階へと続く二つの階段に伸びている。
壁際には棚があり、その棚の上には埃を被った絵や写真、壺等の様々な骨董品の類いが置かれていて、ソファやテーブルと言った家具も置いてある。
左側と右側に大きな両開きの扉が一つずつある。
ルーミア、雷鼓、サグメ「おぉ~…♪」
布都「ぬぅっ…!? うぅ…!」ブルブル
雷鼓「外で見てた時から思ってたけど中は広いのねぇ♪ ここでホリズムリバー四人で演奏の練習が出来るぐらいにね♪」
サグメ「味がある…とはこういう物を言うのだろうな、落ち着いた雰囲気でとても居心地が良い」
ルーミア「レミリアの家の玄関よりはちょっと狭いけどなー♪」
メルラン「…狭いって言われた」
ルナサ「狭い所って落ち着かない? 私は落ち着くんだけど」
リリカ「いちいち気にしないの、サグメさんは居心地が良いって言ってくれてるでしょ」
ルーミア「…何か悪いこと言っちゃったかー?」
リリカ「あぁ気にしなくても良いよルーミア、いつものちょっとしたボケだから」
メルラン「私まだボケる年齢じゃないわぁ!」
リリカ「メル姉も少し黙ってなさい!」
── ──
── ──
サグメ「…!?」ピクッ
サグメは周囲を見回す。
サグメ「…! ……?」キョロキョロ
サグメ(……何だ…? 今…何か…)
サグメ(……気のせい…か?)
サグメ(……?)
布都「ぬぅぅ…うぬぅ…!?」スッスッ
雷鼓「? 布都さん?」
ルーミア「さっきから何してるのだー?」
リリカ「あの~…布都さん? 何でこう…色んな方向に身構えてるんですか?」
メルラン「戦闘態勢の練習か何かですか?」
ルナサ「『でゅあ!』とか『へやっ!』とかセリフ喋った方が良いですか?」
リリカ「二人とも何でそれを今ここでやる必要があるのか説明してくれる? ねぇ」
布都「だ、だだっだだだっだから…! な、何でも無いとゆ、言うておろう…!?」プルプル
サグメ、ルーミア「?」
雷鼓「……!! …♪」ニッコリ
雷鼓「布~都さん♪」
布都「な、なななっ…! 何じゃ雷鼓殿ぉ!」
雷鼓「布都さん、もしかして怖いの~?」
布都「こぉっ!!? な、何を言うて…! こっこここ怖い訳がな」
ルーミア「そーなのばぁぁぁ!!」ガバッ
布都「うひゃぁぁぃ!!?」ビクッ
サグメ、リリカ、メルラン、ルナサ「!?」
雷鼓「あらやっぱり♪」
ルーミア「やってやったのだー♪」
布都「ぬぉぉぉ…お、オバケなど居らぬぅ…! 居らぬのだぁ…!」プルプル
布都「こ、怖くないぞぉ…! 怖くなど無いからなぁ…!」ビクビク
ルナサ「踞って震えてたら説得力無いですよ、布都さん」
サグメ「布都は霊の類いが苦手だったのか…」
雷鼓「布都さんの新たな魅力発見だわ♪ ふふっ♪」
ルーミア「幽霊怖いのかー♪」
布都「こ、怖くないなどないわぁ!」
ルーミア「オカルトのお菊さんは平気なのになー♪」
布都「お菊さんはお菊さんであろう!? そうであろう!?」
雷鼓「あら? 確か屠自古さん亡霊じゃ」
布都「と、屠自古は屠自古であるからのぅ!」
サグメ「幽霊とは違うが、リリカ達も騒霊という意味では霊の類いで」
布都「それとこれとは話が違うのじゃ!」
サグメ、ルーミア、雷鼓「…」
ルーミア「何に怖がってるのだ」ヒソヒソ
雷鼓「きっと『自分の頭の中で想像しているオバケ』が怖いのよ♪ 布都さんの場合白い布を被った何か…なら驚いてくれそうね♪ 古典的な驚かしにも弱そうよねぇ、お化け屋敷とか連れて行ったら布都さん気絶しちゃいそう♪」ヒソヒソ
サグメ「なるほど…基準が分かった気がするよ」
ルナサ「私達の家ってお化け屋敷そのものだもんね」
メルラン「雰囲気と私達の存在があるからね」
リリカ「雰囲気はともかく私達はお化けじゃないから…あ~…布都さん、ここ変な悪霊とかお化けとか出ないですから大丈夫ですよ」
布都「そ、そうか…! なら良いのじゃが…!」プルプル
ルーミア「……怖がってると霊の方から寄って来るって幽々子から聞いたことがあるのだ♪」
布都「い、要らんこと言うでないわぁ!」
ルーミア「わはは~♪」
雷鼓「ふふっ♪」
サグメ「ふっ…♪」
メルラン「てか『そーなのばぁ!』って良いわね、語呂が」
ルナサ「可愛いしね、今度私もやってみようかな」
メルラン「可愛いさアピール出来るなら私もやりたい」
リリカ「邪な気持ちでやらなくいいから、てか誰にやるつもりなの?」
ルナサ、メルラン「リリカ」
リリカ「私にやる必要、ある?」
ルナサ、メルラン「…」
リリカ「…」
ルナサ、メルラン「ふっ……ふふっ、ふへっ、ふへへっ……♪」ニタァ
リリカ「笑って誤魔化すの下手かな?」
リリカ(含みを持たせても何も考えて無いのが透けて見える…)
リリカ「はぁ~……あ、さぁ雷鼓さん達、こちらにどうぞ♪」スッ
リリカは屋敷の正面から見て右の扉へサグメ達を誘導した。
【プリズムリバー邸、ダイニングルーム】
ルーミア、布都「!! おぉ~…!」
サグメ「長い机…いや、テーブルだな」
雷鼓「素敵ね…♪ 西洋のテーブルはこんな感じなのね♪」
ルーミア「レミリアの家の物よりデカイ気がするのだー♪」
布都「は、初めて見たぞ…これもハイカラ文化の賜物なのか?」
サグメ(長すぎる気もするが…人が数十人は座れるな、それにこの部屋もかなり広い)
サグメ(リリカ達は三人で住んでいるらしいがこんなに長い物が必要なのか?)
ルナサ「メルラン、グラスとか出してきて」
メルラン「了解~♪」スッ
カチャッ カチャッ
リリカ「雷鼓さんたち適当に掛けてくださいね♪ ふぅ、この部屋で宴会をする日が来るとは…やっぱりこの部屋掃除しておいて正解だったね」
メルラン「ね、でもリリカが一番掃除サボっ」
リリカ「私が一番やってたでしょうが!」
ルナサ「まぁリリカには同意するわ、私は汚い所でご飯食べたくないし」
メルラン「それはルナ姉に同意するわね」
リリカ「だから掃除…いやもういいや……その話は…」グッタリ
ルナサ「そうよリリカ、宴会よ宴会♪ 楽しむわよ」
メルラン「サグメさんというビックゲストもいるしね」
リリカ「……うん、そうだね」チラッ
雷鼓「私サグメさんの隣が良いわ♪」スッ
サグメ「あ、あぁ」
ルーミア「じゃあ私も♪」
布都「では我も♪」
ルーミア、布都「……」
ルーミア、布都「…♪」ニッコリ
ルーミア「私が先に…!」
布都「我が先に…!」
サグメ「そんなことで争わなくても…」
ルーミア、布都「いや、でも…!」
雷鼓「ふふっ♪ あ、私は飲み終わるまでここから一歩も動かないわよ♪」
ルーミア、布都「えぇ~…」
サグメ(何故そこで頑固になるんだ雷鼓)
ルナサ、メルラン、リリカ「……♪」ニコッ
リリカ「ふふふっ♪ ほんと久しぶりだよね、パーティーなんて何十年ぶりかしら♪」
ルナサ、メルラン、リリカ「……?」
ルナサ「……パーティー…?」
メルラン「買ってきたの日本酒とかじゃん、これ宴会だから、パーティー……ならワイン……とか…」
ルナサ「ワインならその戸棚……あれ……?」
リリカ「あるわけないでしょ…だってもう……」
ルナサ、メルラン、リリカ「……」
ルナサ、メルラン、リリカ「…?」
サグメ「では先にルーミアが座っ……うん?」
ルーミア、布都「お?」
雷鼓「…? あら…ルナサ、メルラン、リリカ?」
ルナサ、メルラン、リリカ「!!」ハッ
雷鼓「三人ともどうしたの? 早くこっちで飲みましょ?」
ルナサ、メルラン「う、うん…」
サグメ「…? 大丈夫か?」
リリカ「は、はい、なんとも…ないですよ…?」
雷鼓、ルーミア、布都、サグメ「…?」
サグメ(一瞬三人とも目に光が無いように見えたが…本当に大丈)
リリカ「…! ほ、ほら! 無駄話なら飲みながらでも出来るでしょ! 今日はパーっと飲むわよ!」
ルナサ「! はいは~い! ではこのルナサが乾杯の音頭を取らせていただきまーす!」
メルラン「あっ! ルナ姉ズルい! いつもそうじゃん!」
ルナサ「こういうのは長女の特権でしょ♪ ふっふっふっ♪」
メルラン「あ~あ…またこれだよ……こういうのが積み重なるから早々に躁の気が出るんだよ」
ルナサ「そんなこと言うんだったら私の鬱の気は長女であることからくるストレスの賜物で」
リリカ「宴会前に気が滅入る話は辞めなさーい!」
雷鼓「ふふふっ…♪」クスッ
ルーミア「わはは~♪」
布都「はははっ♪」
サグメ「……ふっ♪」ニコッ
サグメ(杞憂…か)
そして…
リリカ「え~それでは! 第一回幻想郷フェスティバルの成功、稀神サグメさんと物部布都さんとの出会いを祝しまして~…!」
ルナサ「リリカに音頭役を取られた」
メルラン「リリカ、私やる気はあったんだけど体が着いていかなく」
リリカ「ルナ姉が『やっぱり自信ない』とか言い出したからでしょうがぁ! …あっ…! そ、それではー!」
七人「乾杯!!」カァン
幻想郷フェスティバルの打ち上げ…飲み、食い、歌い…七人の賑やかで小さな規模の宴会が始まった。
フェスの成功を祝う為の物だったがプリズムリバー三姉妹はサグメと布都に出会えた事もお祝いとしてくれた。
そして時は二時間後……宴もたけなわ…
【プリズムリバー邸 ダイニングルーム 20:00】
サグメ(し、しまった…リリカに言われたことを忘れていた…!)
