ダンガンロンパ 繋がり   作:オンリー

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第5話 浪速の虎

「お、おい、七海。しっかりしてくれ」

 

 日向はかつて味わった事もない危機的状況に立ち合っている。七海が日向の胸に顔を埋めるようにして抱きついている形になっている。

 

「一体どうしたら」

 

 どうしてこんな状況になってしまったのか。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「日向くん。次は何に乗る?」

 

「ん〜そうだな。じゃあ今度はアレに乗ろうぜ」

 

 日向はジェットコースターの搭乗口を指差した。現在、日向と七海は後楽園ホールの近くにある遊園地に来ている。なぜ二人が遊園地で遊んでいるのかとゆうと、3日前に遡る。

 

 

 

 

 

「えっ?今なんて言いましたか?」

 

 ジムの練習帰りに日向は鷹村と木村と共に、青木の働いている店に寄り飯を食っていると、青木から言った言葉に日向は箸を止める。

 

「だからよ。今度の千堂の試合が始まる前に、千秋ちゃんとどっかで遊んでろよ」

 

「まぁ、青木の意見には俺も賛成だな。幾ら千秋ちゃんが行くって言っても、興味が無かったボクシングの試合を見るとなると、なんか可哀想だしな。ここは一つ、お前が千秋ちゃんと一緒にどこかで遊んでこい」

 

 青木の意見に賛同する木村の言葉に日向は押し黙る。確かに木村の言う通り、殴り合いのボクシングを見ても七海はつまらないかも知れない。

 

「で、でも」

 

「でもじゃねぇだろが、おい青木。前に確か遊園地のチケットを2枚持ってたよな。それ創に渡せや」

 

 ラーメンの汁を飲んでいた鷹村が青木にチケットの事をあるか確認を取る。

 

「おっ、そうスね。前にトミ子と一緒に行けなくて持ってたんでした。期限も確かちょうど試合がある日でしたし」

 

「なら決まりだ!創っ!そのチケットを使って嬢ちゃんと試合が始まるまで遊んでこい!」

 

 

 

 

 

 そんなかんなで、青木から渡されたチケットを受け取り、試合が始まるまで七海と遊園地で遊ぶことになったのだ。そして二人は搭乗口に上がっていき、ジェットコースターの座席に座り安全バーを下ろしていた。

 

「ドキドキしてきた」

 

 周りの景色を眺めながら頂点に向かうのをドキドキしながら待っていた日向。ジェットコースターが頂点に辿り着くと、そのまま一直線にして下に落ちて行く。

 

「おおおおおおおッ⁉︎」

 

 物凄い速さでぐるぐる回るジェットコースターに絶叫を上げる。そして終点に着き、座席から降りた日向と七海はジュースを買い近くのベンチに座り休む。

 

「凄い速さだったな」

 

「私もビックリした。まさかあんなに速いなんて思わなかったよ。でも一番に驚いたのは日向くんがあんなにはしゃいで遊園地を回っていた事かな」

 

「えっ⁉︎あははは。俺、遊園地なんて小学校に一度行った以来だったからさ。ついはしゃいじゃってな。七海は遊園地に来た事はあるのか?」

 

「ううん、私は今回が初めて。だから日向くんに誘ってくれた時は嬉しかったよ」

 

 日向は七海の微笑む姿にドキッと、動悸を一層強く、速くさせる。頬を赤らめながら買ったジュースをズズっ!と飲み干す。

 

「ねぇ、日向くん」

 

「な、なんだ七海」

 

「もうそろそろ試合が始まるでしょ」

 

 時間を見ると七海の言う通り、試合が始まる時間が迫って来ている。

 

「だから最後にアレを一緒に乗ってくれないかな?」

 

「あれって、観覧車?」

 

 七海が指差す方向に視線を移すと、ゆっくりと一周する観覧車があった。

 

「そうだな。最後は観覧車にするか」

 

 断る理由が無かった日向は七海を連れて観覧車に向かう。人も少なくなってきていた為、並ばずに観覧車に乗り出す。観覧車に乗った二人はゆっくりと登りながら、夕日が沈む光景を見つめていた。

 

「・・・七海。ありがとな」

 

「えっ?どうしたの急に」

 

「前に狛枝って奴と俺が言い争っていた時に、七海が俺の事を庇ってくれただろ。そのお陰で拳を振るわずに済んだんだ。だけどそのお礼をずっと言えなくてな」

 

