第零話
「…目標完全に沈黙。任務完了です」
「他愛無かったな」
とある廃ビルでコートを着込んだ男達は話す。その回りにはボロボロになったものが多数いた。
彼らは様々な次元世界で犯罪をおかしていたもの達で彼等の平均的な実力はAAはあった。
「フム、確かにそれなりに強かったな」
「それは隊長しか言えないと思います」
男の言うことに女性は苦笑いで答えた。
「こちらチームΩ。目標を撃滅した。これより帰投する」
『了解、チームΓも既に任務を完了して帰投しています』
「分かった。すぐに戻る」
男は通信を切って目の前の部下に告げる。
「よし、戻るぞ」
「「「了解」」」
「チームΩ、戻ったぞ」
ミッドチルダにある兵舎に男達は戻ってきていた。
「隊長、お帰りなさい」
隊長と呼んだ男を敬礼して出迎える女性。
「すまないがこの後中将のところまで行くから留守を頼む」
「了解しました。チームβの方はどうしますか?」
「いつも通り『会』に参加させろ。他に何かあるか?」
「開発長がまたやらかしました」
「今度はなんだ?また吹き飛ばしたのか?」
「ウイルスがばらまかれて一時期デバイスを含む機器がすべて使い物にならなくなりました」
「そうか。開発長には程々にするように伝えておけ」
「了解」
女性はそう言って敬礼した。
隊長はそれを見届けると兵舎の前に待機させておいた車に乗り中将の元へと向かっていった。
「…以上が任務の結果です。何かありますか?」
隊長は手元に持ったレポートを見ながら目の前に座る男に訪ねた。
男も隊長と同じレポートを見ていたがやがて机において隊長を睨むように見た。
「…レクト・ヒイラギ二佐。貴様はまた犯罪者を殺したのか?」
目の前の隊長―レクト・ヒイラギ二等陸佐は悪びれる様子もなくたんたんと言った。
「それが何か?奴等はしたことは死刑を免れないことです。死期が少し早めに訪れたに過ぎません」
「しかし、管理局員ならそんなことは「中将」」
「私はあくまで管理局にいるのは俺の悲願がここにいることがもっとも近いからに過ぎません。管理局に勤めなくても俺の悲願は叶います。その事をお忘れなく」
「…何かあればすぐに辞める、と言うことか」
「はい、私はレジアス中将にはお世話になりましたので中将の元にいるのです。中将じゃなければ管理局に勤める気はありませんでしたよ。ここが近いとわかっていても」
「…十年か」
「ええ、当時まだ七歳だった俺を中将は救ってくれました。今でもそのご恩は忘れていません」
「…あのときは本当にすまなかった」
「中将が謝る必要はありません。悪いのは父と母を殺した闇の書に見殺しにした海の連中です。陸は精一杯頑張っていました」
「…そう言ってもらえると助かるよ」
中将はそう言って目をつぶる。脳裏に浮かぶは十年前の悲劇。
当時七歳だったレクトは父と母、祖母と旅行中の所を闇の書の守護騎士に襲われた。幸いにも父と母はAAランクの魔導師だったためレクトと祖母を逃がすことに成功した。そこへ駆け付けた管理局員に助けを求めたが局員は冷たかった。
―ヒイラギ夫婦が戦っているらしいぞ
―あいつらか。と言うことはこの餓鬼とババアはヒイラギの者か
―なら放置でいいんじゃないですか?守護騎士とまともにやりあえるとは思えないし
―そうだな。この辺はコイツらしかいないみたいだからな
―そう言うわけだ。さっさと戻れクソガキ!
そう言って転移していなくなる管理局員。ヒイラギ夫婦のSOSをキャッチしたレジアスが向かわせたゼスト隊の到着が後少し遅ければレクトは死んでいたであろう。
…いや、ゼスト隊が早くついていればレクトの父と母、祖母を失わずにすんだのかもしれない。
レクトは奇跡的に後遺症の類いは無かったが管理局員に見捨てられたショックが大きく局員の制服や言葉を聞いただけで取り乱すようになってしまった。
ヒイラギ夫婦と親しい間柄だったレジアスやゼスト、クイントにメガーヌの懸命な呼び掛けがなければ未だに精神不安定となっていたかもしれない。
精神が安定したレクトはレジアスに引き取られ管理局に父と母の後を追うように入局、様々な時空犯罪者を捕らえ僅か五年もたたずに二等陸佐にまでかけ上がっていた。
「あの時対応した海の連中は罰がくだりましたし今ではゼストさんと並ぶ隊長にまでなりました」
「…そうか」
「それで闇の書はまだ見つかりませんか?」
闇の書は十年前に時空航行艦を犠牲にして行方不明となっていた。
「また見つかっておらん。見付け次第優先的に知らせるようにする」
「配慮に感謝します」
ではこれにて、とレクトは敬礼して部屋を出ていった。
レクトが部屋を出た後レジアスは暫く扉を見ていたがやがて呟いて仕事に戻った。
「…闇の書憎しは変わらず、か」