雷鼓「サ・グ・メさん♪」ススッ
サグメ「う…!」ゾクッ
サグメ「ら、雷鼓! 何故私の腰に手を回すんだ…!」
雷鼓「う~ん♪ 私そんなことしてる~?」
サグメ「いや、現に今こうやって…うぐっ…!?」グイッ
サグメ(だ、抱き寄せられた…)
雷鼓「そんなことよりサグメさん♪ 私今日凄く嬉しいのよ、サグメさんとずうっと一緒にいられるんだもの♪」
サグメ「それは今日一日だけで…」
雷鼓「んもぉ♪ そんな細かい事は気にしないの♪」ズイッ
サグメ(か、顔が近いぞ…! それと顔が火照っていてなんだか…)
雷鼓「サグメさん顔、綺麗ね…♪ 何でこんなに綺麗なの? …あっ! 髪、後ろで結んでいるのね♪ ふふっ、可愛い…♪ んふっ、うふふふっ♪」スッ
雷鼓はサグメの顔に自分の顔を近付け、耳元で囁いた。
雷鼓「この髪ほどいたらサグメさんの可愛いと・こ・ろ…♪ もっと見れちゃうかしら、ふふっ♪」
サグメ「!!?」ゾクゾク
サグメ(くっ…!? 何なんだ…! 何なんだこの不思議で艶かしい感覚は!!)
サグメ(私達は同姓だぞ雷鼓! いや、確かに私はドレミーに『サグメさんは男性っぽい雰囲気を纏ってますよね』とは言われたことがあるが私は女だ、男ではないんだ! そして何故体を触るんだ雷鼓っ…! ほろ酔いでこれなのか…!? 泥酔したら一体どうなるというんだ…!)
サグメ(それとこういうのは普通女が男にやるものではないのか!? こう…なんだ…そういう雰囲気の時に…その…)
サグメ(…!? なっ、何を考えているんだ私は! そうではない、そういう話は私の中ではしてないんだ稀神サグメ! 雷鼓が色っぽいだとかよっ…余計な事は考え…/// るな…///)カァッ
雷鼓「あら、サグメさん顔が真っ赤よぉ…♪ 飲みすぎちゃった…? もしかして熱でもあるの?」スッ
サグメ(また何故顔を近付ける…!)
雷鼓「う~ん手じゃ分からないわねぇ、おでことおでこを合わせて、ね…? ふふっ、勢い余って唇と唇が触れちゃったら…ごめんなさいね♪」
サグメ(なっ、何ぃ!?)
雷鼓「ん~…♪」ススッ
サグメ(おでこではなく唇を突き出しているではないか雷鼓ぉ!)
雷鼓「んふふっ♪」
サグメ(ま、まずい…! こ、これ以上は…///)ドキッ
サグメ(雷鼓や、やめっ…! 唇が当たっ…!?)
雷鼓「ん~…♪」ススッ
リリカ「…」スッ
ピトッ
雷鼓「きゃっ! あぁん、リリカ…♪」
サグメ「!? り、リリカ…」
リリカはサグメと雷鼓の唇が触れ合う前に雷鼓の頬へ冷たいグラスを軽く当てた
リリカ「雷鼓さん、さっきからルーミア達が呼んでますよ」
雷鼓「ん~?」チラッ
ルーミア「わひゃ~♪ 雷鼓ぉ~♪」フラフラ
布都「りゃいこ殿~♪ 今一度ぉ~乾杯の音頭を~頼もぉ~♪」フラフラ
メルラン、ルナサ「あっひゃっひゃ~♪ 太鼓持って来~い♪」ケラケラ
雷鼓「…んふっ、もうちょっとだったのにぃ~♪ しょ~がないわねぇ~♪」スッ
リリカ(…もうちょっとって)
雷鼓「サグメさん、また後でね♪」
サグメ「…えっ…!?」
雷鼓「はいは~い♪ 堀川雷鼓、始原のビートを奏でるわよぉ~♪」スタスタ
イェーイ♪
サグメ「…ふぅ……た、助かった…ありがとうリリカ」
リリカ「どういたしまして…♪ でも私言ったじゃないですか、ほろ酔い雷鼓さんには気を付けた方が良いって」
サグメ「うっ…! し、しかし雷鼓があんな妖艶な…」
リリカ「まぁ想像出来ないですよね、雷鼓さんが酔った所初めてみたんでしょうから」
サグメ「あぁ、驚いたよ…」
リリカ「ふふっ♪ 私が止めてなかったら今頃は…♪」
サグメ「そ、それは…/// ううっ…///」カアッ
【サグメとリリカ】
雷鼓「ビートを刻むぅ~♪」
ルーミア、布都「ノッリノリで~♪」
メルラン「燃え尽きる程の~♪」
ルナサ「ハートでぇ~♪」
メルラン、ルナサ「ひゃっひゃっひゃ~♪」ケラケラ
サグメとリリカが座っている席から離れた場所で楽器の演奏と歌を歌っている。
リリカ「姉さんたち羽目を外し過ぎなんですよねぇ…雷鼓さんはまだ落ち着いてますがルーミアと布都さんはべろんべろんで…ノリがいいのは良いことだとは思いますけど」
サグメ「ふっ…♪ そうだな」
サグメ(楽しそうに歌うな…♪ 見ているだけで私も楽しいよ、皆)
リリカ「ふふっ…♪ そういえばサグメさん、お酒強いんですね」
サグメ「まだ三杯目なのだが、そう言うリリカも強そうだ」
リリカ「三杯? あれ、そんなに飲んでなかったんですね、私なんて十二杯目なのに」
リリカは手に収まるサイズのグラスを片手に言う
サグメ「!? 十二杯目…?」
リリカ「はい、あぁ言わなかったんですけど私って昔から全然酔わないんですよ、何杯飲んでも」
サグメ「酔わない…?」
サグメ(この酒、それなりに濃い物だ…それを十二杯飲んで平然としているのか、雷鼓は五杯ぐらいで妖艶になっていた筈…)
リリカ「不思議なんですよね、姉さん達見たいにべろんべろんになっても良い筈なのに」
サグメ「…それは長所なのではないか? 酒そのものに飲まれないのは良いことだと思う」
リリカ「ん~、でも私もあんな風に酔ってみたいと思った事もあるんですよ」
サグメ「何故だ?」
リリカ「ほら…私だけずっと素面なもんですからあの二人が酔った時に私が介抱しなきゃならないじゃないですか、面倒くさいですけど仕方ないですしね」
サグメ「…」
リリカ「たまには私も介抱される側になってみたいですよ、ふふっ、なんてね♪」
サグメ「なるほどな…」
サグメ(……)
サグメ(昔から酔わない…この口振りからするに酒を最初に口にした時から分かった事なのだろうか、私がメルラン、ルナサを不安定だと思った事と関係があるのか…? リリカは安定し過ぎているとも思えてきたな…何か関わりはあるのだろうか)
サグメ(…一度考えるのを辞めたのにも関わらず気になってしまうのは私の悪い癖だが、他にも聞いてみるか)
サグメ「話は変わるが、リリカ達は楽器を手を使わずに演奏していたな、あれはどうやっているんだ?」
リリカ「あぁ、それ私たち三姉妹共通の能力なんですよ『手足を使わずに楽器を演奏する程度の能力』です、幻想郷縁起とやらを書いている阿求さんって人によると霊体から音が出ているとか言われたんです、ピンと来なかったんですよね、確かにポルターガイストと呼ばれている私達がラップ音を出せる事は知ってますけどちゃんと演奏してるんです『音の幽霊を操ってるのでは?』とも言われましたけど何のことやらです」
リリカ「でも実は最近楽器そのものが無くても演奏…音を奏でられる事に気付いちゃったんです、私だけしか気付いてないですけど…あっ、これ姉さん達には秘密にしてくださいね」
サグメ「そうなのか、音を出す…いや、楽器は何時から嗜んでいるんだ?」
リリカ「楽器ですか? …………」
サグメ「…?」
リリカ「…う~ん…? あれ、思い出せない…」
サグメ(思い出せない…?)