 あの日以来、そのお礼を中々言い出せずにズルズルと日が経過してしまい、このままでは駄目と思い、意を決して伝える。

 

「なぁ、七海はどうして俺を庇ってくれたんだ?同じクラスの奴と気不味くなるかも知れないのに」

 

 自分の所為でクラスメイトとの仲を悪くさせてしまったと思うと、七海に申し訳ない気持ちで一杯だった。だが七海はそんな日向に微笑んで言う。

 

「大切な友達の悪口を言われたから言っただけだよ。狛枝くんとはあれ以来別にこれと言って仲が悪くなってないし。日向くんが気にしなくて良いんだよ」

 

「でも」

 

「それにあれは狛枝くんが悪いんだから、日向くんがそんなションボリした顔になっちゃダメだよ」

 

 それを聞いた日向は、また救われたな、と思い再びお礼を言おうとする。

 

「え・・・っ?」

 

 しかしそれは口にする事は無かった。なぜなら突然、七海が自分の胸に向かって倒れてきたからだ。あまりに突然の事態に状況が飲み込めず、日向は素っ頓狂な声を発した。

 

(え、ええええぇぇぇッ⁉︎何でこんな状況になった!)

 

 内心で絶叫を上げなから、今の状況に頭がついていかずに混乱する。タダでさえこの状況に混乱しているのに加え、今の二人の密着する形となっている。

 

(あぁ、こうして抱いているとわかるけど。七海の胸って結構大きいんだな・・・じゃなくてッ!早くこの状態をなんとかしないと)

 

 雑念を払い、深呼吸して気持ちを落ち着かせる。そのかいがあったのか、七海がスゥ〜ス、と寝息を立てている事に気付く。

 

「お、おい、七海。しっかりしてくれ」

 

 寝ている七海の肩を優しく揺らし起こす。だが七海はスヤスヤと気持ち良さそうにして寝続けている。

 

(誰か何とかしてくれぇええええッ⁉︎)

 

 この密着状態は心臓に悪い為、速やかに離れて欲しかった日向。少しすれば起きるのでは、と期待するのだか、結局七海は観覧車が一周するまで寝続け、日向は七海と抱き着いたままになった。

 

 

 

 

 

「ごめんね日向くん」

 

「いや、別に謝んなくて良いんだ」

 

 あの後、二人は遊園地から退場し、千堂が試合をする後楽園ホールの座席に座っていた。

 

「それにしても、なんであの時に寝始めたんだ?」

 

「私、ボーとするとよく寝ちゃうんだ」

 

「そっか。でも気を付けろよ。色々と危ないから」

 

 主に自分の理性が保たなくなるのが一番危ない。

 

「只今より本日のメインイベント。日本ウェルター級タイトルマッチ、10回戦を行います‼︎」

 

 アナウンスが流れ出す。どうやらメインイベンターの準備が整ったようだ。両選手がそれぞれのコーナーから入場する。

 

「さあ青コーナーより姿を見せた挑戦者、千堂 武士(せんどう たけし)‼︎5戦5勝5KO!勝った試合全てがKOという浪速の虎!王座挑戦に向けてゆっくりとリングに向かいます‼︎」

 

 青コーナー側からゆっくりと出てくる千堂。その表情から気合いが十分に入っている事が離れた席からでも伝わって来る。

 

「そして赤コーナーからは王者の鈴木 利雄(すすぎ としお)‼︎15戦12勝9KO!2度目の防衛戦。浪速の虎相手にどう闘うのか!」

 

 赤コーナー側からチャンピオンがベルトを巻いてリングに向かって行く。

 

「千堂!お前がチャンピオンや!」

 

「いてもうたれや千堂‼︎」

 

「鈴木なんて潰せや!」

 

 千堂を応援する為に大阪から来た応援団体。大量のタレ幕にのぼり、と客も盛り上がっていた。

 

「鈴木!そんな若僧にベルト渡すなっ!」

 

「チャンピオンの実力を見せてやれ!」

 

 鈴木のファンも負けじとチャンピオンを応援する。会場が客の応援合戦で鳴り響く中、千堂とチャンピオンはリングの上で火花を散らしながら睨み合う。

 

「いよいよ始まるね日向くん」

 

「あぁ」

 

 両選手がコーナーでセコンドと話し合う。

 

「いいか鈴木。相手のパンチ力は計り知れない。気を付けて行け」

 

「わかってるぜ」

 

「ええか千堂。今日の相手はチャンピオンや。これまでの相手とはレベルが違う。心して掛かれや」

 

「わかっとる」

 

 互いにマウスピースを口に嵌め込み、ゴングの開始を待つ。

 

(よく見とけ日向。今のワイの実力をっ!)

