ダンガンロンパ 繋がり   作:オンリー

3 / 9
第2話 ゲーマーの実力

「いや〜それにしても日向があの鷹村さんの知り合いだったなんて」

 

「鷹村さんと同じ鴨川ジムが一緒だからな。それより俺は剣崎が鷹村さんのファンだったのが驚きだよ」

 

 入学祝いで青木の店で食べて以来ずっと剣崎はこの話で持ち切りだ。

 

「なぁ、今度の休みにどっかに遊びに行かないか?」

 

「休みか(店は休みだし別にいいか)。ああ良いよ。でもどこに行く?」

 

「そうだなぁ。ボウリング場なんてどうだ!」

 

「ボウリングか。俺やったことはないけど」

 

「俺もそんなにやってないから大丈夫だよ。なっ?鷹村さんや七海たちを呼んでさ」

 

「・・・わかった。後で鷹村さんたちに聞いてみるよ」

 

 しばし考えたが、別に予定さえ被っていなければ問題はないと思い剣崎に答えた。それを聞いた剣崎は笑みを浮かべて喜び出す。

 

『1年B組、剣崎 一馬くん。至急職員室にお越し下さい』

 

「ん?呼ばれてるぞ」

 

「あぁ?んだよ、俺なにも問題は起こしてないぜ。はっ!まさか本科への誘いだったりして」

 

 ならば行かなくては!、と颯爽と教室を退出し職員室に向かって行った。

 

「ハハ、元気がありまくりだな。じゃあ、俺も七海を誘いに行くとしますか」

 

 遊びに行けるかどうかを聞きに本科に向かう。

 

 

 

 

 

「しかしどうやって本科の校舎に入ろう」

 

 本科と予備学科の校舎の間にある噴水のある広場まで来るが、どうやって本科に行けばいいのか悩んでいた。本科の生徒が予備学科の校舎に入るのは構わないのだが、予備学科の生徒が本科の校舎に足を踏み入れてはいけない校則がある。

 

「携帯ないから連絡できないし・・・どうしたもんか。ん?あれって」

 

 頭を悩ませていた時、こちらに向かって来る七海の姿があった。歩きながらゲームに夢中にやっていた為こちらには気付いてはいない。声を掛けようと名前を呼ぼうとした時、七海の歩いた先にあった段差に気付く。

 

「危ないっ⁉︎」

 

 段差に気付かずにゲームをやり続けていた七海は、段差を避けられずにつまづく。咄嗟に動いた日向は前に倒れそうになった七海の身体を抱き抱える形で支える。

 

「ふ〜ギリギリセーフ」

 

 何とか間に合ったと一息をつく。

 

「あっ、日向くん」

 

「ダメじゃないか七海。ゲームに夢中になるのはわかるけど、周りをちゃんと見ないと。もう少しで怪我する所だったぞ」

 

「ごめん」

 

「まぁでも七海が怪我しないで良かったよ」

 

 安心する日向だったが、胸に来る柔らかい感触に気付き下に目を向ける。見ると七海の胸が押し潰れていた。

 

「うわっ⁉︎わ、悪い!」

 

 慌てて抱いていた身体から離れる。

 

「日向くん」

 

 動揺していた日向に七海は微笑んでいう。

 

「助けてくれてありがとう」

 

 その微笑みから言う一言に日向の顔は更に赤くさせ狼狽える。このままではマズいと思い用件を伝える。

 

「え、ええと、そうだ七海!今度の休み空いてるか。今度の休みに剣崎や鷹村さんたちとボウリングに行くんだけど」

 

「今度の休み?え〜と、空いてると思う」

 

「そ、そうか!なら後は鷹村さんたちに今日聞いてみるから、明日の昼休みにまたこの噴水広場で会おう!集合場所や時間もその時話すから」

 

「うん、わかった」

 

「そ、それじゃまた明日!」

 