リリカ「……楽器なんて使ってたっけ…何で私達楽器を使ってるの…そもそもそんなに上手くな…」ブツブツ
サグメ「? リリカ?」
リリカ「!! さ、サグメさん…」
サグメ「大丈夫か…?」
リリカ「はい…あ、えぇとすいません、思い出せない…ですね」
サグメ「…」
サグメ(何故そんなに悲しい表情をするのだろう…)
リリカ「…あ、えっと能力の話に戻しますね」
リリカ「私達三姉妹一人一人の能力もあるんですよ、ルナサ姉さんは『鬱の音を演奏する程度の能力』メルラン姉さんは『躁の音を演奏する程度の能力』そして私は『幻想の音を演奏する程度の能力』ですね」
サグメ「…」
リリカ「姉さん達には『リリカにはソロライブがあるから~』とか『リリカにはソロライブしかないんだぁ…』とかまぁ冗談で言われるんですがソロライブだと良い演奏は出来ないんです、姉さん達の鬱と躁の感情の起伏のある音に残された想いの音を私が奏でることで最高のメロディーになるんです」
サグメ「鬱と躁の音…そして幻想の音…」
サグメ(鬱と躁の音はルナサ、メルランから奏でられ、それが彼女達の性格にも現れているのが見て取れる、リリカからも説明された通りだ…だがリリカは性格に現れていない幻想の音…)
リリカ「ソロライブしたい気分になることもまぁあるんですけどやっぱり三人で一人前なんだなぁって思ってるんです、色々と文句も出ちゃいますけどね」
サグメ「…それが三姉妹という物だと私は思う、血の繋がりもあるが心と特技が同一だと繋がりはもっと深く、濃くなると思う」
リリカ「!」
サグメ「貴方達の関係が羨ましいよ、リリカ」ニコッ
リリカ「っ…!? そ、そうですか…/// あ、ありがとうございます…///」カァッ
サグメ「…?」
リリカ(そ、そんな台詞を堂々と…/// これがギャップ…? サグメさんも雷鼓さん並みに落として来るタイプなのかしら…///)
サグメ「…」
サグメ(リリカの話を聞いて思ってしまった事が一つある…私はルナサとメルランの中身、心が不安定、リリカは安定していてしっかりものだと思っていたのだが)
サグメ(ルナサとメルランの視点から見てみればリリカは不安定のそれに当てはまるのではないか…安定し過ぎていることが逆に不安定なのではないか…と)
サグメ(幻想の音を操る事もそうだ、姉二人を補う様に得た能力…幻想という名の存在しない音…それを何故奏でら)
リリカ「…あっ! サグメさん、思い出せないで思い出した事があるんですけど」
サグメ「! 何だ?」
リリカ「冥界って知ってますか?」
サグメ「冥界…罪の無い死者が転生、或いは成仏するまでの間幽霊として過ごす世界だったか、亡霊姫が住んでいると聞く」
サグメ(その亡霊姫が月に忍び込んだ事があったと豊姫が言っていたな、酒を盗まれたとか…)
リリカ「そうです、その世界であったことなんですけど思い出せないことが一つあって」
リリカ「私と姉さん達、三人で初めて冥界に行くことになった理由なんです」
サグメ「理由?」
リリカ「行く必要がないはずなのに行くことになって、その行くことにした…というか『行かなくちゃ』って私達に思わせた理由…それが思い出せないんですよ」
サグメ「? 三人揃って忘れているということか?」
リリカ「……たぶんそうです、あとその事に関して閻魔様に怖い顔されたんですけどそれも気になってるんですよ、何故あの閻魔様に怖い顔されたんだろうとか、何で冥界に行ったんだろうとか…全部です」
サグメ(閻魔…? 噂に聞く白黒つける閻魔か…冥界との接点を見つけるなら死者絡みの事になるのか…? だがその閻魔の事と冥界に行くことになった理由は関係ないだろう、行った後に怖い顔をされた…行く前に何かあるとしたら…)
サグメ「リリカ、その冥界に行く前にしていた事は忘れてるのか?」
リリカ「行く前…?」
サグメ「行く理由を作る前だ、その時に姉妹三人で何をしていたのかは覚えているか?」
リリカ「ん~…その時は普通に三人で楽器を演奏していて、それで……」
サグメ「…」
リリカ「あの時…? …三人……? 三人で演奏隊を結成して……うん、だから結成したの……」ブツブツ
リリカ「……」
リリカ「…音を聞かせてあげたいって私が…」ブツブツ
サグメ「? リリカ、大丈」
リリカ~!
サグメ、リリカ「!」
ルナサ「ちょっとこっち~♪ こっち来なしゃいよひっひっひ~♪」フラフラ
メルラン「演奏しゅるのよリリカぁ~! …しなくてもべちゅにいいんだけどしゃぁ~♪」フラフラ
雷鼓「リリカ、お願~い♪」
ルーミア、布都「わっひゃっひゃ~♪」ケラケラ
リリカ「あっ…は、はーい…!」
サグメ(さっきより酔っているな…皆)
サグメ「リリカ、大丈夫か?」
リリカ「え? …あぁはい、だ、大丈夫です」
サグメ「…すまなかったなリリカ、変なことを聞いてしまって」
リリカ「あぁ良いんですよ、たまに気になるってだけですから、忘れるぐらいのことだから重要って訳でも無いでしょうし」
サグメ「…」
リリカ「それよりもサグメさん、顔、凄く赤いですよ」
サグメ「うん? 顔?」
リリカ「私と話しているとき結構飲んでましたもん、お酒」
サグメ「…!? うっ…」クラッ
サグメ(そう言われてみれば話を肴に酒が進んでいた様な…しつこく色々と聞こうとしていたのはそのせいか…? ……うっ…! す、少し気分が…)
リリカ「…夜風に当たって来たらどうですか? 雷鼓さん達には私から言っておきますから」
サグメ「あ、あぁ…すまない」
リリカ「では……はいはい、私の音が必要なんですよね、奏でさせていただきますよ♪」スッ
マタセタナ! イェーイ!
サグメ「……気を利かせてしまったな」
サグメ(雷鼓達には悪いが、少し席を外すとしよう)スッ
ガチャッ
【─リズムリバー邸 エントランスホール】
サグメは静かに扉を閉め、エントランスホールに出た
サグメ「…」
サグメ「ふぅ…」
サグメ(私は会話をしながらだと酒が進む様だ…気を付けなければ)
サグメ(ここに来なければ分からなかっただろう、月では一人で飲むことが多い…喋りながら飲む事などしたことがない)
サグメ(…)
サグメ(……)キョロキョロ
サグメ(…)
エントランスホールは静寂に包まれている
サグメ(扉一枚しか隔てていないのに随分と静かだ)
サグメ(……しかし本当に古い屋敷だな…)スッ
サグメ(……)スタスタ
サグメ(棚の上…随分と古い、骨董品と呼ばれる物だろう)
サグメは棚に置かれている物を見ながら歩く
サグメ(……この棚、食器、壺、絵画…全てに埃が積もっている、それも古さを際立たせているのだろう)
サグメ(確かダイニング以外を掃除していないとメルランが言っていたな、三人でここに住んでいて埃っぽいとは思わないのだろうか)
サグメ(…私が気になるだけか? リリカ達は気にならな……うん?)
サグメ(写真立て…? これだけ小綺麗で埃を被ってないな、最近置かれた物なのか?)
サグメ(プリズムリバー邸を背にリリカ、メルラン、ルナサが楽器を弾いている写真、これは昼に撮影を…? 先程私達が見たこことは雰囲気がかなり違っ…)
サグメ(……)
サグメ(これを撮影したのは誰だ?)
サグメ(リリカ達が自分で撮ったのか? 演奏をしていて集中したいであろう時にするだろうか…いや、雷鼓か他の音楽家の誰かが撮った可能性もあるか)
サグメ(……また何を考え込んでいるのだ私は、深く考える必要のないものを一々気にしてどうする)
サグメ(だがプリズムリバー邸に入った時のあの感覚…あれは一体)
サグメ(……)
サグメ(…駄目だな、本格的に酔いが回っているようだ)
サグメ(早く覚まして来よう)スッ
【─リ─ムリバー邸 外】
サグメ「はぁ、んんっ…」
サグメ「霧、晴れたのだな…良い月夜だ」
サグメ「……」
サグメ「月、か…」
サグメ(今地上で見えている月に私は住んでいる…と言っても裏側、月に結界を張った内側にあるから見えず、決められた道筋で進まなければ辿り着く事すら出来ない)
サグメ(そんな遠い所からワープ装置を使っているとは言え、私は自分の意思でここ幻想郷に来ている、大切な繋がりを持てた友に会うために…)
サグメ(……昔の私が今の私を見たらどう思うだろうか、穢れに穢れた地上に嫌悪したあの時の私、月夜見様の言明に賛同した時の私、月へ渡った時に喜びに浸っていた時の私…)
サグメ(……)
サグメ(私は地上が穢れているなんて今は思っていない、それは私の友…繋がりを持てたルーミア、雷鼓、布都…リリカ達、その他にも短い期間ではあるが地上で繋がりを持てた者達…その者達が穢れを生んでいると思ったことも穢れていると思った事も一度も無い)
サグメ(それに地上に住む者全てが穢れていると言うのなら恩師である八意様、輝夜や鈴仙、清蘭や鈴瑚も穢れていることになるが豊姫、依姫は何も言わず、罰せず、穢れていると思っている筈の地上に降り立ってまで大切な恩師たちの元へ会いに来ている…私と同じ想い、私と同じ感情、そして同じ意思…)
サグメ(……)
サグメ(穢れとは一体何だ?)
サグメ(月夜見様にこの事を問えば『それは貴女が穢れに触れた証拠』と答えを出すだろうか)
サグメ(……八意様、貴方なら…)
サグメ(……)
サグメ(…!)ハッ
サグメ(…今ここに雷鼓がいたら『また考え事をしているの?』と言われてしまうだろうな、ルーミアと布都なら何と言うだろうか、ふふっ…♪)
サグメ「…」
サグメ(酔いも覚めた…戻ろう、私が心から居たい場所に)スッ
サグメ(…)チラッ
サグメは振り返り、もう一度月を見上げる
サグメ(しかし輝夜、八意様を通して月の民の上層部に話をつけておくと言ってくれたが…一体何を言ったのだろうか)
サグメ(触らぬ神に祟りなし…八意様と輝夜を信じよう)スッ
キィィィ…! バタン…!
【─リ──リバー邸 エントランスホール】
サグメ「……?」
サグメ「…」キョロキョロ
サグメ「……」
サグメ(何だろう、何か…)
サグメ(……気のせいか)スッ
サグメ「…」スタスタ
私はダイニングルームへの扉の前に立ち、取っ手に手を掛けた
サグメ(私だけ酔いが覚めているが、皆はもう出来上がってしまっているかな、ふっ…♪)スッ
ガチッ…!