 

 ゴングが鳴り響き試合が開始する。千堂と鈴木はコーナーから一気に飛び出す。先に先制したのは鈴木。鈴木が繰り出すワン、ツーを躱す千堂。鈴木はフェイトを織り交ぜて繰り出すが、どのパンチも千堂に見切られ避けられる。

 

「全然当たらないね」

 

「あぁ、千堂さんはチャンピオンのパンチを全部見切って避けてる。前に俺と闘った時よりも、防御が遥かに上手くなってる」

 

(ちっ!ちょこまかと動きやがって。なら、これならどうだ!)

 

 攻撃が当たらない事に痺れを切らした鈴木は自分の体を預ける様に千堂にぶつけ、密着させる。そして鈴木は千堂の顎を肩でカチ上げる。

 

「がっ」

 

 肉薄していた為にレフェリーは気付いていない。顎をぶつけられた千堂は体勢を崩す。鈴木はそれを見逃さずに右ストレートを千堂に放つ。それをもろに入った千堂は後ろに後退する。

 

(良しっ!一気に畳み掛ける!)

 

「ッ、アホンだらあっ‼︎」

 

 好機と判断した鈴木は追撃をしようとする。だが鈴木は追撃するべきではなかった。千堂は鈴木に顎を肩でカチ上げられた事に頭に来てしまっていた。千堂は凄まじい形相で鈴木に右を打ち下ろす様に叩き込む。

 

「がぁっ⁉︎」

 

 咄嗟にブロックするものの、千堂の圧倒的なまでのパンチ力に威力を吸収しきれず、一気にロープまで後退させられてしまう。

 

(なんてパンチだッ⁉︎ブロックしたのに威力が抑えきれなかった!)

 

「喰らえやッ!」

 

 千堂はロープ際に下がった鈴木に接近し、右ボディに強打を叩き込む。もろに受けた鈴木は体をくの字に曲げ、口からマウスピースを吐き出す。

 

(決めるで!)

 

 左足、左腕を前に出した千堂は左拳を左下から回り込む様にくの字に曲げた鈴木の顔面に突き上げた。千堂のフィニッシュブロー、スマッシュを炸裂させた。

 

「ごばぁッ⁉︎」

 

 顔面に直撃した鈴木は糸が切れた様に、前のめりに倒れ込んだ。レフェリーが駆け寄り、千堂を自分コーナーに下がらせ、カウントダウンをしようとする。カウント7まで数えるが一向に鈴木は動く気配を見せない。

 

「8っ!9っ!10ッ‼︎勝者・・・千堂‼︎」

 

 レフェリーは腕を千堂に向けさせ、勝者宣告をする。静まり返っていた客は千堂の勝者宣告を聞いて、歓声を会場中に響かせた。千堂コールが鳴り止まない。

 

「チャンピオンを僅か1R1分7秒で勝利した千堂!会場が千堂コールで鳴り止みません!そして王者を倒した千堂にベルトが巻かれますッ!」

 

 セコンドにベルトを巻かれた千堂は両手を上げて、客の声を上回るかと思わせるほどの雄叫びを上げた。

 

「あっという間だったね。日向くん?」

 

 七海の声に反応しない日向に顔を向けると、日向はじっとリングに立つ千堂を見つめていた。

 

「七海。ちょっと千堂さんの所によっても良いか?」

 

「うん、構わないよ」

 

 千堂のいる控え室に向かう二人。控え室に着くと、記者の人たちが千堂に色々と話を聞いていた。取材が終わるまで待つ事にし、記者の人たちが出るのを確認すると日向と七海は千堂のいる控え室に静かに入る。

 

「おぉ、日向!とあんたは確か前に日向と一緒にいた」

 

「七海 千秋です。試合凄かったです」

 

「そうやったか、あの時は自己紹介を忘れとったからな。ワイは千堂 武士や、よろしゅうな」

 

「千堂さん」

 

 千堂の前に立つ日向。その目からは溢れんばかりの闘志が宿っていた。

 

「新チャンピオンおめでとうございます。チャンピオンを1Rで倒すなんて流石です」

 