 最後に、周りに注意しろよ、と一言告げこの場から立ち去った。校舎に戻った日向は、何とか切り抜けた、とホッとするも先程胸に当たった感触を思い出してしまい、頬を赤らめる。

 

「け、剣崎に場所と時間を聞きに行こう。もう先生との話は終わっているだろうし」

 

 それに誰かと話せば今のこの気持ちも落ち着くかも知れない。

 

「あ〜剣崎はどこにいる?」

 

 B組に着き教室に覗いてみると剣崎の姿が見えなかった。日向は教室にいた男子に剣崎がどこにいるか聞く。

 

「さぁ〜?俺ずっと教室にいたけど、剣崎が放送で呼び出されてからまだ帰って来てないぜ」

 

「えっ?そうなのか(どうしたんだろ。もうそろそろ昼休みの時間が終わるのに。まさか本当に本科への誘いの話が来てるのか)」

 

「教室の前で何やってんだよ」

 

 背後から聞き覚えのある声を聞き振り向くと、浮かない顔をする剣崎がいた。

 

「あ、剣崎。いや、七海が遊びに行ける事と場所と時間を聞きに来たんだ」

 

「そうか。場所は◯◯ボウリング場で、時間は昼の12時にする」

 

「ああわかった」

 

「ならもう自分の教室に戻れ。授業が始まるぞ」

 

 剣崎が言い終わるのと同時に昼休みの終わりのチャイムが鳴り響く。剣崎は日向を通り過ぎて向かい、日向も自分の教室に戻る。

 

(浮かない顔をしてたけど。どうしただろう)

 

 一体先生とどんな話をしたのか気になるが、先生が授業を始めた為、一度この話を忘れることにした。

 

 

 

 

 

「今日は燃えるぜ!」

 

「俺様が一番高い点数を取ってやるっ!」

 

 青木さんと鷹村さんが目をギラギラさせながら燃え上がる。

 

 学校から帰り鷹村さんたちに休みの日に遊びに行けるか、電話で聞くと皆行けるとのことで、当日集まれて良かった。だが何故か木村さんだけ、え?ボウリング。まぁ良いけど、と言っていたのが気になった。

 

「今日は思いっきり楽しもう!七海、木村さん」

 

「負けないよ〜」

 

「だなぁ(何事もないよう祈ろう)」

 

「・・・」

 

 だが剣崎だけ思い詰めた様な表情をしていた。あれから話を聞いても、何でもないで誤魔化されて教えてはくれなかった。

 

「剣崎。そんな浮かない顔してないで、今日は楽しもう。誘ったお前がそんな顔してたんじゃ皆気まずいよ」

 

「・・・それもそうだな。よしっ!今日は楽しまくるぞーッ!」

 

 声を上げていつものテンションに戻る。

 

「なぁ〜普通にやってもつまらないし。ここは一つ賞品なんかを出しません鷹村さん?」

 

「あぁ?賞品だぁ?」

 

「一番高いスコアを取った人が誰かに一つだけお願いを頼むんす。もちろん金を払えとか害があるお願いはダメですけど、それ以外のお願いは基本的聞くんす。どうですか?」

 

「面白そうじゃねえか。その勝負乗ってやる!」

 

「えっ⁉︎鷹村さん本当にやるんですか!」

 

 慌てて勝負を止めようとする木村だったが無駄に終わる。

 

「当たり前よ。何たって俺様が一番になるんだからな」

 

 カッカッカ、と高笑いしながらレーンに向かって行く。それに鷹村の後に続いて青木も付いて行く。

 

「も〜鷹村さんと青木さんたら。勝手に話を進めちゃって。俺ボウリングなんてやったことがないのに」

 

「まぁでも無茶な願いをしないだろ?」

 

「そう願いたいよ。でも木村さん。さっきは何であんなに慌ててたんですか?電話でボウリングに誘った時も変な言い回しでしたけど、それと何か関係があるんですか?」

 

 木村は頭を掻き毟り溜息を大きく吐く。

 

「この勝負はほぼ確実に青木の野郎が勝つからだ」

 