サグメ「…?」ググッ
サグメ「何故扉が閉まっ…」ググッ
ガチッガチッと音が鳴り響く、扉を引いたり押したりしたが何故か開かない。
サグメ「っ…!?」
サグメ「ルーミア! 雷鼓! 布都…! 私だ、鍵を掛けたなら開け……!?」
サグメ(この扉鍵穴が無い…!? いや、大きな屋敷とは言え普通食事室に鍵なぞ掛けないだろう、何故開かなくなっている…)
サグメ「リリカ! メルラン! ルナサ…! ルーミア、雷鼓、布都…! 返事をしてくれ!」
扉の奥からは声は返って来なかった
サグメ「こ、これは一体…」
サグメ「何がどうなっ……うっ!?」キーン
…… ……
…… ……
サグメ「あっ…頭にっ…! こ、これはっ…!」プルプル
サグメ(この感覚、ここに入って来たときの物…!? い、いやそうでは…!? …声? !!)
永遠の時の中で 眠りについた幻想
始原の雷 古の風と水 煌めきの闇
その穢れぬ心で 感受した月の欠片
???「あなたはここに来るべきじゃなかったかもね」
サグメ「!!?」ゾクッ
トサッ…!
???「あっ、驚かせちゃった? ごめんね」スッ
???「腰、抜かしちゃったかな? 立てる?」
サグメ(こ、この者は一体…!? 気配もなくいきなり私の目の前に現れて…い、いやな、何が…)
サグメ「…! …!?」フルフル
???「え、え~っと…混乱してる? かな?」
???「もう、人の前に現れるなんて本当はしたくないって言ったのに…あれ、あなたって人じゃないんだったわね、私も…いや私は人…のような人ではないような?」キョトン
サグメ「……」
???「! あ、ごめんね♪ はい立って!」スッ
サグメ「!」スッ
私は腕を掴まれ、立たされた
???「ふふっ♪ 翼があるから大きく見えるのね♪」
サグメ「……い、いや」
???「あ! やっと喋ってくれたね♪」
サグメ「!? ……」フルフル
???「…? さっきから面食らってポカーンってしてるけど、あなた大丈夫?」
サグメ「大丈夫な訳がないだろう!」
???「!?」ビクッ
サグメ「酔いを覚ましに外へ出ただけなのに友がいる部屋に戻ろうとしたら扉が開かず! 友へ声を掛けた途端に頭に謎の声が響いたと思ったら私の目の前に私の知らない者が突然現れた! 驚かない方がどうかしているだろう!」
???「お、おぉ…」
サグメ「まだ動揺しているよ、貴方のせいでな…!」フルフル
???「……」
???「な、なによぉ全然無口じゃないじゃん…感情的だし無意識に感知はしているし…本当にあの天探女なの…?」ブツブツ
サグメ「…? 何か言っ」
???「あぁごめんね? こっちの話♪ えっへへへ♪」ニコニコ
サグメ「……それより教えてほしい…この屋敷はどうなっている、さっきの声とここに来るべきじゃなかったとはどういう意味なんだ? それに貴方は一体…? 私の友たちは一体何処に」
???「あなたの質問には答えられる物と、答えられない物がある」
サグメ「!」
???「私にはあなたに教えないといけないものがあるけど本当は知っていてほしくないものがある」
サグメ「…?」
???「まず一つ目、ここはプリズムリバー邸であってプリズムリバー邸ではない」
サグメ「!?」
【??????? エントランスホール】
サグメ「ど、どういう…」
???「夢の中の夢、眠りについたまま目覚めない場所、夢幻の彼方、幻想の中の幻想」
???「存在してほしかった存在、存在を望まれなかった場所、でもプリズムリバー邸であることに代わりはないの」
???「……言ってしまえばプリズムリバー邸がもう一つ存在しているってこと」
サグメ「い、意味が…」
???「存在している意味を考えちゃいけないの、それを望まれていないから」
サグメ「望まれていない? 誰にだ?」
???「…」
???「……」
サグメ「……?」
サグメ(答えられない…のか?)
サグメ「…先程の声は?」
???「それは私、あなたがこの屋敷に入った時にも声のような物が聞こえた…若しく何か感じたんだよね?」
サグメ「! あぁ」
???「あの声は私じゃない、けどあなた以外の人にも声は聞こえるようになっていたけど聞こえていなかった、届かなかった…二回目の時はあなたしかいなかったからちゃんと聞こえる様に私が自分を自分で調節したの、あっ! あなたが元のプリズムリバー邸に入った時からあなたの事は見てたよ♪」
サグメ「…?」
???「でも一回目の声はあなただけにしか聞こえなかった、それはあなたが『月で暮らしている月の人』だから…聞こえてはいけない歌声が聞こえてしまった」
サグメ「!?」
???「穢れは概念、概念は穢れ…似た者同士の存在…あなた達月の人は過敏に反応してしまうんでしょ? その穢れに」
サグメ「!!」ピクッ
サグメ「穢れは、概念……?」
???「……」
サグメ(そうでないと考える者もいるが間違ってはいない…のか? しかし何故この者は私が月の民だと知っているのだろう…いや、これは今聞くべき事ではないな)
サグメ「…穢れが答えなのか?」
???「そうだよ、あなたがここに来てしまった理由はそれなの」
サグメ「……だがここに来るべきではなかった、あなたは私にそう言ったな」
???「うん」
サグメ「何故だ?」
???「さっきも言ったけどあなたが月の人で穢れに過敏であること…そして知ってほしいけど、本当は教えたくない秘密がこの屋敷にあるから」
サグメ「…秘密?」
???「それ自体が『ここが望まれていない場所』の理由になるの」
サグメ「…!」
サグメ「……」
サグメ「さっきから質問の答えになっていないな」
???「うん…でも答えを表に出しちゃいけないの、答えを出すことを望まれていないから」
サグメ「……正解を出すには難しすぎるな」
???「うん、そうだね」
サグメ、???「……」
???「……でも」
サグメ「?」
???「でもその答え、秘密をあなたに教えたがっている人がいる、私はそれのお手伝いをするの、だからあなたの前に私は現れた」
サグメ「!」
???「秘密、知りたかったら私に着いてきて♪ 私があなたを導くから」
サグメ「ま、待ってくれ! だからそれを望まれていないのではないのか?」
???「そうだけどここの秘密を探ってもらわないとあなたはここから出られないし、あなたが言っていた友達にも会えない」
サグメ「っ!?」
???「……ごめん、わがままだよね、でもそうしないといけないの、私も誰かさんと同じ気持ちだから」
サグメ「…? それは…?」
???「望まれてないけれど、その望みを断ち切ってまで分かってほしいっていう想い、気持ち…秘密を追えばそれが分かるよ」
サグメ「……」
サグメ「聞くが…ルーミア達は無事なんだな?」
???「うん、それは絶対だよ」
サグメ(ルーミア達の事も知っている様だな…しかし本当に何者なのだろう…この状況から怪しさに満ち溢れているが彼女から邪な感情は全く感じられない)
サグメ(いや、感知しようとしても感知することそのものが出来ない……不思議な感覚だ)
サグメ(…信用しても良いのだろうか)
サグメ「…秘密を追えば私はまた友の元に帰れるんだな? ルーミア達の所に」
???「! うん」
???(ルーミアと友達の月の人…か♪)
サグメ「…」
サグメ「分かった、着いていこう」
???「……♪ ありがとう」ニコッ
サグメ(何故そこで礼を言う)
サグメ「その前に最後の質問だ…あなたの事をまだ聞いていない」
???「えっ? あぁ~…名前だけなら…良い、のかな?」
サグメ「…私に聞かれてもな」
???「ふふっ♪ 冗談だよ、名前だけなら大丈夫だから♪ 私の名前は…」
???→冴月麟「冴月麟(さつきりん) 麟って呼んでね♪ 月の人♪」
【もう一つのプリズムリバー邸 エントランスホール】
冴月麟「あなたに知ってほしい秘密はたった一つ、この屋敷、プリズムリバー邸その物の秘密なの」
サグメ「プリズムリバー邸その物?」
冴月麟「うん、一度に話すと混乱しちゃうかも知れないけど…こっちも時間がないからね」
サグメ「時間?」
冴月麟「この屋敷、夜が好きだから夜明け前にはあなたを戻さないといけないの」
サグメ「…?」
冴月麟「それも何れ分かること……さて♪ こっちだよ」
私は麟の後に着いて行く、先程見た写真立ての前で立ち止まった。
サグメ「先ずはここか?」
冴月麟「うん、最初に知っておいてほしいのはここがもう一つのプリズムリバー邸だと言うこと…それはさっき説明したよね?」
サグメ「あぁ」
冴月麟「どうしてもう一つ存在しているのか、どうして存在していることが重要なのか…存在を望まれていないはずなのに」
サグメ「……」
冴月麟「……」スッ
麟は写真立てを手に取り、私に差し出した
冴月麟「答えはこれ、真実は幻想…だけどあの子は確かに存在している」
サグメ「…?」スッ
冴月麟「写真、もう一度見て?」
サグメ「………!?」
サグメ(写真に映っているものが変わっている…!? こ、これは…)
女性が四人、プリズムリバー邸を背にしてこちらに笑顔を向けている。
亜麻色の髪の女性、白みがかった水色の髪の女性が二人前屈みに並び、その上に金色の髪の女性、その下に膝を折り曲げて座っている長髪で緑色の髪の女性。
冴月麟「『核心』よ、表のプリズムリバー邸の写真は幻想を…裏のプリズムリバー邸の写真は真実を」
冴月麟「プリズムリバーは三姉妹じゃない、本当は四姉妹いるの、そしてそこに映っているリリカ、ルナサ、メルランは人間、本物であり本人よ」
サグメ「!! 四…姉妹…!? 人間…!?」
冴月麟「リリカ・プリズムリバー、メルラン・プリズムリバー、ルナサ・プリズムリバー……そして」
冴月麟「レイラ・プリズムリバー」
サグメ「……レイラ……プリズムリバー…」スッ