「おおきに。せやけどワイはまだ本当のチャンピオンになった訳やない。キサマに負けたままやからな」

 

 腰を下ろしていた千堂もゆっくりと日向の前に立つ。

 

「俺も来年プロに上がるつもりです。プロになった時は千堂さんに挑戦者として向かいます」

 

 その言葉に千堂は笑みを浮かべ、手を差し伸べる。日向は差し伸べられた手を掴み、力強く握り締めあった。

 

 

 

 

 

「千堂さんの祝勝会に行かなくて良かったの?」

 

 千堂から祝勝会の誘いを受けた二人。しかし、あまり遅くなると七海の家族が心配させてしまう為、日向は千堂の誘いを断り、七海を家まで送り届けている。

 

「あまり遅いと七海の親が心配するだろ?それに千堂さんも構わないって言ってたし大丈夫だよ」

 

「そっか。ねぇ日向くん」

 

「何だ七海?」

 

「日向くんは来年プロになるって言ってたよね」

 

「あぁ、そのつもりだ」

 

「そっか」

 

 少し表情を曇らせる。何でそんな顔をするのかわからなかった日向は、七海に質問した。

 

「何でそんな事を聞くんだ?」

 

「・・・だって、それだと日向くんも殴られるもん。私、日向くんが殴られる姿、見たくない」

 

 タダでさえ千堂の衝撃的な試合を見た後だ。日向が千堂と闘うと誓い合ったのを聞けば心配するのは無理はなかった。出来ることなら日向にはボクシングをやって欲しくないと思う七海。そんな七海に日向はある事を話す。

 

「七海。・・・ちょっと昔話をするな。ある一人の男がいました。その男は毎日毎日ミミズ臭いと言われ続け、男はミミズじゃない、イソメだって言うと生意気だって張り手3発。その他にもコトある事に小突かれて、小学校から中2まで8年間続きました」

 

「えっ?」

 

「しかしその男は好きな事ができて、それに打ち込み続けているとだんだんと周りの事なんて気にしなくなって、気がつくと周りの方が変わった」

 

「それって、なに?」

 

「ボクシング」

 

 その言葉に目を見開き、息を呑み込む。まさかと思った七海は日向に問い掛ける。

 

「そのイジメられてたのって、まさか日向くん?」

 

 日向は七海の質問に頷いて答える。

 

「だから俺にとってボクシングは自分を変えさせてくれた掛け替えのない物なんだ。俺はそれをやり続けたいんだ」

 

「そうなんだ。うん、そうだよね。私も好きな事を止めろと言われても止められないね。ごめんね日向くん」

 

「全然気にしてないよ。寧ろ心配してくれて嬉しく思ったくらいさ。それよりも、今の話を聞いてちょっと引いたりしたかな?」

 

 流石に8年間イジメられていたと聞けば、身を引くかも知れない。

 

「そんな事ないよ。日向くんは––––私の大切な友達」

 

 だが七海は日向のイジメの過去など気にもしていなかった。過去にイジメられても日向くんは日向くんだから、と告げる。七海のその言葉に日向はある思いを芽生えさせる。

 

(あぁ、そっか。こうゆう七海を好きなんだ)

 

 誰かの為に自分を顧みない、辛い時に優しく励まし心配してくれる、どんな過去を持っていても気にしない––––そんな七海に俺はいつの間にか好きになっていたんだ。

 

 

 

(俺って意外と鈍感なんだな。こんな事に今まで気が付かなったなんて)

 

「あっ!そうだ」

 

 ネコ型のバックの中からある物を取り出す。

 

「これ日向くんにあげる」

 

 見せてきたのは『ギャラオメガ』に登場する戦闘機のストラップ。

 

「それどうしたんだ?」

 

「さっきの遊園地で日向くんがいない間にこの景品を取ったの。二つあるから一つは日向くんにあげるの」

 

 日向は七海からストラップを受け取る。

 

「ありがとな。大切にするよ」

 

「うん!」

 

 受け取ったストラップをポケットにしまう。

 

(いつか、ちゃんと七海にこの気持ちを伝えよう)

 

 いつか告白する事を心に決意する。

 

 




え〜今回は日向が七海に対する気持ちを自覚する話でした〜
なんか、無理矢理感がハンパないけど、俺には恋愛はこれが限界だぁー!と、言い訳は置いて、次回もお楽しみに〜
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