「え?」

 

「青木さんってそんなに上手いんすか?」

 

「上手いなんてもんじゃない。奴はノーミスの青ちゃんと呼ばれるほどの実力の持ち主なんだ」

 

「の、ノーミスの青ちゃん」

 

「まぁっ、この勝負は青木が勝つだろうけど俺たちも負けない様に頑張ろうぜ」

 

「「はっ、はい」」

 

「・・・」

 

 日向と剣崎はただ頷く。しかし七海だけはボウリングの球を磨いている青木を静かに見据える。

 

 

 

 

 

「まずは俺からだ」

 

 一番手に投げるのは青木。二番手は木村、三番手は鷹村、四番手は剣崎、五番手は日向、そして最後は七海だ。

 

「ふ〜」

 

 深呼吸して並び立つピンに集中する。構えた体制から青木は流れる様な綺麗なフォームで球を手から離す。投げられた球は一直線でピンに当たり、10本のピンが全て倒れる。

 

「ストライク!」

 

「うおっ!初球からストライクか」

 

「ちっ、青木の癖にストライクだと。なら俺様も当然ストライクを取る筈だ。木村っ!次はお前の番だ!」

 

「へいへい、わかってますよ」

 

 球を取り青木と交代しレーンに立ち、木村は一息入れ投げる。球は少し左に寄るがピンは全て倒れる。

 

「良し!」

 

「中々やるじゃん木村」

 

「へっ、俺だって勝ちたいからな」

 

「木村までストライクか。ならば尚更、俺様もストライクは取らなければな」

 

 自身に満ち溢れた表情でレーンに立ち、指に力を入れ狙いを定める。

 

「おりやぁああああああ!」

 

 力強く投げた球は先に投げた二人よりも早く、ピンを弾け飛ばした。

 

「どうだ!俺様もストライクだぞ!」

 

「流石は鷹村さんだ!」

 

「凄い速さでピンを弾け飛ばしたな」

 

 鷹村の剛球に剣崎と日向は圧巻しながら感心していた。

 

「次は俺だな。す〜はぁー・・・とりゃー!」

 

 直線に走ったが、ピンは全て倒れず4本残ってしまった。2投目を投げるがピンが立っている位置が悪く、2本しか倒すが出来なかった。

 

「あ〜くそっ、全部倒せなかった」

 

「まだ剣崎は8本倒せて良いじゃん。俺なんか3本しか倒せなかったし」

 

 剣崎が投げ終わった後、日向も投げたのだが1球目は思いっきりハズし焦り、2球目でもピンを3本しか倒せなかったのだ。

 

「そんなしょげてるなよ。ほれ、次は千秋ちゃんの番だぜ」

 

 見るとボクシングの球の重さにフラフラとしながらもレーンに向かっている七海。

 

(もう少し軽い球にした方が良いんじゃないか?)

 

「頑張れっ!七海!」

 

 七海がピンに向けて投げる。球の速さは今まで投げて来た人の中では遅い。球の軌道もやや右寄りだ。

 

(これはストライクは難しいか)

 

 際どいかと思っていたが、ピンに当たる数十㎝の所で目を疑う光景を目にする。右寄りに転がっていた球が左に曲がったのだ。そしてピンは全て倒れ画面にストライクと表示された。

 

「お〜ストライク!」

 

「やるじゃん千秋ちゃん!」

 

「俺様ほど派手ではないが中々じゃねえか」

 

「これは俺たちも負けてられねえな創」

 

「えぇ、そうですね木村さん」

 

 七海のストライクに燃えていた青木と鷹村は、更に気合いを入れ始める。七海が席に座ると日向は七海に近寄り尋ねる。

 

「なぁ七海」

 

「なに?日向くん」

 

「七海ってボウリングの経験があったりするか?」

 

「ううん。今回が初めてだよ〜」

 

「そうかストライクだったから経験があるのかと思ったんだ」

 

「そうなんだ」

 

 喉が渇いたのかジュースを飲む。

 

(七海もこう言ってるし、あれは偶然か?)