私は写真をもう一度見る、
サグメ「し、しかし…これは」
冴月麟「見えないよね、外の世界のお嬢様貴族達って昔はそういう服装をしていたみたいなの、お洒落な羽飾りの帽子にドレス姿、でもそこに映っているのは本物のリリカ、メルラン、ルナサなの…顔をよく見て? 騒霊のリリカたち三人そのものでしょ?」
サグメ「…」
サグメ(このレイラ…と言う者の事も気になるが……)
サグメ「……本物とは…?」
冴月麟「あなたは感じ取っていた筈よ、リリカ達の違和感に…それが本物ではない証拠となるの」
サグメ「!」
冴月麟「ルナサは鬱の気、そして音…メルランは躁の気、そして音…リリカは二人を支える幻想、そして音…騒霊という存在、現実とは異なり幻である者」
冴月麟「あなたが知っているプリズムリバー三姉妹はそこに映っている者とは別の存在…人は死んだら普通は幽霊になるけど騒霊は異なる全く別の存在」
冴月麟「作り出されたの、レイラというもう一人のプリズムリバーの手によって」
サグメ「……!!」
冴月麟「本物の人間であるリリカ達三人が今生きているかは私には分からない、流石に幻想郷の外にはいけないから」
サグメ「……作り…出された? この者に?」
冴月麟「そう、その緑色の髪の子…レイラにね」
サグメ「……本物ではない…レイラに作られた…」
冴月麟「……」
サグメ「…何故作る必要があったんだ? それもここが望まれていない事と関係があるのではないのか?」
冴月麟「! …あなたって鋭いのね」
冴月麟「……うん、それは…」
サグメ「…」
冴月麟「レイラがずっと一人だったから」
サグメ「…?」
冴月麟「孤独から生まれた寂しさ、そこから愛と言う感情、想いに変わっていった…それが幻想となってリリカ達とこのプリズムリバー邸を繋ぎ止めているの」
冴月麟「偽物でも本物でも無い物は形として残っている、この屋敷、プリズムリバー三姉妹…そしてレイラ本人」
冴月麟「想いの強さは何物にも変えられない、それは本物、幻想なんかじゃない」
サグメ「……」
冴月麟「……」
サグメ(リリカ達は確かに存在している、これは間違いないだろう、騒霊としてのリリカ達…そして人間としてのリリカ達が存在している、若しくはしていた…と言うことだ…そしてレイラ本人という言葉)
サグメ(二つのプリズムリバー邸の存在、幻想として存在する屋敷ともう一つ、私達が打ち上げをしていた現実に存在している屋敷…)
サグメ(……しかし存在が望まれていないというその答えは…)
サグメ「リリカ達とプリズムリバー邸がもう一人、一つずつ存在している理由…作り出された方法、理由…そしてプリズムリバー三姉妹という肩書きを持ったリリカ達の能力、言動や行動…これはレイラが大きく関係しているのか?」
冴月麟「…!」
冴月麟(凄い…会話から人の心を1人ずつ読み取っているのね…感受性が強い人…♪)
冴月麟「うん、そうだよ…それとこの屋敷の存在だね」
サグメ「答えてくれるか?」
冴月麟「うん、あなたが求める答えになるかは分からないけどね」スッ
冴月麟「着いて来て、次は屋敷の二階だよ」
サグメ「……分かった」
【もう一つのプリズムリバー邸 二階 廊下】
冴月麟「…」スタスタ
サグメ「……」スタスタ
私と麟は階段を使って二階に上がった、見ると右と左に通路が続いているのが確認できる。
私達は一階を見下ろす
冴月麟「玄関だけでも広いよね」
サグメ「…そうだな」
冴月麟「この屋敷が幻想では無かった頃は色んな人が来てパーティーとかしたんだろうね、そして色んな人との出会いがあったんだと思うの」
サグメ「…」
冴月麟「様々な人との出会いが愛を育んだかも知れない、四姉妹は愛されて育ったらしいから他人を、家族を愛する事が出来た、心優しい四姉妹…だけど」
サグメ「…?」
冴月麟「愛されたからこそ、本物の愛を知っているからこそ愛に飢えてしまった」
冴月麟「孤独に恐怖した、覚悟を決めた筈なのに」
サグメ「…それは誰のことなんだ?」
冴月麟「この屋敷に住んでいた五人の人間」
サグメ「……? 五人?」
サグメ(四姉妹の他にも誰かいたのか…?)
冴月麟「外の世界の柵は私にも詳しくは分からない、けど人間は強く逞しく生きていかなければならない…大切な物を失いたくないから」
冴月麟「彼はそういう生き方を望んだんだろうね…でも幻想に存在するある物がそれを打ち砕いてしまった」
冴月麟「彼自身が『発端』なの…四姉妹を心から愛した人、望んではいないけどレイラを幻想へ導いてしまった人」
サグメ「…さっきから誰の事を」
冴月麟「……」
冴月麟「プリズムリバー伯爵……レイラ、リリカ、メルラン、ルナサのお父様」
サグメ「! ……リリカ達の父」
冴月麟「もう誰も彼の痕跡を辿る事は出来ない…思い出は全てレイラの心の中にあるから」
サグメ「……」
サグメ(ここでまたレイラ…か)
冴月麟「リリカ達はその人に育てられたの、とても愛情深かった人…自分の娘である四姉妹の為に全てを捧げた人」
サグメ「……母は?」
冴月麟「…末っ子であるレイラを授かった後に亡くなってしまったみたいなの」
サグメ「! ……」
冴月麟「…」
サグメ「……」
冴月麟「愛が深かった人に育てられたからこそ、プリズムリバー四姉妹も愛情深くなるのは自然だった」
サグメ「だが…その愛が」
冴月麟「うん……愛が深かったからこそ孤独に恐怖し、耐えきれなかった、幻想からの闇を払えなかった」
サグメ「それがレイラ、いや…この屋敷に住んでいた五人だと?」
冴月麟「うん、それがあなたに知っていてほしい事の全て」
冴月麟「…」
サグメ「…」
冴月麟「……ここからは、あなたに決めてもらわなきゃいけな」
サグメ「待ってくれ」
冴月麟「!」
サグメ「……」
冴月麟「…?」
サグメ「…」
サグメ(レイラ、プリズムリバー伯爵、リリカ、メルラン、ルナサ…この五人が鍵、そしてプリズムリバー邸)
サグメ(故人、騒霊、人間…幻想と現実の秘密…穢れの概念…望まれる物と望まれぬ物…幻想からの闇…)
サグメ(核心と発端…存在の有無…『発端』は彼女たちの父、伯爵の様だがそれ以外は全てレイラに集約されている)
サグメ(……)
サグメ(…)
サグメ(…)
サグメ(レイラ・プリズムリバー 彼女は『真実』)
サグメ「麟」
冴月麟「…?」
サグメ「さっきからあなたが言っている幻想と言うのがここ、幻想郷のことだと仮定して考えたらある仮説が生まれるのだが」
冴月麟「仮説?」
サグメ「この屋敷は幻想郷の外の世界から流れて来た、理由はまだ分からないが、それには四姉妹と伯爵が大きく関わっている…屋敷は二つ『幻想郷に近い別次元に存在し、隠されているプリズムリバー邸』と『外の世界から流れ来て、幻想郷の多くの住人に認知されているプリズムリバー邸』が確かに存在している事…月の民である私だが幻想郷の事なら少しは知っている」
冴月麟「!」
サグメ「そしてリリカ達…騒霊としてのリリカ達と人間であるリリカ達が存在している、若しくはしていた事…それにはもう一人のプリズムリバー、レイラ・プリズムリバーの存在が大きく関わっている事」
サグメ「そしてあなたが言った『レイラ本人』と言う言葉…この事から」
サグメ「レイラ・プリズムリバーはこの別次元のプリズムリバー邸に存在している」
冴月麟「…!」
サグメ「…」
サグメ「彼女…レイラは居るのか? ここに」
冴月麟「……」
サグメ「麟、答えてく」
冴月麟「最初から」
サグメ「…?」
冴月麟「最初からあなたには真実だけを教えた方がよかったのかも知れないね」
サグメ「…!」
冴月麟「ごめんね、遠回しな言い方ばっかりして…あなたを混乱させるような事を」
サグメ「いや…謝らなくていい」
冴月麟「?」
サグメ「貴方の口からこの屋敷での出来事やレイラの事を聞けた、それだけで分かった事がある」
サグメ「彼女が、レイラが心優しく愛情深い人物だということがな」
冴月麟「…! ……そっか♪」ニコッ
サグメ「あぁ」
冴月麟「ふふっ♪ ……さてと、これで最後だよ」スッ
冴月麟「プリズムリバーの『真実』あなたの目と心で感じて、あの子の心に…触れてみて」
【もう一つのプリズムリバー邸 二階 廊下奥】
冴月麟「ここだよ、心の中への…大事な扉」
サグメ「…?」
冴月麟「存在してしまっている不幸…自分が必要としていたいと願う記憶」
冴月麟「存在を自分で否定しても『存在していてほしい、生きていてほしい』って願う人はいるんだよ」
冴月麟「あなたは…どっちかな」スッ
ガチャッ ギィィィ……
冴月麟は扉を開く
冴月麟「さぁ行って月の人…♪ あの子によろしくね」
サグメ(この先にレイラが…?)
サグメ「……! …貴方は来ないのか?」
冴月麟「! うん、ここからはあなた一人…その方が良いの、きっとね」
サグメ(最初に言われたな、知っていてほしいけど教えたくない秘密、存在してはいけないという事が引っ掛かってくるが…)
サグメ(彼女に会えばその謎も全て解ける筈)
サグメ「……分かった」
冴月麟「うん」
サグメ「…」
冴月麟「…」
サグメ「ここまでありがとう麟…また会えるか?」
冴月麟「!! ……♪」ニコッ
冴月麟「う~ん…それはどうかなぁ、私って一人一人に認知されているか分からない存在だから」
サグメ「? それはどういう」
冴月麟「ほらほら、行った行った♪ 早くしないと夜が終わっちゃうよ」スッ
サグメ「うっ…!」タッタッ
サグメは麟が開いた扉の奥へと押された
サグメ「…麟」
ギィィィ……
閉まる扉を挟んで二人は目を合わせる
冴月麟「ここに来てくれてありがとう♪ ……穢れに疑義を抱く月の人、稀神サグメさん♪」
サグメ「…!」
冴月麟「さようなら♪」ニコッ
ギィィ……バタン…!
冴月麟「……」
冴月麟「…」
冴月麟「はぁ…さっきから近くで見てるけどさ、本当はあなたが一から十まで月の人に説明した方が良かったんじゃないの?」
冴月麟「紫」
ギュオン…!
八雲 紫「……」
冴月麟「…」
紫「私が月の民に一から十まで説明出来るわけないじゃない、ゆかりん月の奴ら嫌い」
冴月麟「でも毛嫌いしてるの綿月って名前の姉妹の人と地上を毛嫌いしてる月の人だけじゃん」
紫「逆もまた然りなのよ、月の奴らはゆかりんのこと嫌いなの」
冴月麟「稀神サグメさんからそうは感じなかったけどね、ルーミアと友達になれた人なら尚更だよ」
紫「…」
冴月麟「…」
冴月麟「レイラがまた少し寂しそうにしてたから口の固い人に話し相手、若しくは友達になってほしいってはっきり言えば良かったのに」
紫「そこまでの過程が重要なの、いきなり『複雑な状況に置かれている人と友達になってあげて下さい~』なんて言えるわけないでしょ、私だったら絶対嫌な顔するもん」
冴月麟「あ、そう思ってるんだ~♪」ニコッ
紫「…! ……」
冴月麟「……」
紫「麟ちゃん反抗期」
冴月麟「いいえ~♪ それほどでも~♪」
紫、冴月麟「……」
冴月麟「ルーミア達は?」
紫「酔っぱらって私のスキマの中で爆睡中よ、リリカ達も一緒にね」
冴月麟「ふふっ、そう…♪ 幸せそうに寝てるなら良いけどね」
冴月麟「…」
紫「…」
冴月麟「月の人、レイラのことどう思うかな」
紫「大丈夫よ、あなたがレイラに会わせても平気って感じ取ったんでしょう?」
冴月麟「感じた方向性は違うけどそこはお互い様なのね」
紫「はいはい…そこは否定しませんよ♪」
冴月麟「あっそ…ふふふっ♪」
紫「ふふっ…♪」
紫「……」
紫(利用したって思われても別に構わない、現にそうしてる…稀神サグメには悪いことをしたわ、友達との宴会を楽しんでいたものね)
紫(……月と言う名の鳥籠、もとい穢れにとらわれているあなたならあの子の気持ちが分かるはず、そしてあなたなら口も割らないだろうしね)
紫(レイラにとっての鳥籠はここ『幻想に導かれ幻想に溶けたプリズムリバー邸』その物……人里で聞き耳立てて偶然訪れたチャンスを無駄にしたくなかった、全ては私のエゴ…だけど)
紫(一人は寂しいのよ、ずっとずっと遥かなる未来まで…そう願ったあなたを幻想は導いたけれど)
紫(私は不幸せな幻想を望んでいないの、全てを受け入れる場所だとしてもね)
紫(……ごめんね、レイラ)
【もう一つのプリズムリバー邸 真実への廊下】
サグメ「……」カツンカツン
サグメ(随分と長い廊下だ、白い靄の様な物が出ていて先が見えない)
サグメ(空間が不安定なのだろう、この廊下…いや幻想に置かれたプリズムリバー邸は)
サグメ(……)
サグメ(レイラに会ったとして、私は彼女に何をどうしたいのだろうか…彼女の事を麟から聞いたが謎ばかり、私は謎を解き明かしたいのか…? リリカ達の事もあって確かに気になってはいるのだが)
サグメ(プリズムリバー邸に来たのは偶然…だが麟に会ったこと、もう一つのプリズムリバー邸に来たことは偶然ではない…導かれるままにこの道を進んでいる)
サグメ(……)
サグメ(そもそも麟はレイラをどう思っているのだろうか、それと何故か私とレイラを会わせたがっていた様にも思えた、理由は聞けなかったが)
サグメ(……彼女に会えばそれも解けるのだろうか、彼女は真実…それだけは間違いない)
サグメ(麟が言っていた穢れに関する事も…?)
サグメ(……)
サグメ(いや、よそう…もう迷いはないのだから)
サグメ(…! 扉、か)
サグメ「この先にレイラが…?」
サグメ「……」
サグメ(私はルーミア達の所に帰りたい…本当はただそれだけだったのだがな)
サグメ(会うとしよう、真実に)
サグメ「…」スッ
サグメは真実への扉を開けた
【レイラ・プリズムリバー】
永遠の時の中で 私は覚えています
これからもずっと ずっと
紡いだ糸を 離さないように
夜の縁に舞い戻り 微かな光を辿って行く
希薄な記憶の欠片を 探し続けて行こう
癒しの旋律を奏でよう 思い出は私の胸の奥に
痛みは消えず 胸の奥にいつも響いているけれど
夜風に震える小さな手で 愛する想いを手渡したい
遠く離れた貴方たちの心に 届きます様に
サグメ「……」
???「……」
サグメ(切ない…生気に満ちた歌声だ…)
???「歌は人のどんな感情をも伝えます、それはあらゆる旋律でも同じこと」
サグメ「あ、貴方は」
???「あなた様が現実にある館に入って来たときから気を感じ取っておりました、生気に満ち溢れたこの虚ろいの館に訪れた事は必然なのかもしれません」
サグメ「!」
???「初めまして、椅子に座ったままでの挨拶で申し訳ありません……私が」
???→レイラ・プリズムリバー「幻想の彼方に存在するプリズムリバー邸当主、レイラ・プリズムリバーです」
【無為の少女】
サグメ「貴方が……レイラ」
レイラ「…」コクッ
レイラは椅子に座ったまま小さく頷いた
サグメ「……」
サグメ(レイラ、麟に案内されていたときに見た写真のままだな……いや、先ずは)
サグメ(この空間…)スッ
無機質で小さな四角い部屋、床には絨毯が敷かれ、二つの窓から来る月明かりと暖炉の炎が部屋を照らしている。
レイラは小さく揺れる揺り椅子に座っている、直ぐ側に暖炉もある。
両手を膝に乗せており、手に香炉の様な物を持っている。
サグメ(……)スッ
見回してみると部屋の四隅には使い古された楽器が無造作に置かれている
一つ目の隅には弦楽器
二つ目の隅には管楽器
三つ目の隅には鍵盤楽器
四つ目の隅には紙の山
サグメ(あれは…楽譜だろうか、人の高さにまで積み上げられている)
レイラ「それは私が書いた物です」
サグメ「! …貴方が?」
レイラ「お姉様たちと趣味を共有したくて書きました、私には楽器を奏でる才能はありませんでしたので…当時はどうにかしてお姉様たちと共通の趣味を持ちたかったのです」
サグメ(!! お姉様たち、か…恐らく人間のリリカたち…)
サグメ「…何故?」
レイラ「寂しさが紛れるから…でしょうか」
サグメ(……寂しさ…)
サグメ「…」
レイラ「…」
サグメ「レイラ、私は」
レイラ「麟様…冴月麟様からあなた様の事は聞いております、稀神サグメ様」
サグメ「!」
レイラ「サグメ様のお名前、ご種族、何処からこの館に参られたのか…麟様が全て話して下さいました」
レイラ「先ほども申しましたが、サグメ様が現実のプリズムリバー邸に入って来た時からあなた様を見ておりました、と申しましても言葉の旋律まで読み取ることは不可能ですが…お友達と来館されたこと、宴の席を設けたこと、そしてサグメ様が席を離れた際に麟様がここ、幻想のプリズムリバー邸にあなた様を導いたこと」
レイラ「……ただなぜ麟様が私とサグメ様を会わせたのか…それは定かではないのです」
サグメ「…!」
サグメ(麟が私のことをレイラに話していたとは…初対面であるのにも関わらず私の事を知っていたのにも理由があるのか? …! さっき考えていた物が答えに繋がるか…?)