 

「あっ、青木さんまたストライク取ってるよ」

 

「本当だ。って、木村さんと鷹村さんもストライク取ってるし」

 

 それから後に剣崎もストライクは取れなかったもののスペアを取る。日向も負けじとストライクを狙うが、7本しか取れずにいた。

 

「惜しかったな。もう少しで全部倒せたのに」

 

「次は取るよ」

 

 ドスンと席に座って飲み物を飲んで喉を潤す。

 

「七海またストライクだな」

 

「上手いもんだなー」

 

(今度は真っ直ぐに行ったな。やっぱりさっきのはまぐれか?)

 

「へいっ!七海」

 

 手をかざしてくる。七海は手の意味を理解し、自分も手を差し出しハイタッチする。

 

(俺も剣崎みたいに気軽に話せたらな)

 

 

 ––––自分もあんな風に七海と話せればと、仲良く七海と話す剣崎を羨ましいと思った。

 

 

 そしてゲームは後半に入り、スコアの差が出てきた。木村は最初と2回目のストライク以降はスペアが2回を取るもののストライクは取れず、鷹村は2回目のストライクに続いて連続でストライクを取っていたが、第6フレーム以降になるとスペアと9本を取る形になる。そしてノーミスの青ちゃんと呼ばれる青木はとゆうと。

 

「よっしゃぁあああっ!またストライク!」

 

 その呼び名の通り、最初からずっとミスをせずにストライクを取り続けている。因みに日向は後半からスコアが伸びる様になり、剣崎と同じスコアになっている。

 

「くそっ⁉︎また青木がストライクを取りやがっただと⁉︎」

 

「ちっ、青木の奴ボウリングの腕は衰えてないな。まるでハズす様子がないぜ」

 

「このままストライクを取り続けると青木さんが一番に終わりますよ」

 

「ふっふっふ、鷹村さん!俺が一番で終わった時には鷹村さんに飲み物を買いに行かせますからね!」

 

「なんだとッ⁉︎この俺様が青木ごときの為に・・・そんなのは死んでも御免だ!」

 

「ケッケッケっ!そう言うと思ってましたよ。でもね、このまま行けば俺の勝ちで決まりなんです!まさか、このゲームは無しって言いませんよね〜」

 

「畜生ッ⁉︎誰でも良いから青木を勝たせるな!」

 

「そいつは無理ですよ鷹村さん。どれだけスコアの差があるかはわかりませんが、今の状況だと青木がミスをしない限り俺たちに勝ち目はありません」

 

 チクショォオオオオッ⁉︎、と頭を抱え込む鷹村の姿に青木は愉快に笑う。確かに今の鷹村たちではこの状況を覆すことは出来ない。一人を除いては。

 

「まだ青木さんの勝ちで終わるとは限りませんよ」

 

 投げ終えて帰って来た日向の一言に鷹村たちを目を向ける。

 

「なんだ〜創。この俺様がミスをすると思ってんのかぁ?」

 

「スコア画面を見て下さい」

 

 言って説明するよりも自分の目で見た方が良いと、スコア画面に目を向けさせる。それを見た青木たちは目を見開かせる。

 

「あっ!な、七海も全部ストライク!」

 

「青木と同じスコアだ!」

 

「な、なにぃいいいいいいッ⁉︎な、なぜだぁあああああああッ⁉︎」

 

 そう七海もまた青木と同じく全ての回でストライクを取り続けていたのだ。

 

「皆がトイレに行っているなんかで席を外していた時、七海はストライクを取ってたんですよ」

 

 それに皆、青木さんに集中していた為にスコア画面を見ていなかったから七海のスコアに気付かなかったのもある。

 

「でもなんで七海はあんなに上手いんだ?ボウリングの経験は無いって言ってたのに」

 

「さっき二人になった時に聞いたんだけど、七海はゲームのスペシャリストなんだ」

 