サグメ「私は麟からこの館のこと、プリズムリバーのこと、そしてレイラ…あなたのことも遠回しな言い方ではあったが聞いた、プリズムリバーの真実に辿り着ける様に導かれたとも取れるだろう」
サグメ「断片的な情報が多かったが、麟は懸命にこの館の秘密を私に打ち明けているようにも見えた…知っておいてほしいと思う気持ちが強く感じられた」
サグメ「麟は…私も真相は分からないが、私とレイラを会わせたがっているようにも思えた」
レイラ「会わせたがっていた…」
サグメ「あぁ、別れる際に『あの子の心に触れてみて』とまで言っていた」
レイラ「!」ピクッ
サグメ「…?」
レイラ「……」
サグメ「レイラ…?」
レイラ「昔『あなたの心に触れたい』と、ある二人の方に言われた事があります」
サグメ「!」
レイラ「そうですか、麟様が…」
サグメ(二人…? 一人は麟としてもう一人は一体)
レイラ「そこまで仰っているのであれば私はサグメ様に全てを…プリズムリバーの秘密を打ち明ける必要があるのでしょう、麟様もそれを望んでおられるはず」
サグメ「!」
レイラ(紫様、恐らくあなた様も…ですね)
サグメ「…」
サグメ(興味と偶然と好奇心からここまで来た、最初はルーミアたちの元に帰りたいがために話を聞いていた、それだけだったのだが)
サグメ「レイラ、話してくれるか」
レイラ「はい、全てをお話しします」
サグメ(私はプリズムリバーのこと、そしてレイラのことをもっと知りたい)
レイラ「語るには昔…プリズムリバー邸がここ幻想郷の外にあった時まで遡ります、もう何十年も過去のこと…プリズムリバーが繁栄を極め、生き生きとしていた輝かしいあの旋律は今でも思い出として心に残っています」
レイラ「私が……いえ、私たちプリズムリバーが生きていた時代……私を含めたリリカ、メルラン、ルナサお姉様たちと私を入れた四姉妹、そして私たちの父…特に不自由なく音楽や芸術を楽しみつつ毎日を過ごしておりました、今となっては懐かしい旋律です」
レイラ「母は私を出産して直ぐに天国への階段を上ってしまわれました、難産だったと聞いております……ですがその悲しみの旋律を私に与える事なく、お姉様たちと父は私に接し、愛し、育てて下さいました」
サグメ「……」
サグメ(麟からは聞けなかったな、彼女たちの母の事は…写真が無かったのはレイラを気遣ってのことかあるいはもう残っていないのか)
レイラ「私たちの父、プリズムリバー伯爵の事は?」
サグメ「…! あぁ麟から聞いているよ、四姉妹であるあなた達を心から愛することが出来た人だと」
レイラ「……」
サグメ「そしてレイラ、あなたを幻想に導いてしまった人…プリズムリバー伯爵、彼が『発端』なんだとも言っていた」
レイラ「……幻想への発端、ですか…確かにその通りかもしれません」
レイラ「父は貿易商をしておりました、数々の品を輸出入することで収益を得ていました、時には気に入った家具等があればそのままこのプリズムリバー邸におくこともありました…今ここにある楽器等が最たる例でしょうか、私たち姉妹も運ばれてくる品々に興味を持ち、手に取ってみたものです、子供ながらに父の仕事に誇りと尊敬を持っていました」
レイラ「……この東洋品が我が邸に来るまでは」スッ
サグメ「…? 東洋品?」
レイラは懐からあるものを取り出し、膝の上に置いた
悲しい表情でそれを見つめ続けている
レイラ「……」
サグメ「……それは…香炉か?」
レイラ「はい、今となっては何の変哲もないただの香炉…手のひらに収まる小さな小さな香炉」
レイラ「この香炉を父が手に入れた時から発端と言う名前の悲劇は始まったのだと今なら思うのです」
サグメ「!? 悲劇…だと?」
レイラ「はい、先程も申しましたがこれは今はただの香炉、父がプリズムリバー邸に持ち帰った時のこの香炉は淡い光を放っておりました、恐らく『魔力』が宿っていたのでしょう」
サグメ「魔力…!?」
レイラ「詳しく言うならば魔力と言う名の『程度の能力』が宿っていたのです、その言霊と東洋品ということから察していただけるとは思うのですが」
サグメ「……!! その香炉は幻想郷の…」
レイラ「はい、何処からどのような手段で父の手に渡ったのかは分かりませんが、ここ幻想郷にあった呪われし能力を持った品、マジックアイテムが我が邸に運び込まれてしまったのです、そこが発端、悲劇の旋律の始まりなのです」
レイラ「香炉に宿っていた能力は『持ち主の全ての夢を叶える程度の能力』です」
サグメ「夢を叶える? なら何故悲劇が」
レイラ「全て……なのです、幸せな夢も、不幸な夢でさえも、持ち主の記憶と心を媒介として全ての夢を叶えてしまう」
レイラ「人は夢を持つもの…目先の幸福、家族の明るい笑顔の旋律……想いの中にしまってある不幸、そうであってほしくない未来への夢、希望」
レイラ「香炉は父の夢を叶えました『プリズムリバーが繁栄し、私たち四姉妹がいつまでも笑顔でいられる夢』という幸せと『私たち四姉妹がずっと一緒にいられなくなる』という不幸を」
サグメ「!!」
レイラ「父の生気を吸収し、死に追いやる事でその夢を叶えたのでしょう…これを肌身離さず持っていた父は三ヶ月もせずうちに衰弱し、この世を去りました…まるで呪いにでも当てられたかのように、ただ夢を叶えたかっただけなのに」
レイラ「父が亡くなるとプリズムリバー家への資金操りと業績の悪化が顕著になり、プリズムリバー家は崩壊への一途を辿ることになります」
サグメ「…」
サグメ(そういうことだったのか…発端…その意味、か)
レイラ「身寄りが無くなった私たち四姉妹はプリズムリバーの名を持つこの家を何とか立て直そうと考えを張り巡らしたのですが…その手立ては既に無く、名のある家々に引き取られる他、ありませんでした」
レイラ「ルナサお姉様、メルランお姉様、リリカお姉様と引き取られ、次は私」
サグメ「だが、あなたは」
レイラ「はい、私はここに留まりました…廃洋館と化したこの邸から離れる事が出来なかったのです」
サグメ「…何故だ?」
レイラ「この家を、プリズムリバー邸を愛していたからです」
サグメ「!」
レイラ「大好きだった父、ルナサ、メルラン、リリカお姉様と楽しく過ごした思い出…そして話したことはないけれど私をこの世に授けてくれた母がいた場所を守りたい…そう願ったのです」
レイラ「私と、私が愛した人たちが笑顔でいられたこの場所と別れる事なんて出来なかった」
サグメ「……」
レイラ「館と共に滅びる覚悟でここに住み続けることに決めたのです、この呪われた香炉も共に…香炉の能力に気付いた私は夢も希望も失った自分ならばこの呪いを引き受ける事が出来るとも確信していましたので」
レイラ「ですが、夢は新しく作られるもの…ここからは『核心』となるでしょうか」
サグメ「…!」
レイラ「私は弱かった、そして甘かったのです…一人で全てを引き受けた結果、私の心に残った物は寂しさでした」
レイラ「そのような感情が芽生えた結果、夢を持ってしまったのです『お姉様たちがいてくれたら』『寂しさを紛らわす事が少しでも出来たなら』思っても口に出せぬ夢、希望…この香炉はそんな私の夢に反応したのでしょう、それが私にとって複雑な幸福と不幸であるのにも関わらず叶えてしまった」
レイラ「幸福と不幸の狭間の夢だったお陰なのか本物のお姉様たちではなく、三人の姿を模した『騒霊』という姿で具現化したのです」
サグメ「!!」
レイラ「半透明で手で顔に触れる事すら出来ず、会話すらもすることが出来ないルナサお姉様が最初に現れ、次にメルランお姉様、そしてリリカお姉様…存在そのものが不安定なお姉様たちであって、お姉様たちではない存在…リリカ、メルラン、ルナサという存在」
サグメ「!」
サグメ(そうやって幻想郷のプリズムリバー三姉妹はレイラの手によって創りだされたのだろう、麟と一緒に見たプリズムリバーの写真…本物と本物ではない存在)
サグメ(理由は寂しいという感情から…人間一人…孤独には耐えられなかったのだろう)
レイラ「気が付けば寂しいという感情は消え去っていき、私にとって嬉しい出来事もその時に起きたのです」
サグメ「それは?」
レイラ「プリズムリバー邸が幻想郷へと導かれた事です」
サグメ「!」
レイラ「忘れられた物が辿り着く幻想郷…本物のお姉様たちの記憶や心からこの館が消えた、私はその事が嬉しかったのです、お姉様たちが他の家々で幸せを掴み、悲劇の痛みの旋律が安らぎを得ているのだとしたらとても幸福な事ですから」
サグメ「し、しかしそれは」
レイラ「私の事よりも他の事に目を向け、幸せの毎日をお姉様たちは各々過ごせている…それを考えるだけで私は幸せなのです」
サグメ「っ…!」
サグメ(……本心で言っている…私の目からは辛く見えてしまうが本人は想像を絶するほどの嬉しさなのだろうな)
レイラ「それに幻想郷に導かれたお陰なのかこの香炉の魔力をある程度制御出来る様になりました、麟様が仰るには『呪いと言えど魔力に抗い続けた結果の賜物と環境が与えてくれた奇跡』だと…次第にリリカ、メルラン、ルナサは実体と自我を持ち、会話をすることも可能になりました」
レイラ「幻想郷に来てからは正に夢…夢の中にいるかのように過ごしました、お姉様たちが奏でてくれた旋律をリリカ、メルラン、ルナサの三人はいつも楽器で弾いてくれました…とても、楽しかった」
サグメ「…そうか♪」ニコッ
レイラ「はい」
サグメ「……」
レイラ「…」
サグメ「現実、あなたがリリカたちから受け取った感情やあなたが感じた心は現実だ…それは夢、いや悲劇の悪夢なんかじゃない」
レイラ「……」
サグメ「…」
サグメ「現実、で思った事なのだかな」
レイラ「はい」
サグメ「レイラ、あなたは何故一人でここにいるんだ? この幻想のプリズムリバー邸にいる必要が無いのではないのか?」
レイラ「……」
サグメ「孤独から来る感情は私にも分かる、一人は辛く、寂しい物だ…それが分かるあなたが何故ここにい」
レイラ「現実は」
サグメ「!」
レイラ「現実は夢よりも優しくないものです、夢に浸っていた時間が長ければ長いほどに……」
レイラ「ここからは『真実』現実のお話になります」
サグメ「一体どういう…」
レイラ「……」
レイラ「私はレイラ・プリズムリバーであって、レイラ・プリズムリバー本人でありません…ルナサ、メルラン、リリカの三人より不安定な虚ろいの存在なのです」
レイラ「レイラ・プリズムリバー、彼女は既に天寿を全うしているのです」
サグメ「!!」
【もう一人のプリズムリバー】
レイラ「……」
サグメ「天寿を…全うした…!?」
レイラ「はい」
サグメ「し、しかしあなたは今こうして」
レイラ「ここにいる私は、思念体の様な存在なのだと麟様から聞きました」
サグメ「思念体?」
レイラ「これです」スッ
サグメ「! 香炉…」
レイラ「私が思念体としてここに存在しているのはこの香炉の魔力によるもの…私が息を引き取る際に最後の夢を叶えたのです」
レイラ「先程も生前の私は、幸福な夢を見たと言いました…『お姉様たちがいてくれたら』と…そしてそれと同時に私にとっての不幸な夢も膨らんでしまっていたのです、思ってはいけないはずなのに」
レイラ「ずっとずっとこの時間が続けばいい、お姉様たちの幻影であるルナサ、メルラン、リリカと暮らしていたい……と」
レイラ「お姉様たちの幻影と共に天寿を全うしたい…最後の夢を打ち砕く形で不安定なまま先の夢も同時に叶えた結果が今の現実…この香炉は私が死ぬ寸前、本体と思念体とに分離させました」
レイラ「本当なら夢見の本体である私が死ねばルナサ、メルラン、リリカも消えるのは必然でしたがそれが成りませんでした」
レイラ「思念体である私が、プリズムリバー三姉妹を現世に繋ぎ止めている……麟様はそう仰っていました」
レイラ「思念体である私が生まれたのと同時に本体の私の魔力から生まれたプリズムリバー三姉妹の記憶は封印されました『レイラ・プリズムリバーという存在がいた』という記憶、自我を持ち始めたとは言え、生み出した本人が消えれば幻影も消え去る筈でしたが……現実はこうなのです」
レイラ「香炉は私が死ぬのと同時に、魔力全て解放したのでしょう、この通り、今はただの香炉……最後の呪いとでも言えばよいのでしょう」
サグメ「それが……全てなのか…それが、現実」
レイラ「はい」
サグメ「……」
サグメ(レイラは生きているものだと思っていた…これが現実…彼女が思念体だったとは)
サグメ「……レイラ」
レイラ「はい」
サグメ「思念体だったとしても、あなたはあなただろう」
レイラ「!」
サグメ「レイラ・プリズムリバーとして生きればいい、この幻想のプリズムリバー邸に一人でいる必要はないとも私は思う…! だから」
レイラ「なんて…お優しいお言葉」ニコッ
レイラは優しく微笑んだ
サグメ「!」
レイラ「……夢を持った私…自我を持った三姉妹にも夢があるのです、私という記憶を失いながらも彼女たちは思い出したかの様に行動に移すことがあります」
レイラ「私に会いたいという夢…恐らくそれを無意識に持っているのでしょう」
レイラ「ルナサ、メルラン、リリカも私の魔力が生み出した物とは言え元を辿ればこの香炉から生み出されたと言ってもよいでしょう、魔力の源は香炉…まだ呪いが奥底で残っていたのだとしたら私に会った瞬間…望みが叶い、三姉妹が消えてしまうかもしれない」
サグメ「っ…!」
レイラ「それは私の望みではない、彼女たちが今を楽しく生きているだけで私は幸せなのです」
レイラ「彼女たちの喜びが、私の喜びなのですから」ニコッ
サグメ「……」
サグメ(そうか…レイラはここから出る動機がない、作る必要がなく、作れない、生きていた彼女が望んだ様に、思念体であるレイラが望んでいる様に…一人は辛い、そう思っていたのは私だけなのだろう)
サグメ(自らが心から考え、行動に移そうと考えなければ何も動けない…私が月で感じていた事と同じ、八意様やルーミアたちの事がなければ地上に降り立つ事も考えなかっただろう)
サグメ(レイラは人の喜びに喜びを見出だせる心を持っている…そういう人だ、だからこそ)
サグメ(虚ろいの現実であったとしても、一人であり続けなければならないとしても、思念体としての現実を受け入れた今この瞬間の現実が)
サグメ(レイラにとっての幸せなんだ)
サグメ「……」
レイラ「……」
サグメ「レイラ」
レイラ「はい」
サグメ「私はあなたのこと、そしてあなたと会った事を口外しないと約束しよう」
サグメ「そしてあなたのこと…レイラ・プリズムリバーを一生忘れないと心から誓おう」
レイラ「……ふふっ…♪」ニコッ
レイラ「ありがとうございます…サグメ様♪」
サグメ「ふっ、初めて心から笑ってくれたな」
レイラ「! ふふっ…麟様にもそのことでからかわれたことがあります」
サグメ「…! ふふっ♪」ニコッ
レイラ「ふふふっ…♪」ニコッ
レイラ「…もうすぐ朝日が昇ります」
サグメ「……そうか」
サグメ「お別れ、だな」スッ
レイラ「そうですね」
サグメ「……」
レイラ「……」
サグメ「…」
サグメ「さようなら、レイラ」スッ
レイラ「さようなら、サグメ様」
レイラ「……」
レイラ「…」
レイラ「…♪」ニコッ
もう一人のプリズムリバーである彼女はまた一人
心と心で繋がれる人と出会う事が出来た
彼女の心がまた癒された
思念として生まれ 思念として生きようとも
彼女はもう一人のプリズムリバー
レイラ・プリズムリバー
【スキマ妖怪のエゴ】
サグメ「……ここは」
サグメはエントランスホールの中心に立っていた
サグメ「…この感じ」
サグメ「戻ってきたのか、幻想郷のプリズムリバー邸に」
サグメ「……」
サグメ「…」
サグメ(レイラ…もう、会うことはないのだろう)
サグメ「私は…」
紫「お帰りなさ~い♪」
サグメ「!?」スッ
サグメは後ろを振り返る
サグメ「や、八雲紫!?」
紫「黙って聞いて? ここはもう幻想ではなく本物のプリズムリバー邸なんだから」
サグメ「!」
紫「…いい?」
サグメ「…」コクッ
紫「あの子にとっての幻想のプリズムリバー邸はあの子にとっての幻想郷の様なものなの、夜に覆う深い霧は結界の様な物…私と麟はあの子が望むままにずっと手助けをしているの」
サグメ「!」
紫「あなたはこちら側でレイラの歌声を聞くことが出来た、何故か…あなたが穢れにまだ敏感だから」
紫「思念体としても生き続けなければならない、存在が生に満ち溢れている存在…だからこそあなたはあの子を感じる事が出来た、リリカたちと一緒にいてもその違和感を感じとることが出来たでしょう?」
紫「あぁ、因みにねぇ♪ リリカたちが掃除とかしないのはそういう目的であの子に創られていないからなのよねぇ♪ 家具とか写真とか…たまに思い出す事もあるけど全然気にしてないんじゃないかしら、本物のプリズムリバー四姉妹の記憶なんてものも、あの子の中にあったプリズムリバーの思い出だけだしね」
紫「…ルナサとメルランがちょっと不安定な感情を持ち合わせているのは最初に生まれたから、まだ魔力操作が不安定だったからなの、最後に生まれたリリカ二人のバランスを保ちたかったという願いが少し反映されたのかしらね」
紫「リリカたちが楽器を弾いて音楽をやり始めたのは勿論本物の四姉妹の生き写しだってのもあるけど…本当はね、あの子に聴かせてあげたいのよ」
サグメ「!」
紫「天国にいるあの子にいつか届くような素敵な旋律…でも近くでいつも聞いているかもしれないわね♪」
サグメ「……」
紫「……リリカたちが冥界に行きたがる理由はね、あの子に会いたいからなの、記憶は無いから本能的に体が動いてしまっているのね」
紫「あの子から聞いたわね? 様は『自分の事は忘れて騒霊三姉妹として幻想郷で暮らしてほしい』その願いがあるのにあの子に会いたいとたまに思ってしまう…本人たちは気付いていないのに、誰に会いたいのかも分からないのにも関わらずね」
サグメ「……」
紫「これが全て、よ」
サグメ「…」
紫「どう思う?」
サグメ「……」
サグメ「…」
サグメ「私はこれから先、どんな事を聞かされてもどんな事を思おうとも変わらない」
サグメ「彼女を尊重し、一生忘れない」
紫「……そ♪」ニコッ
サグメ「あぁ」
紫「……これは私の独り言」
サグメ「…?」
紫「一人でいたい、存在を認知されたくないと願う今のあの子は騒霊三姉妹と共にいようともたまに…たまにすごーく寂しそうな顔をするときがあるの」
紫「そんな顔見たくないのよ私人間大好きだから、少しの時間だけでもいいから話し相手、心と心が繋がれるだけの相手をあてがってあげたかった…最初から見てたから稀神サグメをプリズムリバー邸に行かせない様にすることも私なら出来た…出来たけどね」
紫「この人なら色んな意味で口も堅いし大丈夫かなって思っちゃったの」
紫「会わせてあげたかったのは私のエゴ…一人は寂しいじゃない」
サグメ「!」
紫「ふふっ…♪ ……あ~らあら口が回り過ぎちゃったかしらねぇ♪ それじゃあゆかりんさような」
サグメ「ま、待ってくれ!」
紫「んん? 何よ、まだ何かあるの?」
サグメ「……ルーミアたちはどこにいる」
紫「そこ、ダイニングよ」スッ
サグメ「!」
紫「酔い潰れてるんじゃない? 夜通し飲んでたんだし、叩き起こして永遠亭に運んであげたら? 二日酔いでしょうしねぇ」
サグメ「! …ふぅ」ホッ
紫「…」
サグメ「そうか、なら失礼する、起こしてあげないとな…ふふっ♪」スッ
紫「稀神サグメ」
サグメ「……?」
紫「……」
紫「…」
紫「ありがとう」
サグメ「!」
紫「あなたレアよ~♪ スキマ妖怪にお礼を言われた月の民…! な~んちゃって♪」スッ
ギュオン…!
紫「それじゃあね、月に帰ったらよっちゃんによろしくね♪」スッ
ギュオン…!
サグメ「……」
サグメ「相変わらず底が見えないな…だが」
サグメ「こちらこそありがとう、八雲紫」
サグメ「……」
サグメ(ありがとう、レイラ)
終
ここまで読んでいただいてありがとうございました、お疲れ様でした。
レイラのこと、そして私なりのプリズムリバー家に対しての色々ある考察の一つの答えがこのお話の全てです、紫と麟が色々補足説明しちゃってますけどね。
また短いお話ですが、サグメのその後、そして冴月麟の事を番外編として投稿したいと思います、一応繋がりがあるので前書きにて色々と書かせていただきます、よろしくお願いいたします。
本当に投稿が遅くなって申し訳ありませんでした…色々と私の心身に問題があり、投稿出来ない状態が続いておりましたが今回からぼちぼち投稿再開出来ると思います。