 七海が希望ヶ峰学園に認められた才能は『超高校級のゲーマー』。あらゆるゲームをこなす才能を持っている。

 

「だけどよ。幾らゲームに強いからって、実際に投げるボウリングをそんな簡単にストライクを取れるもんなのか?」

 

「七海はゲーム感覚で投げているんですよ。その時の自分の状態。どのフォームで投げればストライクに入るのか、どの程度の力で投げ、どの角度でピンを当てれば全部倒れるのか、どう投げれば球が曲がるのかってね」

 

 ずっと見ていたからこそ気付けた。

 

「まぁ〜なんにせよ。これで勝負はわからないってことだよなぁ?」

 

 さっきまで頭を抱え込んで苦悶の表情が嘘のように不敵な笑みを浮かべてニタニタと笑う鷹村。

 

「だけどまだ七海がハズす可能性は「パコーンッ‼︎」なさそうですね」

 

 またしてもストライクを取る七海に青木は嫌な予感を走らせる。

 

「よっしゃッ‼︎ここからは二人の一騎打ち勝負だ!」

 

「これは面白そうになって来たぜ!」

 

「一体どっちが勝つんだッ⁉︎」

 

「ぬぉおおおおおおおおッ‼︎負けてたまるか!」

 

 勝負は青木と七海の一騎打ちになり、他の者はゲームをリタイアする。

 

「どうしたの?」

 

 戻って来た七海には今の盛り上がるこの状況はわからなかった。

 

「え〜と。今からゲームは七海と青木さんの一騎打ちになったって事を理解してくれれば良いよ」

 

「?うんわかった」

 

 次は第8フレームだから残る回はこれを含めて後3回。ここからは集中力を切らした方が負けだ。七海と青木さんとの一騎打ちが始まり、青木さんがスタートする。投げた球は華麗にピンを弾け飛ばしストライクを取る。そして七海もそれに負けじと必要最低限の力で球を投げ、ピンを全て倒す。

 

「おおっ!終盤に近づいて来てるのに、二人ともなんて集中力なんだ!」

 

「だが、不利なのは千秋ちゃんの方だ。見ろ!青木の奴は肩で息する程度だが、千秋ちゃんはかなり息が荒れてる」

 

 ゲーム終盤に近づいて互いの差が出て来てしまった。幾ら七海がゲーム感覚で投げていようと、自分の体力を補える訳ではない。このまま体力が削れて行けば、先に落ちるのは七海だと木村は説明する。

 

「そんなもん気合いでなんとかなるっ!兎に角、青木に負けるんじゃねえ!」

 

「頑張れ七海ッ!」

 

「はぁ、はぁ、負けない」

 

 その後も七海は気力で体力を補い、集中力を切らさずにストライクを取り続ける。

 

「いよいよ最終回だ。後少しだ七海!」

 

「ここまでのスコアは同じ。その調子で行けば、青木がミスれば勝ちだぁ!」

 

「絶対に勝てぇええええ!」

 

「七海ッ‼︎」

 

「俺の応援は無いんすかっ⁉︎」

 

 誰も応援してくれないのに号泣する青木は絶対にこいつらの思い取りなたさせないと闘志を燃やす。そして投げた球は2本ともストライクを取る。

 

「くそっ⁉︎ここに来てもあの制球力は全く乱れる気配がない」

 

「これで青木がストライクを取れば勝ちに近づく」

 

 青木は深呼吸をして鋭い視線で並び立つピンに集中する。

 

「おーりゃぁあああああッ‼︎」

 

 意を決して球を投げる青木。球はピンにぶつかり倒していく。だが、1ピンだけふらふらとしながらも倒れることはなく残った。

 

「ああぁッ⁉︎くそっ!」

 

「青木の奴ッ!ここに来て1ピンだけハズしやがった!」

 

「これで全部ストライクを取れば青木の負けだ!」

 

 ボールを持ちレーンに立つ七海。ゆっくりと七海が投げた球は2本を寸分違わずにピンを全て倒す。

 

「後ラスト1球!」

 

「特別に今回は一番を譲ってやる。だから勝てぇえええええッ!」

 

「決めろ七海!」

 

 これを取れば勝てると期待する鷹村たち。だが七海はさっき投げた球で、既に体力の底をついていた。しかしゲームは途中から降りないと決める七海は球を持ってレーンに向かうとする。

 

「あっ」

 

 球の重さに耐えなれなかった七海は転びそうになるが、咄嗟に出た日向の手によって防がれる。

 

「日向くん」

 

「七海」

 

 ここで何を言うべきなのか考える。もう無理はするなと止めるべきなのか、それとも絶対に勝てと奮起させるべきなのか、色々と頭に浮かんだが、日向は辛い状況に敢えてこの言葉を送る。

 

「ゲームを楽しめ七海」

 

「・・・うん!」

 

 支えていた手を離しレーンから降りる。七海を深呼吸し、構えを取り最後の一投に力を入れ投げる。転がる球は今まで投げた球の中で一番遅い。球はゆっくりとピンとぶつかり倒していくのだが、2本残ってしまう。内の1本は完全に立った状態に加え、もう1ピンと少し離れていた。 青木はこれは勝ったと確信しガッツポーズをし、鷹村たちは終わったと叫ぶ。だが日向だけは違った。ただひたすらピンを眺めながら喋り出す。

 

「言ったでしょ。七海はゲーム感覚で投げてるって。どう投げればピンが倒れるのかわかるんです」

 

 ふらふらとしたピンを倒れ、離れのピンに近づくようにして転がっていく。

 

「この勝負は七海の勝ちだ」

 

 転がって近づいて来たピンにぶつかったピンは静かに倒れ、スコア画面にストライクが表示された。

 

 

 

 

 

「今日は楽しかったね」

 

「そうだな。また今度やりたいな」

 

 ゲームは青木さんに1ピン差で七海のパーフェクトで終わった。青木さんはかなりショックだったのか、30分ほど沈んでいた。しかしそんな青木を鷹村さんはケラケラ笑いながら追い討ちを掛けていたのが印象的だった。

 

『青木と鷹村さんは俺が見てるから、お前は千秋ちゃんを家に送って上げな』

 

『俺は鷹村さんともっと話してたいから残るわ。だから日向に七海は任せた』

 

 疲れていた七海を家に送るように命じられた日向は、七海の家まで同行している。

 

「日向くん、ありがとうね」

 

「えっ、なんだよ突然」

 

「日向くんがあの時、励ましてくれなかったらストライクは取れなかったから」

 

「あれは七海の力だろ?」

 

「そんなことないよ。日向くんが楽しめって言ってくれたお陰で、余計な力を入れずに投げれたんだよ」

 

 七海の言葉に少し照れ、頬を指でぽりぽりと掻く。

 

「あ、もう家が見えてきた」

 

 指差す方向に目を向ける。二階建てで大き目な家だ。家まで行くと庭が付いているのがわかる。

 

(もう少し七海と話をしたかったな)

 

 だが疲れている七海をこれ以上、付き合わせるのはダメと理解していた日向はそれを断念した。

 

「送ってくれてありがとう日向くん。また明日学校のお昼休みに会おう!」

 

「あぁ、また明日!」

 

 七海が家に入るのを確認し終え、自分も家に帰ろうとする。

 

(そうだ。今日話せなくても明日がある)

 

 明日また七海と話そうと気分を良くしながら明日になるのを楽しみに待っていた。

 

 




はいっ!今回は青木と七海とのボウリング対決でした!
ノーミスの青ちゃんと呼ばれていたが最後にハズしてしまった青木。
久しぶりにやったから腕が衰えてしまったのか!
そして今回七海はゲーム感覚で投げていたけど、マジで凄いっすねッ‼︎ゲーム感覚でストライクが取れるとか、七海さんって何気に万能ですかッ‼︎
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。